その子には、機械の翼が生えていた。
ずっと前から、思い出せない位遠い昔に「人間」と呼ばれていた存在は、海の底でひっそりと眠っている。一生、起きる事は無いだろう。と、お爺様は僕に言った。
代わりに世界は海の中を鮮やかに彩る魚や、空を優雅に支配する鳥やその他諸々、そして僕の様な人間に作られたロボットだけが、暮らす様になった。
人……お爺様から居なくなる前に自己発電の術を学んだ僕は、一日を好きな様に過ごす。
代わりに世界は海の中を鮮やかに彩る魚や、空を優雅に支配する鳥やその他諸々、そして僕の様な人間に作られたロボットだけが、暮らす様になった。
人……お爺様から居なくなる前に自己発電の術を学んだ僕は、一日を好きな様に過ごす。
僕は何時も、僕を作ってくれたお爺様の趣味である絵画を描く為に、この崖の上でスケッチしている。毎日、毎日。
常に空は青く、そして海も蒼く、何時も使う絵の具は青と白しか無い。小船で先を行けば、人類住んでいたビルと呼ばれる住処の残骸がある。
常に空は青く、そして海も蒼く、何時も使う絵の具は青と白しか無い。小船で先を行けば、人類住んでいたビルと呼ばれる住処の残骸がある。
僕はあのビルと呼ばれる場所は好きじゃない。魚達は自由自在にビルの中を泳いでいるけど、僕にはビルが景観の邪魔だとしか思えないから。
移動する手段は小船、だけ。お爺様が唯一僕に遺してくれた物で、オールを漕いで場所を決めて。海の中を見て魚を描く。
小舟の下には色々な魚が通る。小さな魚が群れを成して通ったり、大きな魚が大仰に通って一瞬下が暗くなると、少しドキリとする。
お爺様の家と、崖を往復する日々を年数に換算して多分……忘れた。多分結構長い月日、壊れたら修理してを繰り返して、今乗ってる小舟は10代目になる。
移動する手段は小船、だけ。お爺様が唯一僕に遺してくれた物で、オールを漕いで場所を決めて。海の中を見て魚を描く。
小舟の下には色々な魚が通る。小さな魚が群れを成して通ったり、大きな魚が大仰に通って一瞬下が暗くなると、少しドキリとする。
お爺様の家と、崖を往復する日々を年数に換算して多分……忘れた。多分結構長い月日、壊れたら修理してを繰り返して、今乗ってる小舟は10代目になる。
『今日も昨日も明日も明後日も空は青く海は蒼い』
と、僕の唯一の話相手であるサン爺さんが、空を見るなりガハハと笑ってそう言った。その台詞は、昨日も聞いた。
サン爺さんは何時頃からか、僕と関わる様になった老人の姿をしたロボットで、僕が絵を描くのを止めて家に帰って来ると、不思議な事に何時もいる。
頭の機能が可笑しいのか、ネジが外れているのか、同じ話を二日に一回はする。けど、その話のバリエーションはとても広くて。
サン爺さんは何時頃からか、僕と関わる様になった老人の姿をしたロボットで、僕が絵を描くのを止めて家に帰って来ると、不思議な事に何時もいる。
頭の機能が可笑しいのか、ネジが外れているのか、同じ話を二日に一回はする。けど、その話のバリエーションはとても広くて。
何故、雨が降った後に虹が出来るのか、とか。
何故、生物は哺乳類とか色んな種類に分かれたのか、とか。
何故、鳥は飛び、魚は泳ぐのか、とか。
何故、生物は哺乳類とか色んな種類に分かれたのか、とか。
何故、鳥は飛び、魚は泳ぐのか、とか。
同じ話は繰り返すけどテーマは尽きず、僕は何時もサン爺さんの話を聞くのが楽しみになっている。
夕方に帰ってきて、薄暗くなるまでサン爺さんは話し終えると、どこかに去っていく。そして明日、同じ時間帯にやって来る。
とても博識な事だとか、一体どこに行って、如何してここに来るのか、サン爺さんについての謎は尽きない。
だけど僕はその謎を、解いてやろうとは思わない。知る必要はないし、サン爺さんのガハハ笑いを聞くと、そんな事はどうでも良いと思うから。
夕方に帰ってきて、薄暗くなるまでサン爺さんは話し終えると、どこかに去っていく。そして明日、同じ時間帯にやって来る。
