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利根3日目・No.2

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streetpoint

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私のやんごとなき王子様












 無事校門を出た所で利根君と合流すると、私達は手芸店へと向かった。

 私もたまに買いに来るお店だったから、利根君が欲しいっていう材料や生地の場所へスムーズに案内出来た。

 たったそれだけでちょっと役に立てたかも。なんて思っちゃう私は志が低いかな。



 買い物は細々した物ばかりで大きなものはほとんどなかった。

 おかげで二人でも余裕で持てる位の荷物だったんだけど、何せ買い揃える物の種類が多かったおかげで手芸店だけじゃなくて小物店や文具店などあちこち回る事になった。そのため、全部の買い物が終わった頃にはすっかり疲れてしまっていた。


「ごめんね、あちこち連れ回しちゃって。疲れただろう?」

「ちょっと疲れたけど、すごく楽しいよ……でも利根君って色んなお店知ってるんだね。さっきの和物の小物店、すっごく気に入っちゃった!」

「あそこの店は俺の母の気に入りでね。うちは着物を着る事が多いから小物なんか良く買うんだけど、大抵あそこの店で買うんだ」

「へえ、そうなんだ。利根君のお母様のお気に入りのお店かあ……奥のショーケースに入ってるかんざしとかはびっくりするような値段だったけど、巾着とか着物の切れ端なんかは種類が豊富だし値段も手頃で、見てて楽しかった。また行きたいな」


 先ほど行った店内の様子を思い出しながら私が言うと、利根君が笑った。


「小日向さんに気に入ってもらえて嬉しいよ。今度日傘を入荷するって言ってたから、興味あるならまた見に行く?」

「うん、行きたい!」


 ああ、本当に利根君と一緒にいると穏やかな気持ちになるな。

 笑顔の利根君につられて笑ってしまう。

 人間怒ってる人よりも笑ってる人の方が長生きするって統計があるくらいだもんね、笑顔って心身共にいい影響を与えるんだ。だから利根君は皆に好かれるんだろうな。


「ちょっと休憩しようか……あそこのお店でお茶でも飲もう」

「そうだね、喉乾いたし冷たいのが飲みたいな」


 そう話して向かい側の道路にあるカフェへと体を反転させると、


「危ないっ!」

「わっ!?」


 突然脇道からバイクが飛び出して来た。

 私はあまりに突然の出来事に体が硬直して、目の前に迫って来たバイクとぶつかる覚悟で思いっきり目をつぶった。

 次にぐいっとすごい力で体が傾き、何かにぶつかる。ふわりと利根君の甘い匂いがしてきて、なんだか利根君に包まれているような感覚になる。

 ああ、合宿直前に事故で入院なんて、私はなんてついてないんだろう。いや、死んじゃうのかな? きっとギリギリまで担当希望を決められず、色んな人に迷惑をかけた罰が当たったんだ。でも最後に利根君の優しい香りに包まれて死ぬなら、それはそれでいいかもしれない……






 ーーーーーーって、あれ? 痛くない。いや、衝撃が強すぎて痛みを感じてないだけ?


 ぐるぐると真っ暗闇の頭の中でそんなことを考えていると、


「……さん、小日向さん! 大丈夫!?」

「ーーーえっ?」


 私は頭のすぐ側で聞こえる声に、ゆっくりと目を開けた。


「あ」


 目の前には利根君の端正な顔があって、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。

 ああ、利根君。本当にあなたは優しいんだね。おまけになんて美しい顔をしているんだろう。

 じゃなくて!! 顔っ! 近い近いっ!

 漸く状況を把握した私は慌てて利根君から離れようとしたけど、しっかりと利根君が私の体を抱き寄せていて逃げられなかった。


「とととっ利根君っ!?」


 思わず口がどもってしまう。


「良かった……気を失ったかと思った」


 そう言ってすごく安堵したようにため息を吐くと、漸く体を解放してくれた。

 どうやらバイクとぶつかりそうになった私を引っ張って助けてくれたようだ。


「ご、ごめん。助けてくれてありがとう……」


 私は恥ずかしさで熱くなった顔を両手で挟み、頭を深々と下げた。


「怪我がなくて本当に良かった……だけどあのバイクは危ないな、今度見かけたら注意しておかないと」


 そう言って止まる事なく走り去ったバイクの消えた方を睨んで言う利根君に、私は思わず笑ってしまった。


「どうしたの?」


 私が顔を赤くしていたと思ったら急に笑ったものだから、利根君が不思議そうな顔をしている。


「ふふっ。だって……利根君が怒ってるの初めて見たんだもん」


 そう言えるほど利根君のことを知っている訳ではないけど、でも学校での利根君を見る限り彼が怒っているのを見た事は一度もなかった。

 だから今、どこの誰とも知らない相手に腹を立てている利根君が新鮮で、私はそんな新しい利根君の一面を見る事が出来て嬉しかった。


「俺だって人間なんだから怒ることもあるよ」

「そうなの? 利根君いつも穏やかだし、優しいし、怒る事なんてないと思ってた」

「……小日向さんは誰かに腹を立てる俺を見て、幻滅した?」

「まさか。ちょっと貴重な利根君が見られて、嬉しかったよ」


 私がそう言って顔を上げると、利根君がすごくしなやかに微笑んだ。


「本当に助けてくれてありがとう。利根君は命の恩人だよ」

「大げさだな、誰だってきっと同じようにするよ」

「ううん、そんなことない。命の恩人に、お礼にそこのカフェでお茶をご馳走したいんだけど……ちょっと安すぎるかな?」


 利根君は少し首を傾けて苦笑すると、


「別におごってもらうような事はしてないんだけど……でも小日向さんと一緒なら楽しいし、折角の申し出受けようかな」


 そう言って私を促した。

 それに誘導されて歩き出した私は、絶対にまた利根君と出かけたいなあ。なんて欲を出してしまった。 












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