創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

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だれでも歓迎! 編集
                             求めよ、さらば与えられん。

                            たずねよ、さらば見出されん。

                            門を叩け、さらば開かれん。

                        すべて求むるものは得たずねぬる者は見出し、

                            門をたたく者は開かるるなり。



                             Robot thing SS synthesis
                             The second anniversary






天空で光り輝く、巨大な無数の剣。その剣が世界各地で、まるで何かの儀式の様に円を組み、回転する。
それが起こっているのは世界だけではない。時空を超え、次元を超え、そして―――――。

「司令! 未確認飛行物体の増殖、未だに収まりません!」
「空自からの通信、全て途絶えました!」

「フツヌシからの応答は?」
「先程から行っておりますが……応答、ありません」
「一体何が……起きていると言うのだ」

―――――――――――――   

「どう見る? クラウディア」
「どうって、空のアレとかアレ?」
「どう考えても悪い事が起きるとしか思えないな」
「成る様に成るわね~。鬼が出ても蛇が出ても、楽しんだ者勝ちね」

―――――――――――――

「待て! ネクソンクロガネ!」
「何?」
「気付かぬのか? この、青い空を覆う異変に」
「……何だ、この無数にそびえる剣は。これも貴様の仕業か!」
「ワシがこんな無粋な事をするか! 青き空の下で戦うという、最高のシチュエーションを汚すなど笑止千万じゃ!」

―――――――――――――

<マスター、これは一体……>
「あの時とも……いや、全然違う。これは……」
「遥!」
「師匠!」
「今すぐここから逃げるぞ! アレは――――――」


全ての剣が揃いし時――――瞬く間に世界が、紫色の強烈な光によって包み込まれていく。 
絶叫、悲鳴、驚愕、困惑、衝撃、様々な感情を一瞬で飲み込んだその光は、次第に空へと収束されていく。
やがて光が収まっていく中で、かつてあった世界は―――――もはや、そこには無い。


                     ――――――――――――――――――――――――――――――

「一体どこから来たんだ、アンタ?」

頭から柔らかそうな獣耳を覗かせた、ピッチリとしたパイロットスーツを着た少女が、一人の男を眺めて不思議そうに尋ねる。
少女にそう質問された、丈の長い白衣が印象的なその男は、口元にニヒルな笑みを作る。
男の傍らには、吹きすさぶ荒野には似合わぬ、美しき曲線美を描いた、鮮やかな色彩の――――スーパーカー。

「どうやら俺の予想では、世界が何やらおかしなことになっている様だ、が」

男は少女に笑みを作りながら、指先で銃を象り、優しく突き付けて答える。

「悪くない。寧ろ俺の男の子な部分がゾクゾクして堪らん」

「……それで、アンタの名は?」
「俺の名は天農(あまの)下は男の――――」

その時、耳をつんざく煩すぎる羽音。空を見上げるとグロテスク、そうとしか表現できない、巨大な虫――――の様な何かが大量に、少女と男を囲んで見下ろしている。

「一先ず自己紹介は後だ」                        

そう言いながら、男は少女と、少女の近くで片膝を突き、主の命令を待つ鉄の巨人に鋭い視線を向けながら、言い放つ。

「やれるか?」
「やるしか無いね、この状況じゃ」

少女の返答に男――――天農は嬉しそうに笑いながら、スーパーカーへと叫ぶ。

「参るぞ、スプリガン」

「所でお譲さん、君の名前は?」
「リート、とでも呼べばいい」
「オーケー。御手柔らかにな、リート」



                       ―――――――――――――――――――――――――――――

睨みあいながら並行して廃墟を疾走する、二つの巨大な影。一つは、静謐さを思わせる白色の機体色に、弧を描く流線型が特徴的な影。
もう一つは、豪腕と言わんばかりに大きな腕部と、それ自体が武器の様な物々しい脚部が目を引く、猫を思わせる頭部を持つ影。両機は柱を間として、互いに距離を取り続ける。。
もうすぐこの先、柱が途切れぽっかりと空いた広い空き地へと出る。睨みあう、両機。が、白き影が先手を、取った。

