苦痛の表情を浮かべながら、ライオネルはゆっくりと義手を外した。地面に置かれると如何にも重い音がして、相当な重量である事が伺える。
壁際では、ライオネルが行っていた作業の一部を神威が腕組みしながら観察している。しかし特に興味がある様には見えない。。
ツナギのホックを胸元まで開け、火照った体を冷ましながらライオネルは、ポケットからクシャクシャになった煙草の箱を取り出した。
軽く揺らし、出てきた一本の煙草を咥えて、ライターで火を点ける。先っぽから浮かび上がる灰色の煙が、鈍く回転する換気扇から外へと消えていく。
ツナギのホックを胸元まで開け、火照った体を冷ましながらライオネルは、ポケットからクシャクシャになった煙草の箱を取り出した。
軽く揺らし、出てきた一本の煙草を咥えて、ライターで火を点ける。先っぽから浮かび上がる灰色の煙が、鈍く回転する換気扇から外へと消えていく。
<終わったか>
神威の問いに、ライオネルは煙草を口から離すと、めんどくさそうに返答した。灰が地面に少量、落ちる。
「あぁ、テストだ」
丁度良い程度に煙草が短くなるまで吸い、踏み潰して揉み消す。そしてライオネルは目の前で鎮座している、先日強奪したカルマスのオートマタ、レガシ―に視線を向けた。
レガシ―のカメラアイは暗く沈黙しており、とても動ける状態には見えない。とはいえ神威によって切断された各部は、手を施されたのか綺麗に修理されてはいるが。
レガシ―に近づき、一回、指を鳴らした。レガシ―に反応は―――――あった。
レガシ―のカメラアイは暗く沈黙しており、とても動ける状態には見えない。とはいえ神威によって切断された各部は、手を施されたのか綺麗に修理されてはいるが。
レガシ―に近づき、一回、指を鳴らした。レガシ―に反応は―――――あった。
沈黙していたカメラアイに、次第に緑色の淡い光が宿る。その光はカメラアイを覆っていくと、生気を取り戻したのか、レガシ―は自ら立ち上がった。
そして驚くべき事に、自らの敵である筈のライオネルに対して片膝を下ろし、冷淡な声で言った。
そして驚くべき事に、自らの敵である筈のライオネルに対して片膝を下ろし、冷淡な声で言った。
<ご命令を。マスター>
<成功、だな>
「今まで失敗した事が無いからな。流石はレファロ・グレイ。反吐が出るぜ」
「今まで失敗した事が無いからな。流石はレファロ・グレイ。反吐が出るぜ」
レガシ―を立たせたまま、修理の為に使用した工具と、レガシ―の頭部へと移植したチップが入っている、小さなボックスケースを片づける。
そのチップは先程ライオネルが蛍光灯に透かしていた、緑色の半透明なチップ――――その名はドールチップと言い、当然市場などには出回っていない、非合法な物だ。
大体片付け終わり、ライオネルはレガシ―に近づくと、頭部へと触れながら一言。
そのチップは先程ライオネルが蛍光灯に透かしていた、緑色の半透明なチップ――――その名はドールチップと言い、当然市場などには出回っていない、非合法な物だ。
大体片付け終わり、ライオネルはレガシ―に近づくと、頭部へと触れながら一言。
「戻れ」
瞬間、レガシ―はロボット体型から、球体へと戻る。ライオネルはどこからか蝶つがい式の大きな旅行カバンを持ちだしてきた。
カバンを開くと、様々な色やデザインが成された球体―――――オートマタが一つ一つ、コレクションの様に整理されて嵌めこまれている。
レガシ―を拾い上げ、その中へと加えようと手を伸ばす。が、何を思ったか、ライオネルは嵌めこまれているオートマタを次々と取り出し始める。
カバンを開くと、様々な色やデザインが成された球体―――――オートマタが一つ一つ、コレクションの様に整理されて嵌めこまれている。
レガシ―を拾い上げ、その中へと加えようと手を伸ばす。が、何を思ったか、ライオネルは嵌めこまれているオートマタを次々と取り出し始める。
<何をする気だ>
「どいつがどいつか分かんなくなっちまった。ちょっとした確認だ」
「どいつがどいつか分かんなくなっちまった。ちょっとした確認だ」
レガシ―含め、8体のオートマタを、ライオネルは宙へと放り投げた。
地面に落ちたオートマタが、ライオネルの周りでコロコロと転がっていく。二本目の煙草を取り出し、火を点ける。
数秒程旨みを味わい、煙草を口から離すと、ライオネルはオートマタに向かって、平坦な声で、言った。
地面に落ちたオートマタが、ライオネルの周りでコロコロと転がっていく。二本目の煙草を取り出し、火を点ける。
数秒程旨みを味わい、煙草を口から離すと、ライオネルはオートマタに向かって、平坦な声で、言った。
「パラべラム」
瞬間、8つのオートマタ全てが、ロボット体型へと変化した。全てのオートマタが、ライオネルに忠誠を誓う様に片膝を下ろし、指示を待つ。
形も色も、もちろんマスターさえ違うであろうオートマタが、全機ライオネルをマスターとして仰いでいる、異常な光景。
しかし一つだけ、共通点があった。全てのオートマタのカメラアイが―――――レガシ―と同じく、淡い緑色に発光している事だ。
