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守護機兵Xガードナー 月奪還作戦(オペレーション・ムーンテイカー)編 第5話

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irisjoker

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 戦場という宇宙を駆ける機体が一機、コロニーの残骸に身を潜めた。
 ゴテゴテとした装甲、肩の大型キャノンに背中にバズーカを背負っていてかなりの重武装、鈍重な機動力であるのにも関わらず、出撃して一時間、ほぼ無傷で二十機もの敵を撃墜していた。
 追加装甲の隙間の元々の機体色、イエローの部分に“X・01”と言う機体の形式番号が記されてあった。

「何やってんだろうな…俺は」
 シュート・ダリューグは後悔した。軍隊嫌いの自分が率先して戦いに加わっている。
 それも父の指揮の下で。
「結局、親父のシナリオ通り。所詮は子供は親の操り人形って事なのか…チィッ、気づかれた!?」
 こちらへ向かう機体が二機。火星軍の量産機《ギルガ》だ。
「後を付けられたのか?クソ、どいつもこいつも死に急ぎすぎだぞ!」
 敵機の攻撃。だがシュートは二機の発砲を必要最低限の動きで回避する。鈍いマシンでも無駄な動きをしなければ攻撃を避ける事が出来る。そして何より自分の瞳、“アルターアイ”による恩賜のお陰だった。
「距離を詰めれば対応できまい!」
 最大出力で加速しながらの一斉射。近づくにつれ二体の敵機は蜂の巣になっていく。
「砕け散れよォッ!」
 射撃を止め“イリュージョン・ウォール”を展開した。X01が虹のフィールドに包まれる。
 X01はそのまま敵機の間を通り抜けようと突撃する。ボロボロになった二体の《ギルガ》は自分達に向かってくる七色の障壁にぶつかり、木っ端微塵に四散した。
「…来るから悪いんだ。お前等が向かってくるんだから、こっちも生きる為には仕方がない事なんだからな」
 戦争とはそういう事なんだろう、と無理矢理そう思い込みながらシュートは再び戦線に復帰した。


「我が軍が押されているのか?」
 侵攻軍の機動要塞《バスティオン》の司令は驚愕していた。これまで幾多の攻撃を退いてきた自軍が、こうも簡単に落とされていく。
「どうされますか司令。このままでは…」
 横の副司令が言う。
「言われるまでもない。《カニバル》を出せ」
「良いんですか?あれはまだ調整が済んでませんが」
「そんなのは戦いながらやればいい!構わん、出せ!」
「は、はぁ…分かりました」

 《バスティオン》格納庫にて。
「貴様ァ!ふざけているのかッ!」
 ビーク・トライバは整備士長の胸ぐらを掴み怒鳴り散らしていた。
「あれは何だ!?大量殺戮兵器ではないか!しかもパイロットの生体改造が必要だと?!火星軍の理念はどうした?こんな一方的な戦いが戦いと言えるのか!」
 激しく激高するビーク。周りの兵士達が止めに入るも次々と殴り飛ばす。
「いい加減にしなよビーク!」
 乾いた音が格納庫に響く。
 振り向いたビークに平手打ちをするのは褐色の短い赤髪の女性、リヴァ・ティニー。
「戦争なんだよ?卑怯もクソもないでしょ?!」
「ッ!…だが、しかし…う」
 ぎゅっ、とリヴァは自分の胸に抱き寄せる。
「…お、おい」
「大丈夫だから。アタシは死なない、死ぬもんか…」
「リヴァ、なっ?」
 重力を利用して突き放し自分の機体へ飛ぶ。
「やっぱビークは心配症なんだから、火星の恋人さんが羨ましいよ!」
「ま、待てリヴァ!」
 引き留めようと掴む手は空を切る。
「でも、アタシの今の好きな人は竜宮隊長だけどねー?」
 そう言って明るく振る舞うリヴァは、自分の機体、火星軍大型試作兵器《カニバル》へ搭乗した。


