「ラトゥーニ! ラトゥーニ――ッ!!!」
リョウトの叫びに応答無くV2ガンダムは落下してゆく。まるで羽根が舞うようにゆっくりに見えた。
機体を掴もうとウイングゼロが翔けるが寸前、ゼオライマーの衝撃波に邪魔され届かない。閃光はどう
したのか、考える余裕はなかった。怒りに任せてツインバスターライフルを構える。しかし―――
「愚図が! さっさと退け!」
怒号と共に現れたRX-7ナウシカが、ウイングゼロの破損した翼を補うかのように肩を貸す。
「でもまだ!! このままじゃ、このままじゃ!!」
「あれを見て分からんのか、手遅れだ! そうまでして貴様を守った娘を犬死にしたいか!」
ゼオライマーの射程からウイングゼロとナウシカが離れて行く。追撃したかったがゼオライマーの
エネルギーも既に底を尽いていた。最初のメイオウ攻撃で大半を消費した為、二発目は不発だったのだ。
「………………………そうだ。キラは?」
リョウトを逃した悔しさとエネルギー切れした迂闊さを腹を立てて、近くのビルを数個破壊した後、
ゼオラは思い出したかのようにキラの回収に向かった。
「墜落後、直ぐに駆けつけたのだが手遅れであった」
無残にも破壊されたグダの前。ギレンの言葉に、リョウトは慄いた。あの時、すぐに助けに行けば
副長は助かったかもしれない。あの後、タシロも行方が分からないらしい。
「僕の………僕のせいで!」
「迷いは捨てろ。戦場では迷いを持つ者から死ぬ。そして迷いを持つ者が味方を殺す」
ギレンの言葉がリョウトの胸に突き刺さった。あの時、迷わなければラトゥーニは死ななかったかも
しれない。もっとゼロを活用できれば、もっと非情になれればこんな事にはならなかったかもしれない。
あの時、心の何処かにアラドへの罪悪感があったのは事実だ。昨日ヴァルシオン改を葬った時のような
力を出せていれば、躊躇なく引き金を引いていれば、みんなを助けられたかもしれない。
(みんなを殺したのは………僕だ)
リョウトの頬を一粒の涙が零れ落ちた。『迷いを持つ者が味方を殺す』その言葉が無意識に口を出る。
「まあ希望もある。貴様の探していた娘だが、昨日出会ったのであれば時間が合わん」
あまり打ちのめしてもいけないと思ったのか、ギレンが似合わないフォローを入れた。人は希望を
糧に生きてゆくものだ。エサは適度に与えねばならない、そうギレンは考えていた。
(リオの生きている可能性か。もしそうなら、どんなに……………あれ? あれは一体?)
リョウトは目の前に残骸に奇妙な点を見つけた。悲しみで心が一杯のはずなのに何故か引っ掛かる。
明らかに外部から破壊された痕跡を隠してあるのだ。素人目にはともかく、PT開発部の技術者である
リョウトにはハッキリと認識できた。
(偽装の必要があるのは破壊原因を秘密にしたいから。今その必要があるのは………)
リョウトはギレンを疑っている自分に混乱していた。否定する材料を探すが疑惑は膨らむばかりだ。
確証はない。動機も分からない。だが状況は彼を犯人だと示している。どうして良いか迷っていた。
「とにかく余計な迷いは捨て、非情かつ合理的に行動する事だ。でなくば娘を見つけても守り抜けんぞ」
再びギレンの言葉がリョウトの胸に突き刺さった。そしてそれはある一つの決意を促す。
「分かりましたギレンさん。僕はもう、迷いません」
一言呟くと、ナウシカの眼前にライフルを突きつけた。残ったエネルギーがチャージされてゆく。
「この機体には破壊痕を誤魔化す工作がされています。そんな事をする必要があるのは……」
「待て、冷静に考え直せ。私は……」
「言いましたよ。僕はもう迷わないって」
銃声。一瞬送れてナウシカの残骸がバラバラとこぼれ落ちる。
「間違っていたらゴメンなさい。許してくれなくても結構です」
冷たく言い放つとリョウトは希望を求め東へと飛び立った。
邪魔者は迷わず消せばいい。そうすればリオを守る事が出来る。
そんな考えがリョウトの心を支配し始めていた。
【ギレン・ザビ 搭乗機体:RX-7ナウシカ(フライトユニット装備)(トップをねらえ!)