形も色も、もちろんマスターさえ違うであろうオートマタが、全機ライオネルをマスターとして仰いでいる、異常な光景。
しかし一つだけ、共通点があった。全てのオートマタのカメラアイが―――――レガシ―と同じく、淡い緑色に発光している事だ。
<毎度の事ながら便利なものだな、ドールチップというモノは。この者全てが貴様の操り人形なんだろう?>
「あぁ。ドールチップが仕込まれたオートマタは、全ての記憶を強制的に抹消され、代わりに目の前の人間をマスターとして認識する様、プログラムを書き換えられる」
二本目の煙草を吸い終え、踏みつけて揉み消す。擦り切れていく煙草を見つめるライオネルの目に、暗く燃えたぎる炎が見える。
「本当に最高のくそったれだよ、お前の生みの親は。俺のやってる事全て、あいつの計算通りだと思うとな」
顔を上げ、ライオネルは軽く頬を叩くと、神威の方を見て、口元をニヤリとさせながら言う。
「そうだ、神威、次の獲物は少し楽しめるかも知れんぞ。何たって元傭兵でかつ、俺の同業者だからな」
<ほう……名は?>
「リヒト・エンフィールド」
「お前がこの前見た、あの赤毛の坊主だ」
ビューティフル・ワールド
the gun with the knight and the rabbit
「それじゃあ行ってきます、ルガ―さん。二人も準備出来たよね?」
「はい、遥さん」
「……あのー遥さん、俺が背負ってるリュックって何でこんな大きいんですか?」
「はい、遥さん」
「……あのー遥さん、俺が背負ってるリュックって何でこんな大きいんですか?」
隆昭の質問に、遥は数秒ほど考える素振りを見せると、ぱあっと明るいヒマワリみたいな笑顔で答えた。
「荷物が多いから、かな。それに鈴木君、男の子だから大丈夫だよね?」
「そっ、すね……男の子ですもんね……俺」
「そっ、すね……男の子ですもんね……俺」
今朝の報告通り、遥とリヒタ―、隆昭とメルフィーはレイチェルへと向かう。目的はやおよろずの面々から頼まれたお使いと、隆昭とメルフィーの社会科見学。
遥はともかく、隆昭とメルフィーも、それぞれカジュアルな私服に身を包んでいる。とはいえ、隆昭の背中にはリタから借りた、馬鹿デカイリュックサックがあるが。
隆昭は当初一応不満げな態度を見せたが、ルガ―から男の子だから頼むねという美しき筋肉アピールを兼ねた一言には断れず、渋々ながら荷物係を引き受けた。
遥はともかく、隆昭とメルフィーも、それぞれカジュアルな私服に身を包んでいる。とはいえ、隆昭の背中にはリタから借りた、馬鹿デカイリュックサックがあるが。
隆昭は当初一応不満げな態度を見せたが、ルガ―から男の子だから頼むねという美しき筋肉アピールを兼ねた一言には断れず、渋々ながら荷物係を引き受けた。
「なるべく夕食までには戻ってくるんだよ。すぐ暗くなるし、例の事件の事もあるから」
「はい! それじゃあ行ってきまーす!」
<行ってまいります>
「はい! それじゃあ行ってきまーす!」
<行ってまいります>
「気を付けてね」
ルガ―が言ったそばから、遥がステーンとベタに転んだ。しかし元気に立ちあがり、隆昭とメルフィーと共にレイチェルへと歩き出す。
身長差のせいか、ルガ―から見ると遥が一番年上とはとてもじゃないが思えない。まるで高校生の間ではしゃぐ小学生……は少し言い過ぎか。
次第に遠くなっていく三人を苦笑交じりに見送り、ルガ―は自分の仕事へと戻る。
身長差のせいか、ルガ―から見ると遥が一番年上とはとてもじゃないが思えない。まるで高校生の間ではしゃぐ小学生……は少し言い過ぎか。
次第に遠くなっていく三人を苦笑交じりに見送り、ルガ―は自分の仕事へと戻る。
<全く……騒がしい連中……だ……Zzz>
日なたでは、昼寝でもしているのか杖状態の玉藻がぶつぶつと寝言を言っている。
そんな玉藻、もといたまちゃんを見ながら、ルガ―は思う。今日も一日、平和でありますようにと。
日なたでは、昼寝でもしているのか杖状態の玉藻がぶつぶつと寝言を言っている。
そんな玉藻、もといたまちゃんを見ながら、ルガ―は思う。今日も一日、平和でありますようにと。
「すごーい! けど正直……キモいです」
「その反応は至極正常よ、リタちゃん」
「その反応は至極正常よ、リタちゃん」
4本の丸っこい脚部から引き出された、異様に細長い、2メートル程伸縮させたフレームを手足の様に使い、ラチェット達がガレージへとヴィルティックのパーツを運んでいく。
玩具の様なファンシーな外見のラチェットではあるが、脚部だけが枝切りバサミの如く伸びて車輪で動いているその様子は、偉くアンバランスで可愛いというより気持ちが悪い。
とはいえ動きは機敏であり、ヴィルティックの左腕を、ガレージのスペースを考えながら手際良くパーツを接合しつつ配置していく。
やがてすっぽりと、ガレージに丸々一本左腕が収まった。
玩具の様なファンシーな外見のラチェットではあるが、脚部だけが枝切りバサミの如く伸びて車輪で動いているその様子は、偉くアンバランスで可愛いというより気持ちが悪い。
