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チェンジ・ザ・ワールド☆
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決着(垂司)No.3

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streetpoint

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 「待てよ!」


 背後からそう呼びとめられ、垂司はゆったりと振り向いた。三歩ほど下がった所で、道真が息を整え立っている。


「……なんで犯人が分かった?」

「私は顔が広いからねぇ。誰も見てないなんて思ったら大間違いというものだよ」


 そう答えると、垂司はまた歩きだした。道真も黙ってその後を追う。

 しばらく二人は黙ったまま歩き続けた。


「……道真」


 やがて沈黙を破るように垂司が口を開く。


「お前は私に何か言いたい事があって来たんだろう」


 垂司のその言葉に道真は足を止めた。それに合わせて垂司も立ち止まる。


「あんた……あんたともえの事、どう思ってんだよ!」


 道真が叫ぶようにそう吐き捨てると、垂司は寂しそうに微笑んだ。


「どうって?」

「とぼけるな」


 歯を噛みしめながら迫る道真に、小さくため息を吐きながらも垂司は正面から向き合う事に決めた。


「……いいだろう。だが愛していると言えばお前は納得するのか?」

「するわけねぇだろ! あんたみたいなやつに……!」

「くくっ、相変わらずだな。道真」

「なにがおかしい!」

「お前もともえちゃんが好きなんだろう」

「ばっ!」


 図星を指されて道真は顔が紅潮していくのを感じた。


「でもね、お前にはやらない。最初はね、身を引こうと思ったんだよ。これは本当だ。私は彼女を傷つけるだけだと思ったから」

「その通りじゃねぇか」

「……そう、かもしれないね」


 道真は鋭い視線で垂司を睨みつける。


「あんたはいつもそうだ。いつもそうやって俺の大切な物を奪う。そして捨てていくんだ! 弓だってそうじゃないか……! 俺はあんたの弓が好きだった。なのにあんたはそれをあっさりと捨てた。あんたは信用出来ねぇ。あんたみたいなやつには絶対に」

「待って!」


 道真が厳しく糾弾したその時、聞きなれた声が制止をかけた。

 二人が声のした方を向くと、そこにはともえと幸之助が立っていた。笠原道場に挨拶を済ませた二人が、どうやら追いついていたらしい。


「待って……下さい」


 ともえはそう言うと垂司と道真の前に歩み出る。


「道真君、私の事をそんな風に心配してくれて有難う」

「ともえ……」

「私、ここに来るまでに全部聞いちゃいました。私の父と幸之助師範の間で取り決められていた約束」


 そのともえの言葉に垂司は小さく息を飲んだ。


「幸之助師範、私……私は、垂司さんと一緒になりたいです」


 思い切って吐露したともえの告白に、瞬間全ての時が止まったかのような静寂が訪れた。


「……本当にいいのかね、ともえさん。よりによって垂司では」

「垂司さんじゃなきゃダメなんです」


 ともえはハッキリとした口調でそう言うと垂司をそっと見上げた。


「私はこの先、どんな事があっても垂司さんのお側を離れません。絶対に。だから、もう」


 ともえはそこで言葉を切ると、垂司の胸に飛び込んだ。

 垂司が反射的にともえの体に手を回すと、その耳元で垂司にだけに聞こえるようにともえが小さく囁いた。


 だから、もう怯えないで―――――


 垂司の美しい瞳が、今のこの世界を全て焼き付けようとするかのように大きく見開く。

 ああ、この子は見透かしていたんだ―――垂司の中にある小さな怯えと渇望。それは弓を捨てた自分と向き合う怖さと、真実心から何かを愛することに対する怯え。それでも愛したいと誰かの傍で寄り添いたいという願い。複雑に絡んでいた垂司の心は今、ともえの言葉に全てほぐされたかのような感覚に支配されている。


「父上、ともえちゃんは私が必ず幸せにします」


 垂司はともえを腕の中から解放すると、幸之助に向き直りそう宣言した。


「それともう一つ……私はもう一度弓を握ろうと思います。安芸でともえちゃんのお父上のお役に立ちたいのです」

「……そうか。垂司、その言葉偽りはないな?」

「ありません」

「……そうか。ともえさん、垂司をよろしく頼みます」


 そう言って幸之助はともえに頭を下げると、ゆったりとした笑みを浮かべた。幸之助がそんな笑みを浮かべたのはひどく久しぶりの事だったのかもしれない。

 そんな父親の姿を見て、道真も何かを受け入れたように頷いた。


「絶対幸せにしろよ、なんかあったら許さねぇからな」

「もちろん」


 そう言うと睨み合うように二人は顔を突きつけた。が、互いに口の端は上がっていた。


 勝とうと、勝ちたいと思い続けていた。

 でも負けてしまった今、気持ちはとても清々しい。

 負けた者には、きっと弱さの中にひそむ優しさを見る世界が与えられる。

 ともえはすっと空を見上げる。靄は晴れ青空が覗いている。




 垂司さんとなら、きっと―――どこまでも大丈夫。








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