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倉持6日目・No.1

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私のやんごとなき王子様












6日目






 私の心臓は今日も朝からドキドキしっぱなし……だって、我が学園の理事長、倉持稀彦さんと面と向かって座っているから。といっても理事長は自分のデスク、私はその向かいの来客用のテーブルなんだけど。

 秘書さんが到着する明日まで私が理事長の秘書代わりをすることになったけど、何をすればいいのかなんてもちろん分からないから、理事長に言われたことをとにかくやるだけでもう一杯いっぱいだった。

 朝私を部屋に迎え入れてくれた時、理事長の顔が何となく疲れていたように見えた。もしかしたら寝るのが遅かったのかな?

 ちらりと目の前のデスクでパソコンと睨めっこをする理事長を伺う。

 日本人離れした顔立ちはヨーロッパの貴族と言っても遜色はなくて、まあ事実日本の高貴な血筋なんだけどーー色素の薄い髪は窓から差し込む光に透けて金髪に見える。それが余計に理事長の素敵さを演出していて、絵画のように美しい。

 私の不躾な視線に気付いたのか、ふと理事長が顔を上げて微笑んだ。


「どうかしたのかい? 小日向さん」

「えっ? あの、いえ……」


 まさか見蕩れてましたなんて言えるはずもなくて、私は慌てて居住まいを正した。

 理事長に頼まれた書類の整理もまだ終わってないのに!


「もしかして朝からずっと書類整理ばかりだから疲れたのかな?」

「そんな事ありませんっ。秘書の方は当たり前にされてるんでしょう? 私じゃ仕事が遅いから、ご迷惑になってないか心配で……」


 取り繕うように言うと、理事長が立ち上がってこちらへやってきた。


「君は一生懸命にやってくれているよ。僕はとても助かってるんだから、心配することはない」

「ありがとうございます」


 そんな素敵な笑顔で言われたら、恥ずかしくてまともに顔が見れないよ。

 私は俯いて少しもじもじしながら頭を下げた。


「でも……」


 そう言葉を区切ると、理事長はネクタイを外して窓を大きく開け放った。


「ずっとデスクワークばかりも退屈だ。それに気分転換をして頭を一度リフレッシュさせないと、仕事もはかどらない。そう思わないかい?」


 海風が吹き込んで来て、夏の日差しの香りがした。

 理事長はシャツのボタンをいくつか外し、その鎖骨が露になる。

 その動作に私はドキリとし、窓の外から見える海へ視線を泳がせて答えた。


「そ、そうですね。理事長は昨日からほとんど寝ずにお仕事されてるようですし、ここは少し時間を取って各担当者達の様子を見て気分転換するのはどうですか?」


 実は昨日からずっと理事長は演劇祭の準備に勤しむ生徒達の様子が見たいとおっしゃっていたのだ。折角理事長から気分転換の言葉が出たから、ここぞとばかりに提案してみる。


「なるほど、それはいいね。では小日向さんに案内してもらおうかな?」

「はい! お任せ下さい」


 私は書類をまとめ、元気よく立ち上がった。












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