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風名5日目・No.2

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streetpoint

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私のやんごとなき王子様












 「ええっっっ!?」


 素っ頓狂な私の声が響いたのは午後の練習も終わりに近づいた頃だった。


 私が驚いた原因は、今目の前にずらりと並んだ大人の集団。

 見た瞬間、『取材』だと分かるその人達の風体に、練習中だった部屋の雰囲気が一転した。

 ゾロゾロと入って来た大人達は遠慮なくシャッターを切り始めた。と、そこまでは良かったのだけど、次の瞬間一番手前に立っていた一人の女性が、私を手招きした。


「なんでしょう?」


 誰かを呼んでくれ、とでも言われると思っていた私は、何気なく近づいた。

 と、


「質問したいんですけど、いいですか?」

「ええっっっ!?」


 で、振り出しの素っ頓狂に戻る訳だけど……。どうして私が取材を受けないといけないの!? 

 って思ったけど、他の皆はそれぞれ練習中で、今の所出番の無い私が一番近くにいたからなんだろうけど。でも無理だよ!

 私が困惑していてもお構い無し、勝手に取材がスタートしてしまった。


「今回の演目を白鳥の湖にしたのは何か理由があるんですか?」

「風名玲君と桜亜里沙さんという今芸能界でも注目の二人が主役をやるというのは、やはり最初から決まってたんですか?」

「星越学園には芸能活動をしている人が多いですが、この劇の出演者も全員そう言った関係の仕事をしている人たちでしょうか?」

「与えられた期間が一週間しかないのに毎年大成功を納めているのは、学生ではなくプロが裏方をやっているという話を聞きましたが、本当でしょうか? もし本当なら学園は嘘を吐いていることになりますよね?」


 同時に何人もの質問が飛んで来て、私は軽くパニックに陥ってしまった。

 どうしよう、これって正直に答えないといけないのよね? っていうか、プロが裏方って何? 演目が白鳥の湖なのは何でって……


「……うう、あの、その……」


 大勢の大人に囲まれてただでさえ緊張しているのに、カメラを向けられレコーダーを差し出され、フラッシュで目がくらんで何が何だか分からなくなって来た。


「すす、すみません、一つずつ質問して頂いていいですか?」


 こんなにたくさんの取材が来るなんて、驚きだ。確かに毎年合宿中に取材はあっていたけれど、こんなに大人数が来た事は無かった。それだけ風名君と亜里沙様は世間で注目されているという事なんだ。

 本当にすごい人たちと演劇祭をやるんだと改めて自覚して、私は体が震える感覚がした。



「風名君は人気があるから、演劇の出演者を選んだ女の子の中には彼目当ての子もいるんじゃない? もしかしてキミもその一人?」


 ―――え?

 一人の男性記者の質問に、私は戸惑った。だって、正直それに近い動機だったから。


「ちょっと、ちゃんと受け答え出来る人はいないの?」

「黙ってちゃ分からないでしょう? こっちも仕事で来てるんだからさあ」


 どうしよう、私、私……

 きちんと答えられない私に、周りは呆れ始めて酷く悪い空気が漂い始めてしまった。

 その空気のおかげで増々言葉が出なくなった私の肩を、そっと優しい手が包んだ。


「すみません、俺達を中傷するような質問をされるんだったら、取材お断りさせてもらいます」


 驚いて顔を上げると、そこには相変わらず笑顔の風名君がいた。


「あ……風名、君」

「小日向さん、あなたは次の場面の準備をしておいてくださいます? こういった事には、私の方が慣れてますから」

「亜里沙様……」


 その後ろから亜里沙様も現れて、一気に取材陣が沸き立った。

 やっぱりすごい。この2人のオーラは、こんな大勢の大人に囲まれても全く霞んだりしないもん。


「大丈夫。後は俺達に任せて、小日向は向こうに避難してなよ」


 ボソリと風名君が私に耳打ちをした。


「ありがと……」


 泣きそうになった。

 たくさんの大人に囲まれて怖かったからじゃない。風名君みたいなすごいアイドルと一緒に演劇祭に出たい、なんて思ってしまった自分の愚かさに悔しくなったから。


 昨日、船の上で風名君は一緒に演技を楽しもうと言ってくれた。

 私は自惚れていたんだ。

 風名君が優しい言葉を掛けてくれるから、風名玲というアイドルの存在をただのクラスメートとして置き換えてしまって、自分に近い存在だなんて思ってた。

 泣きたいけど涙なんて流せない。ぐっと堪えて俯いていると、潤君が近づいてきて声を掛けてくれた。


「先輩大丈夫ですか? 取材の人達って怖いですね……風名先輩や桜先輩が上手にあしらってくれてるから、もう心配いらないですよ」


 潤君って本当に優しいな。私が落ち込んでるのはその所為じゃないのに、慰めてくれてる。


「うん、そうだね」


 それだけ言うのがやっとだった。

 私は壁にもたれて、風名君や亜里沙様が時折笑ったり困ったような顔をしながら記者の質問に答える姿をずっと見つづけた。


 あの日、一緒に買い物に行った時に風名君のマネージャーさんに言われた言葉を思い出しながら。


 風名玲はアイドルだ。

 そう、私とは住む世界の違う人なんだ……。















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