とても博識な事だとか、一体どこに行って、如何してここに来るのか、サン爺さんについての謎は尽きない。
だけど僕はその謎を、解いてやろうとは思わない。知る必要はないし、サン爺さんのガハハ笑いを聞くと、そんな事はどうでも良いと思うから。
今日も僕は小舟を漕ぎ、あの崖へと向かう。
空は青いと言ったが、何時も青いとは限らない。たまに機嫌が悪くなって、灰色になったり雨を降らしたりする。
そんな時はすぐに引き返して、一日を家で過ごすのだが、僕は今日、妙に空が不機嫌でも絵を描きたい気分になった。
頬を濡らす、小雨のリズム。これくらいの雨なら大丈夫だろうと思った矢先、空が怒って雷を落とした。
空は青いと言ったが、何時も青いとは限らない。たまに機嫌が悪くなって、灰色になったり雨を降らしたりする。
そんな時はすぐに引き返して、一日を家で過ごすのだが、僕は今日、妙に空が不機嫌でも絵を描きたい気分になった。
頬を濡らす、小雨のリズム。これくらいの雨なら大丈夫だろうと思った矢先、空が怒って雷を落とした。
これはまずい。僕は急いで船を引き返そうとしたけど、空と仲が良い海も、同調する様に機嫌が悪くなる。
雨が強くなってきて、僕はオールを漕ごうとするけど、海はオールを強く掴んで僕を逃がそうとしない。軋んでいく、小船。
浸水してきた。雨の水くらいは防水加工で余裕だけど、流石に海に落ちたら僕は一発で壊れてしまう。だけどもう、遅い。
広がっていく海の水は、僕の足元を濡らしていき、やがてズボン全体にまで昇ってきた。中で何かがショートしてる音がする。
雨が強くなってきて、僕はオールを漕ごうとするけど、海はオールを強く掴んで僕を逃がそうとしない。軋んでいく、小船。
浸水してきた。雨の水くらいは防水加工で余裕だけど、流石に海に落ちたら僕は一発で壊れてしまう。だけどもう、遅い。
広がっていく海の水は、僕の足元を濡らしていき、やがてズボン全体にまで昇ってきた。中で何かがショートしてる音がする。
慌てないのは僕がロボットだから。嫌でも物事を冷静に観察できてしまう。けれど冷静に考えてこんな窮地になったのは初めてだ。
上半身。半分ぐらい浸かってくる。体が動けなくなってきて、ボートは完全に海に引きずり込まれてしまった。僕は今から魚を丸呑みするペリカンの様に、海に丸呑みされる。
感覚消失。僕の体はごくごくと、海に飲まれて食べら
れ
い
上半身。半分ぐらい浸かってくる。体が動けなくなってきて、ボートは完全に海に引きずり込まれてしまった。僕は今から魚を丸呑みするペリカンの様に、海に丸呑みされる。
感覚消失。僕の体はごくごくと、海に飲まれて食べら
れ
い
て
その時、僕の体が宙をふわりと浮かんだ。ペリカンの大口から魚を横取りする、鳥。僕はその魚だ。
真下で小船が海底へと沈んでいくのが遠めで見えた。アレを一から作るのは手間が掛かるのに、全く困ったなと思う。
各部の駆動系に水が入って僕の体は全く動かない。それ故に僕を引っ張っている何かに襟元を掴まれていて、マリオネットみたいにブラブラしてて不格好。
上手い具合にその何かは、僕が何時も絵を描いている崖へと僕を乱暴に落とした。僕はそのまま投げされて大の字で地面にぶつかる。
真下で小船が海底へと沈んでいくのが遠めで見えた。アレを一から作るのは手間が掛かるのに、全く困ったなと思う。
各部の駆動系に水が入って僕の体は全く動かない。それ故に僕を引っ張っている何かに襟元を掴まれていて、マリオネットみたいにブラブラしてて不格好。
上手い具合にその何かは、僕が何時も絵を描いている崖へと僕を乱暴に落とした。僕はそのまま投げされて大の字で地面にぶつかる。
身動き、取れない。早くボディを交換しないと。と思うけど、これだけ首と頭以外のボディが壊れていると、何時もみたいにスペアを取り換える事が出来ない。
