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チェンジ・ザ・ワールド☆
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風名3日目・No.3

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streetpoint

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私のやんごとなき王子様












 なんとか目的の物、っていっても私が適当に見繕って買ったから風名君のお気に召すかは分からないけど、手に入れた本とDVDを抱えて風名君の待つ公園へと急いだ。

 町中の公園にしては緑が多くて静かなその公園に入ると、すぐに風名君が私を見つけてくれた。


「ごめん、小日向に迷惑かけちゃったな」

「ううん、私は平気」

「はい、これ」

「ありがとう」



 風名君はジュースを買ってくれていて、近くのベンチに二人で腰掛けることにした。

 本を渡すと、中を見てすごく喜んでくれた。


「うわ、サンキュ。小日向について来てもらってホントに良かった。俺一人じゃ買えなかったよ」

「ううん。でも風名君いつもあんな感じなの?」


 さっきの人だかりを思い出してちょっとうんざりしながら尋ねると、風名君は苦笑した。


「まあ、そうかも……でもいつもはマネージャーとかSPさんが一緒だからあそこまで囲まれる事は滅多にないかな」

「そうなんだ」


 アイドルって大変なんだなあ。良かった、一般人で。

 ゴクリとジュースを飲むと、風名君が急に笑った。


「さっきの小日向の演技、びっくりした」

「えっ? ああ、あれ……風名君が困ってたから助けなきゃって思って、でもどうしていいか分かんなくて。今日もらった劇の台本の台詞がふと浮かんで、何でか分からないけど無意識に出ちゃってーーーって、う、わあ……今更だけどすっごい恥ずかしいっ!」


 もう、今日は風名君に声かけられてこけたり、人前で大根演技したり、私って本当に恥ずかしい!

 わっと顔を伏せると、風名君が急に真面目な声になる。


「すごく感情がこもってて、良かったよ。上手だった。周りの人たちも黙って聞き入ってたじゃん」

「あれって聞き入ってたんじゃなくて、びっくりしてただけだよ」

「そんなことないよ! 俺は感動したんだから!」


 顔を上げると、すごく真剣な顔の風名君が目の前にいて、私は胸が痛くなった。


「俺、やっぱりオデット役は小日向にやってほしい」

「そ、そんなの無理だよ。私には出来ないし、今日配役決まったじゃない。私はオデットのお友達の白鳥役なんだもん」


 そう、今日くじと投票によって決められた配役は、王子は元から風名君だし風名君の従者は潤君。そして投票でオデット姫が亜里沙様、オディールが同じ3年でモデルをやっている女の子に決まったのだ。

 そして私は今言ったみたいにくじでオデット姫の友達。台詞はほとんどない。


「そうだけどさ……俺はオデット役は小日向に投票したのに」

「えっ!?」


 今、風名君何て言った? 私をオデット役に投票した? 何で?

 驚いて動かなくなった私に風名君が微笑みかける。

 本当にこんなに近くで風名君の顔が見れるなんて、幸せだな。ファンの子からしたら羨ましい限りだろうなあ。

 何だか訳がわからなくなって変な事を考え出してる。


「俺は……」

「玲!!」

「わっ!?」


 びっくりした。

 風名君が何か言いかけた所で突然大声が頭上から振って来て、私は思わずびくりと体をすぼめてしまった。


「あ、マネージャー……」


 振り向くとそこにはスーツをぴしっと着た男性が怒りをあらわに立っていた。


「お前は、今日の収録の時間、忘れてるんじゃないだろうな?」

「忘れてないよ!」

「じゃあどうして俺に黙って女の子と二人で出かけてるんだ!?」

「演劇祭に必要な物を買いに行くのに、俺一人じゃ心もとなかったから彼女に無理言ってついて来てもらったんだ」

「バカか! お前はアイドルの風名玲なんだぞ! 少しは自分の立場をわきまえろ! しかも何回も電話したのに出もしないで!!」


 血管が切れるんじゃないかってくらいにこめかみに大きな青筋を立てて怒るマネージャーさんに、私は立ち上がって頭を下げた。


「すみません、私がもっと配慮して一人で行けば良かったんです! 風名君を許してあげてください!」

「小日向は悪くない! 俺が悪いんだから謝る必要ないよ! 俺が買い物について来てくれって頼んだんだから」

「あーもういいっ、やかましい! GPSのおかげでここが分かったからいいようなものの、以後気をつけるように。それと、キミ」

「はい!」


 急に指をさされて背筋を伸ばす。


「玲はアイドルでしかもまだ高校生だ。こんな所で熱愛だのなんだのとマスコミに騒がれたらイメージダウンになる。女性ファンが激減してしまうからね。そこの所をしっかりと理解しておいてもらいたい」

