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休息の時(颯太)No.1

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streetpoint

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 ともえの怪我の治りは思ったよりも遅く、射位に立つ時間も一日二時間ほどしか持てない自分への苛立ちが強くなっていた頃のある日。ともえの部屋を誰かが訪ねてきた。


「おうい、ともえ! いるか?」


 この底抜けに明るい声は間違いない、颯太だ。

 ともえは咄嗟にだらしなく投げ出していた足を真っ直ぐに直し、返事をする。


「いるよー」

「ようっ! ……なんだよ、なんかしけたツラしてんな。ほら、行くぞ!」


 障子を開けて入ってきた颯太は、ともえの顔を見るなり手を取って立たせた。

 軽々と引っ張り上げられ、やはりそこは男の子、力があるなと妙に感心する。


「行くって、どこに?」


 練習も終わった夕刻、これから出歩くには少々遅い時間だ。有無を言わせずともえを引っ張る颯太に、ともえは一瞬足を庇おうと颯太の腕に完全に体重を預けた。


「おっと、大丈夫か? しっかり捕まってろよ。なんならおぶるぞ?」

「おぶっ! 嫌よっ! 恥ずかしいじゃない!」

「そっか? 怪我人なんだから別にいいだろ? っと、そうそう、寄席行くぞ」

「寄席?」


 まるで子どもを腕にぶら下げてあるく父親のように、颯太はともえの腕を下から掬い上げ、反対の手でともえの手を支える。おかげで足に負担がかからず、楽に歩く事が出来た。多少強引ではあるが、颯太がともえの事を気遣ってくれているのがちょっぴり嬉しかった。


「おう。真弓兄に券をもらったんだ」

「へえ! でも真弓さんはいいの?」


 ていうか、どうして私を誘ったんだろう?

 頭を捻っていると、颯太が笑う。


「真弓兄は幸之助おじさんと話しがあるらしくてさ、んでたまたま居たオレがもらったんだ。お前最近練習あんま出来なくて不貞腐れてただろ? だから気晴らしになるかと思ってさ」

「あ……そっか。ありがと」

「礼なら真弓兄に言えよ。オレは券もらっただけなんだしよ」


 そうではない。颯太はともえの事を考えて連れ出してくれているのだから、やはり礼を言うべきは颯太になのだ。

 自然に、当たり前のように颯太は人を自分より上に置く。謙遜さとは、人間を成長させるために必要不可欠なものなのだが、なかなかどうして、簡単に身に付くものではない。

 しっかりと握られた手の暖かさに、颯太の心の温かさが滲んでいるようでともえはくすぐったかった。










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