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REVELLION 第一章 前篇

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匿名ユーザー

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「ぐ……あぁぁぁ!」
 怒りの咆哮が響き、少年は左の瞳を抑えた。瞳を抑えた指の隙間から鮮血が零れ落ち大地を濡らす。
「……ッ」
瞳が焼かれたかのように痛む。左の視界が赤に染まっていく。
これが力を得る代償だということか、だとすれば。
「安いな」
 言って上空を見上げる。
 広がる赤い空、無数の敵。全てが少年の敵だった。
「これが……世界の理だと、ふざけるな!」
 ある男に言われた言葉を思い出し、その言葉の意味を知った少年の胸に宿ったのはどうしょうもない怒りと憎悪だった。
 上空を旋回していた敵が一斉に銃口を自分に向けるのを見て少年は静かに笑った。
 左目は既に白目の部分が赤一色に染まり、その瞳は月明かりに照らされ淡く光る。
 その紅の瞳で上空を睨みつけると少年は吐いて捨てる。
「魂に刻め、貴様らの銃口の先に居るのは……死神だ」
 少年の世界への復讐が、今始まる。

「起き……て……さい」
 母が優しく子供に語りかけるような柔らかな声で誰かが呼んでいる。
「起きてください。ゼノス……」
 その声にゼノスは瞳を開け、伸びをして声の主を見た。
 長く艶やかな黒髪に整った顔立ち、優しそうな瞳で笑いかける少女。
「授業終わりましたよ」
 外を見るとうっすらと夕日が差している。両手を伸ばしてもう一度伸びをして鞄を取り立ち上がる。
「帰るか……シホ」
 ぶっきらぼうなゼノスの言葉にシホと呼ばれた少女はにこりと笑んで小走りで先を行っていたゼノスに並んだ。

 商業都市オオサカ。それがゼノス達の暮らす国の名である。
元は小さな商人たちが始めた市場らしいが今では国際的にも認められた一大国家だ。
 商業都市だけあって色々な店が並び、歩いているだけで目を楽しませてくれる。
 世界的にもここまで活気に溢れた国はそうないであろう、なぜなら世界は長く続く戦いの中で疲弊し崩壊の道を辿っているからだ。
 長く続く戦時下でこの国が今も平和でいる理由は単純明快、中立を保ち自衛手段も持っているからだ。
 それともう一つ理由がある、この国の商業が武器やAF(アーマード・フレーム)と呼ばれる人型兵器にも及んでいることだ。
 戦争をしている国に分け隔てなく物資を提供することでこの国は中立を保ち国内の平和を続けている。
 その八方美人ぶりを批判する国もあるが、金と後ろ盾によってこの国は己を守ることに成功した数少ない国家といえよう。
「……」
 店先を見つめて瞳を輝かせているシホを余所にゼノスは大きなビルに設置されている大型ディスプレーから流れるニュースを見て唇を噛み締めた。
〈先日、トウキョウ軍が長く戦争状態にあったカナガワ国に新型AFを投入し鎮圧に成功したとの発表がされました。これによりトウキョウの植民地は二五カ国と増え、さらなる軍備強化と経済発展が見込まれ……〉
 この国は平和だ。ただそれはハリボテでいつ壊れてもおかしくない危うい平和なのだ。
 毎日流れるニュースや噂はどれも暗いものばかり、ここもいつその暗いニュースの発生地になるかわからない。
 いつの間にかシホも流れる暗いニュースに目を細めている。
「どうして、人は戦うのでしょうか……」
 シホの問いにゼノスは何も言わなかった。
 先ほどまで店先を見て輝いていた目が大型ディスプレーを見つめ、悲しげに伏せられている。
 この世界の有様を憂いているのか、それとも……。
「……お前はどうして人が戦うと思う?」
 質問に質問で返すのは失礼なことだがゼノスは聞かずにはいられなかった。
「大事なモノを護るためではないでしょうか……」
 その言葉にゼノスは苦笑した。それもまた一つの見方なのかもしれないが。
「それは護る側だな。じゃあ、侵攻する側はどうして戦うと思う?」
「……」
「簡単だよ。奪う為だ……そして影で弱者が泣き、外道が嗤う」
 大型ディスプレーを再び見つめると勝利に湧く観衆と平和を訴えるトウキョウ国主ヒルダが映し出されていた。
 祝福と栄華、それが勝者トウキョウの歩む道……では敗者のカナガワは?
「その事実を隠して……な」
 ゼノスの横顔を見つめシホはふと思った。その言葉は奪う側と奪われる側のどちら側の人間のものなのだろうかと。
「冷えてきたな、そろそろ帰ろうか」
 ピリピリとした雰囲気からいつものゼノスに戻り、シホは少し安堵した。
(霧のように存在があやふやで、今にもなくなってしまいそうでした……
 儚く見えたゼノスが元に戻りシホの顔にも笑顔が戻る、並んで帰り道を二人で歩んでいく。
「……」
 並んで歩いている途中シホがふと横のゼノスを見ると、ゼノスは空を見上げていた。
 空を見上げるゼノスがまた儚く消えてしまいそうに見えてシホは思わずゼノスの服の裾を握りしめた。
 ゼノスは何も言わずシホは小さく俯いた。しばらくしてゼノスがシホを安心させる為なのか笑いかけるとシホも安心したのか手を離した。
(あと何度……こうやって歩けるんだろうな……)
 シホはまだ何も知らない。赤子のようなもの、そしてゼノスは純粋なシホに大きな嘘をついている。
 真実を知れば怨むだろうか?憎むだろうか?
 それはゼノスの望みであり、希望なのかもしれない。
 けれど、この穏やかな時間が壊れてしまうことは……少し怖かった。