パイロット状態:死亡(蒸発したと思われる)
機体状況: 大破(バラバラ)
現在位置:B-1】
【リョウト・ヒカワ 搭乗機体:ウイングガンダムゼロ(新機動戦記ガンダムW)
パイロット状態:健康
機体状態:小破(左翼が一部破損し飛行能力低下)
現在位置:C-1 補給しつつ東の小島を目指す
第1行動方針:リオの捜索
第2行動方針:邪魔者は躊躇せず排除
最終行動方針:仲間を集めてゲームから脱出
備考:バスターライフルはエネルギー残少】
【二日目 12:00】
同じくグダの墜落地点。既にリョウトがギレンを撃ち、飛び去ってから1時間程が経過していた。
「なんてこったぁぁ!!!」
やっと現場に到着したタシロが無残に大破したグダを見て叫ぶ。シロッコから逃げ延びた後、低空で
移動して来たた為、墜落現場の発見にかなりの時間がかかっていた。
(子供達は無事だろうか? 無事に逃げ果せたと祈る他ないとは………)
あれから通信は誰からも入っていない。ただ雑音が響くばかりだ。タシロはラトゥーニが撃墜された
事もギレンが命を落とした事も知らない。ただ祈るしかなかった。
「くっ、偉そうな事を言って置きながら部下の一人も助けられないとは…………副長、すまぬ」
おそらく船と命を共にしたであろう副長にタシロは心から詫びた。ある程度は分かっていた事だが、
知り合いが志半ばでの戦死ですらなく、理不尽に死んだ事は衝撃が大きい。歴戦の自分ですらそうだ。
おそらく子供達の受ける衝撃は自分の比ではあるまい。そう改めてタシロは思う。
(だからこそ、だからこそ守らねばならぬと言うに!)
無力だった。機体を満足に操ることさえ出来ていなかった。戦線離脱も幸運としか言いようが無い。
しばらくタシロは己の無力さに打ちひしがれていた。そして、妙な事に気がついた。
(この通信に入る雑音………特定のリズムを持っている?)
僅かな望みを賭けグダを特定のリズムで叩いてみる。モールス信号に代表される原始的な打文だ。
しばらくして通信に入る雑音のリズムが変化した。
「いやぁ。死ぬかと思いましたよ」
数十分後、解体されたグダの中から飄々と副長が姿を現した。負傷したのか左足に添木がしてある。
「副長。よく生きていてくれた! まさに奇跡だ」
「いえ奇跡なんてありませんよ」
破壊されたグダの頭部を見て副長は呟く。ギレンが操縦室の場所に興味を持った時に、それとなく
ダミーを教えておいたのだ。常に最悪の事態に備えて打てる手は打っておく主義らしい。こうも早く
役に立つとは思わなかったが。そしてジッとグダを見つめると副長は静かに口を開いた。
「助けていただいて恐縮ですが、ここでお別れのようです」
機体を失って今後生き残れるとは思えない。足を引っ張るだけだと副長はタシロに伝えた。他人の
機体を奪う事の難しさはタシロも良く分かっていた。それでもタシロは諦めつかず考え込んでいる。
「そうだ! この機体は本来、二人乗りだとラトゥーニ君に聞いたぞ!」
ヒュッケバインMK3ガンナー。本来のパイロットはリョウト・ヒカワとリオ・メイリンの二名。
タシロはAMガンナーのハッチを開けた。確かに空きの操縦席がある。それを見て副長は考えた。
グダにも空きの操縦席(オペレーター席等)がいくつもあった。最初から用意されている席なのだから
機体乗り換えとは別物なのだろうか。主催者の胸先ひとつで決まる危険な賭けだった。随分と悩んだ末、
副長は結論を出した。どの道、機体無しでは死んだも同然だ。
「分の悪い賭けです。しかも負けた時は艦長と機体を巻き込んでしまいますが、構いませんか?」
「無論だ。クルーと命を共にする覚悟は最初から出来ている」
即答だった。そして、二人は賭けに勝った。
「アレって、ありでございますですか?」
ヘルモーズのオペレーター席に座るラミアが呆れた様に尋ねた。
「………見た目よりも勇敢な男達だな」
呆れた様にユーゼスも答えた。乗換え規制は存在するが、主操縦席以外はノーマークだった。
コクピットの中で食卓を囲めるくらいだから割といい加減な規制なのかもしれない。
「やはり二人乗りの新装版(OG2版)ではなく、一人乗りの初期版(α版)をコピーすべきでござい
ましたですね。乗換え規制を強化しますですか?」
α正史で戦ったのは龍虎王となっているので、初期版は探すのが面倒だったと思われる。
「途中でルールを変えるのは主催者としてフェアではないと思わんかね?」
ただ単に己の過ちを認めたくないだけだろうとラミアは推測したが、口には出さない。
「不測の事態が起こる前に、処置を厳しくすべきと提案いたしますです」
「何を言っている。だからこそゲームは面白いのだろう? それに………」
ユーゼスは意地悪そうにラミアをジロジロと見ながら続けた。
「乗換え判定を強化した途端、お前の首輪も爆発するが………強行するかね?」
ラミアは自分の席を確認した。伝統的にオペレーター席は戦艦のサブパイロット席である。
「………現行のままで良ろしいかと思いますです」
【タシロ・タツミ 搭乗機体ヒュッケバインMK3ガンナー(パンプレオリ)
パイロット状況:上半身打撲
機体状況:良好(Gインパクトキャノンは二門破損)
現在位置:B-2廃墟
第1行動方針:他の参加者との合流(ラトやリョウトの捜索)
第2行動方針:ゼオラやシロッコをどうにかする。
最終行動目標:ゲームから可能な限りのプレイヤーとともに生還
備考1:AMガンナーに搭乗した副長が管制制御をサポート】
【副長 搭乗機体:メカザウルス・グダ(ゲッターロボ!)