とはいえ動きは機敏であり、ヴィルティックの左腕を、ガレージのスペースを考えながら手際良くパーツを接合しつつ配置していく。
やがてすっぽりと、ガレージに丸々一本左腕が収まった。
「お疲れ様。また運んでもらう時に呼ぶわ」
スネイルが声を掛けると、ラチェット達は脚部を縮めて、カードへと戻った。
スネイルが声を掛けると、ラチェット達は脚部を縮めて、カードへと戻った。
スネイルによるとラチェット達は自分達が朝食を取っている間、修理出来る様、ヴィルティックを各パーツごとにに分解してくれたらしい。
その分解っぷりは見事なもので、必要ならばすぐに接合できるほどブロックごとに綺麗に分解されている。腕ならば手・肘・肩、脚ならば脚・太腿といった具合に。
ただしスネイルによるとラチェット達がどのように分解したかは、ちょっと教えられないらしい。色々と企業秘密だそうだ。
その分解っぷりは見事なもので、必要ならばすぐに接合できるほどブロックごとに綺麗に分解されている。腕ならば手・肘・肩、脚ならば脚・太腿といった具合に。
ただしスネイルによるとラチェット達がどのように分解したかは、ちょっと教えられないらしい。色々と企業秘密だそうだ。
ライディ―スとリタに聞きたかった事は、無論全部では無いにしろ、その分解したパーツを、ガレージに入れる事は出来るか? という質問だ。
スネイルの質問に二人は少し悩んだものの、オートマタが入るガレージである故、パーツ一つくらいは入るだろうという事で許容してくれた。
それどころかリタはスネイルに力こぶを作って鼻を鳴らすと、自信満々な態度でこう言った。
スネイルの質問に二人は少し悩んだものの、オートマタが入るガレージである故、パーツ一つくらいは入るだろうという事で許容してくれた。
それどころかリタはスネイルに力こぶを作って鼻を鳴らすと、自信満々な態度でこう言った。
「任せて下さいスネイルさん! 私とライディースさんの力があれば、4日で直してみせますよ!」
「リタちゃん!? ちょ、4日は幾らなんでも無茶じゃないかな?」
「流石リタちゃん! とライ君。それじゃあ4日で仕上げましょう。貴方達の力、頼りにさせて貰うわ」
「はい! 任せて下さいよ!」
「ちょ、俺の意見は!? てかスネイルさんまで……はぁ……」
「流石リタちゃん! とライ君。それじゃあ4日で仕上げましょう。貴方達の力、頼りにさせて貰うわ」
「はい! 任せて下さいよ!」
「ちょ、俺の意見は!? てかスネイルさんまで……はぁ……」
と、いう会話を交わし、ヴィルティックを4日間で元の状態にまで修復する事をリタは約束した。ライディースの意思は、あってない様なものである。
「にしてもガレージを貸してくれてホントに助かるわ。けど本当に良いの?」
「貴方達の仕事の支障にならないか、心配なんだけど」
スネイルがそう聞くと、ライディースはリタと視線を合わせた。二人の間に、小さく火花が舞っている、様に見える。
二人はしばしその小さな火花をぶつけあうと、根負けしたのか、ライディースが小さくため息をついて、微妙に言いづらそうに返答した。
二人はしばしその小さな火花をぶつけあうと、根負けしたのか、ライディースが小さくため息をついて、微妙に言いづらそうに返答した。
「何と言えば良いのか……ガレージフルに使う様な仕事……無いんですよね。恥ずかしながら全く」
「あら……そう。ごめんなさい、悪い事を聞いて」
「あら……そう。ごめんなさい、悪い事を聞いて」
「話には聞いてたけどまじかに見ると凄いな、こりゃあ」
ヘ―シェンを連れ外に出たリヒトが、目の前に横たわるルヴァイアルを見、ポカンと口を開けてそう言った。
スネイルの話は正直冗談半分に聞いていたが、実際に見てみると驚くほか無い。それほど、目の前の赤く巨大なロボットはリヒトの想像以上に迫力がある。
スネイルには前もって許可を取ってあるので、近づいてみて装甲に触れてみる。ひんやりとした感触が伝わってきて、リヒトは感嘆の息を漏らした。
スネイルの話は正直冗談半分に聞いていたが、実際に見てみると驚くほか無い。それほど、目の前の赤く巨大なロボットはリヒトの想像以上に迫力がある。
スネイルには前もって許可を取ってあるので、近づいてみて装甲に触れてみる。ひんやりとした感触が伝わってきて、リヒトは感嘆の息を漏らした。
「こんなのに乗って戦ってきたんだよな、スネイル達は」
<どんな感じなんでしょうね。自分より大きいロボットに乗って戦うのって>
<どんな感じなんでしょうね。自分より大きいロボットに乗って戦うのって>
ヘ―シェンが口にした言葉に、リヒトはうーむと分かりやすい動作で唸ると、言った。
「そうだなぁ……ヒーロー、って感じなんじゃないか? こんなデカイのを自由に操れるんだ。気が大きくなっても、いやむしろ、気が大きくなるのが自然だと思うぞ」
<そーですかねー……。あくまで私の視点から見たらの話ですが>
<そーですかねー……。あくまで私の視点から見たらの話ですが>
