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真壁7日目・No.1

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私のやんごとなき王子様












7日目






 今日も朝から宿舎の中を行ったり来たり。忙しいったらない。

 だけど昨日海で遊んだのがいい気分転換になったらしく、皆の雰囲気がどことなくはつらつとしている。

 私はというと、実は真壁先生と水原さんの事が昨日から気になっちゃって、仕事をしながらも時折部屋で顔を突き合わせて話す二人の様子を伺っていた。

 真壁先生が何か指示を出すと、それに元気よく返事をしてすぐに仕事を始める水原さん。

 もしかして水原さんは先生の事が好きなのかもーーー

 どうしよう。

 これが一番に浮かんだ私の感情なんだけど、どうしようって思ったってどうしようもない。私に分かる訳がない。

 ふと顔をこちらに向けた真壁先生と目が合って、私は急いで手元に視線を落としたのだった。
 

















 昼食を済ませた後、私達生徒指導担当は調理室へと向かっていた。

 今日は私達が食事当番なのだ。とはいってもメイン料理を作るのはあくまでも宿舎のシェフの方々。私達は教育の一環として、担当班ごとに日替わりで1品を作るというのが決まりなのだ。
 
 1品とはいっても、全校生徒プラス先生の合計200人分の料理だから作る量がさすがに多い。

 私達が作るのは……えと、なんだろう? そう言えば何も聞いてないや。

 調理室に揃った先生方と私達生徒は、一番前で大きな段ボールを抱える真壁先生の様子を見守った。先生はその段ボールの中から黒い物体を取り出し、こう言った。


「今日は浜辺でバーベキューを晩ご飯にしようと思います!」

「ええっ!?」


 驚きの声が一斉に上がる。先生が持っていた黒い物体は木炭だったのだ。


「倉庫にバーベキュー用のコンロがあるんで、それを浜に運ぶ班と材料を切る班と火をおこす班に分けます。後片付けは生徒達にさせるので、よろしくお願いします!」


 なるほど、極力簡単で美味しく、尚かつ楽しいという究極の選択って訳だ。

 私は真壁先生の愉快な思考力に納得した。

 他の人達も全員納得したらしく、さすが先生達の集まり。あっという間に班分けされ、仕事に取りかかった。


「よし、行くぞ。小日向」

「あ、はい!」


 私は真壁先生と二人で組んで浜でコンロの火おこし班になっていた。いつどうやって決まったのか分からないけど、先生と一緒っていうのがすごく嬉しい。

 ……私って現金だな。













 浜辺にずらりと並んだバーベキューコンロはなかなかに壮観だった。

 まるで黒いカニみたい。

 なんて馬鹿な事を一人思う。


「よし、着火材くれ」

「はい」


 先生は着火材に火をつけ、段ボールから木炭の小さいものから順に選んで積んで行く。

 その慣れた手つきに感心していると、


「お前ちょっとうちわで風送ってくれ」


 と言われ、私は急いで段ボールの中からうちわを取り出した。


「了解です」


 うちわまで用意してある所がすごい。私はパタパタと勢いを付けて火を扇いだ。


「お、いいぞ。お前火おこしの才能があるな」

「ぷっ! 何ですか、その火おこしの才能って」

「馬鹿。人間にしか出来ないんだぞ、火をおこすってのは。だからその才能は大事だ。もちろん俺にもある! もしも無人島に取り残されることになっても、俺とお前なら死なずに生き残れるかもな~」


 無邪気に笑う先生に私はドキリとした。真壁先生と無人島に二人きりなんて、すっごく楽しそう。きっと先生のことだから素手で魚捕まえたり、丸太で家作ったりするんだろうな。


「ふふっ」

「何だよ、笑うなよ」

「だって先生、発想が中学生ですよ? あははっ」


 我慢出来ずに笑ってしまった。

 なんて楽しいんだろう。このまま本当にこの島に真壁先生と二人で残ってしまいたい、なんて思ってしまった。


「うるせーな。よし、次のコンロ行くぞ」


 無事着火したコンロを見下ろし、私達火おこしエキスパートは次々とコンロの着火を成功させて行った。















 夕日を見ながら浜辺で食べるバーベキューはとっても美味しかった。

 コンロを挟んだ向かい側で豪快にお肉に食いつく真壁先生と、その隣りで楽しそうに笑っている水原さんを見るのはちょっと寂しかったけど、なんてったって私と真壁先生は無人島でも生き残れる仲間、「火おこしエキスパート」だもんね。


「頑張ろう……」


 ぼそり呟いて、私も先生のマネをして豪快にお肉にかぶりついた。











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