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罠(美弦)No.3

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streetpoint

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 「打撲で済んで本当に良かった」

「どんな人相だったか、見ていないの?」


 医者に連れて行ってもらい、日輪道場へ帰って来たともえを心配して、幸之助と月乃、美弦の三人がともえの部屋へやって来ていた。 


「それが、突然の事だったので……」


 ともえは笠原道場の人間の仕業であろう事は伏せた。もし話をして今度の試合が流れては、益々互いの道場の確執が強くなるだけだと思ったからだ。


「最近は物騒になったものね。今度から出かける時は誰かと一緒に行ってね、ともえさん」


 月乃が心配そうに言うので、ともえは微笑んだ。


「はい、ご心配おかけしてすみません」

「ともえさんは悪くないわ、悪いのは襲った暴漢なんですから。あなた、警察に届けた方がいいんじゃないでしょうか?」

「だ、大丈夫です! お医者さんも骨に異常はないから、数日大人しくしていれば腫れも引くとおっしゃってましたし」


 慌てるともえに、幸之助は組んでいた腕をほどいて静かに口を開く。


「ともえさんがそう言うなら、警察には届けなくていいだろう。美弦、お前がともえさんに付いていてあげなさい」

「はい」

「何か必要な物があったら、真弓や美弦君に伝えてね」


 幸之助と月乃が出て行くと、美弦は辛そうな表情を浮かべた。


「……ともえが使いに行ったって聞いてさ、荷物もあるだろうし、迎えに行こうと思った。……もっと早く出れば良かった。そしたらこんな……っ」


 そこまで言うと美弦は小さく息を飲んだ。


「美弦……、これは事故だよ。ただ歩いていただけで襲われるなんて、思わないもん。だから気にしないで」

「……なぁ、今度からはどっか行く時は、必ず誰かと一緒に行けよ。一人で出歩くな。僕は大抵ここにいるし、僕がいない時は真弓兄さまでも道真でもいいから……だから一人で歩かないで」


 ともえを見つめる美弦の目は、まるで何かを懇願する子犬のようだった。瞳の端にうっすらと涙がにじんでいるようにすら見える。


「うん。分かった」

「……クソッ」


 ともえが頷くと、美弦はともえの足を睨みつけながらボソリと悪態をついた。

 美弦はもえを襲った人物が、どのような手のものか恐らくは気付いているのだろう。今にも騒ぎ出したい衝動をグッと堪えていられるのは、日輪道場への誇りと――何より真剣に弓に向かっているともえへの敬意からなのかもしれない。

 痛みを感じる足に視線を馳せたともえは、自分に言い聞かせるように小さく呟いた。


「……大丈夫」


 試合にはきっと出られる。

 目の前で白く小さな握り拳をぎゅっと握りしめている美弦を、ともえはじっと見つめた。

 少年のように見えて、きちんと自分自身をコントロールする術を知っている美弦が何だか頼もしい。


「有難う、美弦」

「……なんだよ、さっきからじっと見やがって。退屈なのか? 身の毛もよだつ怖い話でもしてやろうか?」

「夜中に美弦が厠に付き合ってくれるならね」

「……冗談じゃねぇ」


 そう言った美弦の視線は、ともえの足をじっと捉えていた。

 美弦の心の奥底に流れる優しさに触れた気がして、こんな状況でありながらもともえは自然と笑みがこぼれた。









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