チェンジ・ザ・ワールド☆
真壁4日目・No.4
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私のやんごとなき王子様
土屋君はひどく不機嫌そうな、納得いかないといった顔でベンチに座っていた。
私達はそんな土屋君を囲むように立って、お互いの顔を見合わせため息を吐く。先ほどから先生が諭してるけど暖簾に腕押し。一言謝ればいいのに、どうしてこう変わり者というか偏屈? なのかな。
「いいか、お前がどう思おうと勝手だが、俺達はお前の事を心配して止めたんだぞ?」
「言われなくても分かっています。はあ……これでもう二度とあの美しさを体にも脳にも取り込むことは出来なくなってしまった。なんてもったいないんだ――」
土屋君は本気でショックを受けているのか、すっかり項垂れてしまっている。
「はあ~~~。もういい! おい、小日向!」
先生はとうとう説教を諦めたらしく、ガシガシと自分の頭を掻くと私を見た。
「え? あ、はい?」
「こいつと同じ大道具のリーダーに連絡だ。こういうことがないように注意しておくように伝えてくれ」
「あ、はい」
そして先生はもう一度「もう二度とするなよ!」と土屋君に言い残して去って行った。
本気で心配してるから、あんなに怒るんだよね。
「先輩」
「潤君。どうしたの?」
まだ項垂れる土屋君を見ていると、潤君が悲しそうな顔で私に声をかけた。
「土屋先輩、大丈夫でしょうか?」
「あ……きっと大丈夫だよ。潤君ありがとね、もう大丈夫だから」
「はい、失礼します。あの、何かあったらいつでも言って下さいね」
潤君は小さく手を振っていなくなった。潤君も優しいんだよなあ。
それにしてもーーー
私は目の前の土屋君に再び視線を戻して、小さく心の中でため息を吐いた。
「土屋君……」
「ふう……もういいよ。好きにすればいいさ」
え?
私が口を開いたその瞬間、ぼそりと呟いて立ち上がった土屋君の横顔が一瞬だけどすごく辛そうに見えた。
「あ、待って!」
土屋君の後を追いかけ、私は土屋君の隣りに並んだ。
その向こうに見える海が青と白に交互に輝いていて、すごく綺麗だった。
「海の光……」
ああ、これを土屋君は体に染み込ませたかったんだな。でもやっぱり危ないものは危ないもんね。
その後大道具のリーダーに土屋君の事を伝えた私は、すぐに真壁先生の所へ戻った。
先生は相変わらず忙しそうにスケジュール表と睨めっこをしながら指示を出している。
「先生、戻りました」
「小日向……ちょっとこっちこい」
「はい?」
「悪かった!」
「えっ?」
私は驚いた。
だって先生が急に私に深々と頭を下げたのだ。
「土屋の事で腹が立ってたとは言え、お前に押し付けて帰っちまって……これじゃあどっちが教師だか分かんないな」
「そんなのいいです! いいですから、頭上げて下さい! 恥ずかしいですっ!」
慌てる私に先生はゆっくりと顔を上げて、叱られた子どものような目で私を見つめた。
「いや、本当に大人げないよな。お前に頼ってばっかりだ。嫌な時は嫌だって、はっきり言って良いんだぞ?」
先生の顔を見ていたら、何だか急に可笑しくなってつい笑ってしまった。
「……くすっ。先生ったら、いくら私でも本当に出来ないと思った時はちゃんと言います。だからそんな顔しないでください」
おっきな先生の頭を、思わず撫でそうになってしまう。
「―――本当に無理はしないでくれ。情けないが今年は例年以上に仕事が多くて、自分の仕事で手一杯でお前達の事まで気を回す余裕がないみたいだ」
「はい、ありがとうございます。無理はしません」
先生は本当にいい人だなあ。先生の彼女はきっと幸せだろうな……って、私ったら何考えてるんだろ。
「えっと、じゃあ私、仕事に戻りますね!」
変な事を考えてしまった私は、恥ずかしさで赤くなりそうになった顔を隠すため急いで自分の仕事を始めた。
ふと窓の外を見ると、遠くに島が見えた。
トクンと胸が鳴る。
もうすぐ到着するんだ。高校生活最後の合宿が、本当に始まるんだ―――
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