チェンジ・ザ・ワールド☆
風名3日目・No.1
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私のやんごとなき王子様
3日目
「おっはよー!!」
翌朝学校の玄関で靴を履き替えていると、元気な声でさなぎが走り寄って来た。
「おはよう!」
昨日の夜じっくり考えて考えて、やっとどこを担当するか決める事が出来た私は、久しぶりに元気よく挨拶を返す事が出来た。
はあ。やっぱり元気よく挨拶するのって爽快で気持ちいい!
「おっ、元気だねえ、美羽」
隣りに並んで笑顔をくれるさなぎに、私も負けじと笑顔で答える。
「そりゃあもう! やっと決めれたからね。はあ~、あんなに悩んでたのが嘘みたいにさっぱりしてるわ」
「ふふっ、現金だねえ。じゃあこれから真壁先生のとこに提出しに行くの?」
「うん」
「そっか。演劇祭、頑張って盛り上げようね!」
さなぎからパワーをもらい、私は真壁先生のいる職員室へと急いだ。
「先生、遅くなりました!」
私は朝一番、教室に向かう前に職員室に立ち寄り、真壁先生に例の担当希望記入用紙を提出していた。
頭を下げて用紙を握った腕をずいと差し出した格好のままで止まる私に、
「おう、決めたか」
と、相変わらずの調子で笑ってそう言うと、先生は用紙を受け取った。次にそこに書かれた部署を見て少し驚いた顔をする。
「……演劇か。お前演技なんて出来るのか?」
「えっと、村人Dくらいならなんとかなるかと……」
「まあ、王子役の風名と従者役の波江以外のキャストは今日投票とくじで決めるらしいし、村人Dになることを祈っとくんだな」
そう言って私の頭を軽く叩いた。
「はい。失礼します!」
やっと清々しい気持ちが戻って来た。
職員室から出て行く足取りも軽い。今なら100メートル走で自己ベストが出せそうってくらい軽い。
私が選んだのは劇の出演者。風名君は相手役をやって欲しいだなんて言ってくれたけど、私にはそんな大役もちろん無理って分かってる。だけどやっぱり風名君の演技を近くで見たいって思ったんだ。
それに、もしかしたらもっと風名君と仲良くなれるかもしれないし、私の事を亜里沙様に話してたっていう内容も聞けるかもしれないじゃない。
実はそれが気になって仕方ないんだけど。
でも自分の意志で出演者側を選ぶ人は、本当にごくわずかなんだよね。だって、ほら、うちの学校本物の芸能人がいっぱいでしょ? 一般人で立候補するのはよっぽどのアホか大物。風名君をはじめファンの子が抜け駆けして出演者になるのを選ぶっていうのはうちの生徒に限ってないから、ちょっと罪悪感……っていうか、周りから何て言われるかちょっと不安。
「うわ、今更怖くなってきちゃった……」
どっと後ろから押し寄せて来たマイナス思考に思わず足を止めると、丁度たどり着いた自分の教室のドアが開き渦中の風名君が現れた。
「おっと、小日向。おはよう。どうした? 顔色悪いみたいだけど?」
「あっ、風名君、おはよう……えっと、その……」
思わず口ごもる私に、風名君は相変わらずの爽やかな笑顔で言葉の続きを待ってくれてる。
本当に優しいなあ。
ごくりと唾を呑み込んで間を置くと、私は風名君の腕を掴んで廊下へと引っ張り出した。
廊下の端の窓際へ行くと、風名君の腕を放して小声で告げた。
「あのね、風名君。私、演劇担当に決めたんだ……」
「マジっ!?」
びっくりするくらい大きな反応が返って来て、私は思わず一歩下がる。
風名君はすごく嬉しそうに私の両手を握ると、
「ありがとう、小日向! 一緒に頑張ろうな!」
「うっ、うん……よろしくお願いします」
あまりの勢いにうまく頷けないでいる私を他所に、風名君は私の手を握ったまま続けた。
「あっ! そうだ。小日向、今日の放課後、暇?」
「え? 暇……だけど」
「じゃあちょっと買い物行きたいから付き合ってくれないか?」
「えっ!?」
なんでこんな展開になっているのか分からない。風名君と買い物!? もし雑誌記者とかに見られたりしたら、それってかなりヤバいんじゃないの!?
目を見開いて固まっていると、風名君が手を放して少し恥ずかしそうに言った。
「いや、あのさ、白鳥の湖の勉強しようと思ってたんだけどさ、なんか男の俺がそういった関係の本とか買うの、ちょっと勇気がいるっていうか……」
ああ、なるほど。そう言う事か。
風名君も普通の男子高校生なんだなあ、なんて妙に感心してしまった。
「あ、うん。いいよ。私でよければ」
勉強熱心な風名君の役に立てるなら、ファンの嫉妬なんて怖くない。って自分を奮い起こしてみる。
だってこんなに嬉しそうな顔をしてる風名君を間近で見られるなんて、すっごく貴重なんだもん。
「サンキュ、すっごい助かる。学校の図書館で見れるやつは全部目を通したんだけど、他のも見たくてさ」
「そうなんだ、風名君って勉強熱心なんだね」
「そんなことないよ。自信が無いだけ」
そう言って風名君はにっこり微笑んだ。
斯くして私、小日向美羽は、今日の放課後アイドルの風名玲君と買い物に行く事となった。
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