<タカ坊、というか鈴木君、これに乗ってる事について、自分から何も話さないじゃないですか。って事は、ホントはこれに乗りたくないんじゃないですか?>
「そうかぁ? 俺が隆昭の立場なら鼻が高くなるぞ。こんな巨大ロボットに乗って戦うなんて男の子の夢じゃないか、なぁ?」
<なぁって……誰に同意を求めてるんですか? まぁそれは置いといて。今日の夕食の時にでも聞いてみたらどうでしょうか。彼に>
「聞いてみたらって何を?」
<だからヴィルティックに乗っててどんな事を考えてるかとか、どんな戦いしてきたのかとか、そういう事を>
「そうかぁ? 俺が隆昭の立場なら鼻が高くなるぞ。こんな巨大ロボットに乗って戦うなんて男の子の夢じゃないか、なぁ?」
<なぁって……誰に同意を求めてるんですか? まぁそれは置いといて。今日の夕食の時にでも聞いてみたらどうでしょうか。彼に>
「聞いてみたらって何を?」
<だからヴィルティックに乗っててどんな事を考えてるかとか、どんな戦いしてきたのかとか、そういう事を>
「……わーったよ。けど答えてくれっかなぁ、隆昭」
<何でです?>
「あの子と微妙に波長が合わない気がすんだよなぁ……俺」
<何でです?>
「あの子と微妙に波長が合わない気がすんだよなぁ……俺」
「にしても大迫力だ……」
作業しやすい様、天井から大量のハンガーに吊るされたヴィルティックの左腕を見て、ライディースは今更ながらしみじみと驚く。
作業しやすい様、天井から大量のハンガーに吊るされたヴィルティックの左腕を見て、ライディースは今更ながらしみじみと驚く。
今まで仕事してきた中で、これほど大きな物を修理するのは初めてだ。これは気合いを入れて修理に取り掛からなきゃな……と思い、両頬を軽く叩いた。
矢先、既にスネイルとリタは修理に取り掛かっている。二人とも何時の間にか作業着に着替えており、尚且つ腰にはやる気満々と言った感じで工具が掛けられている。
リタは何時ものツナギを半脱ぎし、黒いタンクトップを露出させたスタイルに、スネイルは自前なのか、赤い色の無駄に胸元が強調されたツナギを着ている。本当に準備が早い。
矢先、既にスネイルとリタは修理に取り掛かっている。二人とも何時の間にか作業着に着替えており、尚且つ腰にはやる気満々と言った感じで工具が掛けられている。
リタは何時ものツナギを半脱ぎし、黒いタンクトップを露出させたスタイルに、スネイルは自前なのか、赤い色の無駄に胸元が強調されたツナギを着ている。本当に準備が早い。
「ってちょっとちょっと! スネイルさん何か説明とかないんですか!? オートマタと全然勝手が違うんですけど!」
「ライディースさん何やってるんですか! 既にタイムリミットは切っているんですよ! 一刻の猶予も無いんです!」
「リタちゃんの言う通りよ、ライ君。時間は待ってもくれないし遅くもなってくれないのよ。私達は時間に負けないように常に走ってなきゃいけないの」
「……何ちょっと私良い事言ったみたいなどや顔してるんですか! ……あ―もう。分かりました。やりますよ、やります」
「ライディースさん何やってるんですか! 既にタイムリミットは切っているんですよ! 一刻の猶予も無いんです!」
「リタちゃんの言う通りよ、ライ君。時間は待ってもくれないし遅くもなってくれないのよ。私達は時間に負けないように常に走ってなきゃいけないの」
「……何ちょっと私良い事言ったみたいなどや顔してるんですか! ……あ―もう。分かりました。やりますよ、やります」
最早突っ込みし切れない二人に呆れながらも、ライディースも修理に取り掛かる。
「にしてもオートマタと……ん?」
修理をしながら、ライディースは次第に気付いていく。確かにオートマタとは装甲も駆動系統も全く違う。
違うが……意外な事に、自然と何をどう直せば良いかが手に取る様に分かる。単純な事だ。
焼け焦げた装甲を剥がしたり、駆動系のチューブを交換したりとやる事は変わらない。
どうやらライディースが危惧していた、こっちの世界のノウハウが通用しないという事は無さそうだ。
違うが……意外な事に、自然と何をどう直せば良いかが手に取る様に分かる。単純な事だ。
焼け焦げた装甲を剥がしたり、駆動系のチューブを交換したりとやる事は変わらない。
どうやらライディースが危惧していた、こっちの世界のノウハウが通用しないという事は無さそうだ。
「驚いたでしょう? オートマタの修理と殆ど変らなくて」
上から顔を覗かしたスネイルが、悪戯っ気に満ちた笑顔でライディースに聞いた。ライディースは軽く頷き、答える。
「えぇ。オートマタで培ったノウハウが通用するのかと思って戦々恐々としてましたが、殆ど同じで驚きました」
「でしょ? 原動力とかの違いはあれど、構造自体は多分オートマタと変わらないのよ。同じ人型だしね」
「でしょ? 原動力とかの違いはあれど、構造自体は多分オートマタと変わらないのよ。同じ人型だしね」
額から流れる汗を腕で拭い、スネイルは言葉を続ける。
「多分だけど、貴方達に教えて貰えるなら私、オートマタも直せると思うな。
