アットウィキロゴ
チェンジ・ザ・ワールド☆
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

チェンジ・ザ・ワールド☆

倉持9日目・No.1

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
管理者のみ編集可
私のやんごとなき王子様












9日目






 昨日の理事長との約束通り、私は今日も朝から理事長の部屋で仕事の手伝いをしていた。

 結局秘書さんはこちらに来る事が出来なくなってしまったらしく、本当は理事長だってこんな所にいる時間がないくらい忙しいんだって事を痛感した。理事長の変わりに学園での仕事を任されている秘書さんの苦労を思うと、一日でも早く理事長をお帰しした方がいいはずだ。

 理事長の様子はいつもと変わりなくて、私がドア越しに水原さんとの会話を聞いていた事にも一切触れて来なかった。きっと聞いていた事に気付いているはずだけど、そこは大人だから気付かなかった振りをしてくれているのかも知れない。

 水原さん……彼女はきっと今日も理事長のお手伝いがしたかっただろうな。

 大事な電話らしく、別の部屋にこもった理事長は今私のいる部屋にはいない。生徒指導部屋から借りて来たノートパソコンを使って頼まれた資料の清書をしながら、その内容の難しさに口をすぼめる。経営理念がどうのこうのという論文みたいだけど、理事長は経営者としてたまにセミナーを頼まれる事もあるからそれの資料だろう。

 そんなすごい人を私は好きになってしまったんだ……なんて愚かなんだろう。

 望みなんて無いのは十分承知している。理事長は大人で、私は子ども。それでも水原さんは勇気を振り絞って告白したのだ。私から見たら水原さんもすごい人で、理事長を好きになる資格を存分に持っていると思う。

 そう、私とはまるで違う―――それなのに、どうして理事長は私を手伝いに指名してくれるんだろう。

 頭の中が混乱し始めた頃、カチャリとドアが開いて理事長が戻って来た。難しい顔をして無言で机に戻ると、その険しい顔のままパソコンに向かった。

 私はキッチンへ向かいお湯を沸かし、ティーサーバーで紅茶を入れる。私に出来る事はお茶を入れる事くらいだ。


「理事長、紅茶です」

「ああ、ありがとう。小日向さん」


 やっと笑顔を見せてくれた理事長に、私も笑顔になる。

 窓の外はいつの間にか夕闇で、夕日も海の向こうに沈んでしまっていた。 


「うん、美味しい」

「良かった」


 私が外を見ていた事に気付いた理事長が、同じように外を見てほっとため息を吐いた。


「本当に君にはわがままを言ってしまって、すまなかったね」

「え? いいえ、そんなこと……」

「わがままついでにもう一つ、僕のお願いを聞いてくれないかな?」

「なんでしょう?」


 私の方へ視線を戻すと、理事長はほんの少し子どもっぽい表情をして小さく首を傾げた。


「これから一緒に海に行ってくれないか」

「海ですか?」


 目を丸くする私に、外をもう一度見てから理事長はこちらへやって来た。

 自然に私の肩に手を置くと、そのまま促して歩き出す。


「そう、海。僕はここに来てまだ一度も海に行っていないからね。それに君は初めて会った時にまたデートしてくれるかと尋ねたらOKしてくれただろう?」

「あ……はい」


 理事長を迎えに行った時の会話を思い出し、私は少し恥ずかしくなって俯いた。

 優しい理事長の手は温かくて、ずっとこのまま理事長の傍にいられたらいいのに。と勝手な事を思ってしまった。












ブラウザを閉じてお戻りくださいv
私のやんごとなき王子様トップへ戻る
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー