チェンジ・ザ・ワールド☆
倉持7日目・No.2
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私のやんごとなき王子様
調理室へ行って材料をもらい、再び理事長のいるスイートルームへ戻る。
部屋にあるキッチンに立って材料を並べた所で気がついた。
理事長みたいな人が食べるおかゆって、もしかしたら老舗の料亭で出て来るようなとっても高級なおかゆなんじゃないかって。
「利尻昆布? 土佐のカツオ節? あきたこまち? ……いや、トリュフ?」
「何がトリュフ?」
「あ」
作業を中断させてぶつぶつ呟いていた私の後ろから、理事長が手元を覗き込む。
「理事長、休んでいてくださいって言ったじゃないですか」
「今休んでいるよ。君が僕のためにおかゆを作ってくれる所をこうやって見学してるだろう?」
「それは休んでいる事になりません! ーーあの、理事長。大変申し訳ないのですけど、私は理事長のお口に合うようなおかゆを作った事がないので、普段家で作っている作り方になってしまいますけど……」
申し訳ないと頭を下げると、理事長は私が持って来た野菜を手にとって頷いた。
「小日向さんがいつも作っているおかゆが食べたいから頼んだんだよ。お店で食べるおかゆなんて、いつでも食べられるだろう?」
理事長の優しい言葉に私はほっとした。
「それじゃあ作りますから、“お部屋で”休んでいてください。出来たら持って行きますから」
「本当かい? それは嬉しいな。まさかおかゆを食べさせてもらえるなんて」
「そ、そんな事言ってません!」
「はは、冗談だよ。じゃあ少しだけ横になろうかな」
そして理事長が自室に入るのを見届けて、私はおかゆ作りを開始した。
「とても美味しいよ」
「本当ですか? 良かった……」
理事長の部屋へ無事完成したおかゆを持って行くと、本当に眠っていたらしい理事長はゆっくりとベッドから起きて来た。そして私の手からおかゆの乗ったトレーを受け取り、ゆっくりと口に運んで褒めてくれたのだ。
おかゆだけでは栄養のバランスが悪いので、色んな野菜を細かく刻んで崩した豆腐と一緒に醤油で煮た煮物も一緒に出してみた。
消化にいいし栄養もバッチリ。
理事長も本当に美味しいと思ってくれているみたいで、あっという間にトレーの上の料理を平らげてくれた。
「君はいい奥さんになるね」
「えっ? あ、ありがとうございます……」
照れながらお礼を言うと、すっと伸びて来た理事長の手が私の後頭部を引き寄せた。
ええ!? ちょ、ちょっと!!
一瞬の出来事に私は混乱した。
だって、理事長が私の頭に、キ……
「りりり、理事長おっ?!」
裏返った声に真っ赤な顔で体を反らすと、理事長も驚いた顔をした。それからすぐに困ったような顔で、
「あーーーすまない。その、感謝の気持ちを表そうと思って……」
と言って頭を下げる。
「い、いえっ、あの、その、感謝の気持ちは美味しいという言葉でじゅっ、十分ですからっ! あの、これ洗ったら食事当番に行ってきます! 失礼します!!」
恥ずかしくてその場にいられなくなった私は、動揺したまま理事長の膝の上の食器を下げて部屋を飛び出した。
ドアを閉める瞬間、理事長が私を呼んだような気がしたけどそれどころじゃない。私は電光石火の早さで食器を片付け、ずうっとドキドキ鳴りっ放しの心臓を抱えたまま調理室へと駆け込んだのだった。
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