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風名5日目・No.1

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私のやんごとなき王子様












5日目






 理事長所有の島に到着した私達は、慌ただしい初日をなんとか終了した。



 そして翌日―――

 朝食を食べてから、すぐに担当毎の仕事が待ってる。

 もちろん私は演劇の練習なんだけど、実は昨晩は緊張の所為かよく眠れなかった。おかげで朝食にはまだ早い静かな時間帯に外を歩いたりしてる。


「ふああ~~~あ」


 外を歩いていると朝日の光と緑のふっくらとした匂いが溢れてて、私はつい気を緩めてしまった。


「ははっ、大きな欠伸だなあ」


 !?

 突然後ろから声がして私は驚いた。振り向くとなんと風名君が走りながらこちらへやって来る。

 やだ、私ったらどうしてこう恥ずかしい所ばっかり風名君に見られるのよ!


「あっ! か、風名君っ。お、おはよう……」


 慌てて口を両手で隠し挨拶をすると、風名君は朝日と同じくらい爽やかに挨拶を返してくれた。

 本当にいつ見ても彼の笑顔は爽やかだ。


「おはよ。随分早起きだね」


 なんだか風名君の声をどこか遠くに聞きながら、私はどんな顔をしていいのか分からず取りあえず笑ってみる。


「あ、うん。なんだか目が覚めちゃって……風名君は、ランニング?」

「そう。もう日課だから、走らないと落ち着かなくってさ」

「すごいね、努力してるんだ」


 俳優の仕事は体力仕事だって、この間教えてくれた事を思い出して、私は感心した。


「別に努力ってほどのものじゃないよ。走るの好きだしさ……ちゃんと睡眠とってコンディションを整えるのも大事だよ。眠れない時は布団に横になってるだけでも随分疲れが取れるからさ、無理にでも横になった方がいいよ」


 私が寝不足なの、すぐ気付いたんだ。

 風名君の私を気遣ってくれるその言葉が嬉しくて、今度は自然な笑顔になった。


「そうだよね。ありがと」

「朝飯食べたらすぐミーティングやって練習だってさ。まだ少し時間あるから、部屋でゆっくりしとくといいよ。ここ、クマ出来てる」


 そう言って風名君は私の目の下にそっと触れた。


「えっ?! あっ、う、嘘っ? クマ出来てる? やだぁ!」


 慌てる私に風名君は肩をすくめて笑うと、


「はははっ! 冗談だよ。じゃあ、また後でな」


 そう言って手を振りながら、林の中へと走り去った。

 私は、風名君に触れられた方の頬を手で押さえ、走り出した自分の心臓の音を聞きながらしばらく動けなかった。

 大きな手。男の子の手だった。

 走って体温が上がっているからか、ちょっと熱くて、触れた場所が溶けそうだ。


「……もう、心臓に悪いよ―――」


 風名君みたいなアイドルに笑いかけられただけでもドキドキするのに、すぐ隣りで声を聞いてからかわれて……。

 なんだかちょっと、優越感?



「美羽ーー!」


 頭上から降って来た声に驚いて顔を上げると、さなぎが部屋の窓から身を乗り出していた。


「危ないよ、さなぎ!」

「へーきへーき! そろそろ朝食だから、戻って来なよ~……って、ところであんた、そんな所で何してるの?」

「え? あ、散歩!」

「ふうん。じゃあ早く戻って来てご飯食べに食堂行こう~」

「うーん!」


 朝食が済んだらミーティング、そして練習だ。

 私は昨日の夜に覚えた演劇の台本の1ページ目を頭の中でめくりながら歩き出した。


 まだ風名君に触れられた目の下は熱いような気がした。















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