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Episode 03:舞い降りた、漆黒の巨人。

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<――――残念、私ハキングジャナイ>

 ぐしゃっ。

 巨大な鉄塊に叩き潰され、ぐしゃぐしゃに歪んだ一ツ目が他の部品と一緒に宙を舞った。


パラベラム!
Episode 03:舞い降りた、漆黒の巨人。


 首から上がほぼ消滅したサイクロプスを一瞥。無言で大鎚を持ち上げ、ぽいと放り投げる。放り投げられた大鎚は出てきた時と同じ音を立てると、光の粒子になって空へと還っていった。
 それを見届けた後、首を捻る。ごきり、ヤバめな音が響いく。これはひょっとすると長期休暇が必要かもしれない。
 そんな事を考えていると、背後から足音が聞こえてきた。これはきっとリヒトだ。
「……なんだよ、本当に終わらせちまったのか」
<王将じゃないなら飛車なんですかね>
「角なんじゃねぇの」
<なるほど>
 穏やかな風が吹き、木の葉が擦れる音が聞こえる。空を見上げれば、そこにはゆっくりと流れる雲。ああ、小鳥の囀りと降り注ぐ木漏れ日が実に心地良い。――――ああ、今日はいい日だ。
「で、今のは何の話だ?」
 お互い近くの木にもたれ掛かる。
<追っ手が二機以上いたようで>
「なるほど」
 今度は先程よりも強い風が駆け抜けた。リヒトのざんばら髪が揺れ、木の葉は舞い上がる。静寂の中を、風が踊る。
「……つまり」
<るーるーるー>
「さっきの三つ編みロリータが危ないと……おーい話を聞けー」
 手にしたロッドでヘーシェンの顎のあたりを小突く。
<るるるーる――――るーるーるー……何ですか、人が現実逃避してるところに>
「お前が逃げるな」
<まあ、か弱いうさぎっ娘に何て事を>
 くね、としなを作ってみせる。気色悪い。
「お前が身長一五○センチ以下の美幼女だったら、例え腕っ節が強くても同意してたのにな」
<3.6メートルもあって悪うござんした。……先程のロリータは見たところ一五○センチ以上ありましたが?>
 心なしかムスっとした声で、ヘーシェン。
「……マジで?」
<嘘です>
「そうか。さっきの娘、ストライクゾーン直撃だ。パッと見かなりの童顔だったしな」
<はあ、さいですか。このけだものめ>
「所詮人間も獣なんだよ。……で、だ」
<はいはい>
「……俺達はこんな所でまったりしていていいんだろうか」
 数瞬の静寂、そして。
<……駄目ですね>


