チェンジ・ザ・ワールド☆
日輪と笠原(颯太)No.1
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はなもあらしも
やっぱり気が合いそうな颯太君にしよう!
「颯太君と一緒に試合がしたいです!」
笑顔でそう言うと、すぐに幸之助は頷いて颯太を呼んだ。
「颯太、お前がともえさんと一緒に我が道場の代表として試合に出なさい」
「よっしゃ! 分かりました!」
とても嬉しそうに返事をすると、颯太がともえと幸之助の元へやって来た。
「よろしくな、ぜってえ勝とうぜ!」
ウインクをする颯太に負けない笑顔で、
「うん、よろしくね!」
そう返事をし、お互い握手を交わして勝利を誓った。
「うむ、それでは颯太、ともえさん」
「「はい」」
ともえと颯太は背筋を伸ばし、幸之助をじっと見る。
「笠原道場に、二人でご挨拶に行きなさい。相手の代表者とも顔を会わせておくといいだろう」
なんと、敵である笠原道場へ挨拶に行くよう突然言われた。ともえに緊張が走る。
「おい緊張すんなって、オレも一緒に行くんだから心配すんな! 着替えて飯食ったら行くぞ」
「うん、ありがと」
何とも心強い颯太の言葉に、ともえは少し緊張がほぐれた気がした。
颯太を選んで良かったと、嬉しくなったのだった。
「なあ」
「え? どうしたの颯太君」
隣りを歩く颯太が、突然ともえの前に顔を出して来た。驚いて顔を後ろへ下げ、目を丸くさせながら颯太と目を合わせる。
「お前今からオレの事君付けで呼ぶの禁止な」
「へ?」
「だってオレはお前の事ともえって呼んでんのに、年上のお前がオレの事颯太君ってのおかしいだろ? それになんか他人行儀な感じがして、君ってあんま好きじゃねえんだよな」
ふいっとともえの前から顔をどかして大げさに両腕を頭の後ろへやると、颯太は空を見上げた。
颯太は明るく人懐っこい性格のため、どこへ行っても人の中心にいる。賑やかなのが好きなのだ。
「あ、分かった。じゃあ、颯太って呼ぶね」
「おう、その方がこれから試合までの修行も二人で頑張るぜって感じがするし、楽しいだろ?」
「うん。そうだね! あ、そう言えば颯太は笠原道場って行った事ある?」
お互いにっこりと笑い合った所でともえが尋ねる。颯太は一瞬で顔をしかめて苦々しそうに吐き捨てた。
「あるぜ、オレがガキの頃は今より行き来が多かったし、流派は違うけど交流試合なんかもやってたぜ」
「そうなんだ……なんか颯太嫌そうだけど、笠原道場苦手なの?」
ともえの質問に颯太は益々顔をしかめる。
「苦手なんてレベルじゃねえよ。あそこの連中ときたらどいつもこいつも厭味な奴らばっかりでさ! 笠原限流師範なんて鬼瓦みてーなツラしてるし、実際こえーのなんのって!」
「え!? そんなに怖いの?」
自分の指を使って頭に鬼の角を作ると、颯太は顔を引きつらせるともえに向かって今度は笑った。
「あはは! そんな怖がんなって。まあ、確かに厳しいけど、悪い人じゃないと思うぜ? そんな極悪人だったら門下生なんか集まんねえだろうし。まあ、幸之助おじさんとは意見が合わねーとかだけど、弓道が好きなおっさんだよ……お、ほら。笠原道場が見えて来たぞ」
明るくそう言ってともえの緊張を解いた颯太の指は頭から前方へと移動していて、その指の先には日輪道場と同じ位大きくて立派な門が見えていた。
「わあ、大きな道場」
「まあな。いいかともえ!」
「はいっ!」
門の前に到着し、颯太が真剣な顔でともえを見据える。
「さっき言ってた厭味な奴らばっかりってのはマジだからな。オレがぶち切れそうになったら、何があっても止めろ」
「な……何があっても?」
「そうだ、本気でムカつくんだよ。ここの連中。真弓兄がいなかったら、絶対二、三人ぶっ飛ばしてるもんなあ」
さらりと恐ろしい事を言う颯太に、ともえはごくりと唾を呑み込む。
「ここの人達より、颯太が一番怖いんだけどーーー」
「まあ、オレもいつまでもガキじゃねえしな、今日は日輪道場の代表として挨拶に来てんだ。大人な対応を心がけるけどよ」
「どうか、大人な対応でよろしくお願いします」
「ま、飛び出す前に止めてくれよ」
と、そこで颯太が重そうな門を叩いた。
しばらくするとゆっくりと門が開き、顔を覗かせた青年にともえはすかさず会釈した。
「こ、こんにちは! 日輪道場から参りました」
「よお、久しぶり。限流師範に挨拶に来たぜ」
ジロリとともえと颯太を睨むと、青年が口を開いた。
「まさか、颯太君……君が代表とはね、驚き以外の何者でもないよ。僕はてっきり真弓さんだと思っていたのに……まあいい。君が相手ならこちらの勝利は間違いないなーーーところで、こちらの方は?」
どこかしら冷たい雰囲気の青年は、再びジロリとともえを見る。
うわ、ちょっとこの人…… っ!? 颯太、我慢してる!?