白き影がその大柄さからは想像できない俊敏さで飛び跳ねると、猫影へ向かって飛び蹴りを放つ。
しかして、猫影はその攻撃を容易にかわしながら、右腕で白き影の足を掴むと、後ろ脚を引きつつ全力で振り返り、白き影を放り投げる。
バランスを崩したかのように見えて、白き影は放り投げられても動揺せず、地面に左手をついて腕部を伸縮し、新体操の如く華麗に、前面へと回転してみせる。
着地した白き影は、猫影へと振り返り――――問う。

「お前……何なんだ!」
「それは此方の台詞だ。突然攻撃してきたのは、そっちだろうが」

白き影から聞こえる、惑いを隠せない青年の声に対して、クールで感情を伺わせない、猫影からの青年の声。
白き影は、猫影にビシッと指を差しながら、言葉を続ける。

「何にせよ、これ以上続けるなら俺は容赦出来」
「待て」

猫影が白い影に静かにする様に、人間でいう口に当たる部分に指を当てる。
よく耳を澄ますと、自分達の周囲を、何かが周っている事に気づく。それも、少しづつ距離を詰めてきている。
自然に白い影と猫影が近寄り合い、背中合わせになる。近づき、迫る、何か。

「お前、名前は?」

白き影が、猫影に聞く。

「人に名を訪ねる時は自分から答えるんじゃないのか?」

「……安田、俊明だ」

白き影の操者がそう答えると、数秒後、猫影の操者が返答する。

「守屋一刀だ。一先ずこの場では協力する。だが」


その時、前方からこちらに向かって、駆動音をけたたましく響かせながら走ってくる、一体の機体。
先の二機とは全く違う、全身を武器で包んだ、武骨、正にそのモノと言った感じのその機体は、二機を認識するとローラーを瞬時に回転させて、背中合わせに加わる。
壮絶な戦いを繰り広げたのか、各部が焼け焦げ破損しているが、負けそうな様子は見えない。機体の操者からの通信が、二機へと渡る。

「周囲の敵影およそ三十。協力を要請する」

「……名前は?」

「階級……この状況下では無意味か」

「清水静、と言っておく」
「清水静か。戦えるんだな?」
「無論だ。協力感謝する」

「よく分かんないが……戦うしかないんだな」
「単純計算で一人十機撃墜すれば、この場は凌げる」
「いきなり無茶言うな! 十機ってお前……」

「おしゃべりはここまでだ。行くぞ、安田、清水」


                       ――――――――――――――――――――――――――――

月夜照らす中、次々と町を、人々を喰らい尽くす、人ならざる化け物ども。逃げ惑う人々を嘲笑いながら跋扈する彼奴等を、容赦無くぶちのめす鉄拳。
鉄拳を奮いし堂々たる正義を身にまとう、純潔なる騎士を思わせるそれは、化け物どもを纏めて叩き潰しながら、地面を抉り上げながら飛翔する。
月を背に、それが凄惨たる傷痕を刻まれた街を身、怒りゆえか両手を握り拳に変えて、空気を奮わせる。

「どうして……どうしてこんな事になってんだよ、アリス! 何なんだよ、コイツらは!」

それの操者――――ディーが、もう一人の操者へと怒りを押え切れない口調で、そう聞く。
一方、もう一人の操者――――アリスはあくまで冷静、冷静ながらも――――冷たく、冷徹さを感じさせる声で、答える。

「落ち着いて、ディー。まだ状況が何も分かっていな――――」

「教えてあげようか」

二人を挑発するかのような、余りにも軽々しい男の声。それは男の声が聞こえてきた方へと振り向く。
闇夜に溶け込む様な黒色に、そそり立つ兜を思わせる頭部が不気味に黒光りする、禍々しい雰囲気を纏った巨大な機体――――仮に、敵と呼ぶ。
その敵の操者である男が、それ――――の名を、愉しそうに呼ぶ。

