再開(後編)
【時刻:二日目:15時05分】
「今のを見たか我が友よ!」
ハッターが北西を指差して声を上げる。そこはアスカが去っていった方角である
「爆音のようだな、近いぞ。」
竜馬が言葉を返す――
「もしかしてアスカさんが誰かと戦闘してるんじゃ……」
「それはまずいぞ!急いでくれ友よ!!」
リオの言葉にダイテツジンの右手にぶら下がったハッターが竜馬をせかす。
左手にはこれまたガンダムデスサイズがぶら下がっていた。
「それはわかっているんだが……さすがにこの重量では……」
「気合だ友よ!我等のこのほとばしる正義の心には、不可能はない!!それではその機体のダイテムジンの名が泣くぞ!」
「えっ?……竜馬さんの機体の名前ってダイテツジンじゃなかったんですか?」
・・・・・しばらくの沈黙
「……細かいことだ、気にするなガール!」
(私のほうが階級高いのに……)
都合よく無かったことにしたハッターに対してリオはそう脱力した。
竜馬の顔も自然とほころぶ
(まったく……緊張感もなにもあったものじゃないな…)
そう呟いたとき、あることを閃き――
「わかったぞ友よ!確かに急がねばならない。気合を入れよう!」
そうハッターにつげる、その顔にはどこかイタズラ小僧のようなにやけた笑みが広がっている。
「と、友よ!何かいやな予感がするのだが!?」
そうハッターが返事をした直後――
「ロォケットォォォォゥパァァァァァァァァンチィィィィィィ!!!」
ダイテツジンの腕が切り離され――
「ノォォォォォォォゥ――――」
ハッターは飛んでいった。
「よし、これで速度が上がるぞ、追いかける。」
そういって朗らかに竜馬が続く、どうやら一度言ってみたかったらしい、ご満悦のようだ。
「……私にはやらないでくださいね……あれ…」
リオがそう告げる。
【時刻:二日目:15時07分】
チーフは困惑していた。
話は数分前にさかのぼる、爆音に気づいた彼はすぐさまコクピットへと乗り込んだ。
ここでは一瞬の油断が命取りとなる。埋葬中も警戒は怠っていなかったのだ。しかし――
コクピットへと乗り込んだ刹那、西から光が迫ってきていたのである。
コクピットを閉じる暇なく自分の姿をさらしたまま、あわてて機体をずらし攻撃を防いだのだが――
なるほどさすがに頑丈な装甲で守られていただけあって機体は無事であったが、
コクピットブロックまわりがわずかに焼け付きいくつかの回路もショートしてしまったようだ。レーダーも映らなくなっていた。
「ぐぅっ!」
パイロットスーツを身にまとっていなければ一緒に焼き焦げていたことであろう。
「コクピットハッチは……よし良好だ、敵は何処から撃ってきた?」
ハッチをあらためて閉じ敵を探す、さっきまで点けたままにしておいたレーダーは表示されていない。だが推測はできた。
レーダーにかからないほどの距離かつ身を隠せる所は限られていた。さらに攻撃が来たところから方角はわりだせる。
「西方、狙撃方向に盆地を確認……あそこか…さてどうする?」
あらためて自分の位置を確認する。出来ればこの場所では戦いたくない、さらに後方では別の戦闘が行われており、
しかもこちらに近づいてきている、北には障壁が、南には禁止エリアがひかえている、となれば――
「前方だ!」
そう言葉を短く切ると、盆地の後ろに向けて威嚇にワームスマッシャーを放つ、いぶりだすためだ、
そしてその後盆地に向かって進撃するつもりであった。
しかし――
ワームスマッシャーが放たれるか否かの時2つの機体がとびだしていた。
「何だと!?」
ワームスマッシャーを放っている最中は機体が硬直する。
(まずい……制空権を取られる……)
すぐに攻撃を解除し自分も浮かび上がろうとする、しかし動きが鈍い、どうやら先程のショートの影響のようだ、
一瞬動きが遅れる。そうこうしているうちに相手は真上にさしかかろうかと言うところまで来ていた。
(ここで戦うしかないのか……?)
チーフはそう覚悟した、再びゼオライマーの手が輝く。
しかし攻撃は見当はずれのところへとんでいった、そして爆発音。
後ろを振り向くと何時からいたのか後方に別の2機が見えた。
(おのれ、なんて娘だ!)
