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パラベラム! 烈火と疾風 Prologue

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 漆黒の空を、月光を反射させながらダークブルーの怪鳥が飛んでいる――――いや、鳥ではない。二枚の翼を広げたそれは、確かに人の形を成していた。
 彼の名前はヨダカ・フリューゲル。フリューゲルタイプのオートマタだ。
 数千年だか数万年だか前に起きたという『何か』により、文明をリセットされた。オートマタはその時代の人類の忘れ形見のひとつである。もっとも、人々はオートマタではなく専ら“機械人形”と呼んでいるが。
 3メートルの細い身体が大空を切り裂くように旋回する。マナの防壁のおかげで、空気抵抗も慣性もそう気にする程ではない。
 眼下の大地には、ぽつぽつと明かりが灯っている。人々の住む集落だ。
 その光を見てヨダカは思い出す。二年前、自身がまだ醜い夜鷹でなかった頃の記憶を。


パラベラム! 烈火と疾風

Prologue


 冬。白化粧をした大地に、黒髪の少年が初めて足を踏み下ろす。
「うわ、真っ白! おいアスカ、お前も来いよ!」
 少年の名は坂上 亮介、歳は16。マナを操る事ができる人物、神子だ。そして、亮介が契約する蒼いオートマタが、アスカ・フリューゲル。希少価値の高いフリューゲルタイプのオートマタだ。亮介とその家族と一緒に運び屋を営んでいる。
<嫌だよ……寒いもん>
「お前にそういう感覚ないだろ! ほら、来いってば、命令だぞ!」
 そう言ってからから笑う亮介と、子供なんだから、と渋々ガレージから出て来るアスカ。
 踏まれた霜が、ざくり、音を立てる。
「お前のほうが子供だろ、いつまでも自分の事を『ボク』とか言っちゃってさ。男なら『オレ』って言えよな!」
<これは他人を敬った言い方なの。そういうのがわからないから、亮介は子供なんだよ>
 アスカが亮介を鼻で笑ってみせると、亮介の顔がみるみる真っ赤に染まっていく。それを見て、アスカが慌てて話題を逸らす。
<それよりも亮介、今回の仕事は?>
「おう、そうだった。この地点まで移動して、品物を預かってくれ」
 マナに情報を乗せて送る。
「あと、なんか急ぎらしいから、今回はお前ひとりで行ってくれって、親父が」
<そっか……わかった>
 背部の翼を開いて、飛翔する。
<じゃあ、とっとと行ってすぐに帰ってくる!>
「おう、待ってるなー!」
 手を振る亮介が小さくなっていく。
 見えなくなるまで高く昇ってから、方向転換し、目的地へ急ぐ。


 ♪  ♪  ♪


 何度もマップを確認して、指定された場所へと降りる。指定された場所は、暗い暗い森の中だった。
<確かに、ここだよね……>
 タチの悪い野良でも出て来るんじゃないかとびくびくしつつ、周囲を確認するが誰もおらず、代わりにコンテナがひとつだけ置いてあった。その上には、一枚の貼紙。
<何だろう、これ……>
 恐る恐る貼紙を見ると、それには赤い丸印が刻まれた地図と、その地点でこれを遺棄して欲しいという内容の文章が書かれていた。おそらくこれが依頼の品物だろう。
 それにしても、何故依頼主はいないのだろうか。
<品物をこんな所に置きっぱなしにして、無用心だなぁ>
 ぼやきながらも、長方形の頑丈なコンテナを持ち上げて再び飛翔。地図に書かれた場所に行って遺棄しようかとも思ったが、マナの残量が心配なので止しておく。
 ――――さあ、帰ろう。


