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チェンジ・ザ・ワールド☆
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試合に向けて(颯太)No.1

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はなもあらしも














 早朝、まだ誰もいない静かな朝靄のかかった道場の中央で、ともえは一人矢を放っていた。

 矢をつがえ弓を引き、狙いを定めて一気に矢を放つ。

 一連の動作を繰り返しながら、昨日の笠原道場での出来事を思い起こす。

 言いたい放題に言われ腹を立て、何としてでも強くなりたい。日輪道場の面子に少しでも追いつきたい、足を引っ張りたくはないと強く煩悶し、こうして朝から一人で矢を射続けているのだが――

 的を矢が埋め尽くした所で弓を下ろし、ともえは深いため息を吐いた。


「はあ……」


 何度射ても分からない。自分には一体何が足りないのか。それとも気付いていないだけで、どこか悪い癖でもあるのだろうか?


「おはよう、ともえ!」

「あっ、おはよう、颯太」


 元気な声が入り口から届き、ともえは笑顔で振り返る。相変わらず元気一杯の颯太の姿に、何故かほっとした。


「朝早くから頑張ってんな」

「颯太こそ」

「昨日、あいつらにをぎゃふんと言わせてやるって決意したからな。やるだけの事はやらねえと」


 そう言って隣りに立って早速矢を構える颯太をじっと観察する。

 鋭く放たれた矢は遠く的の中心によどみなく刺さり、ともえはうーんと唸る。その様子に颯太が首を傾げた。


「どうかしたか?」

「ううん、なんか颯太の弓道は真っ直ぐ! って感じがして、見てて気持ちいいのに、私のはなんか違うのよね……」

「悩んでるのか?」

「うん……強くなりたいけど、何が悪いのか全然分からなくって」


 首を傾げるともえを、颯太が促す。


「お前ちょっと構えてみろ」

「あ、うん」


 言われるままに構えをとったともえに、颯太が後ろから手を添える。息が掛かりそうな程すぐ側に颯太の顔があって、ともえは一瞬ドキリとした。


「これは受け売りなんだけどさ、昔オレもどうやったら上手くなるんだろうってすげー悩んで我武者らに練習してた事があるんだ」

「颯太も?」


 視線だけで後ろの颯太を見上げる。


「ああ。で、その時に真弓兄に言われたのが、『弓道は精神状態が大きく左右する武芸だ、強くならなければと気ばかり焦っても心と矢が一体にならなければいつまでたっても上手くならない』って。お前はその時のオレと同じなんだと思う……弓を引くぞ?」


 ともえの手の上から颯太は強く弓を引くと、合図も無しに同時に矢を放った。

 いつもより颯太の手が加わったおかげで楽に弓が引け、ともえの矢は緩やかな弧を描いて的に刺さった。


「強くなんなきゃいけないけどさ、焦っちゃ駄目なんだと思う。オレさ、何をやるにしても結局いつも越えなきゃいけないのって自分なんだなって思った。あいつに負けたくないとか、あいつよりオレは強いとかって考えてるようじゃ、いつまでたっても強くなんねーの」


 颯太の言葉はともえにとって目が開けるようなものだった。まるで猛スピードでともえの背後から爽やかな風が吹き抜けて行くような感覚。

 何が悪いのか、ともえは年下の颯太から教えられたのだ。


「ふふっ、ありがとう」

「なんだよ、笑うなよな……あ、そう言えば、昼から美琴が来るらしいぞ」


 ともえが笑ったのが、自分の言ったセリフが可笑しかったと勘違いした颯太が少し口を尖らせ、次に思い出したように美琴の琴を告げた。


「本当? 美琴ちゃんに会えるんだ!」


 美琴はともえにとって、早くも心安らぐ存在になりつつあった。あの可愛らしい笑顔と話し方がとても好ましく、もっと沢山の時間を共有したいとさえ思っている。

 自分には無いものをたくさん持っている美琴は、同じ女性であるともえから見ても本当に素晴らしい女性だと思う。


「お前美琴の事好きなんだな」

「うん! だって可愛いし、もっとお話ししたいなって思ってたから」

「オレもあいつ好きだぜ」


 そう言って笑った颯太に、ともえは急に良い知れぬ焦りを感じた。


 何? 今のーーー?


 一瞬でその焦りはどこかへ消えたが、ともえの脳裏深くにその感覚が刻まれた。


「よし、昼まで練習しようぜ」

「うん、そうだね」


 ともえが放った矢を抜くために的へと向かった颯太の後ろ姿をしばし見つめ、ともえはすぐに頭を振って追いかけた。











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