チェンジ・ザ・ワールド☆
真壁13日目・No.3
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私のやんごとなき王子様
「ここからの眺めはちょっと違うんだな」
「そうですね……最後の演劇祭、終わってしまいました」
感慨深くそう呟くと、先生はほんの少し笑った。
「本当によく頑張ったな。あいつらすげーよ」
あいつら――きっと風名君や亜里沙様達のことだ。
「こんなでっかい舞台で、あんな堂々とした演技をしてさ……すげーよな」
「はい……」
でも先生。私はあなたが一番すごいと思います。
「それから、お前もな」
「私……ですか?」
「ああ」
先生は私の頭に手を置くと、いつもより優しく撫でた。
「……この間、水原が言った事は忘れろ」
「え?」
「あいつが好きだって言ってくれるのは嬉しいが、俺はその気持ちに答えるつもりはないし……」
ツキンと心臓が痛んだ。
どうして今そんな事を言うんだろう。
「信じらんねえよな。まさか、俺がお前の事を好きになっちまうなんて―――」
「――――ええっ!?」
私は驚きで先生の手が頭に乗った状態のまま顔を上げた。
大きな先生の手が邪魔でその表情を伺う事は出来なくて、頑張って振りほどこうとしたけど、先生の手は押しても引いてもびくともしなかった。
「はあ……」
大きなため息の後、先生は私の頭の上にあった手を頭の後ろへずらすと、勢い良く自分の方へと引き寄せた。
「わっぷ!」
先生の胸に鼻をぶつけて、痛みで顔をしかめる。
ちょっと待って、これって……?
「少し大人しくしてろ―――あ~。いいか? 俺は教師でお前は生徒だ」
以前聞いた時と全く同じ台詞を言う先生に、私はまた胸が痛んだ。
そんな事言われなくても分かってる。これはどうしようもない事実。
「だから絶対にこんな感情を持っちゃいけないって分かってた……でもな、お前が頑張ってる姿見てて、改めてすげーなって思ったんだ。そんなお前を無意識のうちに探してる自分がいてさ……お前は俺よりうんと年下なのに、俺を元気づけてくれて―――だから、なんて言うか、その……惚れたんだよ……」
「先生―――」
私の方が先生にいつも元気づけてもらってるのに、私が先生を元気づけた? そんな事分からないけど……でも、すごく嬉しい。
「卒業まで待とうとも思った。でも、今言わないと二度と言えない気がしてさ……」
耳に当たっている先生の心臓は、弾けんばかりに鳴っていた。
先生がこんなに緊張してる。
そう思うと、何だか可笑しくなった。
「――ふふっ」
「あ、おい! お前笑ったな!?」
「すみません、違うんです。私も、先生の事が好きなんです―――」
「知ってるよ」
「えっ?」
顔を上げようとしたけど、やっぱり先生の手が邪魔して出来なかった。
相変わらず激しく鳴っている先生の心音を聞きながら、私は仕方なく横目に客席を見る。
「俺もそこまで鈍くないよ……じゃなかったらこんな状況で告白するか」
やっぱり先生は大人だな。私が水原さんの事で嫉妬してたのも気付いてたんだ。だから船であんな事聞いたんだな。
いや、もしかしたら自分で気付く前から先生の事を好きで、先生は私より先に私の気持ちに気付いてたのかも。
敵わないな―――
素直にそう思った。私はきっともっと前から真壁先生の事が好きだったんだ。
「あ! じゃあ、私達恋人同士ってことですか?」
「馬鹿、んなこと出来るか。卒業までは無理だな」
「ええっ!?」
「俺がクビになって教員免許も剥奪されてもいいなら別にいいぜ。お前とどっかの無人島にでも駆け落ちしてやるよ」
やっと解放された頭を軽く振り、私は不適に笑う先生を睨んだ。
「もう! 先生ったら!」
無人島で二人っきりでもいい。なんて思った事は、内緒にしておこう。だって先生は大人で、私より色んな経験をして来てて、頼りがいがあって優しくて……
ずっと頼りっぱなしだった私だけど、少しでも先生に近づけるようにもっと頑張ろう。
こんなに素敵な思い出をくれたあなたを、もっと好きになりたいから。
ありがとう、真壁先生。あなたと演劇祭が出来て良かった。
あなたを好きになって、本当に良かった。
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