それぐらい、私達のロボットであるアストライル・ギアと貴方達の世界のオートマタは同じって事ね。ロボットという共通点だけでなく」
それぐらい、私達のロボットであるアストライル・ギアと貴方達の世界のオートマタは同じって事ね。ロボットという共通点だけでなく」
「けどスネイルさんスネイルさん。確かに構造自体は同じかも知れませんが、ここまで直し方が同じなのもなんか変ですよね。だって全く違う世界のロボットなのに」
珍しく、リタが真面目な顔つきで、スネイルにそう言った。ライディースも同じ疑問を感じたのか、スネイルに真摯な視線を向ける。
スネイルは少し考える様にスパナを肩たたき宜しく肩にトントンと当てると、学校の先生の様な口調で答える。
スネイルは少し考える様にスパナを肩たたき宜しく肩にトントンと当てると、学校の先生の様な口調で答える。
「まぁ……アストライル・ギアもオートマタも同じ人間が作ったロボットって事だと私は思う。
だから別の世界でも同じ様に修理できる。これって、何気に凄い事だと思わない? 別の世界のロボットが、同じ様に修理できるって」
だから別の世界でも同じ様に修理できる。これって、何気に凄い事だと思わない? 別の世界のロボットが、同じ様に修理できるって」
スネイルの言葉に、リタが深く同意する。ライディースも深くは無いが、確かに小声で呟き頷いた。
「でも……逆に考えるとこうとも言えるわね」
「人間が作りし物なら、どんな世界の物であれ、人間の手で壊せるって」
やおよろずから続く、風に瞬く麦畑の緑の海を抜けて、三人はレイチェルへと辿り付いた。鮮やかに塗装されたゲートが、三人を迎え入れる様にそびえる。
ゲートから覗く景色は、長く長く続く石畳みの道路に、軒を連ねている色彩豊かな家々。まるで城下町の様だ。
各々の家から見える、窓から窓へと掛けられた洗濯物が、人々の生活感を感じさせる。雑多ながらも御洒落な街、レイチェル――――を一目見、メルフィーは言った。
ゲートから覗く景色は、長く長く続く石畳みの道路に、軒を連ねている色彩豊かな家々。まるで城下町の様だ。
各々の家から見える、窓から窓へと掛けられた洗濯物が、人々の生活感を感じさせる。雑多ながらも御洒落な街、レイチェル――――を一目見、メルフィーは言った。
「何だろう……何となく見覚えが……。思い出した。イタリアの町みたいです」
「イタ……リア? メルフィー……イタリア行った事あるのか?」
「短期留学で少しですけど……ね」
「イタ……リア? メルフィー……イタリア行った事あるのか?」
「短期留学で少しですけど……ね」
外国に一回も行った事の無い隆昭にとって、メルフィーのその言葉は軽くショックだった。
遥といえば誰かを探しているのか、キョロキョロとしている。と、その相手を見つけたのか、大きく手を振って声を上げた。
遥といえば誰かを探しているのか、キョロキョロとしている。と、その相手を見つけたのか、大きく手を振って声を上げた。
「トビ―さーん!」
遥に名前を呼ばれたその男が、紙袋片手にリンゴをワイルドにかじってこちらに歩いてくる。その男の容姿に、隆昭は少々ドギマギする。
ルガ―程ではないが、逞しく盛り上がった筋肉に厳つい風貌。その男を一言で表すのなら筋骨隆々。そんな男―――ートビ―と言ったか。
トビ―が、遥に向かって白い歯が眩しいにこやかな笑顔で話しかけてきた。
ルガ―程ではないが、逞しく盛り上がった筋肉に厳つい風貌。その男を一言で表すのなら筋骨隆々。そんな男―――ートビ―と言ったか。
トビ―が、遥に向かって白い歯が眩しいにこやかな笑顔で話しかけてきた。
「お、遥ちゃんじゃないか。今日は買い物かい?」
「こんにちは~、トビ―さん、ちょっと買い物と色々……ですね。それでリヒタ―の通行許可が欲しくて」
そう言いながら、遥はリヒタ―こと、持っている杖を見せた。トビ―はリンゴを半月ほど食べると、二つ返事で遥の申し出を了承する。
と、トビ―の視線は遥の後ろに居る隆昭とメルフィーに移った。普段見慣れない顔だろうし、気になるのだろう。
と、トビ―の視線は遥の後ろに居る隆昭とメルフィーに移った。普段見慣れない顔だろうし、気になるのだろう。
「遥ちゃんの頼みなら勿論構わないさ。で……後ろの二人は?」
まずい、と隆昭は思った。一応やおよろずに就職した新人とでも説明すれば良いのだろうが、もしも根掘り葉掘り聞かれた場合、非常に困る。
何たってこの世界に来て三日も経ってないのだ。どうする……どう答えれば……と困っている矢先。
何たってこの世界に来て三日も経ってないのだ。どうする……どう答えれば……と困っている矢先。
「昨日新しく雇った新人さんです。まだ色々と慣れてないので、買い物がてら色々教えようかと」
た、助かった……と隆昭はほっと胸を撫で下ろした。その横でメルフィーが隆昭の表情を不思議そうに見つめる。
「ほー……って事は遥ちゃんが先輩か。こりゃあしっかりと先輩らしくしないとね」
「あ……」
「あ……」
トビ―に言われて遥は何となく気付く。そうか……今の私は二人に対して先輩なんだ。この世界に対して教える為の。