シロッコは呟いた。突如飛び出したゼオラに気をとられた瞬間、突然空間から発射されたビームで足をやられたのだ。
こうなればもはやここで様子を伺うしかない。
(念のためキラから首輪を受け取っておいて正解といったところか)
シロッコはそういって自分をひにくるかのように首輪を指でまわした。
ゼオライマーがグランゾンに攻撃を仕掛けた直後彼女はさらに後方にいる
リョウトを見つけたのだ、
レーダーにも映らず目視でもわずかに小さくしか見えないそれを、過敏になり狂気とかした心が感じ取ったのである。
「今度こそ冥府におくってあげる」
そう誰に言うでもなくささやくと飛び出した。後にはキラの乗るGガンダムがつづく。
「二人とも待ちたまえ!」
そのシロッコの言葉にゼオラは反応しない、もはやリョウトしか見えていないようだ
「僕がゼオラを……みんなを助けるんだ……そうすれば僕は………許してもらえる…」
キラもそう呟くのみだ、もはや体はすでに限界のはずなのに、痛みを気にしていないのか感じていないのか――
彼らはさっきまで狙っていたはずの相手をまるっきり無視し、ゼオラはリョウトに向けて再度衝撃波を放った。
ついでにいた『それ』が余計な動きをしたため外れてしまったようだが、問題はない、
また邪魔するようなら次はまとめて消し去れば良いだけだ。
(なんでこんなことになってしまったんだ……)
リョウトの背筋に冷たいものが流れた。
ただでさえ、厄介な状況下にあったのにそこに予想外の相手が現れたのである。
これで3対1、正確には1対1対2なのだが自分をねらってくることには変わりは無い。
「何なのよ!!アンタたちは!?」
対してアスカのほうは、まだ状況がいまいちよく飲み込めていない。
最初はこの相手、リョウトの仲間かと警戒したのだが、その後自分には攻撃をしかけてくる様子が無いからだ、
今この新手は地上と空とから挟み込むようにリョウトを取り囲み攻撃していた。
対してリョウトは相手に狙いを定めさせないかのように空中を動き回っている。何かを警戒しているようだ。
だが時間がたつにつれて、彼らのあたかも自分はお呼びではないと言わんばかりの態度に再び狂気の火が灯る――
「アタシを馬鹿にしてるって言うの…この……アタシを……?
こんな…やつ…等が……?」
瞬間先程の夢が脳裏によみがえる。
(一人だけの闇の中で惨めな自分を笑っていた、泣きながら。ファーストには相手にされず、シンジには哀れまれていた――)
「……殺してやる。」
(殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる……こ…ろ…して……やる)
「そうだ、みんないなくなってしまえばいい。」
(シンジは消えろ…邪魔をするやつも消えろ…こいつ等も…みんなみんな消えてしまえ……)
「……消えろ!消えろ!!消えろ!!!」
(キエロ消えろきえろキエロ消えろきえろ)
眼が見開かれる。その瞳は不気味なほど濁って見えた。
「きえてしまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ダイモスから赤くまるで鮮血のような竜巻が巻き起こり、それは無差別にあたり一面に吹き荒れる。
「あなた……邪魔をするっていうの!どいてちょうだい……」
「うるさい!邪魔なのはアンタでしょうがぁぁ」
奇しくも二つの狂気はぶつかることとなった。
ゼオライマーの手がまた光り竜巻の中心地を打ち抜く、しかしそこにはダイモスの姿は無い。
はっとしたゼオラは体勢を立て直そうとしたが、そこに別の方向から姿を現したダイモスが一気に距離をつめる。
胸部はすでに閉じられている。
あわてて距離をとろうとするゼオラだったがアスカはそれを許さない。それは先程までリョウトに対して行っていた戦法である。
(今なら引くことが出来るか?……だが…リオのことを聞き出せないまま逃げることはできない)
そのリョウトは突然訪れた撤退の好機に行動を決めかねていた。
「そこの機体、どうした?……なぜ引かん、このままでは死ぬのを待っているだけだぞ。」
「僕は、リオに会いたいだけなんだ……こんな所で死んでたまるものかぁ!!」
彼は突然聞こえたその声に対して反射的にそう答えた。
「馬鹿ね……死なないと会わせてあげられないって言ったでしょ。」
「そんなに会いたいんならぁ、アンタを殺してからすぐに後を追わせてあげるわよ!」
矛盾した――、しかしどちらも悪意に満ちた声がリョウトの耳に響き渡る。
迷いはしないと決めたはずだった、しかし二つの狂気につられてわけがわからなくなってくる。
(リオは無事なのか……?生きているのか……?生きて……会えるのか……?僕は……生き延びることが出来るのか?)
