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チェンジ・ザ・ワールド☆
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決着(垂司)No.2

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はなもあらしも














 試合は長引いていた。

 日輪道場からは、幸之助と代表である道真とともえ。そして試合の公正を期すため、立会人として他の道場から選ばれた師範が二名が共に笠原道場へと集い、決戦の火ぶたは落とされた。

 試合の運びは、近的と遠的両方を行ない、その的中数の多い方の勝ちという、しごく簡単なものとなっている。

 互いの実力は拮抗しており、試合は延長に次ぐ延長となっていた。


「……っ」


 誰にも気付かれないようにして、ともえは静かに息を飲んだ。

 試合が長引くにつれ足の痛みが増してきている。これでもかと集中しているのに、足が言う事を聞くのを拒む。


「那須さん、あなたの番よ」


 またも的中させた橘がそう告げる。


「はい」


 足の痛みに苦しんでいる事など、誰にも知られたくなかった。

 負けるかもしれない―――ともえはそう覚悟すらしていたが、それに言い訳を付けたくなどなかった。

 精神を集中し弓を引く。負荷がかかればかかるほど、足にも負担が押し寄せてくる。痛みをこらえて矢を放った。が、矢は虚しく的から外れた。


「ここまでのようね」


 橘が口の端を上げたその瞬間―――


「失礼します」


 凛とした声が道場内に響いた。聞く者の心を蕩けさせるその声に、ともえはハッとし振り返る。


「垂司さん!」


 そう名前を呼ばれると‘良くやったね’と労わんばかりの眼差しを、垂司はともえに向けた。


「御無沙汰を致しております、限流師範」

「うむ」


 限流は垂司をよく知っていた。垂司が神童とされている頃、誰よりもその才を買ってすらいたのだ。


「今さら何をしにきたんです?」


 氷江が冷たくそうあしらおうとすると、垂司は不敵に微笑んだ。


「私はこう見えてもね、礼にはちょっとうるさいんだよ」


 そう言うと垂司は自分の背後に視線をはせ、小さく顎を上げた。

 それを合図に垂司の後ろから、二人の男が姿を現した。


「申し訳ありませんでした!」

「そんなに酷い怪我をさせるつもりはなかったんです!!」


 言うが早いかともえに向かって土下座をした二人の男。その顔にともえは見覚えがあった。弓具店からの帰りに襲った男だ。 


「あっ」

「これは一体どういう事だ?」


 限流が不審そうに眉をひそめる。


「さ、自分達の口で説明して頂こうか」


 垂司がそう促すと、二人の男は限流の前で身を震わせながら真実を語った。あの日、あの時、笠原というプライドを持ちだして、ともえを襲ったのは自分達だと。そしてともえは今でも足が治っていないと。


「と、こういう事です。あとの事は限流師範にお任せ致します」

「……分かった。本当にすまない事をした。今回の試合は無効として頂きたい」


 そう言うと限流はともえに向って頭を下げた。


「そ、そんなっ! 頭をお上げ下さい! それに試合は無効なんかじゃありません。私は負けたんです、橘さんに」

「あなた……」


 橘がわずかにともえの方へと身を寄せる。


「足が痛いとか調子が悪いとか、そんな事で影響を受けるのは私が弱いからなんです。だからこれからも、もっと精進していきたいと思っています」

「……田舎娘なんて言ってしまってごめんなさい」


 そう言うと、橘はともえに向って頭を下げた。


「えっ!?」


 誇り高い橘の取った行動に、ともえが目を白黒させていると橘の方から手が差し伸べられた。


「あなたの足がちゃんと治ったら、一緒に手合わせしていただけるかしら?」

「はいっ! もちろん」


 ともえと橘が握手を交わすと、道場内に割れんばかりの拍手が起こった。

 そんな中、幸之助が言った。


「……なあ、限流。確かに我らは流派が違う。だが、だからといっていがみ合う必要はないと思うのだ。時代は変わった。武芸で録をもらう時代は終わったんだ……我々が弓道界の為に出来る事を模索して行かなくてはいけないのではないだろうか?」


 ともえは息を飲んで限流の答えを待った。


「どうして私はお前の言葉を素直に聞けなかったのだろうな……伝統を重んじる心は大切だが、それ一辺倒ではいけないという事に、那須さんと橘の成長によってやっと気付かされた。私もまだまだであったな」


 まるで物語を話すように語る限流に、幸之助は深く頷いた。


「幸之助、これからは新しい時代と共に、我ら弓道家も歩もう」

「限流……」


 拍手の中、そっと垂司は道場を後にした。その姿を目にとめると、道真も慌てて後を追った。








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