そう思うと自然に遥の体に力が入る。何故だか分からないが、がぜんやる気が出てきた。ビシッと胸を張りたい気分になる。
そう思うと自然に遥の体に力が入る。何故だか分からないが、がぜんやる気が出てきた。ビシッと胸を張りたい気分になる。
「それじゃあ持ち場に戻るから、また見かけたら声掛けてよ。んじゃ」
「はい! 有難うございます!」
「はい! 有難うございます!」
胸を張り、遥は普段の三倍くらい元気にお礼を言った。しかし、幾ら胸を張っても無いモノは無い。
トビ―のグッドルッキングサムズアップに見送られながら、遥達一行は、レイチェルへと足を踏み入れていく。
トビ―のグッドルッキングサムズアップに見送られながら、遥達一行は、レイチェルへと足を踏み入れていく。
明るい陽気の元、行列を組んだ様々な屋台が店を構えている。店の種類は多く、食糧品から雑貨、果ては得体の知れない武器まで異様に幅広い。
左右で商売人と客が愉快な会話をしながら買い物を楽しんでいる様子は、見てて楽しくなる。
皆、微塵の陰気臭さも感じさせない明るい笑顔を振りまいているのも、その一環だろう。
左右で商売人と客が愉快な会話をしながら買い物を楽しんでいる様子は、見てて楽しくなる。
皆、微塵の陰気臭さも感じさせない明るい笑顔を振りまいているのも、その一環だろう。
隆昭はそんな屋台の様子を見ながら、ふっと呟いた。
「……明るいな、皆。見てるこっちまで元気が貰えそうなくらい」
「凄い活気に溢れてますよね。それに……楽しそうです」
「凄い活気に溢れてますよね。それに……楽しそうです」
と言いながらも、隆昭とメルフィーの顔は若干暗い。やはり全く別の世界に居るという事実が、無意識に二人を緊張させているのだろう。
<これからどうなされるのですか? マスター。先程、色々教えると仰りましたが……>
リヒタ―に呼ばれ、遥は顔を向けた。遥は何か考えがあるらしく、リヒタ―にウインクして答える。
リヒタ―に呼ばれ、遥は顔を向けた。遥は何か考えがあるらしく、リヒタ―にウインクして答える。
「一応お使いではあるけど……ルガ―さんに二人がある程度この生活に慣れる様に、二人が行きたい場所に行っても良いって言われたの」
「だからリヒタ―、ちょっと付き合って貰うけど、良い?」
「だからリヒタ―、ちょっと付き合って貰うけど、良い?」
<イエス、マイマスター>
「有難う、リヒタ―」
「有難う、リヒタ―」
そう言って遥はリヒタ―に明るく微笑み、立ち止まると振り返った。そして、二人に言う。
「鈴木君、メルフィーちゃん、どこか行ってみたい所はある? 二人が行きたい所があれば案内するよ」
隆昭とメルフィーは遥の提案に顔を見合わす。隆昭が申し訳無さげに聞く。
「……良いんですか? お使いを先に済ませた方が……」
「大丈夫! ルガ―さんにはちゃんと言ってあるから。遠慮しないでじゃんじゃん言ってよ」
「大丈夫! ルガ―さんにはちゃんと言ってあるから。遠慮しないでじゃんじゃん言ってよ」
そう言って、遥は無い胸を張った。隆昭とメルフィーは互いに一分ほど考えると、遥に伝える。
「本屋さんに行ってみたいですかね……この世界の事を知りたいんで
「本屋さん……ですね。少しでも知識を得たいんで」
「本屋さん……ですね。少しでも知識を得たいんで」
ほぼ同時に、二人の意見がピッタリと合った。互いに予想が付かなかったのか、二人は驚いた顔を見合わせた。
どうやら全く同じ事を思っていた様だ。遥は二人の行動に軽くパチパチと拍手すると、リヒタ―を背中に回して、言った。
どうやら全く同じ事を思っていた様だ。遥は二人の行動に軽くパチパチと拍手すると、リヒタ―を背中に回して、言った。
「それじゃあ本屋さんできまりだね」
レイチェルで最も大きいと言われる本屋―――――シャン・グリラ。噂では、読みたいと思った本は大概、このシャン・グリラにあると言われている。
1階から3階まで吹き抜けとなっていて、各フロアにはズラリと、ジャンル毎に本が揃えられている。なお、建物の形状上、移動の際には螺旋階段を使う。
隆昭とメルフィー、遥とリヒタ―は一旦ここで別れる。遥は一階で、二人を待つ事にする。
1階から3階まで吹き抜けとなっていて、各フロアにはズラリと、ジャンル毎に本が揃えられている。なお、建物の形状上、移動の際には螺旋階段を使う。
隆昭とメルフィー、遥とリヒタ―は一旦ここで別れる。遥は一階で、二人を待つ事にする。
「それじゃあ私は一階にいるから呼びに来てね。お金はいる?」
「いえ、大丈夫です」
「そっか。じゃ、また後でね」
「そっか。じゃ、また後でね」
遥と別れ、隆昭とメルフィーはこの世界について少しでも知る為に、二階にあるという歴史のコーナーへと出向く。
大量にある本棚の本から、適当に厚そうな一冊を取り出す。一先ず何でも良いから、この世界について知りえる情報を会得しなくては。
と、さっきまで全く疑問に思っていなかったが疑問が、隆昭の頭をよぎる。
もしこの世界が独特の言語で通じ合っていて、なおかつ本がそういう風に書かれていたら?
