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真壁・後日談

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私のやんごとなき王子様












〜後日談〜






「忘れ物はないか?」

「はい、大丈夫です!」

「……本当に大丈夫か?」

「大丈夫ですよ」

「……あーもう! 何で自分の事じゃないのにこんなに緊張するんだ!?」

「ふふっ、本当に大丈夫ですから、心配しないでください」


 隣りで頭を乱暴に掻きながらハンドルを回す真壁先生の様子に、私は思わず笑ってしまった。





 演劇祭の後、私は真壁先生から思いも寄らなかった告白を受け、その後我慢に我慢を続けて無事卒業し、やっと堂々と付き合える事となった。

 私は大学に進学し、先生は相変わらず学園で先生を続けている。

 私がちゃんと我慢したから職員免許剥奪なんて事にもならなかったしね。

 高校卒業から2年。今日から私は教育実習生として一か月星越学園に通う事になった。

 朝から家まで迎えに来てくれた真壁先生と一緒に、久しぶりの学園に向かいながらそんな会話をさっきから何度も繰り返している。


「なあ、美羽……」


 急に真面目な顔になった先生に目をやる。


「先生、学校では美羽って呼ばないように気を付けて下さいよ」

「おっと、悪い。小日向」

「なんですか?」


 先生ったらこういう所が可愛いんだよな。

 申し訳なさそうに私の名前を呼び直す先生を見て、笑みをこぼす。


「本当に教師になるつもりなのか?」


 その口調はいつもの明るいものではなく、真剣だった。

 私は自分の好きな人と同じ教師の道を歩く事を選んだ。それは、少しでも先生が見ている目線の高さに近づきたいから。


「当たり前じゃないですか。そのために大学も教育学部を選んだんですから」

「でもなあ、お前は頭もいいし、他にも選択肢はたくさんあるんだぞ?」

「健亮さん」

「なっ、なんだよ」


 私が大学進学を決定した時、どこの学部を受験するかを知った先生は反対した。きっと私が自分のために無理をしていると思ったんだろうけど、それは違う。私は自分で決めたのだ。

 だから真剣に教師になりたいんだと言った時先生は渋々承知したけれど、やっぱりまだ自分の所為だと気にしているんだ。

 じっと隣りから見つめている私の視線と合わせないよう前を睨んだままの先生に、私は続けた。


「私は教師になりたいんです。健亮さんみたいに、皆から頼ってもらえるような……一緒に笑って悩んで、成長出来る素敵な教師に――これは私の望みなんです。健亮さんと同じ仕事に就く事しか、私には考えられません」

「美羽……」

「あの日、健亮さんが私を好きだと言ってくれた時、私決めたんです。少しでも健亮さんに近づくんだって……確かに私は健亮さんから見たら子どもだし頼りないかもしれませんけど、ちょっとでもいいから健亮さんと同じ感覚を持ちたいんです」


 思いの丈を静かにぶつけると、先生はやっと穏やかに笑ってこちらを向いてくれた。


「まったく……お前には敵わないな」


 そしていつものように大きな手で私の頭を撫でると、


「お前がそう思っててくれたなんて嬉しいよ。でもな、間違っても男子生徒と仲良くするんじゃねえぞ」


 ぼそりと言って頭から手を放した。

 今のはもしかして嫉妬してるのかな。本当に可愛い人なんだから!


「しませんよ! する訳ないじゃないですか! だって、私にはこ~んなに素敵な彼氏がいるんですから!」


 目の前にある先生の腕に抱きつくと、焦って私を引き離そうとする。


「わっ! こら、馬鹿! 危ないだろうがっ!?」

「え~? 少しくらいいいじゃないですか」


 照れる先生に笑いかけ、私は掴んだ腕に更に力を込めてしがみついた。


「……あーもう、仕方ねーな。次曲がるまでだからな」

「はあい!」


 後もう少し。次の曲がり角を曲がるまで、先生じゃなくて健亮さんって呼ばせて下さいね。

 私の大好きな先生!









 私のやんごとなき王子様 ――真壁編――   了





苦しみをぶちまけているやん王『あとがき』




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