「君達には前々から会いたいと思っていたよ、イグザゼン。否――――アリス君、というべきかな?」


「どうして……私の名を?」

それ――――の名、イグザゼンの操者、アリスが男の発言に軽く驚嘆している間。
敵の背後から次々と、この世界では見た事が無い、町を蹂躙していた化け物どもが敵を護る様に群がってくる。
敵はイグザゼンに向けて指を差す。するとイグザゼンの背後、周囲、どこから沸いてくるのか、化け物どもが集まる。

「この数……多すぎる」
「どうする、アリス。こいつは少々まずいぜ」
「分かってる、けど……」

その時。
地上から高速で昇りながら、化け物どもの群れの中へと突っ込む巨大な何か。途端、爆発。化け物どもが次々と、惨たらしい死骸へと化す。
鬼神の如き凄まじい勢いで、所有する巨大な槍を振り回しながら何かが化け物どもを斬り刻み、一撃の下、天へと滅していく。
敵と同じく、黒色、いや、漆黒の何かは敵へと肉薄した瞬間、槍を敵に向かって突き抜ける。が、突き抜けた瞬間、煙と化す敵。

「呆けるな!」

何かの叫びに、呆然と眺めていたイグザゼンが反応する。途端、上に圧倒する様な気迫。
上へと視線を向けると、敵がその巨大な機体並みに大きな剣を自らへと振り下ろさんとしていた。
咄嗟に拳を振り上げた瞬間、剣と拳がぶつかり合い、夜空を一瞬真っ白くする程の光が瞬き、輝く。


敵がすぐさま後退し、大剣をくるりと回転させる。

戦闘態勢を取りつつ、距離を取るイグザゼン。そしてイグザゼンの近くへと飛んでくる何か。否――――。

「さっきは助かったぜ。所でアンタは……」

ディーのその質問に、何かの操者が答える。

「黒峰、潤也。今はそれだけ答えておく」



「イグザゼンにリべジオン……互いに曰くつきの巨人が揃った訳だ」

男はそう呟くと、何がおかしいのか大声で笑いだす。狂喜、そう呼ぶにふさわしい笑い声で。


「君達に倣って、私も自己紹介をしておこう。君達が見ているこの機体の名はデストラウ。そして」



「私の名はオルトロック。オルトロック・ベイスン。君達の――――憎むべき、敵となる男だ」


                       ―――――――――――――――――――――――――――

蜃気楼さえも見えない、砂嵐が巻き起こる砂漠の海を、鋭角的で直覚的なフォルムで、尚且つ、寒色的な機体色――――正に兵器然とした機体が、駆ける。
その機体は一体では無く、複数で小隊の様に纏まって動いており、姿の見えない敵に個々の武装を使って攻撃を行う。
姿は見えない。しかし銃弾が放たれれば、砂嵐からその敵の体液や肉片が弾け飛んでは、機体を汚していく。

「味方部隊からの連絡は?」

その機体の操者の一人である――――玲が、隊を束ねる隊長格、麗美へと通信を入れる。
玲からのそれに、麗美は通信越しから軽く頭を横に振りながら、応答する。

「駄目、どこにも繋がらないし、それ以前にここが何処かすら、全く分からない」
「何て事……これじゃあまるで私達……」


「倒しても倒しても終わんないよ!」

これまた隊の一人、散乃が、疲労困憊の為か、それとも砂嵐が晴れず敵が見えない事への苛立ちか悲痛な声を出す。
しかし散乃がそう思うのもおかしくはない。どれだけ倒しても、砂嵐からは鳴りやまぬ敵の咆哮。
一方、こちらは機体も武器も次第に消費していくのみ。消耗戦に入った時点で、敗北を期す事は目に見えている。

どうする、どうすればいい。玲があまりの状況の悪さにキッと、歯軋りをした、その瞬間――――。


敵、否、砂嵐ごと消滅させるほどの、砲撃の雨あられが上空から、玲達の周辺へと降り注ぐ。
即座に状況を判断した玲が、皆がその攻撃に被弾せぬ様、中央へと集合させる。
数十秒程、その雨が止むのを待つ。そこにあるのは無音。無音と共に抉りだされた地面と、屍と化した、敵の姿。