一つのことから湧き出た不安と絶望は瞬く間にリョウトの体を支配する。
いつの間にか狂気にとらわれ動きが止まっていた。
『だから……』
何かいやなものが迫ってくる。
『私が……』
まぶしい……だが闇のように暗い光だ……
『会わせてあげるって言ってるでしょう?』
その隙をついて二機からの攻撃が同時に襲い掛かる。どうやらさっきの言葉が彼女等の癇に障ったらしい。
リョウトは息をのむ、体が思うようにうごかせない。
(そんな……僕は君に会うことは出来ないのか…………リオ……)
「いかん!間に合うか!?」
その様子をチーフは後方から見ていた。
ゼオラとキラが自分の上を通り過ぎリョウトと戦闘を開始した後ずっと様子を伺っていたのだ。
プレシアの死に対して誓ったことがあったからだ、この機体でできる限りの人命救助を心がけるという――
(まだ状況がつかめたわけではないが見捨てるわけにもいかん。)
リョウトの前に空間のひずみが生じていた。
(これで相殺する……ワームスマッシャー!!)
空間をこえ、ビームがリョウトに向かってきたエネルギー波とぶつかる。
結果、エネルギー波はわずかにそれ――、Wガンダムをかすめて地上に落ちていった。だがそこに続けて赤い熱風が吹き荒れた。
風と熱はビームでは防げない。チーフはWガンダムの周りに幾つも空間の穴を開けた、バリアがわりにしようというのだ――。
「うわぁぁぁぁあ!!」
「ぐぅぅ!」
だが完全には防げず、Wガンダムは地上へと弾き飛ばされる、またグランゾンにも空間の穴を通して竜巻が流れ込んでいた。
通常の状態であれば問題にならない程度だったであろうが、
不意打ちで受けた損傷がコクピットの気密を不完全な物としていため、
内部に熱がつたわってきている。
「貴君等の戦闘行為は特別指導にあたいする!即座に戦闘を中止し双方引け……拒否すれば破壊も辞さない!」
「何ですってぇ!?ふざけんじゃないわよぉ!!」
地上に何とか着地したWガンダムを確認しチーフは体勢を立て直しつつそう告げる。
どのような状況で戦闘が行われているかわからないため、場を収めるためにはそう告げるしかなかった。
だがその言葉はさらにアスカを高ぶらせる結果となった。
さっきまで戦っていた相手を放っておいて今度はグランゾンへと進撃する。
(この相手、少女のようだが、この不当な遊戯に乗っているのか。ならば――)
ブラックホールクラスターが発射される、しかしそれは出力を弱めた威嚇射撃である。
ダイモスはそれを軽々とかわしたがそれは少し離れた大地をえぐり、吹き飛ばした。
たいていの相手なら、これで戦意を失うことだろう――。それが狙いである。
だがしかしアスカは止まらなかった。
「はっ!?たいした馬鹿力ね!馬鹿にはお似合いだわ。」
そういうとグランゾンの懐に躊躇なく飛び込む。
「こういうふうになったらどうするのかしらぁ?」
さらに死角にすばやく回り込み拳を連続で叩き込む。
グランゾンはバリアの調子も悪くなっているようだ、十分に歪曲フィールドを形成できない。
だが、それがなくとも装甲はかなり厚い。
(チッ!見た目どおり馬鹿みたい硬いわね……けどここならどうなのよ?)
(……なかなかの判断だ――、この相手…ただの戦闘凶ではない…
狂気に身をまかせていてなお戦闘に関しては冷静……危険な相手のようだな。)
普通に攻撃しても効果が無いと即座に判断し、間接部や、すでに損傷のあるコクピットに拳を向けるダイモスの操縦者を推測し――
(ならば、こいつを野放しにするわけにはいかん。)
そう決心した。ダイモスは今やダイモシャフトで切りかかろうというところだ。
「なんですって!?」
アスカは驚愕した。完全に死角を突いたと思ったのに自分の攻撃を剣で切り払われている――。
いや、今度はさらに相手が切り込んでいる。
なぜ?これはアスカにとって誤算だった。
彼女が知るよしは無かったが、VRの戦闘において近距離戦闘で相手の死角に回りこむことは、基本的なことであったのだ。
「回り込む相手に対しては、こちらも逆方向に回りこむことが有効だ、後退するよりは突っ切ったほうが離脱しやすい。」
そういって斬撃を回避したダイモスを飛び越えた――、
後ろを振り向くためにダイモスの動きが一瞬鈍る、その一瞬でチーフは距離をとり、
グラビトロンカノンを撃つ、辺りにいるはずのもう一機に警戒しての全方位攻撃だ。
ダイモスは沈黙していた、ややあって地上へ落ちる。パイロットは気絶しているのだろうか?