そしたら全く自分達は本が読めないじゃないかと。ここに来た意味が……というか、この世界について知る事が出来なくなってしまう……。
そう不安に感じて、メルフィーに声を駆けようとした、が。
もしこの世界が独特の言語で通じ合っていて、なおかつ本がそういう風に書かれていたら?
そしたら全く自分達は本が読めないじゃないかと。ここに来た意味が……というか、この世界について知る事が出来なくなってしまう……。
そう不安に感じて、メルフィーに声を駆けようとした、が。
「隆昭さん、ちょっと良いですか? この本なんですけど」
メルフィーはそう言いながら、本を広げて隆昭の方へと近づいて来た。あれ? 普通に読めるの? そう思って手元の本を開けると、全部日本語だった。
……もしかしたら変に疑り深いビビりな自分より、メルフィーの方がずっと逞しいんじゃないか。そう思うと、隆昭は自分自身が偉く情けなく感じてきた。
まぁ考えてみれば言語が通じてるし……あぁ、何かこういう映画があったなぁ。全く違う世界だと思ったら実は地球だったって奴。猿の
メルフィーはそう言いながら、本を広げて隆昭の方へと近づいて来た。あれ? 普通に読めるの? そう思って手元の本を開けると、全部日本語だった。
……もしかしたら変に疑り深いビビりな自分より、メルフィーの方がずっと逞しいんじゃないか。そう思うと、隆昭は自分自身が偉く情けなく感じてきた。
まぁ考えてみれば言語が通じてるし……あぁ、何かこういう映画があったなぁ。全く違う世界だと思ったら実は地球だったって奴。猿の
「隆昭さん?」
「あ、あぁ、ごめん。えっと、何処のページだっけ」
「あ、あぁ、ごめん。えっと、何処のページだっけ」
色んな意味で惚けていた隆昭だが、メルフィーの呼びかけにハッとする。雑念を拭う為に軽く頭を振り、隆昭はメルフィーから本を受け取って読んでみる。。
「何々……かつてこの世界は……」
読みながら、隆昭は次第に掌に汗が滲んでいくのを感じる。その本が記していたのは、この世界に起きた、歴史。
かつて、この世界は高度な文明が栄えていた。が、世界に突如として起こった―――――「何か」によって、世界は成す術なく崩壊してしまった。
やがて月日が立ち、生き残った人々は崩壊した世界を立て直すべく立ち上がった。世界を再建するのは並大抵の事では無かった。無かったが。
人々は再び立ち上がる事が出来た。世界は「何か」の傷跡を多少残しながらも、「何か」が残した、偉大なる正の遺産によって、世界を再建する事が出来た。
その遺産の名は―――――――――。
やがて月日が立ち、生き残った人々は崩壊した世界を立て直すべく立ち上がった。世界を再建するのは並大抵の事では無かった。無かったが。
人々は再び立ち上がる事が出来た。世界は「何か」の傷跡を多少残しながらも、「何か」が残した、偉大なる正の遺産によって、世界を再建する事が出来た。
その遺産の名は―――――――――。
「オート……マタ」
まるで胸を撃ち抜かれた様な衝撃を、隆昭は感じる。のどかで、争い事とは無縁そうな様に見えたこの世界に、そんな過去があったなんて、と。
……だけど。だけどだ。やおよろずの人達は、町の人達は少しでもその過去に関して暗い影を見せたか? 否、皆前向きに、かつ明るく人生を謳歌している。
……だけど。だけどだ。やおよろずの人達は、町の人達は少しでもその過去に関して暗い影を見せたか? 否、皆前向きに、かつ明るく人生を謳歌している。
……それに比べて俺は……。
「……私達が思っているよりずっと、やおよろずの方達は、辛い経験をして来たのかもしれませんね」
メルフィーの言葉に、隆昭は頷いた。だが……だがしかし、と隆昭は思う。
「……だけどさ、メルフィー」
「遥さん……いや、やおよろずの人達も、町の人達も皆底抜けに明るいじゃないか。過去なんて気にしない、そんな感じでさ」
自然に、メルフィーと目が合う。メルフィーは何も言わず、隆昭の目を見つめて、隆昭の言葉を待つ。
「俺……もうちょっとやおよろずの人達と仲良くなってみる。上手く会話できないかもしれないけど、少しでも仲良くなってみたいんだ」
「出来ますよ」
メルフィーは顔を綻ばすと、優しい笑顔を浮かべて、言葉を紡ぐ。
「私も、遥さんやまどかさん……いえ、やおよろずの方達と、仲良くなりたいですから」
「だから……隆昭さんもきっと仲良くできます。信じてますから、私」
「……ありがとう、メルフィー」
「……ありがとう、メルフィー」
何故だか顔が赤くなるほど、隆昭は今の瞬間を恥ずかしく感じる。けど、メルフィーが居てくれて良かったと、心から思う。