雨を降らせたそれらが、パラシュートを分離させて地上へと降り立つ。
玲達が乗る機体とよく似ている、だが若干似て非なる、ミリタリーチックで硬質感溢れるその機体の操者が、玲へと通信を入れる。

「先程通信を傍受した。貴官らの援護を行う。許可を」

その通信から聞く声は――――玲達と同じ、少女の声。
私達と、同じ? 玲は態度には出さないモノの心では激しく驚きながら、通信に応答する。

「了……了解した。して……貴方達は?」

同時に、遠方より飛来してくる巨大な影、影、影。
その影の下からは、玲達を襲ってきたであろう、玲達が知らない形状の怪物達が、束となって此方へと向かってくる。
と、それが玲の機体の方へと手を掛けて、再び通信を入れる。

「取りあえず今は階級とかは言いっこなし。協力して、アレを殲滅しましょう。私は御前静。貴方の名前は?」
「……状況が飲み込めてないけど、取りあえず分かった。私は葉倉玲。宜しく」

「それは良いとして、あの空を飛んでる大きいのはどうするの? 私達にはアレを落とせそうな武装は――――」

玲がそう言った瞬間、空を照らしながら飛んでいく、巨大な光の矢。
その矢はまっすぐぶれる事無く、影へと突き刺さる。瞬間、矢は膨張すると左右の影全てを巻き込んで爆発する。
太陽かと思うほどの熱量に満ちた、あまりにも強力なその攻撃の威力に、玲は思わず唖然とする。

「デカイ奴らは俺に任せろ! 嬢ちゃん達は下の奴らを頼む!」

実に頼りがいのある、凛々しき男の声が宙へと響き渡る。

玲が振り返るとそこには――――巨大な、鋼鉄の機体が両腕を組んで仁王立ちでそびえ立っていた。
この世界――――自分達がいた世界には見た事が無い、それ以前に存在してもいない筈のそれに、玲は惑う。
惑うが、本能的にその機体に対して、絶対的な安心感を感じる。

「任せました、壮馬さん!」

静がその機体の操者に向けて、同じく生命力に満ちた声で応える。
そして玲の方を向き、言う。

「行こう、葉倉さん!」
「了解!」



                         ――――――――――――――――――――――――――

月面。静寂と虚無が支配するその場を、一見不格好に見えるがその実、機能性に富んでおり妙にユーモラスな外見の機体が重力を物ともせず飛び跳ねる。
頭部に兎を思わせる、奇妙な造形を施されたその機体は両手に持ったマシンガンを乱射、乱射、乱射。
一見考えもなしに撃っているかのようだが、それは違う。放たれた弾丸は正確に、敵機のコックピットを、急所を撃ち抜いていく。

その機体――――スカンクエイプの操者、ソマ・ツクヨミは考える。
今、自分を襲っている正体不明、得体の知れない敵機は何処の輩かと。しかし考えるだけ時間の無駄と悟る。
敵ならば倒す。実に単純明快にして、筋の通った論理でツクヨミは一切妥協せず、敵機を鉄クズへと変えていく。
その時、コックピット内のアラートが背後へと警告を出す。
スカンクエンプをバレエの動作の様に優雅に回転させながら、ツクヨミはマシンガンを向ける。


「待て! 俺は、敵じゃない」

振り返るとそこには、またも得体の知れない機体。しかし、とツクヨミは思う。
形状こそは先程襲ってきた敵機に似ているが、その雰囲気、して外見は、よくよく見ると全く違う。
やけにヒロイックな外見にして機体色。そして何より雰囲気。その雰囲気は――――まだ、戦う事の何たるかを理解出来ていない、新米らしさが伺える。

