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心の奥(颯太)No.2

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streetpoint

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 医者からの帰り道、ともえは嬉しい反面、まだ思い切り足を動かせない事への不満で複雑な顔をしていた。


「ともえちゃん、さっきから難しい顔をして……すれ違う人たちが皆驚いてるわよ?」

「だって、もうほとんど痛くないのに、試合まで四日しかないのに、包帯取れないから焦るんだもん」

「無理しなければ練習も普通にしていいって先生おっしゃってたじゃない。気持ちは分かるけど、真弓さんや颯太さんたちから出かける前にともえちゃんが調子に乗らないように、しっかり見張っていてくれって頼まれているんですもの。あまり心配かけちゃ駄目よ。私だって心配しているんですからね」

「うっ……美琴ちゃんのその目には逆らえないーーー我慢しなきゃ」


 ぶつぶつと低い声でそう言うと、美琴が笑った。


「ふふっ。そうよ、我慢我慢」


 しばらく歩いていると、ふと美琴が言った。


「そう言えば、颯太さんから聞かれたんだけど、女の子が喜ぶプレゼントは何かって」

「えっ? 颯太がっ!?」


 女の子にプレゼントとはこれまた似つかわしくない人物に、思わずともえは吹き出す。


「やだっ! 颯太ってば似合わない!」

「あら、そんな事ないわよ。だってきっとともえちゃんにあげるんですもの」

「え?」


 ともえの動きは完全に止まった。

 ほんの数秒街の往来でともえと美琴は見つめ合う。

 すると美琴はいつもの可憐な微笑みで可愛らしく首を傾げて歩き出した。


「あんなに真剣な颯太さんを見たのは始めてだわ。よっぽどともえちゃんの事が好きなのね」

「えっ? 嘘っ。どうしてっ!?」


 先日の寄席での帰り道の事を思い出しながら、ともえは慌てて美琴の後を追う。


「くすっ。だって、“美琴は髪を結ってるから簪なんかいいかもしれないけど、あいつはいつも一つに結んでるだけだから、簪なんてもらっても喜ばないと思う”って言ったんですもの」

「あ……」


 思わず自分の頭の後ろへ手をやる。

 颯太がそんな事を考えていてくれたという事が心の底から嬉しい。


「ーーともえちゃんも、颯太さんの事が好きなのね?」


 コクリ


 無言で頷いた。それを受けて美琴は続ける。


「颯太さん、言葉遣いはちょっと乱暴だけど、すっごく優しいし、いつでも人のために何かをしたいって思っている素敵な人よ」

「うん……」


 それはともえも知っている。

 だが、ともえよりも遥かに美琴は颯太と時間を共にして来ている。自分の知らない颯太を知っている美琴が羨ましい。もっともっと颯太の事が知りたい。


「美琴ちゃんは真弓さんの事が好きなんでしょ?」


 今度は反撃に出てみた。


「えっ? やだ、もしかして顔に出てた?」


 恥じらいながら眉を寄せる美琴に、ともえは微笑む。


「すぐに分かったよ。美琴ちゃんが真弓さんを見つめる時や真弓さんの事を話す時、すっごく素敵な顔をするもん」

「そうかしら?」

「好きって言わないの?」


 素朴な疑問に、美琴は慌てて手をパタパタと揺らす。


「言えないわ! 真弓さんは、確かに素敵な人だし、好きだけど……憧れって言った方が正しいかもしれないな」

「憧れ?」

「そう。私と美弦にとって、真弓さんは憧れの存在なの。だから、そういう意味で好きとはちょっと違うかも」


 それは恐らく違うだろうとともえは思った。恋する乙女の気持ちは、今のともえには良く分かるのだ。でも美琴がそれ以上真弓への気持ちに付いてともえに語らないのであれば、無理に聞く必要は無い。


「そっか……憧れ。うん、分かる気がするな。真弓さんって優しいもんね」

「ええ。とっても」

「美琴ちゃん。私が颯太の事好きって、絶対誰にも言わないでよ!」

「言わないわ……でも、二人とも両思いなんだから別にいいんじゃない?」

「だだだ駄目だよっ!」

「どうして?」

「恥ずかしいもんっっ!!!」

「ふふっ、変なともえちゃん。でも、私はともえちゃんの味方よ。颯太さんとの仲、きちんと取り持つからね」


 普段見られない美琴の強気な一面に、ともえは苦笑した。


「ありがと」

「じゃあ、手始めに、ともえちゃんは何をプレゼントされたら嬉しいか教えて? 颯太さんに報告するから」

「もうっ、美琴ちゃんったら!」


 それからともえと美琴は手を繋いで道場へと歩いて帰った。

 美琴もいる。颯太もいる。ともえにはこんなにも心強い味方がいてくれる。

 思いがけずして知ってしまった颯太の自分への気持ちは、さらにともえの心の状態を高めてくれたようだった。









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