 ♪  ♪  ♪


 家に帰ると、亮介とその家族はアスカを暖かく迎えてくれた。亮介からマナを貰って、ガレージのハンガーに身を預ける。
 依頼の完遂はひとまず明日にする事になって、今日も平和な一日が終わる……はずだった。
 ――――爆発音がしたのは、雪が降る真夜中の事だ。
 街と雪が火の光に照らされる。その光景は陰惨だが、ある種の美しさすらあった。
 逃げ惑う人々の悲鳴に、アスカがハンガーから身を起こす。
<一体、何が……。亮介、亮介は!?>
 亮介の家を見る。家の半分は何かに刔り取られ、一部は炎を上げて燃え、そして――――
<……ッ!>
「おい、こんな所にレアモノのフリューゲルがいるじゃねぇか」
 コートを着て、ボサボサの髪の毛を生やした男が、アスカを見て嬉しい悲鳴を上げた。傍らには、真っ赤な大般若型のオートマタ。
<……主よ、どうする>
「そうだな、目的のモンを入手するついでに、こいつもとっ捕まえるか。なるべく傷つけんなよ、長光」
<……御意>
 ナガミツと呼ばれたその機体が、重たい足取りでアスカに接近する。
<お、お前達か! この家を、この街をこんな風にしたのは!>
 恐怖から声が震える。
「ああ、そうだ。今日ここに大事なモンが運び込まれたらしいんでな、それを奪いに来た」
 淡々と男は語る。
「それでな、検問潜る時にちょっとヘマしちまってよ。だから応戦したらこうなった」
<そんな……そんな事が許されると思ってるのか!?>
「別に思ってねぇよ。俺は殺しが好きってだけさ」
 悪びれる事なく男が言った。同時に長光がアスカの首を掴んで、軽々と持ち上げる。
「ほら、大人しく言う事を聞け。そうすりゃ怖い目に遭わせるのだけは鑑別してやる」
<嫌だっ!>
 アスカがじたばたともがくが、長光の腕は微動だにしない。自分の無力さに腹が立った。
 畜生、畜生、畜生……!
 長光がアスカを崩れかけた家の壁に投げ付けた。衝撃と、何かが潰れる嫌な音。まさか、まさか――――
 自分の手を、恐る恐る覗き込む。その手は――――

 その手は、真っ赤に染まっていた。

 慟哭が、白と赤に染まった街に響き渡る。アスカは男と長光の背中を睨み、翼を開いた。
 奴らの狙いは、恐らくあのコンテナだ。ならばあのコンテナを奪って、せめて一泡噴かせてやる。
 ブースタ全開。瞬時に加速した機体が矢のように駆け抜け、ガレージに飛び込んだ。
 足からアンカーを出して、急ブレーキ。マナでも打ち消し切る事のできない負荷に足が火花と悲鳴を上げるが、そんなものは気にしない。
「こいつ……最後の抵抗って奴か!」
<うるさい!>
 コンテナを掴んで乱暴にそれをこじ開けると、中から黒い筒状の物体が落ちてきた。それを掴んだ腕を振り上げる。
「おい、そいつを寄越せ!」
<誰が! こんな物、壊れてしまえばいいんだ!>
 地面にそれを叩き付けようと腕を振り下ろす。しかし、筒状の物体を破壊する事は叶わなかった。何故ならば、物体が手と一体になっていたから。
<なっ……何だこれ!?>
「畜生、寄生しやがった!」
 それは右の手だけでなく、腕まで侵食していく。まるで液体が這い上がってくるかのように。
 肘の辺りまでで、それは侵食を停止した。そして、太い腕の形となったそれが脈打ち始める。
 自動的に腕が持ち上がり、そこにマナが集まっていく。わかる、わかるのだ、これの使い方が。
 右腕が、巨大な砲に変化した。
<主よ、指示を>
「よし、まずは――――」
 指示を出そうとした男のすぐ横を閃光が過ぎった。咄嗟に男は回避したが、男の左腕がそれに掠われ、消えていく。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!? 腕、腕がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 男が醜くのたうちまわった。それを見て、アスカが朦朧とした声で呟いた。
<動かないでよ……狙いが外れる……>
 暴れる男の前に、長光が割って入った。
<主、ここは退くべきです>
 しかし、そんな忠告を聞くような余裕は男にはなかった。当然と言えば当然だが。
 そうとわかると、すぐさま長光は脇の収納スペースからスタン・グレネードを取り出して投げ付けた。光が部屋中に充満し、視界がしばらくゼロになる。
 視界が晴れた時には、ガレージの中にはアスカしか残っていなかった。言うまでもなく、逃げられたのだ。
<逃げ……られ……た……>
 途端、とてつもない疲労感に襲われて膝をつく。
<ごめん、亮介、お父さん、お母さん……>
 皆と過ごしてきた日々が、脳裏を過ぎった。笑った顔、怒った顔、泣いた顔――――自分の血に染まった手を見て、それらはもう見る事ができないという事を痛感する。
 沸々と、怒りが込み上げてきた。
 カメラアイが、青から赤へと色を変える。
 仇は、討たねばなるまい。
 黄色かった身体が、ナノマシンの機能によってダークブルーに染まっていく。
<そのためなら、ボクは――――いや、>
 力を振り絞って立ち上がると、翼を開いて、ブースタにマナを集める。

<――――オレは、醜い夜鷹になったって構わない>


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