「俺も……俺も奴らと戦ってきたんだ。だから俺はアンタの」
「ならばその手の武器を捨て、両手を上げろ。まずはそれからだ」

ツクヨミのその言葉に、その機体の操者――――やはり、少年の声。
操者は一旦迷う動作を見せるが、決心を固めたのか、所持している武器を月面へと落とす。

ツクヨミはその動作を見、言葉を続ける。

「良いだろう」
「分かっただろ? これで俺はアンタの敵じゃないって事が」


が――――ツクヨミは間髪入れずに、その機体に向けてマシンガンを突き付ける。

「お、おい!?」
「伏せろ」

ツクヨミがそう言った瞬間、その機体は何かを悟ったのか、直ぐにその場に四つん這いになる。
後ろから近接武器を持ち、襲いかかろうとした敵機が、スカンクエンプの放つマシンガンによって瞬く間に蜂の巣へと変貌していく。
ツクヨミはその機体を見下ろしながら、その機体の操者へと、言い放つ。

「その様子だと大分弾を無駄遣いした様だな。それでも落とせた敵機は少なく、逆に――――」

「な……何でわかるんだ、アンタ?」

「俺はお前の様なパイロットを何百とも見てきた。想像は容易だ。機体を一目見ればな」

そしてツクヨミはその機体に、片方のマシンガンを放り投げる。

「俺のマシンガンを使え。お前の持っているそれは、もう使えない」

その機体はマシンガンを手に取ると、ゆっくりと起き上がる。起き上がりながら、言う。


「取りあえず礼は言う。俺はシュート・ダリューグ。アンタ……」

「ソマ・ツクヨミ」

背部のハードポイントから、替えのカートリッジを剥ぎ取る。
マシンガンにカートリッジを装着して、装填すると、ツクヨミはシュートへと告げる。


「ついてこい。だが援護はせん。お前の身は、お前自身で守れ」


                            ―――――――――――――――――――――――――


「殺ァァァァァァァァァッ!!」

龍の咆哮を思わせる叫びを放ちながら、怒れる巨神が手刀で、機械の巨人の腹部を貫いて動力を握りつぶし、四散させる。
意思も無く操り人形の様にふらつきながら、しかし異様な力の強さで襲ってくる、アンバランスな姿が不気味な巨人達。
しかし巨神――――の頭部に備われた口、が上下に大きく開くと共に、滾るマグマの様な紅色の光が宿り――――。

「ヴォル・ファイア!」

巨神の操者――――柊隆一郎がそう、叫んだ。
瞬間、巨神の口に蓄積されていた光が、曲線を描きながら巨人達を灼熱の炎で燃えあがらせる。
異常な熱度のそれによって、巨人達は溶解し、蒸発していく。しかし、だ。まだまだ周囲には、巨人達が溢れかえる。

「まだ来るのか……!」

「柊さん!」

巨神――――ヴォルカドゥスへと声を掛ける。確固たる信念を秘めた、クロガネの正義の使者が、ヴォルカドゥスの隣へと降り立つ。

「田所……カッコマンか……!」
「ここは任せて先に行け! 奴らの相手は―――――」


「ネェェェェェェクソォォォォン!」

まるで世界中に響かせる様な大声で、老人の声が灰色の雲が覆う空を震わせる。
瞬時に身構える二機を、現代に蘇りし恐竜――――と見間違うほどに、精巧に恐竜を象って製造されたその機体――――機械恐竜が見下ろし、睨みつける。
一歩、二歩と地面に深い傷跡を刻みつけながら、機械恐竜が二機の方へと歩いてくる。

「そしてソルディアン……否、ヴォルカドゥス! 貴様とは一度、あいまみれて、みたかった!」


「奴は何者だ、田所!」
「悪山……何故だ、何故、この様な非道な真似を!」


「全ては支配の為!」

上空から、ゆったりと、自らの存在を誇示するかの様に降り立ってくる、四機の巨大な、影。それぞれ形は違うものの、纏う雰囲気は強敵、にして凶悪。
その中の長なのだろうか、ネクソンクロガネと相反する様な白き――――不動明王の如き、慄然とした姿をした機体。
その白き機体が、機械恐竜を護る様に前面に立ち、二機と対面する。

「悪山博士、ここは我々シロガネ四天王にお任せを」

「ふん……だが今は目的を遂行するのが先。貴様らに任せよう」

そうして方向転換する、機械恐竜。その背中には、かつて――――ネクソンクロガネの時に見せた、ある種の正々堂々さは見られない。
正に外道、正に非道、その姿は正に、悪そのモノである。

