闇。
底の見えぬ闇。
頭上から照らすは冥き太陽。進む道は見えず、帰る道も見えず
そして永劫とも思える逃走。殺戮。孤独。
だが銀の瞳は揺るがない。
銀の甲冑はただ冷たく、銀の残光を追う者達は銀の力により皆潰えた。
銀の私はかの者の残滓。
銀の甲冑はただ冷たく、銀の残光を追う者達は銀の力により皆潰えた。
銀の私はかの者の残滓。
イグザゼン
それは世界の力。脅威。憎悪。あるいはそれその物。
「破壊」のロストフェノメオン。
私が託されたモノ。届けるべきモノ。私の使命。
私の、私の
――「存在意義」
「――!?」
光?
遠く瞬き、近く輝く
――誰かがいる。
おぼろげなそれ。だが確かにそこには誰かがいる。
今にも消え行きそうなそれ。だがその姿に私は妙な既視感を感じた。
遠い遠いどこかに置き忘れた、かけがえの無い大切な何か。その姿に光は――
今にも消え行きそうなそれ。だがその姿に私は妙な既視感を感じた。
遠い遠いどこかに置き忘れた、かけがえの無い大切な何か。その姿に光は――
届く事のない思考。遠く、遠く、あまりにも遠い光。
少女がその境地に至るには、まだ足りないものがあまりにも多すぎた。
故に知らぬ。故に識らぬ。その果てに、その向こうに、セカイの果てにある真実を。
少女がその境地に至るには、まだ足りないものがあまりにも多すぎた。
故に知らぬ。故に識らぬ。その果てに、その向こうに、セカイの果てにある真実を。
eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― Act.2
「ん、ん……」
彼女が意識を取り戻し、最初に見たものは少し汚れた白い天井。
次に、私の顔を覗く4つの影だった。
次に、私の顔を覗く4つの影だった。
「お、気がついた?」
彼女の身体に障ると思ってか小声で言うディー。酷く疲れているような顔をしているが触れてあげない方が彼の為である。
「ここは……?」
「おっとっと、焦らんでもええ……ここはリングダム・メカニズム。ジャンクヤード012「スチームヒル」の郊外で機械整備工を商っておる。」
「おっとっと、焦らんでもええ……ここはリングダム・メカニズム。ジャンクヤード012「スチームヒル」の郊外で機械整備工を商っておる。」
いきなり起き上がろうとする少女をなだめ、寝かせるバール。
「しかし驚いたのぉ……空がいきなりピカッ!と光ったと思ったら上の階からベルの怒声とディーの悲鳴が聞こえてくるんじゃもの。何事かと駆けつけてみればベルに
サブミッション極められとるディーとベッドに見た事もない可愛い子がいると言う有様……事態のワケの分からなさでは70年生きてきた中でも最上位かも知れんのぉ。」
「だからバール!いらない事まで言わなくてもいいってばぁ!」
サブミッション極められとるディーとベッドに見た事もない可愛い子がいると言う有様……事態のワケの分からなさでは70年生きてきた中でも最上位かも知れんのぉ。」
「だからバール!いらない事まで言わなくてもいいってばぁ!」
いつも通りふぉっふぉっふぉっと蓄えた白髭を撫でつつ愉快愉快と笑うバールと顔を赤くして文句を言うベル。
「ベル姉ちゃんもディー兄ちゃんの言い分もっと聞いてあげたらよかったのに……」
「だってあれでこうであんな状況だったらそれしか思いつかないでしょうが!……ま、まぁ問答無用で極めにかかったのは悪かったわ……ご・め・ん・ね☆」
(……今度の食事当番の時、泣くほどピーマンベルの所にぶち込んでやる。)
「だってあれでこうであんな状況だったらそれしか思いつかないでしょうが!……ま、まぁ問答無用で極めにかかったのは悪かったわ……ご・め・ん・ね☆」
(……今度の食事当番の時、泣くほどピーマンベルの所にぶち込んでやる。)
ぶりっ子ぶってもあまりにも似合わないベルと、密かな(かつちゃっちい)復讐心を抱くディーをよそにただ黙ってベッドの向こうに見える夜景を見つめる少女。
その視線の先は工場群ではなく分厚い雲に覆われた空の向こうに向けられていた。
その視線の先は工場群ではなく分厚い雲に覆われた空の向こうに向けられていた。
「………………」
「何が起きたのかはディーから聞いた。が、別にわしらは深くお前さんの事についてとやかく問い質すつもりは無いよ。ただ今は身体を治して、疲れを取って、気を休めるといい。全てはそれからじゃ。」
「何が起きたのかはディーから聞いた。が、別にわしらは深くお前さんの事についてとやかく問い質すつもりは無いよ。ただ今は身体を治して、疲れを取って、気を休めるといい。全てはそれからじゃ。」
返事は無く、バール達のほうを向く事も無くただ闇夜の向こうを見つめる少女。
だがバールは別に何も咎める事は無く言葉を続ける。
だがバールは別に何も咎める事は無く言葉を続ける。
「……今晩はこの部屋を使うとええ。トイレは廊下を右に出てまっすぐ行った所にあるからの。ディー、お前はウェルの部屋で寝るといい。確か余ってる毛布があったじゃろ?」
「はぁい……」