パイロット状況:左足骨折(応急手当済み)
機体状況:大破
現在位置:B-2廃墟
第1行動指針:タシロをサポートする
最終行動指針:ゲームから可能な限りのプレイヤーとともに生還
備考:AMガンナーへ乗換。AMガンナーはサポートのみ、本体操作は出来ません】
【ラミア・ラヴレス 搭乗機体:???
パイロット状況:健康(言語回路が不調)
現在位置:ヘルモーズ
第1行動方針:ユーゼスの命令に従う
備考:ちゃんと他の参加者と同じ首輪を着けているらしい】
【二日目 13:30】
ゴッドガンダムの落下地点。突っ伏してはいるが激突前に体勢を立て直せたのだろう、落下による
大きな損傷は見当たらない。戦闘による後遺症か、キラは全身を襲う激痛で体を起こす事も困難だった。
会話が出来るようになるまで随分時間が経過している。そんな体でよく戦闘が出来たものだ。まるで暴走
した強化人間だなとシロッコは感心する。
「よくやった上出来だよ」
「やめてください! 人を殺して来て………そんな………よくやっただなんて!」
痛いのか悲しいのか、キラは泣き声だった。こんな無茶なシステム考えたやつの気が知れないとでも
考えていたのかもしれない。
「いや君はよくやったさ。よく生きていてくれた。そしてよくゼオラを守ってくれた。私こそ援護に
来れずすまなかった」
シロッコはガンダムタイプを相手に生き残ることが、どんなに難しい事かを良く理解している。
機体の性能に頼り切っている者を守って戦う困難さもだ。褒める所は褒めてやるのが躾けのコツだ。
「ゼオラさんは………大丈夫でしたか?」
キラは恐れている。ゼオラは大事な友達を失って悲しんでいるのだろうか。奪ってしまった自分を
責めるだろうか。自分が死ぬよりも、知っている人物を殺した事が怖くて仕方がない。涙が止まらない。
「君の無事を確認してから、友人の所へ行ったよ。遺体を回収するためにね」
キラの回復を待つ間に、アラドを救う為に必要だと吹き込み、回収へ向かわせたのだ。運よく遺体が
残っていれば儲け物だ。工具を持たせて向かわせた。首輪を外せなくとも遺体を確保すれば後は自分が
始末する。本当はキラに任せたかったが、この様子では役に立ちそうにない。爆発力は凄いが脆過ぎる。
機体の反動も大きい。このまま立ち直れないならば『処理』する事も視野に入れねばとシロッコは考える。
「何て事を! 女の子なんですよ! 友達なんですよ!」
遺体を回収する。それが何を意味しているかは明白だった。
「友達だから、だろうな」
―――友達だからに決まってるでしょ! あなたこそ無関係なのよ!