 翌日。快晴の空の下、シホ達学生は外に出て軍事演習をしていた。
「シホは軍事演習って初めてだっけ?」
 ショートで緑色の髪をした少女がシホに語りかけた。シホはその問いに頷くと頼りなさげに項垂れた。
 下を見たことで自分の服装が目に入りさらにテンションが下がってしまう。
 赤い軍服で周りの級友達もみなそれを着ている。
 こんなご時世だ、軍事演習は当たり前でこの軍服を着ればみな気が引き締まるものだがシホはそうではなかった。
 それには理由がある。シホには一年前から以前の記憶がないのだ。ただ日常生活に支障はなく、生活の方も養母(母ではなく姉と呼べと強要されている。三二歳独身)が看てくれているので問題はない。
 今は友達もいるし記憶がないことは別に気に留めてなどいなかったが、こういう場面に出くわすと嫌でもカルチャーショックを受けてしまう。
「イリア、私……ちゃんとできるでしょうか」
 目の前のテーブルに無造作に置かれたハンドガンをチョンチョンと突きながらシホが尋ねるとイリアは豪快に笑い飛ばした。
「あはは、大丈夫だって!シホって見かけによらず運動神経はいいから」
「イリアに言われても困ります」
 シホの友人のイリア。この少女は学年一の運動神経の持ち主だ、そんな彼女に当たり前のように出来ると言われてもシホに実感など湧くはずもない。
(運動面ではなんでも出来ちゃう人に言われても自信なんてもてませんよ)
「それより問題なのは今日もサボり決めている、シホの旦那よ」
〈旦那〉その単語にシホの白い頬が耳まで赤に染まり首をブンブンと振った。
「私は、その……ゼノスとは恋人とか夫婦とかそういう関係では」
 必死に否定するがイリアは口元を嫌らしく歪め人差し指でシホの赤く染まった頬を突いた。
「初だな~。かわいいぞ、このこの~」

「普通の子にしか見えないのよね。ゼノス君がどうして執着するのか分からないわね」
 無邪気にはしゃぐシホとイリアの姿を映し出すディスプレーを見つめ妙齢の女性が呟いた。
「ですが、ゼノスのあの態度を見るに、あの少女に何かしらの秘密があるのは確かです」
 女の横に控える男がそう告げると女は苛立たしげに指で机をカンカンと叩いて、そのまま蹴り飛ばした。
「私は解答用紙を要求する!」
 駄々っ子のように暴れる女が散らかしたものを男は手慣れた感じで片付けていく。
 このやり取りが二人にとっての日常だ。そんな日常の中に普段はない音が混じる。
 カチャリと銃の音。その銃口が女の後頭部に押しつけられた。
「あら、私に気づかれず背後を取るなんて……惚れちゃっても問題ないわよね」
「パルム様、いささかずれているかと」
「そう?」
 パルム。それが女の名だ。
 機械音と小さなディスプレーが並ぶだけの質素な部屋で駄々をこねている、年増にしか見えないがこの国の代表者である。
「黙れ―――」
 銃を突きつける男が、怒り……いや怨念が籠っていそうな苦々しい声で制するとようやく静寂が訪れる。
「言ったはずだ……」
 パルムがゆっくりと後ろに振り替える。黒い髪と青い瞳、黙っていれば美形で通るだろうが、今は怒りでその綺麗な顔も迫力を増す材料になってしまっている。
「彼女を道具として使うのなら、殺すと」
「待った。今回は軍事演習で別にそんなつもりはないの……分かってくれた、ゼノス君」
「嘘を吐くな。ならなぜ俺に軍事演習の事を伝えなかった」
「それは……その」
 このディスプレーだらけの部屋を見ればバカでも分かる。軍事演習とは偽りで、シホの身体的なデータを取ろうとしているのだ。
「はぁ~。そんな小さなことで目くじら立てないでよ」
「言ったはずだ。もしシホを利用しようとするようなことがあれば……」
「分かってるわよ。でもこれは……」
「待て!」
 ディスプレーの一つを見つめゼノスが目を見開いた。初めて見る動揺したゼノスにパルムがニヤリと笑うが、向けられたゼノスの視線に背筋が凍りついた。
「AFの操縦もあるのか!」
「え、ええ……」
「何所だ!この演習は何所でやっている!」
「学校近くの第三演習所よ……」
 今にも銃を撃ちそうな勢いで迫るゼノスに思わず言ってしまい、パルムは慌てて口を抑えた。
「く……!」
 だがゼノスはパルムを無視し一目散にその場を後にした。
「なんだったの……あれ?」
 落ち着いた口調で近くに控える助手のハンに問うがハンは首をかしげるだけだった。
「まぁ、なにが起こるかはすぐに分かるわね」
 ディスプレーを見つめパルムが目を細めた。そして元の位置に戻された机に頬杖をついてディスプレーに映し出される映像に集中した。

