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チェンジ・ザ・ワールド☆
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倉持13日目・No.3

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私のやんごとなき王子様












「はあ……」


 まだ夢見心地だった私は、すっかり片付けも終わり、誰もいない劇場を外からぼうっと眺めていた。

 ヨーロッパの劇場を模した大きなその建物は学園に併設されていて、周りの緑と自然に溶け合っていてただ眺めるだけで美しい。

 本当に素敵な舞台だった。

 先生の手伝いをすると決め、合宿中は思わぬ形で理事長と知り合いその理事長のお手伝いもする事が出来た。自分自身が劇に直接関わった訳ではなかったけれど、最後の演劇祭がこんなに素晴らしいものとなったことを誇りに思う。

 この学園に来て良かったと、心の底から思った。


「小日向さん」


 今朝と同じように声をかけられ、私はゆっくりと振り返った。

 そこには美しいボディの外車の運転席から降りて来る理事長がいた。


「待たせたね」

「いいえ」


 片付けが終わって皆が帰った後、私は理事長に言われたとおり劇場の前のベンチに座って待っていたのだ。


「さあ、乗って」

「あ、はい」


 理事長は私を促し、助手席のドアを開けてくれた。

 私と行きたい所があると言っていたけど、どこへ行くんだろう?

 とても座り心地の良い皮のシートに体を預けて驚く程静かな車内の香りを嗅ぐ。それが理事長のコロンと同じ匂いだと気付いて少しだけ嬉しくなった。


「少し遠いけど、大丈夫?」

「はい。親には連絡してますから」

「そう。ちゃんと門限までには自宅に送り届けるから、心配しなくていいよ」

「ふふ、はい。お願いします」


 なんて幸せなんだろう。もう理事長とこうして二人でゆっくりと話す事は出来ないかも知れないと思っていただけに、私の感情は今までにないくらい高ぶっている。


「それじゃあ、行こうか」


 走り出した車から眺める景色は見慣れているはずなのに、すごく新鮮なものに映った。

















 どれくらい走ったか、私達は県外の海へとやって来ていた。

 夏だというのにその小さな海岸に人気は無くて、とても穏やかに波が打ち寄せている。


「疲れてない?」

「平気です」


 そう言って理事長はスーツのジャケットを脱いだ。


「今日の演劇祭はとても素晴らしかったね」

「はい……」


 傾きかけた太陽を目の端に捉えながら、私は歩き出した理事長の後を着いて行く。


「小日向さんには僕の手伝いばかりさせてしまって、申し訳なかったね。最後の演劇祭だったのに」

「そんなことありません。演劇祭の手伝いもたくさんしましたし、それに……理事長のお手伝いなんて普段出来ない事を経験させて頂いて、とても嬉しかったですから」


 肩越しにこちらを振り向いた理事長の目に、私はゴクリと唾を呑み込んだ。

 あまりに美しいその瞳は、私の邪な気持ちを見据えているみたいに思えたから。

 そう、私は理事長ともっと仲良くなりたかった。もっと理事長の事を知りたかった。水原さんのように告白する勇気もないくせに、理事長にもっと私の事を知って欲しいと思っていたのだ。

 ギュッと肩に力を入れて足元に視線を落とすと、理事長は歩みを続けながら言った。


「そう言ってもらえると嬉しいよ―――でも僕はね、とても卑怯なんだ」


 卑怯? 

 理事長の口から出た言葉に思いを傾ける。一体それはどういう意味だろう。


「さあ、こっちだ」

「あ」


 海岸の岩場まで来ると、理事長は軽々と昇って上から私に向かって手を伸ばした。

 私はその手を掴み、スカートを引っ掛けないように岩場を昇った。












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