「何故……奴らと手を組んだ! 悪山悪男!」

追おうとするネクソンクロガネだったが――――認識出来ないほどの速さで、白き機体がネクソンクロガネの正面に立つ。

「邪魔をするな!」
「博士の邪魔はさせんよ。我らの大いなる目的の」

「余所見――――してんじゃねえ!」

身体を捻り上げて拳法を彷彿とさせる、完璧な型の延髄蹴りを、白い機体へと浴びせるヴォルカドゥス。
しかしその攻撃を、白い機体は予備動作を一切せず、片腕を上げて防ぐ。防ぎながら、頭部をヴォルカドゥスに向けて、言い放つ。

「そして君が、ソルディアンか。良い攻撃だ。だが――――」

瞬間、白き機体が両腕を振り払う。地表より巻き起こりし凄まじい風が、ネクソンクロガネとヴォルカドゥスを吹き飛ばす。
竜巻、否、台風の如き回転しながら白き機体を包み込むその風は、仲間である筈の巨人達も、町をも巻き込んで破壊する。
風が止み、草木すらも無い更地と化したその地点を見――――ネクソンクロガネの操者―――――田所カッコマンが、絶叫する。

「貴……様ぁぁぁぁぁぁぁ! 市民を……善良なる市民を、巻き込んだな!」
「必要な犠牲さ。この犠牲は犠牲じゃない。目的の為の、いわば生贄なんだ」


今すぐにでも飛びかからんとするネクソンクロガネを、ヴォルカドゥスが腕を差し出して制する。

「何故止める!」
「頭を冷やせ。むやみやたらに突っ込んで、またあの攻撃を食らいたいのか」


「それより俺に考えがある。その為にネクソン、いや――――田所カッコマン、お前の協力が必要だ」

                            ――――――――――――――――――――――――

町を、人を、何もかもを踏み潰しながら死を噛みしめる様に進む機械恐竜――――その名、ワルレックス。
操者、悪山悪男は狂喜と狂気、その二つが混じり合った眼光を光らせながら、ワルレックスを前進させる。
その表情にはかつて、田所カッコマンを強敵とし、ワルながらも筋を通す、カッコ良いお爺ちゃんの欠片も見えない。

「滅べ、滅べ、何もかもが――――滅べばよい!」


砲撃。ワルレックスの頭部を、強烈な爆風が包み込み、業火によって焼き尽くす。
悪山は舌打ちをして、その攻撃が何処から来たのかをすぐさまリサーチし―――――理解する。

「来たか……」


ワルレックスを見上げる、有機的故に一寸、ロボットとは思えぬ外装、しかし中身そのモノは常識では測り知れぬ、オーバーテクノロジーを積み込んだ兵器。
ワルレックスと同じ、恐竜を彷彿とさせる、だが恐竜とは全く違う――――想像の産物として長きに渡り言い伝えられてきた怪物。
竜を思わせる外見のそれが、ワルレックスの真正面に立ち、ワルレックスを見上げる。


「ドラグリヲ!」


『状態は至って安定。何時でもいけます、ユーザー』
「あぁ……」

それ―――――ドラグリヲの操者、真継雪兎が、自らのサポートを担う少女、カルマへと静かに返答する。


強力な攻撃である筈の先程の攻撃を意にも介さず、ワルレックスは燃え続ける頭部をそのままにし、前進し続ける。
雪兎はドラグリヲの特徴的な武装の一つであるネイルを引きだすと共に、突進する為か体勢を取る。
そして後ろ脚を擦りながら、ワルレックスの全身を、見据える。


