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風名3日目・No.2

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私のやんごとなき王子様












 今日一日ずっと緊張しっぱなしだった私は、放課後教室で風名君から声をかけられた驚きでこけてしまった。


「わひゃいっ!!」


 という意味不明な叫びと共に……


「大丈夫、美羽っ!?」

「小日向!?」


 さなぎと風名君が椅子から見事に転げ落ちた私を助け起こしてくれた。


「いたたた……ご、ごめん。大丈夫……」


 は、恥ずかしすぎる。もしかしてパンツ見えてないよね!?

 私は慌ててさなぎに目で「パンツ大丈夫? 合図」を送った。

 それに気付いたさなぎは哀れむように私を見ながらも、「大丈夫」と頷く。

 良かった、風名君にパンツ見られたら生きて行けないもんね。


「小日向、大丈夫か? 買い物行ける?」

「これくらい平気。い、行こうか?」


 風名君が私の腕を取って立たせてくれた。紳士だなあ。

 まだこけた恥ずかしさで軽くパニックだけど、なんとか冷静になろうと気付かれないように呼吸を整える。


「それじゃあ、行ってらっしゃい。気を付けてね」

「うん、またね、さなぎ」

「お疲れ、佐和山」


 さすがに風名君と二人きりは気が引けたのでさなぎについて来て欲しいと頼んだけど、自分の担当の集まりがあるとかで一緒には行けなかった。

 そのさなぎに送り出され、私は風名君と学校を出た。

















 注目され続けながら歩くのって、すごい精神的にきついんだなあ。

 風名君って普段変装とかしないから、街を歩いてると大変じゃないかと思う。学校以外での風名君を知らないから分からないけど、無事に買い物出来るか心配。

 私のそんな不安を他所に、風名君は私の隣りを歩きながらごく自然に仕事の話しなんかをしてくれる。普段知ることの出来ない芸能界の裏側の話しは、なんだか面白かった。


 そして気付けば目的の書店の前に到着。

 来るまでに何人かが風名君の事を見てひそひそ話してたけど、追いかけられたりもせずここまでは順調だった。


「白鳥の湖関係の本とDVDが欲しいんだけど……」

「演劇関係の書籍ってどこかな?」 


 ビルがまるごと書店になっている建物の一階で二人して看板を睨みつけていると、


「あのっ、風名玲君ですよねっ?」


 女の子2人組がこちらへやって来た。

 とうとう来たかと私は肩に力が入ってしまう。


「はい、風名です」


 爽やかに答える風名君に女の子達はきゃあと声を上げ、バックからノートとペンを急いで取り出した。


「あのっ、良かったらサインもらえますか!?」

「もちろん、いいですよ」


 すごい。風名君って本当にすごいなあ。嫌な顔一つしないんだもん。

 サラサラとサインを書くと、優しげに微笑んだ。斜め後ろからそれを見ている私までくらみそうなくらい、カッコいい顔で。


「あっ、ありがとうございますっ! 桜亜里沙さんとのドラマ、毎週楽しみにしてます! お仕事頑張ってください!」

「ありがとう、頑張ります」


 満面の笑みで何度も手を振りながら去って行く女の子達を見送ると、風名君は何事もなかったみたいに私を振り返った。


「ごめん、騒がしくしちゃって。演劇関係って何階か分かった?」

「え? あ、うん。4階みたい」

「じゃあ行こうか」


 書店の中に入った風名君を、すれ違う人たちが確認して騒ぎ出した。

 これって、本当にヤバいんじゃないの?

 何て言うか集団パニックってやつで、一人が騒ぎ出したらあっという間に周囲に広がるんじゃないかと恐ろしくなる。

 それでも平然と風名君はエレベーターに乗り込んで、そこでもまたサインを頼まれてやってた。


 内心穏やかでないまま目的の白鳥の湖関係の本を探している間に、とうとう私達の周りは人だかりが出来ちゃって、風名君はサインと握手攻めにあって身動きが取れない状態になっていた。

 やっぱりこうなるよね。だって今若手ナンバーワンのアイドルなんだもんね。ここに来るまでがおかしかったんだ。

 なんて考えてる場合じゃない。どうしよう、助けなきゃ……でもどうやって?

 白鳥の湖の本とDVDを抱えた腕に力を入れると、私はふと顔を上げた。

 すうっと息を吸い込み、お腹に力を入れると人だかりに向かって声を発した。


「ああ、どうして私を追い回すのです、高貴なおかた。私があなたがたに一体何をしたというのでしょう?」


 一瞬辺りがしんとなる。

 風名君も突然演技を始めた私の言葉に驚いていたけど、一瞬笑ってすぐに人をかき分けながら私の方へやって来た。

 こちらへ向かってきながらすぐに悲しげな表情を作り、胸に手を当てて


「私は……なんということを」


 そう私の台詞の続きを演じた。

 あまりにその声音が感情的で、私は思わず見入ってしまったけど、慌てて続ける。


「……あなたが殺そうとした白鳥は、私だったのです」

「あなたが白鳥? まさか!」


 そして風名君は私の目の前まで来た。

 と、私は直ぐさま風名君の腕をしっかり掴み、一目散に階段へと走った。

 あまりの出来事にその場にいた誰もが私達を追いかけては来なかった。

 何階か下まで降りた所で風名君の腕を放し、私はふうと息を吐く。


「風名君は近くの公園で待ってて。私はこれ買って来るから」

「小日向、ありがとう」

「ううん。いいの」


 しかし私ってば感じ悪かったかな。いきなり下手な芝居をやって風名君を連れ出したりして。

 でも一人であんなに大勢のファンの人を相手にするなんて無謀だよね。体がいくつあっても足りない。 















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