その思考の片隅でふっと、隆昭は思う。
その思考の片隅でふっと、隆昭は思う。
―――――――とはいえ、今の自分にやおろよずの人達と、仲良くなる資格があるのか、と。
「面白そうな本無いなぁ……」
そう呟きながら、遥は本棚を行ったり来たりする。どうも自分の興味をそそる本が見つからない。
どうせだから料理の本でも見に行こうかな―――――と思った瞬間、誰かと思いっきり頭からぶつかった。
そう呟きながら、遥は本棚を行ったり来たりする。どうも自分の興味をそそる本が見つからない。
どうせだから料理の本でも見に行こうかな―――――と思った瞬間、誰かと思いっきり頭からぶつかった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
「きゃっ!」
周辺に多くの本がバラバラと散らばった。遥は慌てて、落ちた本を拾う。拾いながら、ぶつかった相手に謝罪する。
「ご、ごめんなさい! ちょっとボーっとしちゃってて……」
「ううん、私が前をちゃんと見てなかったから……」
「いえ、私が……」
「ううん、私が前をちゃんと見てなかったから……」
「いえ、私が……」
と、遥は顔を上げて―――――息を、飲んだ。
そこには、白いワンピースを着、綺麗な白髪を垂らした少女が、自分と同じく本を拾っていた。
その少女は奇妙な雰囲気があり、遥にはその少女が自分より幼くも見え、しかし自分よりも年上にも見える。
しかし遥を注視させたのは、その白髪の間から覗く、瞳だ。
その少女は奇妙な雰囲気があり、遥にはその少女が自分より幼くも見え、しかし自分よりも年上にも見える。
しかし遥を注視させたのは、その白髪の間から覗く、瞳だ。
透き通った琥珀色のその瞳は、深く澄んでいて、また、宝石のような神秘的な美しさを感じる。遥は少女の瞳に見惚れていた。
「……貴方、名前は?」
少女が遥に、名前を聞いた。ハッとして、遥は慌てて少女に自分の名前を伝える。
「一条……一条遥です」
「一条遥……覚えやすい名前ね。私、リシェル」
「リシェル・クレサンジュ。貴方も――――本、好きなの?」
――――――所変わり、やおよろずから遠く離れた、しかしレイチェルとも近くない、草原。
かつてこの世界で起こった「何か」の残骸であろう、建造物に隠れて、女性は腰を下ろし、静かに目を瞑っている。
空は快晴。太陽が作る心地の良い陽だまりの中で、女性は少しづつ目を開けると、大きくあくびをして背を伸ばした。
かつてこの世界で起こった「何か」の残骸であろう、建造物に隠れて、女性は腰を下ろし、静かに目を瞑っている。
空は快晴。太陽が作る心地の良い陽だまりの中で、女性は少しづつ目を開けると、大きくあくびをして背を伸ばした。
「流石に徒歩は厳しかったな……まぁ、これも鍛錬のうちだ」
厳しいなんてものではない。女性が車から降りた場所から、目的地である何でも屋―――――やおよろずまで、徒歩で丸1日半程も掛かる。
普通に考えて列車で行くのが常套手段だが、女性は自らの鍛錬のために、わざわざ歩いて、やおよろずへと向かっているのだ。
昨日から1日歩きっぱなしで、丁度良い感じの草原があったので少しばかり眠っていた。これから歩き出せば、明日の昼ごろ位には、やおよろずに到着するだろう。
普通に考えて列車で行くのが常套手段だが、女性は自らの鍛錬のために、わざわざ歩いて、やおよろずへと向かっているのだ。
昨日から1日歩きっぱなしで、丁度良い感じの草原があったので少しばかり眠っていた。これから歩き出せば、明日の昼ごろ位には、やおよろずに到着するだろう。
と、雑音にも似た不快な感覚を感じ、女性は振り向いた。
何時の間に、数機の野良オートマタが、自分に向かって敵意を振りまきながら、
女性はめんどくさそうに膝に掛けていたダッフルコートを肩に背負うと、胸元から聖書を取り出した。
そして聖書を開くと、野良オートマタ達に向けて、言った。
女性はめんどくさそうに膝に掛けていたダッフルコートを肩に背負うと、胸元から聖書を取り出した。
そして聖書を開くと、野良オートマタ達に向けて、言った。
「ちょうど鈍ってた所だ。気の毒だが――――――潰させて貰うぞ」
「パラべラム!」
女性が空中へと聖書を放り投げた瞬間、黒と白の光が、聖書を包み込む。
女性は俯いて、自らの目に入った蒼色のコンタクトレンズを取り出し、専用のケースにしまう。正面を向き、野良オートマタを見据える女性の両目は―――――。
琥珀色、だった。
琥珀
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