「貴様自身に因縁は無いが―――――」


「これ以上僕の街を傷つけるなら――――殺す」



「来い! どちらが本物の竜なのか―――――今ここで、雌雄を決そうではないか!」


「ドラ……グリヲォォォォォォォォォ!!」

                            ―――――――――――――――――――――――

顔面を無表情な白色の仮面で隠した、黒いスーツ服の男達が短機関銃をなりふり構わず連射する。

穴という穴を開けられて朽ちて落ちていくコンクリートの壁面。その壁面から数メートルほど離れた柱を背に、男達から隠れる五人。
茶色の髪の毛がふわりとしていて、可愛らしい(だが今は泣きだしそうな)顔の少女と、正反対にでっぷりと出た腹に、ボサボサとした髪の毛がザ・不潔な中年男。
赤い髪の毛にイケメン然とした、顔の整っている若い男に、グラマラスな色気に満ちているが、健康的な明るさを感じさせる女性。
そして薄着で日本人的な顔つきの、幼いながらも何処か大人っぽさを感じさせる少女と言う、個性的な面々だ。

「あいつら……あいつら一体、何なんだよ!?」

中年男がそう、甲高い悲鳴を上げると、赤い髪の毛の男が淡々と答える。

「さぁな……取りあえず、友好的じゃねえ事は分かるな」
「冷静に分析してる場合か! 本気で狙われてんじゃんか!」

「しょうがないわね……」

そう言いつつ、グラマラスな女性が立ち上がり、柱へと手を振れ――――コンクリートの塊をもぎ取る。

「スレッジ、アリサとリノを連れて逃げて。ここは遊ばせて貰うわ」

女性の言葉に、中年男――――スレッジが、恐怖に顔を歪ませながら反応する。

「本気か!? まだどんな奴らなのかも分かってないんだぞ!」
「だからこそ」

赤い髪の毛の男――――ヘンヨも立ち上がると、手元の二丁拳銃を装填する。

「俺達が引き受ける。奴らが何処から来て、何を考えて俺達を襲ってきやがるのか――――確かめてやる」


「行こう、スレッジ」

少女――――アリサが、惑っていて動こうとしてしないスレッジの服の裾を引っ張る。

「KKとヘンヨなら大丈夫だよ。だから……ね」

キュッと、アリサは服の裾をさっきよりも強く、引っ張る。その手は微かに、震えている様に見える。
スレッジはそんなアリサを見、覚悟を決めたのか少し俯いて、しっかりと前を見ると、二人に言う。

「絶対に追いついてきてくれ、二人とも」
「リノも良いよね?」

アリサにそう聞かれて、薄着の少女――――リノは大きく頷いた。
そして三人は、女性とヘンヨにその場を任して、全速力で逃げ出す。逃げ出しながら、スレッジはリノに聞いた。

「それで、どこに行くんだっけ?」
「……長崎」
「ナガサキ……何処の国だそれは」


スレッジとアリサ、リノが離れた瞬間、女性――――KKは口元に笑みを作ると、柱から飛び出して、コンクリートの欠片を男達の足元に目掛けてぶん投げる。
一瞬、男達の視線がKKの投げたコンクリートを向いた瞬間、音も無く、天高く飛び上がったKKが、男達の一人の両肩に飛び降りた。
そしてしゃがみながら頭部目掛けて、拳を振り下ろす。ボゴッという鈍い音がして、男の頭部に大きな穴が開く

その穴から見えるは、半導体やコードの集合体。つまり――――人間、じゃない。

男の頭部を掴み、KKは男の首をねじ切りながら両足をピンと立てて倒立すると、そのまま体を捻って着地する。
直ぐ目の間に居た男の胸元を掴んで押し倒し、頭部を踏み潰して短機関銃を奪うと、周囲を囲む男達に向かってトリガーを引きながら回転する。
コンクリートと同じ様に男達に穴、穴、穴が開きまくる。

しかしどれだけ撃たれても、男達には血はおろか液体物さえも噴出しない。ただ、撃たれては穴が開き、灰色の煙が昇ってくるだけだ。
何かが、可笑しい。そう思いながら、KKは特製の拳銃で次々と男達を撃ちぬくヘンヨへと、声を掛ける。

「やっぱりコイツらアンドロイドだ。けど、どっか……」
「あぁ、コイツらは俺達の世界のアンドロイドじゃ」

その時、壁面を破壊しながら巨大な何かが乱入してきた。
二十メートル然もあるそれは、男達を邪魔だと示す様に跳ね飛ばし、ヘンヨとKKへと迫る。

「またお客さん?」
「アンドロイドじゃ……ねえな」

男達から奪った短機関銃と、特製拳銃でヘンヨとKKはそれへと攻撃する。
しかしそれは異様に装甲が厚く、全く傷が付く様子も、怯む様子も見えない。次第に距離が縮まっていく。