「何その返事?ひょっとしてここで寝るつもりだったんじゃ……!」
「あ、ちょっと欠伸が一緒に出ただけだからおま骨いたたたたたたた!」
「ちょっと姉ちゃんやり過ぎやり過ぎ!変な方向曲がっちゃうよそれ!」
「それってなんだそれって!お前のとこにも今度の当番の時ピーマいたたたたたた!!」
「ほれほれ疲れてる人がいるところで騒いじゃいかん。出て行った出て行った。」
「はぁい……」
「何その返事?ひょっとしてここで寝るつもりだったんじゃ……!」
「あ、ちょっと欠伸が一緒に出ただけだからおま骨いたたたたたたた!」
「ちょっと姉ちゃんやり過ぎやり過ぎ!変な方向曲がっちゃうよそれ!」
「それってなんだそれって!お前のとこにも今度の当番の時ピーマいたたたたたた!!」
「ほれほれ疲れてる人がいるところで騒いじゃいかん。出て行った出て行った。」
賑やかなままバールに促されるままに追い出されていく3人と、少し遅れてではお休みと出て行くバール。
誰もいなくなった部屋にて少女はその不思議な光沢を放つ銀の髪をほんの少し揺らして、いつまでも淀み濁った空を見上げていた……
誰もいなくなった部屋にて少女はその不思議な光沢を放つ銀の髪をほんの少し揺らして、いつまでも淀み濁った空を見上げていた……
リングダム・メカニズムの朝は早い。
実はスチームヒル一との呼び声もあったりする腕の立つ修理工にして整備工であるバールを頼って今日も様々な依頼が舞い込んでいるからだ。
お陰でバールは歳相応も無くいつも忙しそうに働いている。最近はベルとウェルという有能なアシスタントを2人も得たが、
やはり大事なところは自分でしたいらしく、仕事量では2人を差し置いて一番となっているのだとか。
実はスチームヒル一との呼び声もあったりする腕の立つ修理工にして整備工であるバールを頼って今日も様々な依頼が舞い込んでいるからだ。
お陰でバールは歳相応も無くいつも忙しそうに働いている。最近はベルとウェルという有能なアシスタントを2人も得たが、
やはり大事なところは自分でしたいらしく、仕事量では2人を差し置いて一番となっているのだとか。
「ふむ、やはり今日の一面は昨日の謎の発光現象で持ちきりじゃな。」
と、広げた新聞を目にしつつ呟くバール。仕事柄か歳の割には目がよく、新聞でも老眼鏡付きなものの一番細かい字まで読めるらしい。
「まぁ、ならない方がおかしいよね。」
「どのチャンネルのニュースもあの怪現象で持ちきり。もっと他にやるべき事ないのかなぁ~?」
「どのチャンネルのニュースもあの怪現象で持ちきり。もっと他にやるべき事ないのかなぁ~?」
そう愛用の白いマグカップ片手に返すベルと、部屋の隅に置かれた古ぼけたテレビに齧り付いてチャンネルダイヤルを回しつつグチるウェル。
2人とも既に作業着に着替えており、仕事に対してはやる気満々と言った様子。
ちなみにその新聞によると、ここを中心とした少なくとも半径100キロ圏内では何処でもその怪現象が目撃されたのだとか。
テレビの報道でも原因について様々な憶測が飛び交っており、ネタに飢えたマスコミを賑わせている。
正直こんなモノで大騒ぎになるのもどうかと思うが、それだけ世の中が平和って事なのだろう。最近はバリードによる被害もあまり聞かないし。
2人とも既に作業着に着替えており、仕事に対してはやる気満々と言った様子。
ちなみにその新聞によると、ここを中心とした少なくとも半径100キロ圏内では何処でもその怪現象が目撃されたのだとか。
テレビの報道でも原因について様々な憶測が飛び交っており、ネタに飢えたマスコミを賑わせている。
正直こんなモノで大騒ぎになるのもどうかと思うが、それだけ世の中が平和って事なのだろう。最近はバリードによる被害もあまり聞かないし。
……世を騒がす怪事件と言っても、こういう誰も困らない類のならたまにならいいかもしれないと思うが
(ウチにとっては怪事件だけで済まないかもしれないけどな。)
突然目の前に現れた彼女の事を思い返す。
どっかの漫画で見たようなありきたりの展開だが、実際に起こったとなれば話は別。
色々と思うところはあるが、バールの提案で彼女が何か言い出すまではこちらからは特に触れない事にした。まぁ色々問い質した所であの子が何か言うかと思うと……
どっかの漫画で見たようなありきたりの展開だが、実際に起こったとなれば話は別。
色々と思うところはあるが、バールの提案で彼女が何か言い出すまではこちらからは特に触れない事にした。まぁ色々問い質した所であの子が何か言うかと思うと……
「……なーに考えてんの?」
柄に無く押し黙ってそんな事を考えていた俺の顔を、横から覗き込んでニヤニヤしているベル。
怒らせると(肉体言語的な意味でも)怖いが、いつもはあっけらかんとした明るい性格でお客さんからの人気もあって最近じゃウチの看板娘ともなっている。
これは余談だが買出しや何かでベルがいないと聞くとしょんぼりして修理も頼まず帰っていく人もいたり……あれ?ウチ、何屋だったっけ?
