チェンジ・ザ・ワールド☆
波江8日目・No.2
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私のやんごとなき王子様
「それじゃあまたね、小日向さん」
「ありがとう、利根君。またね」
無事衣装の寸法も測り終え、私は利根君と別れて部屋へと戻った。
廊下には人も少なくて、皆それぞれ部屋に戻ってたり遅くまで作業していたりするんだろう。私は足早に階段を昇る。
あれ?
ふと人の話し声が聞こえて来て私は足を止めた。
声に意識をかたむけると、自動販売機のある廊下の方からそれは流れてきていた。
「はい、潤。お疲れ~」
「え、何? 水原のおごり?」
「そ、たまにはねー」
「珍しいじゃん。サンキュ」
聞こえてきたのは潤君と水原さんの声だった。
潤君、同級生とはあんな風に喋るんだよね。いつも私に見せてくれている顔とは違うそのラフさに、胸の奥で何かがズキンとはじけそうになる。
「で、何? 話って」
「うん……えーっとさ」
いけない! このままじゃ私、立ち聞きだよね! そっと階段を昇ろうとしたその瞬間――
「私ね、潤の事が好きなの」
耳に届いたその言葉に、私は金縛りにあったように動けなくなってしまった。
今……水原さん、何て……?
「え?」
私とシンクロしたかのように、潤君も水原さんに聞き返す。
「だーかーらーっ! 私は、潤が好きだって言ってるの!」
どうしよう。
心臓がありえない程にバクバクと脈を打っている。こんな事を盗み聞きしちゃったから? それとも――
それとも私も潤君が好きだから?
水原さんは元気で明るくて、少し負けん気の強い所はあるけれど可愛い子だ。潤君とならきっとお似合いのカップルだろう。そう――私みたいな、もうすぐに卒業してしまうような人間より、よっぽどお似合いだと思う。
来年になっても潤君と水原さんは同じ制服を着て同じ学校に通える。ううん、再来年だって。――私は?
今の関係のまま――仲の良い先輩と後輩という関係のまま卒業してしまえば、私達が会う時間なんて、ほとんどなくなるだろう。そんなのは嫌だ……!
……私、潤君の事が好きなんだ。
どうして今この瞬間にこんな事に気付くんだろう。人が告白しているのを立ち聞きして、そして自分の気持ちに気付くなんて……私は最低だ。
「ねぇ、潤。考えておいてよ。今すぐにこの場で答えを出せっていうんじゃないからさ。ただ……伝えておきたかっただけだから。今日の所は」
「水原……」
「でもさ、私と潤ならぜーったいお似合いのカップルだと思うんだけど? そんでさー、来年も再来年もずーっと校内ベストカップル~っていう感じ?」
「お前なぁ」
水原さんはおどけたように話しているけど、彼女の思いが真剣なのは十分に伝わってくる。だって聞こえてくる声が、ときおり震えてる。
ダメだ。これ以上は――。
私はそっと階段を昇った。1つ上の階に上がると、その廊下を全力疾走して部屋へと向かった。
あれ以上聞いてなんていられなかった。
潤君は何て返事をしたんだろう?
告白する勇気も無いくせに、そんな事だけは気になってしまう。
私はズルイ――――
喉に熱を感じて、私は自分が泣きそうになっている事を悟った。
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