 激戦の中心、大量の敵機を蹂躙し目的の要塞へ侵攻する大きな黒い機械虫が一機。
 蟷螂の様な刃を持つ足が四足、ビーム砲を備えた大きな角、羽から発する虹色の障壁は全ての攻撃を無効にする。
 これが投入され三十分、人型兵器二十機、戦艦五隻を撃墜していた。火星侵攻軍は必死に止めようとするも攻撃の効かない機械虫に手も足も出せない状態である。
 そんな機械虫に乗っているのが、十五歳の少女であるのを知っているのは一部の人間のみだ。
「味方にしては随分と悪役してんじゃない?」
 と、ライド・デンサー。
「アレにはミアが乗っているのか…アレがアイツの望んだことなのか? …クソッ」
 サイバ・ドールは苛つきながら敵機を狙い撃ち、一機撃墜した。
「元々、あの少将の所の子だろ?なら仕方がないんじゃねぇの…」
「いや違う、俺には分かるんだ。アレは、ミアは、こんな事を望んじゃいないんだよ」
 機械虫を見つめる。何か嫌な予感をサイバは感じている。
 このままでは取り返しが付かなく様な予感、胸騒ぎがした。
「ライド、艦は任せたぞ。俺はアイツを追う」
 そう言いサイバのX02は飛行形態に変形し、飛び立って行った。
「おい!待てよ、サイバ!」
地球統合連合艦隊の旗艦《エルディスタ》にて。
「試作に試作を重ね完成した“ブラックメイル” …良い活躍をしている様だな?」
 エディン・マクレイン少将は自慢気に言う。
「機体の制御系統は安定しています。ただ…」
「ただ…何ですか?」
 ギロッ、と鋭い視線をオペレーターに浴びせる。
「は、はい。パイロットの精神状態が少々揺らいでいます」
「安定剤を投与しなさい」
「しかし、現時点で大量に投与してますし、これ以上は…」
 エディンはツカツカと歩み寄り、そのオペレーターを殴り飛ばす。
「それが何ですか?安定して無いのなら安定するまでやるは当たり前でしょう?素直に命令を聞きなさい!」
 ヒステリー気味に叫ぶエディン。ブリッジは凍り付いた。
「提督」
 静かな口調で副長は呼ぶ。
「…何!?」
「パイロットの暴走は作戦に支障を来します。現に、ブラックメイルは味方機を巻き込んでいます」
「多少の犠牲は付き物です。それに巻き込まれる方が悪い!」
「しかし、我々が巻き込まれては遅いのでは」
 言い終わる前に手が出る。もう無茶苦茶だ。
「苦戦しているようじゃな?エディン」
 凍り付くブリッジに怪しげな白衣の老人が入ってきた。
「博士!」
 エディンの表情が明るくなる。
「良好ですよ。博士の与えてくださったアレは無敵です。敵の壊滅も時間の問題かと」
 そんなエディンの言葉を無視し、コンソールからブラックメイルの状態を確認する。
「…ふーん」
「どうされましたか博士」
「ミアちゃん…ヤバいのぉ」
 皺だらけの顔が、さらに皺だらけになるくらい怪訝な顔をした。
「馬鹿モン!薬のヤリ過ぎじゃ!こんなにしてワシのブラックメイルがどうにかなったらどうするつもりじゃ貴様!」
 杖でエディンの頭を殴打する。帽子が取れ、赤くなった禿頭が露出する。
「あぁもう駄目じゃ。ワシャ帰るでの。生きてたらまた会おう…あとで色々、請求するからな」
「あ、待って下さい博士?博士!」
 そう言って出ていった。エディンは静かに落ちた自分の帽子を拾い上げ深く被った。
「…クソ爺が」


 小型艇へ向かう廊下、一人の老人が向かう。ブツクサと文句を垂れていると一人の男が追いかける。
 副長だ。
「何じゃ?引き留めても無駄じゃぞ」
「い、いえ逆です。私も、貴方に付いて行きます」
「何?良いのか?敵前逃亡は重罪だぞ?それでもいいのか?」
「かまいません。こんな艦に居ても無駄死にするだけです。それに小さな女の子を利用して戦争するなんて私の正義に反します」
「そうか、なら良い。付いてこい」
「はい!」
「所でお前さん、小型艇の運転は出来るのか?」
「それは任せて下さい!若い頃はレースで賞を取った事があります」
「そいつは頼もしいのぉ」
 二人は楽しく笑い合った。

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