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倉持5日目・No.3

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私のやんごとなき王子様












 中に入ると、私がセッティングした椅子に記者さんがズラリと座っていた。そして開いたドアに一斉に視線を向けると、次々にシャッターが切られ始めた。

 わあ! 目がくらむっ!

 私はドアの横に立っていた実行委員の子と並んで、部屋の後方から取材の様子を見守る。

 本来なら秘書さんが取材の進行役なんかもするらしいんだけど、今日はいないので予めインタビューする順番を各社毎に決めていた。

 流れるように、時には鋭く質問の受け答えをする理事長を、私は憧憬の目で見つめていた。

 隣りの子も同じだったようで、瞳がキラキラというか、ハートに輝いている。


「理事長素敵……」


 なんて呟いてるし。でも本当に素敵って言葉しか出て来ない。


「はあ……」


 なんとも形容し難い思いが渦巻いて、私はため息を吐いてしまった。

 ふと、理事長と目が合った……ような気がした。

 え? 私?

 もう一度じっと視線を返すと、やっぱり理事長が私を見て目配せをしている。

 ――もしかして、そろそろ取材を終わらせたいのかな?

 時計を見たけどまだ予定されている時間を10分程残している。だけど私は思い切って声を上げた。


「取材の途中ですが申し訳ありません! 理事長は次の予定が詰まっておりますので、そろそろ取材を終了させて頂きます!」

「ええっ?! まだ終了時間まで少しあるでしょう!?」

「そんな、困りますよ!!」


 あちこちから不満の声が聞こえる。

 だけど私は引かない。


「大変申し訳ありません!」


 そしてドアを開けて深々と頭を下げた。


「どうぞお引き取りください」


 そして隣りで戸惑う子に小声で


「記者の皆さんをエントランスまで案内してもらえる?」


 と頼むと、その子も慌てた様子で廊下へ出て声を張り上げた。


「すみません! こちらへお願いします!」


 さすが三島君率いる実行委員だけのことはある。急な対応も見事だ。

 まだ質問をする人もいたけど、理事長も申し訳ないと謝るだけで質問に答える気がないと分かったのか、ぶつぶつ言いながらも取材陣は部屋から出て行った。


















「ありがとう、小日向さん。僕の合図に気付いてくれて」


 すっかり人気がなくなると、理事長が私の前にやって来て小さく微笑んだ。


「いえ、もし違ったらどうしようかと思ったんですけど……」

「ちゃんと理解してくれたじゃないか。君はとても有能な女性だ。是非、僕の秘書になって欲しいね」

「ふふ、ありがとうございます」


 お世辞でもそんな風に言ってもらえるなんて嬉しいな。


「どうしても早く仕上げてしまいたい仕事が残っててね。助かったよ」

「それでは私はここの片付けをしてからまた真壁先生の所に戻りますね」

「ああ、よろしく頼むよ」

「はい!」


 部屋を出て行こうとした理事長が、突然立ち止まってこちらを振り返った。

 見送ろうとしていた私は、少し驚いて背の高い理事長を思わず見上げる。


「そうだ、忘れる所だった」


 え?

 そう言って再び私の前に戻って来た理事長は、笑顔を作ると私の右手を取り、少し首を傾げて言った。


「明日も僕の手伝いをしてもらいたいんだけれど……お願い出来るかな?」

「えっ?」 

「駄目かな? ご存知の通り、秘書は明後日にならないと来ないんでね。少し不便をしているんだ。真壁先生には僕から言っておくから、君さえよければ手伝って欲しいのだけど」


 そんな、理事長にお願いされるだなんて、どうしよう――だけどとても光栄な事よね。

 私はきゅっと握られた手に力を込めて大きく頷いた。


「私でよければ、お手伝いさせてください!」

「本当かい? 嬉しいな。それではまた明日、よろしく」

「はい、よろしくお願いします!」


 今度こそ部屋を出て行った理事長は、廊下の向こうへ消える前に私に手を振ってくれた。


 どうしよう、私、ものすごくドキドキしてる……もしかしてこれって……?











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