「まずいな……弾が尽きてきた」
「あいつらのマシンガンも使えないし……どうしよっか?」


何かの頭部に、穴が開いた。

何かの動きが止まり、その場に硬直する。だが、それは一時的な様であと数分くらいしたら、再び動き出しそうだ。

何かが破壊した壁面の穴から、何者かがこちらに向かって歩いてくる、生憎、太陽の逆光で顔は見えない――――見えない、が。


「やるねぇ、アンタ。……で、誰?」


「俺は――――綾小路」



                              ――――――――――――――――――――――

海岸沿い、夕日をバックに二つの影が、礼儀も遠慮も無く襲いくる、モヒカン達が乗る機体をバッタバッタと薙ぎ倒していく。
傍から見ると何とも不思議なフォルムな、人間の体型を絶妙に崩している独特の形状に、無駄な部分を一切を無くした機動性に富んでいる脚部。
と、反対に所々が突っ張っている、強面なスタイル。上手く形容は出来ないが、その二つの影は間違いなく――――ロボット、であり、名称を外殻機と呼ぶ。

「しつ……こい!」

地面を自在に滑りながら、実に目を引く蜘蛛の様な六脚を平行移動させ、モヒカン達にピンク色の中々当たると痛いペイントボールを一斉射撃する外殻機――――プロトファスマ。
そのプロトファスマの操者、アルメリアは叩いても叩いても出てくる、あの台所に居る黒い虫の様なモヒカン達にいい加減辟易する。
しかし突如として空が光りに包まれた瞬間、この世界に着いていて、見た事もない機体に乗った粗暴な男達が、自分達を見た瞬間に襲いかかって来た。
ならばやるしかあるまい、と、相棒のシュレ―と共にモヒカン達を駆逐している訳で。

「はーい、怪我したくなきゃ、さっさと降りてね―」

一方、そのシュレ―が乗り込む、虫の触角を思わせる曲線を描いたアンテナが特徴の外殻機――――アノフェレスが軽くステップを踏みながら走る。
そして一気に地面を蹴りあげると、プロトファスマの攻撃により視界がピンクに染まり、身動きの取れなくなってモヒカン達の機体を次々と蹴りつけていく。
まるで遊んでいる様に見えて、その実、正確無比に頭部を踏み潰す事で、モヒカン達を傷つける事無く機体を沈黙させる。
よほどの集中力と操縦センスが無ければ出来ない芸当である。アノフェレスによって破壊された機体から、次々とモヒカン達が脱出して逃げていく。

「でもシュレ―、あの人達逃がしていいの?」
「良いの良いの。あーいう連中は遅かれ早かれ、世紀末救世主的な人にあべしされるよ」

「それにしても……」

アルメリアはプロトファスマを急停止させて、周囲の景色をもう一度、注意深く観察する。
どこか馴染みのある光景――――だが、どうにも思い出せない。確かずっと昔に――――。

「一先ずここがどこか分かんないと、補給が受けられないし不味いかもね。どうする、アルメリ――――」

その時、シュレ―が何かに気付いてアノフェノスをそちらの方へと歩かせる。
そしてアノフェノスを停止させると、プロトファスマ、というかアルメリアを手を使ってちょいちょいと呼び寄せる。
不思議に思いながら、シュレーの元へと向かうアルメリア。

「ねぇ、アルメリア。このカップルも、私達と同じ境遇なのかな?」
「カップル?」


シュレ―の言葉に、アルメリアはますます不思議に思いながら、そのシュレ―がいうカップルへと目を移す。
次第に拡大していき――――瞬間、アルメリアの息が詰まる。

そのカップルは、あまりにもあの二人と酷似していた。しかしあの二人よりも――――いや、というより、あの二人の若い頃に、似ている。


「お父さんと……お母、さん?」

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