隣りをそっと伺うと、颯太がこめかみに大きな血管を浮き上がらせながらプルプルと震えて、辛うじて笑っていた。
「はは、こいつは那須ともえって言うんだ。安芸の那須道場からうちに修行に来てる」
「那須……ああ、師範と昔一緒に修行をしていた方の」
「初めまして、那須ともえです! よろしくお願いします!」
「氷江雪人(ひのえゆきと)です。そうですか、まあ、日輪道場の女性は熱心ではないですからね。期待はしていませんが」
そう言って今度はともえの姿を一通り眺めると、門の戸を広く開けた。
ともえはため息まじりに自己紹介をして歩き出した雪人に目を丸くさせた。なるほど、颯太が苦手だというのは納得だ。
しばらく歩いていると、ふいに颯太がともえに耳打ちをした。
「な? ムカつくだろ?」
「……う、うん。でも颯太偉いよ。ちゃんと我慢してるんだもん」
「頭の中じゃもう十回くらいぶっ飛ばしてるけどな」
「はは、は……」
二人して雪人の後ろで渇いた笑いをこぼした。
そして日輪家に勝るとも劣らない笠原家の庭を通り過ぎ、こちらも大きな弓道場が見えて来てともえは感心した。
「わあ、立派な道場」
つい言葉が漏れる。
「当然でしょう? 我が笠原流は由緒正しい弓道の伝統を受け継ぐ道場なんです。どこかの緩い道場と一緒にしないで頂きたい」
呆れたように言った雪人に、ともえがつい声を上げる。
「どこかってどこですか!? さっきからあなた、失礼じゃないですか!」
「おや、僕はどこかの緩い道場と言っただけで、日輪道場の事だなどと一言も言っていませんが?」
「むっ!」
「落ち着け。おい雪人! 笠原師範が入り口に見えてるぞ」
雪人と顔を突き合わせて睨み合うと、颯太がともえの体を引いてそう言った。
すぐに入り口に立つ男の姿に居住まいを正し、笠原限流なる人物に深く頭を下げた。
「はじめまして、那須ともえと申します!」
「お久しぶりです。日輪颯太です……今度の試合、オレ達が代表になったので挨拶に来ました」
笠原限流は立派なひげを蓄えた厳つい顔の人物で、幸之助より小柄ながら威圧感は凄かった。挨拶をする二人にゆっくりと頷くと、
「良く来た。我が道場の代表を紹介しよう、こちらへ来なさい」
そう言って道場へと消えて行った。
二人の姿が見えなくなると、
「ぶはあっ!」
颯太が大きく息を吐き出した。
「大丈夫?」
「あー、こういう挨拶とかってマジで慣れねえ」
「でもかっこ良かったよ」
「うっせー、行くぞ?」
笑うともえの頭を軽くコツンと拳で叩くと、颯太は少しリラックスした表情で草履を脱いだ。
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