 なんとか軍事演習の最後のAF(アーマード・フレーム)の操縦までたどり着くことができたシホ。
「大きい……」
 自分の五倍以上の大きさを誇るAFを前にシホは呑気に言うと薄い緑色に塗装された機体をペタペタと触りだした。
 その横で教官らしき髭を蓄えた男がAFの説明を始めた。
 AFは何万年前かの文明が作り出したOAF(オリジナル・アーマード・フレーム)を元に現代の技術で模造したものだ。一般的には略してオリジンと呼ばれている。
 AFはOAFに比べ出力や燃費が劣るらしいが量産がし易い。
 OAFは現代の技術では完全に模造するには至らず未だに謎が多いらしい。
 そんな話を横で聞きながらシホはゼノスのある言葉を思い出した。

《どうしてAFやOAFは人型なのでしょうか?》
 今にして思えば素っ頓狂な質問だったかもしれない。でもゼノスは笑ったりせず答えてくれた。
《そうだな、兵器を人型にするなんておかしいよな。人を殺すための道具なんだからな。別の形をした無人兵器のほうが人殺しには適しているよな》
 そう言って悲しく笑い。
《今の人間がどうしてAFを人型にしたのかは知らないが、OAFを作った人間がどうしてOAFを人型にしたのかはなんとなくわかる気がするな》
《なぜですか?》
《乗っているのがヒトだって分かるように、殺せば血が流れるのが分かるように……ヒトを殺した感覚を忘れさせない為》

 その話を初めてゼノスから聞いた時、不思議とその悲しげな横顔に魅せられたのを憶えている。
「では、各自AFに乗り込め!」
 シホが回想している間も話は進んでいたようだ。教官が命令を出すと皆いそいそとAFに乗り込んでいく。シホもそれに釣られて目の前のAFの脚をポンと叩いた。
 AFの胸部が開きワイヤーがそこから降りてきた。シホがそのワイヤーを掴んで軽く引くとワイヤーが巻き取られシホを開いたコックピット前まで導いた。
(ここまでは教えてもらった通り……あとは)
 コックピット内に入るとそこは球体状になっていて、中にあるのは小さなシートだけだった。
 そのシートに腰かけると頭上から手のひらサイズの四角い物体が降りてきた。
 それを両手で握り締めるとコックピット内が暗転し、開いていたハッチが閉じた。
「……」
 球体状のコックピット内の壁を次々と赤い文字が羅列されては消えていく。
 個体検査。シホにも辛うじて読めた時だった。
 警報音が鳴り、咆哮が木霊した。
「な、なに?」
 慌てて状況を確認しようとするが、コックピットが激しく揺れてシホはシートから落ち頭をぶつけてしまった。
「……」
 水の音がしてシホの意識はそこで途切れた。