腕も足も使えない。初めて僕は、自分が壊れるんじゃないかと思う。長く暮らして来たけど、これはピンチだ。あぁ、大ピンチだ。
サン爺さんはこの場所を知らないだろうし、それに知っててもサン爺さんが僕のボディを変えてくれるとは正直思えない。
このままじゃ僕は何も出来ないまま、崖の上で朽ちる事になる。どうしよう。絵を描けなくなると、お爺様との約束が果たせなくなる。
腕も足も使えない。初めて僕は、自分が壊れるんじゃないかと思う。長く暮らして来たけど、これはピンチだ。あぁ、大ピンチだ。
サン爺さんはこの場所を知らないだろうし、それに知っててもサン爺さんが僕のボディを変えてくれるとは正直思えない。
このままじゃ僕は何も出来ないまま、崖の上で朽ちる事になる。どうしよう。絵を描けなくなると、お爺様との約束が果たせなくなる。
僕を助けた(厳密には全然助かってないけど)何かが、上から降りてくる。
機嫌を損ねていた空が少しだけ調子良くなったのか、ちょっとずつ暗い空が晴れてきて能天気な太陽が何かを照らす。
何かの姿が影で見えない。けれど段々、何かの姿が僕の目に鮮明に映り込みはじめる。
機嫌を損ねていた空が少しだけ調子良くなったのか、ちょっとずつ暗い空が晴れてきて能天気な太陽が何かを照らす。
何かの姿が影で見えない。けれど段々、何かの姿が僕の目に鮮明に映り込みはじめる。
何かは下にひらひらした物……スカートいう名前の服を履いていて、上は変な星とかが付いていて、やけに肩が張っている。どっちも変な服装だ。色は緑色。
髪の毛は短く、段々と顔が見えてくる。僕と同じ、人の顔をしている。何かが握っている刃の部分がとても長い刃物を、降りて来るなり僕に突き付けた。
髪の毛は短く、段々と顔が見えてくる。僕と同じ、人の顔をしている。何かが握っている刃の部分がとても長い刃物を、降りて来るなり僕に突き付けた。
「貴様はオーバーズか!」
何かはそう言って、怖い顔でそう僕に叫んだ。確かデータには、こういう顔つきは女の子と言われる属性に入るらしい。
何でこの子はこんなに怖い顔をしているのだろう。僕には助けてもらった半面、失礼だが何がなんだかさっぱりだ。
こういう時はどう返せばいいんだろう。素直に答えた方が良いのだろうか。
何でこの子はこんなに怖い顔をしているのだろう。僕には助けてもらった半面、失礼だが何がなんだかさっぱりだ。
こういう時はどう返せばいいんだろう。素直に答えた方が良いのだろうか。
「僕はロボットだ。体を見れば分かるだろう」
素直に答えた。その子……女の子と呼んでおこう。女の子は僕の返答を時間が止まったみたいに動きを止める。
僕も何をする訳というか全く動けないので、女の子を見つめる。僕と女の子の間だけ、世界が止まってるみたいだ。
機嫌を取り戻した空がご機嫌で青くなる。女の子の顔が、今度はハッキリ見える。目が黒い。まゆ毛太い。口は薄い。
僕も何をする訳というか全く動けないので、女の子を見つめる。僕と女の子の間だけ、世界が止まってるみたいだ。
機嫌を取り戻した空がご機嫌で青くなる。女の子の顔が、今度はハッキリ見える。目が黒い。まゆ毛太い。口は薄い。
「そう……か……やはりもう……」
一転、女の子は厳しい顔つきが解けて、代わりに困っている様な、泣きそうな良く分からない表情を浮かべた。
女の子は刃物を近くに置くと、僕の傍らに座って、頭を下げて、言った。
女の子は刃物を近くに置くと、僕の傍らに座って、頭を下げて、言った。
「すまない、突然の無礼を許して欲しい。僕はアマツ。人類解放機構の一隊員だ。それで君は……」
「だから……僕はロボットだ。ここで住んでるだけの」
「あぁそうだったな、申し訳無い」
何が何やらさっぱりだ。女の子は自分の事をアマツと名乗った。それで人類解放機構とかいう良く分からない所に属してるらしい。
アマツはスカートのポケットに手を指し伸ばすと、小さな物体を取り出した。懐中、時計だ、