 ♪  ♪  ♪


「……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」
 遺跡の壁が足音を、息遣いを反射させる。
 背後から迫る“それ”の感覚。まだ大丈夫、まだ遠い。
「何で私が狙われるかな……!」
 オートマタが自分を付け狙う理由が全くわからない。自分が神子でない――――つまりマナを供給する事ができない――――以上、狙われる理由は無い……はずだ。
「あぁっ、行き止まり!」
 どうやらこれ以上は進めないらしい、万事休すか。
 振り返る。まだ“それ”の姿は見えない。
 いっそ、死ぬ覚悟で突撃してみようか――――いや、駄目だ。死ぬ覚悟をしようが何しようが、勝てる見込みが無い。それならあがいたほうがまだ助かる可能性がある。部屋の隅でローブを被ってじっとしていれば、見つからないかもしれないのではないか。
 部屋の隅へと、素早く、音を立てずに移動を開始。壁にもたれ掛かり――――
 ……空気の流れる音?
「風が流れてる……?」
 つまり、あの先に出口があるということだ。……これは何とかなるかもしれない。問題はどうやってこの壁を突破するか、だが。
「あ、そういえば」
 ローブの下をまさぐり、パイナップルのような形をした物体を取り出す――――手榴弾だ。それも、攻撃用の。
「でもこれで爆破できるかどうか……。」
 手榴弾の攻撃力は爆散する破片によるところが大きく、爆発による威力はそこまで高い物ではない。
 壁を押してみると、ぐらぐらと揺れた。それに見たところ脆いのはこの壁だけで、他はしっかりした造りになっている。爆破した瞬間生き埋めにはならないだろう。
「うん、これならいけそう」
 安全装置のピンにワイヤーを括り付け、壁の前に設置。離れてからワイヤーを引く。
 爆発までは大体五秒。隠れる場所が無いため全力ダッシュでさらに距離をとる。
 遠くで爆発音と壁の崩れる音がした。成功だ。
「やった!」
 瓦礫を踏み越えて、その向こう側へと歩を進める。しかし、そこにあったのは出口ではなく――――
「……え?」
 道が無い、壁が無い、天井が無い。何らかの事情で吹き飛んだのか崩れ落ちたのか、それはまさに断崖絶壁。眼下に広がるのは暗闇だけだ。
 ――――詰んだ、完璧に。
 がくり、と力無く膝からくずおれた、その時だ。
<ヨウヤク、追イ付イタ>
 追い撃ちをかけるように響く声。
「――――ッ!?」
 悪い事は連続するものだ。恐る恐る振り返ると、案の定野良オートマタが一機、こちらを見下ろしていた。先程の個体とは違う、スマートな機体。
<サア、賢者ノ石ヲコチラニ渡シテモラオウ>
 遥が吹き飛ばした壁の穴を広げて、派手なオレンジ色の腕が迫る。
「け、賢者の石!?」
<ソウダ。ソレサエアレバ、忌マ忌マシイ神子共ニ尻尾ヲ振ル必要モ無イ!>
 つまりどういう事なのだ。まったく話がわからない。
「賢者の石なんて知りません!」
<気丈ダナ、アクマデモシラヲ切ルカ……。ナラバ>
 しゃきん。
 野良の腕から、鋭利なブレードが飛び出した。
<殺シテデモ、奪イ取ル>
 今度こそ、殺される……!
 恐怖に目を固く閉じる。瞼の裏に貯まった涙が一筋溢れ出した。
 機体と同じ、毒々しい色の刃が風を切って頭部へと振り下ろされた。が、
<グェァァァッ!?>
「……え?」
 固く閉じた目を開くと、自分の頭を切り落とすはずだった野良の腕が宙をくるくると舞っていた。
<大丈夫ですか、マスター。賢者の石を持つ人よ>
 眼前に舞い降りた、漆黒の巨人。
 黒き鎧を身に纏う、赤い目の騎士。
「……あなたは?」
<貴様ハ……!>
 突如として出現した巨人はゆっくりとこちらを振り返る。
<型式番号はM-12。名前はまだありません>
 淡々とした、しかし滑らかな男性の声。
<……前方の機械人形を自己の判断で敵と見なして排除します>
 腕を振るって、付着した液体――――オイルの類だろうか――――を振り落とす。ひゅんっと小気味いい音が鳴り、血のようなそれが壁に降り懸かった。
<M-12……! キ、貴様“ペネトレイター”カ!>
 後ずさる。表情こそ無いが、畏怖と焦燥が見てとれた。
<回路接続。マナ供給、開始>
 歩み寄る。余裕こそ見られるが、油断は無い。その身体が内包する威圧感に、周囲がびりびりと震えた。
<セ、セッカク見ツケタンダ、賢者ノ石!>
 残された腕からブレードが飛び出す。
<コンナトコロデ、コンナトコロデヤラレテタマルカ!>
 跳躍。その鋭利な切っ先をもって、肩の関節を叩き切らんとする。
<俺ハ自由ニナルンダヨォォ――――ッ!!>
「危ない!」
 命中。しかし、
<ナ!?>
<防御、成功>
 ――――その攻撃は当たりこそすれ、騎士を傷つける事は叶わなかった。腕の甲に集中させたマナの盾に阻まれたのだ。そのまま野良を振り払う。
<反撃、開始します>
 腕に纏うマナの光が、盾から矛へと形を変えた。同時に背部のブースタを点火、噴き出すマナの光が美しい。
 手を腰だめに構えて急加速。
<ヤ、ヤメ>
 超高速の貫手が、耳をつんざく不快な音と共に野良の中へと侵入した。オイルが飛び散り、顔に掛かる。黒い騎士が目を細めた。
 無言で胴体に刺さった腕を引き抜くと、支えを失った野良がその場に倒れ伏した。もうぴくりとも動かない。
<目標の沈黙を確認>
 いくらかの間を空けて黒い機械人形が告げた。
「お、終わった……?」
 安堵し、溜息をつく。全身から力が抜け
<……付近に機械人形の反応をキャッチ。システム、戦闘モードを継続します>
 なかった。背筋が伸びる。
「また!?」
 二度ある事は三度あるらしい。やはり不幸は連続するもののようだ。
<マスターは離れていてください>
「あ、は、はい」
 立ち上がると、身体の節々が痛みを訴えた。しかしまだ、事は終わってはいないのだ。


 ――――次回へ続く

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