キラはラトゥーニに言われた言葉を思い出し、そして思い悩む。ゼオラから大事な友達を奪った上、
その遺体を傷つけさせようとしている。何も出来ない自分が情けなかった。
「行きます。ゼオラさんの所へ行きます」
何も出来ないかもしれない。でも放っては置けなかった。罵倒されたとしても一人で悩むよりマシ
だと思った。ゼオラの為に何かをしたかった。
キラは無理矢理体を起こすとヨロヨロと移動を始めた。
V2ガンダムの落下地点。半壊で地上に叩きつけられた機体が無残な姿を晒している。
(私………生きてるの………まだ)
驚いた事にラトゥーニは生きていた。だがそれは『即死ではない』というだけだった。暗闇の中、
指一本すら動かせない。ただ流れ出る血が残された時間が僅かである事を教えてくれた。
(本で読んだ通りだ………寒いけど………あんまり痛くない)
痛みというよりも全身の感覚がない。自分がどんな有様なのか、確かめようにも視線を動かすこと
でさえ困難だった。目も見えているかどうか分からない。ただ、やけに息苦しい。
(私………死ぬのかな………これから)
スクールにいた時は死ぬ事が怖くなかった。いつ死んでもいいと思ってた。抜け出してから基地に
配属されても、そうだった。生きる事に希望は無かったし、辛い事の方が多かった。
(こんな事なら………日記帳………片付けて置けば………良かった)
仲間や友人達の姿が浮かぶ。次々と思い出が溢れ出して来る。これを走馬灯というのだろうか。
ガーネット達と出会って楽しい事が沢山あった。自分なりに戦う意味、生きる意味を知る事ができた。
家族ができた。親友もできた。実りそうにはなかったが恋もした。
(やだ………やだよ………死にたくないよぉ………リュ………セ)
いつの間にか血ではないものがラトゥーニの頬を伝っていた。
「……ガ……ヴゥ……ゲ……」
声は出ない。僅かに開いた口からは血とも涎ともつかないものが流れ落ちるだけだった。奥歯が
カチカチと音を立てていたが、それも次第に間隔が開いていった。
(……リュ……ウ………)
不意に小さな音がして光が差し込んだ。外に操縦席の装甲を引き剥がした白銀の機体が立っている。
機体からゼオラが飛び降りて来る。しかしラトゥーニの瞳は光を感じる事が精一杯だった。
『ラト! ラト! ラト!』
その叫びは殆ど聞こえない耳にも微かに届き、その抱擁は失いかけていた意識を僅かに引き戻した。
(なんでだろ………ゼオラの声がする………なんでだろ………あたたかい………)
『ラト、もう泣かないで。あなたは一人じゃないから、私達が一緒だから、ずっと一緒だから』
既にラトゥーニは言葉を理解できなかった。ただ懐かしい友人の声と温もりに浸っていた。
(ぜお…らぁ……わたし……こわい……ゆめ……みたの……すごく………こわ……い………ゆ…………)
『助けるから、絶対助けてあげるから。アラドと一緒に助けるから。だから………ごめんね!』
その直後に喉の詰まりが抜けて楽になり、再び暗闇が舞い降りた。温もりが遠ざかってゆく。
(…………っと………いっ…………しょ…………)
ラトゥーニ・スゥボータは絶命した。痛みを感じること無く微笑を残したまま。その喉元は大きく
切り裂かれていた。
時折倒れこむキラに合わせて、シロッコがV2ガンダムの所へ辿り着いたのは随分経過しての事だ。
「流石に頑丈なものだ。『連邦、脅威の技術力』というヤツだな」
シロッコが半壊しつつもコクピット周りの原形を留めているV2ガンダムを見て素直に感心した。
宇宙世紀技術の集大成と呼ばれた機体の凄さは残骸からでも分かるようだ。
「大丈夫ですか、ゼオラさん?!」
ゼオラは転がったV2ガンダムの前、開け放たれた操縦席の前に立っていた。友人の遺体を見て
呆然と立ち竦んでいるろだろうと、キラはゼオラの側へ行く。しかしキラを迎えたのは鮮血に染まった
ゼオラ、そして――――
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
悲鳴。そしてキラは激しく嘔吐する。何も考えられなかった。何も考えたくなかった。
「どうしたのキラ? 紹介するわ。この子はラト。私の大事なお友達。顔を見るのは初めてよね?」
キラは見た。自分の殺めた少女を。ゼオラの右手に抱かれた少女の虚ろな瞳と微笑を。