怒らせると(肉体言語的な意味でも)怖いが、いつもはあっけらかんとした明るい性格でお客さんからの人気もあって最近じゃウチの看板娘ともなっている。
これは余談だが買出しや何かでベルがいないと聞くとしょんぼりして修理も頼まず帰っていく人もいたり……あれ?ウチ、何屋だったっけ?
「あの子の事だよ。」
「やっぱり。そうだと思った。」
「さっき覗いてみたら俺達が出て行ったときとまったく同じ姿勢で空を見上げてたし……何と言うか、不思議な子だなぁホント。」
「あたしも覗いてみたけど普通じゃないオーラもびんびん出してるよねー。バールはああ言ってたけどあの子の身の上はすっごい気になったり……」
「やっぱり。そうだと思った。」
「さっき覗いてみたら俺達が出て行ったときとまったく同じ姿勢で空を見上げてたし……何と言うか、不思議な子だなぁホント。」
「あたしも覗いてみたけど普通じゃないオーラもびんびん出してるよねー。バールはああ言ってたけどあの子の身の上はすっごい気になったり……」
俺の返事にうんうんと頷くベル。
コーヒーの入った白いマグカップをテーブルから取り上げ、軽く口を付ける。
コーヒーの入った白いマグカップをテーブルから取り上げ、軽く口を付ける。
「俺もまぁ、気にならないと言ったら嘘になるけど実際聞いてみて何か言ってくれるかと思ったら全然そうは思えないんだよなぁ……」
「同感。やっぱりあの子が何か言ってくれるまで待ってたほうがいいかもしれないね。」
「同感。やっぱりあの子が何か言ってくれるまで待ってたほうがいいかもしれないね。」
ただいくら待っていても向こうから何か言ってくれるかと思うと凄い疑問なんだが……それはこちからのスキンシップ次第か。多分。きっと。願わくは。
「……さて、と。今日も一日頑張ろうかしらね。ディーもちゃんと働きなさいよ?」
「へいへい。」
「へいへい。」
それじゃ行こうとベル。うんとウェル。2人仲良く工場へと通じる扉を潜っていった。
この部屋に残ったのは酷く落ち着いた面持ちで茶をすするバールと俺のみ。いつも面と合わせるのだが何故か緊張する。
この部屋に残ったのは酷く落ち着いた面持ちで茶をすするバールと俺のみ。いつも面と合わせるのだが何故か緊張する。
「……何か聞きたいことがあるようじゃな?」
そわそわした俺の様子を見てか先に話しかけてきてくれたバール。これは助かる。
「そう。あの子の事なんだけど……」
「ん?」
「あんな人が突然現れるような現象、バールは聞いたこと無い?」
「ん?」
「あんな人が突然現れるような現象、バールは聞いたこと無い?」
多分無いのだろうなぁ……と思いつつも聞いてみる。
いくらバールでもあんな超常現象の類の事について知っているはずが無いだろう。
いくらバールでもあんな超常現象の類の事について知っているはずが無いだろう。
「んむ。聞いた事は無い……聞いた事は無いが、ほんの少しだが心当たりも無くもない。」
「え!?」
「え!?」
ただ返ってきた返事は予想外のもの。俺の驚きを他所にバールは話を続ける。
「わしの古い友人にそういったオカルティックで奇妙な事について研究しておった奴がおる……そいつなら何か知っているかもしれんが、
もう10年以上会ってない上、元住んでいた場所にもおらず、連絡も途絶え、今頃元気にしているのかどうなのか、それすらも分からん。」
「へぇー……ちなみになんて言うの?その人の名前。」
もう10年以上会ってない上、元住んでいた場所にもおらず、連絡も途絶え、今頃元気にしているのかどうなのか、それすらも分からん。」
「へぇー……ちなみになんて言うの?その人の名前。」
別に参考にもならないだろう。ただ興味があって聞いた事。
「「ロン・クーロン」といったかな……これといって力になれずにすまんの。」
「いやいやありがとう。じゃ、行ってくる。」
「んむ、気をつけてな。」
「いやいやありがとう。じゃ、行ってくる。」
「んむ、気をつけてな。」
ロン・クーロン。
その時は特に気にせず聞き流した名。だがそれは後々まで続く、決してその姿を見る事のない彼との初遭遇でもあった……
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