 一方、外では警報音と共にAFから次々にコックピット部分が射出されていた。
 地面着地するとハッチが開き中から青色の液体が噴出す、続いて中から乗っていた学生が飛び出していく
「シホ!シホ!」
 混乱し逃げ惑う級友を掻き分け逆走する少女が二人。シホの友人のイリアとユンだ。
 未だに姿を見せないシホを心配して探してみるが今だに見つけることが出来ず、来た道を逆走していた次第だ。
 そんな二人の横に吹き飛ばされたAFがまるでゴミのように落ちてきた。
「な……なにあれ」
 前方に見えた光景に二人は思わず絶句した。
〈があアぁああああああああ!〉
 AFが大口を開き咆哮しながら手当たり次第に辺りのAFを破壊していた。
「まさか!」
 嫌な予感が二人の脳裏を過る。暴れるAFの色は薄い緑色、学生用は差別化を図りAFの色は同機種でも若干違うものにしている。
 となると暴れるAFに乗っているのは……。
「シホ!」
 思わず二人が駆け寄ろうとするとAFの狂気がその二人に向けられた。
 咆哮を上げながら四本の手足を使い二人の前まで迫ると両手を握り合い振り上げた。
〈がああああああああ!〉
 恐怖でその場に崩れる二人に無情にはAFは掲げた両手を振り下ろした。
「ッ!」
 二人が目を閉じようとした時、割って入る人影が一つ。
 その人影は二人を軽々と脇に抱えると瞬時にバックステップした。
 目標を失ったAFの両の手が地面を抉ると、同時に人影は二人を降ろしAFの右腕に飛び乗った。
「ゼ、ゼノス!」
 ユンが叫ぶがゼノスは振り返らない。その手にはハンドガンが握られている。
 ゼノスに張り付かれたAFは鬱陶しそうに振り払おうとするが、その動きが大きければ大きいほど隙が出来、瞬く間にゼノスはコックピットがあるであろう個所に到着した。
 その場で銃を乱射すると、弾の当たった一部分の外層が剥がれ中から何かのボタンのようなものが現れた。
 そのボタンは非常時のAFの緊急停止ボタンだ。中と外に一つずつ設置されていて、これは外に付けられたもの。
ゼノスが渾身の力でそのボタンを殴りつけるとAFは断末魔のような悲痛な叫びを残し沈黙した。
「シホ!」
 すぐにコックピットのハッチが開くと衝撃対策で放出された青い液体が噴出し、中からぐったりとしたシホが姿を現した。
「く……」
 強制停止をさせてはいるがいつ動き出すかもしれないAFの近くは危険だと判断しゼノスはシホを抱えそのまま飛び降りた。
「シホ!」
「よかった」
 シホの友人二人が駆け寄るが、ゼノスがそれを止めた。
「とりあえず、安全な場所に運ぶ」
 二人は黙って頷いた。
「私は救護の人を呼んでくる!」
「こっちに来てゼノス、シホを寝かせられる場所があるから!」

 小さなベンチに案内され、その上にシホを横にする。ゼノスがシホの口元に耳を寄せた。
「息をしてない!」
 案内役をしたユンの顔が青ざめていく。だけどゼノスだけは冷静に気道を確保して人工呼吸を始めていた。
「俺が口を離したら胸を押してくれ!」
「あ、う……ん」
 呆気にとられている場合ではない。ユンは言われるがままシホの胸を押した。
「が……」
 数度繰り返し人工呼吸をするとシホの口から水が吐き出され、わずかに瞳を開いた。
「安全対策の為の水が入りこんでしまったようだな……でももう大丈夫だ」
 ゼノスが言うと同時にシホが応えるように淡く笑った。 
 コックピット内を満たしていた液体、本来はコックピット内の衝撃を和らげる為のものだ、もちろんその液体の中でも呼吸はできるが、運悪く気を失ったことで肺にまで液体が行ってしまい溺れたようだ。
「すぐに救護が来る。今は寝とけ」
「はい……」
 小さく頷きシホは瞳を閉じた。
「……」
 それを見届け、ゼノスはある一点をものすごい形相で睨みつけた。

「あらら、睨んでるわよ……ゼノス君」
 ディスプレー越しなのに殺気が伝わってくる。そんなこと意に返さないパルムがおどけて言うが横に控えるハンの顔は蒼白を通り越して真っ白になっている。
 蛇に睨まれた蛙、その殺気に押されハンはゆっくりとした動作で近場の椅子に腰かけて息を整える。
「また一つ。謎が増えたわね」
 本来AFが暴走するなどまずあり得ないし、あの様は異質そのものだった。
 まるで感情があるかのようなAFの暴走の原因、それは間違いなくシホにある。
 パルムは鼻歌混じりに机をトントンと軽く叩いた。
 新しい玩具を与えられた子供のようだ。隣で震えるハンはゼノスもパルムもどちらも怖いと改めて思った。



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