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チェンジ・ザ・ワールド☆
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act.6(御影山)

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streetpoint

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就職難民 黙って俺についてこい!










 「なんだその顔は?」


 社長室の前で、私は御影山社長に睨まれた。


「はあ、寝不足で……」

「そんな事は見れば分かる。俺はどうしてそんなクマが出来ているのかを聞いてるんだ」

「昨日、カレンに借りた化粧品に関する本や新製品の資料を読んでいて、気づいたら外が明るくなっていて」

「ふう。俺は美成堂の社長だ。そしてお前はその美成堂の社員研修を受けている。俺が言いたい事は分かるな?」

「はい……すみません」 


 怒られて当然。化粧品会社の人間が、こんなひどい顔と肌で出社だなんて、ましてやまだ研修2日目だというのに、自覚がないにもほどがある。


「ちょっと来い」


 肩を落としていた私に、いつもよりさらに怖い顔になった社長。次には私の腕を掴んで少し強引に社長室に入った。


「お、おはようございます」


 昨日と同じように、秘書の女性がすぐに立ち上がったので、私は慌てて挨拶をした。けど、社長の雰囲気が怖かったのか驚いた顔で固まってしまってた。

 それと、部屋の隅に新しい机が用意されていた。翌日には準備されてるなんて、さすがだなあ。

 ―――なんて感心していると、社長室のソファに投げるように座らされる。


「あのっ、社長。本当に今日の私の顔に関しては申し訳ないと思っています。明日からは分をわきまえた行動をしますから……」


 だからもう、そんなに怒らないでよっ!

 半分泣きそうになっている私の前に、社長は何やら銀色の箱を置くとおもむろにその蓋を開けた。


「あ……」


 そこにはメイク道具がぎっしりと、しかも整然と並べられていて、カレンが持っているメイク道具と瓜二つだった。その中から社長はいくつか取り出すと、無言で私の顎を持ち上げた。


「仮にも社長秘書として行動するんだ、そんな顔でうろうろされたら俺の社長としての資質が疑われるからな。今から人前に出られるようにしてやる」

「えっ? 社長がですかっ!?」

「当たり前だろう。化粧品会社の社長がメイクの仕方も知らないで務まるとでも思っているのか?」


 なるほど、確かにそうだわ。

 って、でもでも! 意外にもほどがある! だって、あの、御影山社長がよ! あの鬼がメイク出来るなんて、誰が信じるのよっ!?


「分かったら大人しくしていろ」

「はいっ」


 あまり考えないようにしよう。また顔に出て怒られちゃう。

 私は気まずさと恥ずかしさで目をつぶっていて、社長の手が顔に触れるたびにびくびくしてしまった。だけどパフやブラシはとても優しくて、まるでカレンにメイクをしてもらっている時のような心地よささえ感じた。


「―――その不細工な顔をやめろ、もう終わった」


 不細工って、失礼な!

 私はゆっくりと目を開け、メイク道具箱に据え付けられている鏡をのぞいて目を見張った。


「え……? これ……」


 すごい。あまりの変貌ぶりに言葉が出ない。本当にこれが私?

 目の下のクマはすっかり消え、その鏡には見た事の無い私の顔が映し出されていた。


「これで少しはましだろう。今日は午後から開発センターに行くから付いて来い」

「はいっ! あの、ありがとうございます!」

「忙しいんだ、俺の手を煩わせるな。本当にお前は手がかかる女だな、質が悪い」


 呆れたようにメイク道具を片付け、社長は自分のデスクにドサリと座って仕事を始めた。

 私はドアの前で深々と頭を下げ、隣りの部屋へ戻る。


「葉月さん、大丈夫だった!?」

「はい、あの、お騒がせしました」


 秘書室に戻ると、二人が心配そうに顔を覗きこんで来る。

 背が高くて綺麗な人が和田さんで、小柄で可愛らしい人が田村さん。


「良かった〜。社長があんな顔して入って来るからびっくりしちゃった」


 と、和田さん。そうよね、私もいつもより1.5倍増しで怖かったもん。


「御影山社長、先代の上にあぐらをかいて社長に座ったって思われたくないから、自分にも他人にも厳しいのよね」

「でも女の人をあんなふうに引っ張ってるのなんて、見た事無いけど」

「えっ? そうなんですか?」


 怒って怒鳴りつけそうなイメージが勝手にあるけど、暴力とかはさすがにしないよね、社長だし。ってか、見た目は冷たくて怖そうだけど、手を上げるほど横暴じゃなさそう。

 ん? じゃあなんで私はひっぱられたの? そんなに酷い顔が許せなかったって事かな?

 悩んで頭を捻っていると、田村さんが笑った。


「大丈夫よ、殴ったりは絶対にしない人だから。怖そうだけど紳士なのよ、社長は」


 あ、そうね紳士。うん、鬼だけど確かに紳士―――って、人の家に勝手に上がり込んで叩き起こして2分で用意しろって言う人のどこが紳士なのよ! 


「きっと葉月さんの事気に入ったのね」

「まさか!」


 なんだか二人とも年上の優しいお姉さん。って感じで良かった。これなら分からない時も色々教えてくれそう。川島さんといい、和田さん田村さんといい、社長以外のこの秘書室はほんわかだわ。

 その後、私は真新しい机に座り、田村さんに教わりながら簡単な仕事内容をメモして行った。

 基本的には社長宛の郵便物のチェックや電話の応対、自社や取引先からの報告などの資料作成。そして社長から社員や取引先への通達がお仕事。社長自らが行なう仕事のスケジュールは、その中から川島さんがチェックして社長に伝えるみたい。社長の仕事って結構面倒なのね。






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