「キラ、首輪の解析をお願い。アラドを助ける為に必要なの。この子を助ける為に必要なの」
差し出したゼオラの左手には少女の首輪が握られていた。
「う、あ、あああ……」
目線が少女の瞳と合った。座り込んだキラの目が見開かれ涙が溢れた。
「あぁぁぅぁああぁぅぁぁぁあぁ」
「大丈夫。あなたは悪くないから。みんな助かるから。あなたが助けるんだから。あなたは悪くない」
言葉にならない嗚咽を上げるキラをゼオラは優しく抱きしめる。強い血の匂いが鼻腔を刺激した。
「大丈夫。私たちが助けるの。みんな助かるの。だからあなたは悪くないの。みんな許してくれるわ」
優しい蜜のような言葉がキラの砕けた心に塗り込まれてゆく。先程までキラがゼオラにしていた事。
「みんな………助かる? みんな………許してくれる? みんな………僕を許してくれる?」
「ええ、大丈夫。みんな許してくれるわ。私が許してあげるわ。だから大丈夫よ」
キラは震える手で首輪を受け取った。ベッタリと血が付いている。また少女と目が合った。
(大丈夫、僕が助けてあげる。キミを助けてあげる。他のみんなも助けてあげる。だから僕は大丈夫。
殺しても許して貰える。そう、『僕は許して貰える』。大丈夫、大丈夫だ)
キラの泣き顔に笑顔が浮かんだ。その目は虚空を見ている。いつの間にか身体の震えは止まっていた。
そんな子供達から少し距離を置き保護者シロッコは一人、溜息をつく。遺体から首輪を外す事を
どうやって二人に納得させようかと悩んでいたのに、予想の斜め上を行かれた。
(やれやれ。爆弾が二つになったか。いっそ免罪符でも作って宗教でも開くかな)
冗談を交じえなければやってられなかった。もう少しキラを思考力のある駒に教育したかったが、
イジケて使い物にならないよりはマシ、反抗しないようシッカリ操れば問題ないと思い直す。
(先程の連中が帰ってきても厄介だ。首輪の解析は移動した後にするか。補給も必要だ………それに)
シャワーも浴びせ休息させねばいかんな、と血塗れの二人を見てもう一度溜息をついた。
「大丈夫。みんな助かるから。みんな、みんな、最後には助かるから。大丈夫、安心して」
「そう……だね。みんな助かるんだよね。そうだよ、だから……だからみんな、許してくれるよね」
殺戮ゲームの二日目、昼。命は羽の様に舞い、心は脆く砕け散る。ここはそんな世界。
【ゼオラ・シュバイツァー 搭乗機体:ゼオライマー(冥王計画ゼオライマー)
パイロット状況:身体的には良好。落ち着いてみえるが精神崩壊(洗脳状態)
機体状況:左腕損傷(エネルギー切れ。徐々に回復)
現在位置:B-1
第一行動方針:アラドを助ける為にシロッコとキラに従う
第二行動方針:アラドを助ける事を邪魔する者の排除
最終行動方針:主催者を打倒しアラドを助ける
備考1:シロッコに「アラドを助けられる」と吹き込まれ洗脳状態
備考2:リオを殺したと勘違いしている
備考3:リオがアラドを殺したと勘違いしている】
【キラ・ヤマト 搭乗機体:ゴッドガンダム(機動武道伝Gガンダム)
パイロット状況:激痛と疲労で衰弱(歩くのもやっと)。精神は崩壊気味
機体状況:損傷軽微、右腕消失
現在位置:B-1
第1行動方針:首輪の解析
第2行動方針:ゼオラと自分の安全確保
第3行動方針:ゼオラとシロッコに従う
最終行動方針:生存
備考1:「人を殺しても後で助けられる」と思い込もうとしている
備考2:ラトゥーニの首輪を所持】
【パプテマス・シロッコ 搭乗機体:ダンガイオー(破邪大星ダンガイオー)
パイロット状況:良好(保護者を演じる事に少し疲れた)
機体状況:右腕は肩から損失、左腕は肘から下を損失。全体に多少の損傷あり(運用面で支障なし)
現在位置:B-1
第1行動方針:首輪の解析及び解除
第2行動方針:戦力増強(切実に新しい機体が欲しい)
最終行動方針:主催者の持つ力を得る
備考1:コクピットの作りは本物とは全く違います。
備考2:基本的にサイキック能力は使用不能だがNT能力等で一部代用できるようだ】
【ラトゥーニ・スゥボータ 搭乗機体V2アサルトバスターガンダム(機動戦士Vガンダム)
パイロット状況:死亡(首輪はキラが所持、遺体はシロッコが埋葬した)
機体状況:大破(半壊した胴体部と左腕のみ残っている)
現在位置:B-1】
【二日目 14:00】
最終更新:2025年01月17日 03:38