「ーーー分かってます」


 熱愛だとか関係ないもん。だって風名君とはそういうんじゃないから。

 分かってる。

 分かってるけど、こうやって知らない人に頭ごなしに言われると、すっごく辛い。

 アイドルの風名玲がお前みたいな一高校生の相手を本気でする訳ない、とバカにされてるみたいだ。

 チラリと横に立つ風名君を見上げると、すごく悔しそうに地面を睨んでいた。


「それじゃあ行くぞ。玲」

「分かった……小日向ーーー」


 さっさと行ってしまったマネージャーさんを追いかける前に、風名君は私の目の前で頭を下げた。


「ごめんな、嫌な思いさせちゃって……でも、俺はアイドルじゃない、一高校生の風名玲として小日向と接したいんだ」

「風名君……」

「だから、これからも変わらず話してくれよな……明日からの合宿、よろしくな。それと、今日の7時から生放送の音楽番組に出るから、良かったら見て」


 顔を上げた風名君は少し寂しそうに笑ってそう言うと、手を振って去って行った。

 私もアイドルじゃない風名君と、もっと仲良くなりたいよ。

 合宿の間にもっと仲良くなれるかな? 明日からの合宿がすごく楽しみだ。

 私は風名君の優しい笑顔の残像を心に焼き付けるように大きく深呼吸をして、ゆっくりと歩き出した。







〜〜〜







 家に帰ってからの私は、ぼんやりとして夢の中にいるような気分だった。

 一日がこんなに長くて濃いと感じたのは初めてかもしれない。

 色んなことが起こって、明日からの合宿とか、世間では夏休みだとかそんなことも忘れかけてる。

 おかげで手元はすっかり止まってしまっていた。


「あっ、電話……」


 そんな夢見心地の私を現実へと戻してくれたのはさなぎからの電話だった。

 合宿用の荷造りの途中だった私は、ジャージやらタオルやらの間に埋もれて鳴っている携帯を掘り出して通話ボタンを押した。


「もしもし?」

『お疲れ~! 荷造り終わった?』


 明るいさなぎの声が携帯の向こうから飛んで来て、私は笑顔になる。


「真っ最中だよ」

『そっか。ねえ、明日駅で待ち合わせて一緒に行かない?』

「うん! 一緒に行こう」

『決まり。しっかし一週間ってよく考えたら短いよね。去年と一昨年って一体どんなことやってたか思い出せないもん』

「あははっ、何とか仕上げなきゃってそのことに必死だったもんねえ」


 当時の様子を思い出して私は苦笑した。

 今年は一体どんな合宿になるんだろう。


『でもさ、美羽が高校生活最後の演劇祭だからどこを手伝うか決められなかったの、すごく分かる。本当に今度で最後なんだもんね……』

「さなぎ……」

『だから、お互い悔いのないようにしっかり仕事して、最っっっっっっっっ高の演劇祭にしようね!』

「うん!」

『じゃあ明日、駅でね。おやすみ』

「おやすみ」


 私はさなぎのおかげですっかり合宿モードに気分を切り替えることが出来た。

 そしたら今度はすごくドキドキしてきて、今日の放課後の出来事を思い出した。


「……やっ、やだ、私ったら! 何で顔熱くなってるの?」


 何故か急に暑くなった顔をパタパタと手で顔を扇ぎ急いで残りの荷造りを済ませると、私はパパとママのいるリビングへと部屋を後にした。

 明日から一週間会えないから、たっくさんお話をするんだ。


 不安なことが遥かに多いけど、やっぱり楽しみもすごく多くて、なんだかとっても大切な一週間になる気がした。

 さあ、合宿頑張るぞ!!















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