アマツは懐中時計をしばし見つめて、ふぅ、と息を付くと、僕に聞いた。
アマツはスカートのポケットに手を指し伸ばすと、小さな物体を取り出した。懐中、時計だ、
アマツは懐中時計をしばし見つめて、ふぅ、と息を付くと、僕に聞いた。
「所で……貴方はここに住む以前は何処に居たんだ? かなり長く居るみたいだが」
「お爺様……僕を作った人がここに住んでいて、その人が死んでから僕はずっと、ここで住んでいる。それ以外の事は、分からない」
「お爺様……僕を作った人がここに住んでいて、その人が死んでから僕はずっと、ここで住んでいる。それ以外の事は、分からない」
そう答えると、アマツは少し、いやかなり驚いた顔を見せた。
「本当にそれ以外の事は覚えていないのか? どこで作られたのかとか」
「だから僕はここで作られて、ここ以外の場所なんて知らないし行った事も無い。知っている事は、お爺様に教わった事だけだ」
「だから僕はここで作られて、ここ以外の場所なんて知らないし行った事も無い。知っている事は、お爺様に教わった事だけだ」
アマツはますます、顔を困らせた。僕は何か変な事を言ったのだろうか。ナニガナンダカダヨ。
というかさっきから動けないんだけど、どうにかならないのかな。僕は流石に辛抱耐えなくなって、アマツに言った。
というかさっきから動けないんだけど、どうにかならないのかな。僕は流石に辛抱耐えなくなって、アマツに言った。
「あのさ……体中に水が入って、今の僕は頭以外動かせないんだ。……家まで、連れていってくれるかな」
僕がそう言うと、アマツは僕の体を上から下まで眺めた。そして小さく頷くと、刃物を触ってマジックの様に消した。
そして細い体と裏腹に軽々と僕の体を両腕で持ち上げると、僕に言った。
そして細い体と裏腹に軽々と僕の体を両腕で持ち上げると、僕に言った。
「一先ず貴方を助けるけど、その後は僕と協力して貰う。もしかしたら君は、そのお爺様の考えで、世界から隔離……いや」
「敢えて引き剥がれていたのかもしれない。貴方自身が知らない、何か大きな秘密の為に」
全く状況が理解できてないけど、アマツは僕を家まで連れていってくれる様だ。
良かった。このまま身動きとれないまま、錆付いて壊れるなんてまっぴらごめんだから。
そしてアマツは空を見上げると、背中から大きく音を立てて羽ばたく鳥みたいに、その体よりずっと大きい、翼を広げた。
良かった。このまま身動きとれないまま、錆付いて壊れるなんてまっぴらごめんだから。
そしてアマツは空を見上げると、背中から大きく音を立てて羽ばたく鳥みたいに、その体よりずっと大きい、翼を広げた。
翼は透き通っていて、今にも折れちゃいそうなくらい華奢で、太陽の光で綺麗な虹色を見せるそれに、僕は見惚れていた。
アマツが翼を閉じて、開く。軽く、小さくジャンプしただけで、僕とアマツはその場から飛んでいった。
アマツが翼を閉じて、開く。軽く、小さくジャンプしただけで、僕とアマツはその場から飛んでいった。
「それで貴方の名前は? 私の事は、アマツと呼んで貰って良い」
アマツが僕の名前を聞く。僕の名前……僕の……。
「……忘れた」
「忘れた? ジョークかい?」
「いや……ずっと、僕は僕の名前を言うなんて事をした事無かったから、僕は僕自身の名前を忘れてしまっている」
「忘れた? ジョークかい?」
「いや……ずっと、僕は僕の名前を言うなんて事をした事無かったから、僕は僕自身の名前を忘れてしまっている」
「なら……」
「貴方の事、何て呼べばいい?」
「僕の事……を? じゃあ……」
「僕の事……を? じゃあ……」
「ブルーって呼んでくれ。好きな、色だから」
BLUE END WORLD
終わる世界と翼を生やした少女
単発物をやってみたかっただけなんだ、すまないが続かない
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