チーフは辺りを見わたすがゼオライマーはすでにいない。
(撤退したのか?)
にわかに安堵する、だが――
「地上だと!?」
そこにはWガンダムとそれに攻撃をしかける二機が見える。いや――、さらに南東から何かが接近してきていた。
なんとタイミングが悪いのか、おまけに彼らの向かっている先は墓の近くである。木にVディスクが立てかけられているのが見える。
「……任務、依然継続…」
彼は少し疲れたかのように短く言葉を切った。まずは落下しはじめたダイモスを何とかしなければならない――
悪いことはとことん重なるものだ、突如機体にチェーンがまきつくと、鉄骨が飛んできた。
カァァァンと子気味のいい音をたてて頭に当たる。
「キィサァマァ!ガールに何をした!残虐無道な悪人め、この俺が相手だ!降りて来い!」
真下でよく知った機体が腕を振り上げていた。
【チーフ 搭乗機体:グランゾン(スーパーロボット大戦OG)
パイロット状況:全身に打撲、やや疲れ
機体状況:外傷はなし、内部機器類、(レーダーやバリアなど)に異常、
現在位置:C-1
第一行動方針:ハッターの誤解を解く
第二行動方針:マサキを倒す
第三行動方針:助けられる人は助ける
最終行動方針:ゲームからの脱出】
【イッシー・ハッター 搭乗機体:アファームド・ザ・ハッター(電脳戦記バーチャロン)
パイロット状態:良好
機体状況:装甲損傷軽微(支障なし)、SSテンガロンハットは使用不可、トンファーなし
現在位置:C-1
第一行動方針:アスカ・チーフの捜索
第二行動方針:仲間を集める
最終行動方針:ユーゼスを倒す
備考:ロボット整備用のチェーンブロック、高硬度H鋼2本(くの字に曲がった鉄骨)を所持】
【惣流・アスカ・ラングレー 搭乗機体:ダイモス(闘将ダイモス)
パイロット状態:気絶
機体状況:装甲損傷軽微、後頭部タイヤ破損、左腕損傷
現在位置:C-1
第一行動方針:碇シンジの捜索
第二行動指針:邪魔する者の排除
最終行動方針:碇シンジを嬲り殺す
備考:全てが自分を嘲笑っているように錯覚している。戦闘に関する判断力は冷静(?)】
話は少し前に戻る。
突如あらわれた機体によって助けられ、リョウトは何とかガンダムを着地させた。バーニアはさらに破損してしまったようだ、
しかし――、まだ困惑したままである。
加えて直前に感じた死の感覚でからだはまだ硬い、リョウトは自分が少し震えているのに気が付いた。
少し離れた上空ではまた爆発音が響いている。
「くそっ!僕は…もう迷わないって決めたのに……リオを守るために…」
(だめだ!このままじゃまた――)
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突如、咆哮が聞こえ。そしてバルカンがかすめる、リョウトはそれをうってきた機体を見た。
(こいつは……ラトゥーニを……!!)
震えがとまる、そして手に力が戻ってきた、体が動く。
(そうだ……決めたんだ、もうあんなことを繰り返さないために……。
もう迷って仲間を…
大切な人を失うわけには……いかない!!)
それはゴッドガンダムであった。ラトゥーニが死ぬことになった直接の要因――
(こいつらを、リオやラトゥーニを殺そうとするようなやつ等を生かしておくわけにはいかない!)
「許さない……絶対にお前等だけは…許すものかぁぁぁ!!」
何かのシステムが発動していた、円形のモニターが淡く光り始める。
「なにを言っているの?……僕は…ゼオラを……ラトって言う子を助けなくちゃならないんだ……」
二つのビームサーベルが交わる。
「僕をまた惑わそうってのか?…ラトは、ラトゥーニは死んだ!…お前が殺したんだ!」
その言葉にキラの眼にわずかに恐怖の色が浮かぶ――
「だから……だからこれから助けるって言ってるんじゃないかぁぁぁぁ!!」
キラはWガンダムのサーベルを弾く。
支離滅裂だ――
(前に戦闘したときには彼はまともに思えたのに……)
少しずつまわりがおかしくなってきているのだろうか、いや自分も少しずつ変わってきているのかもしれない。そう思った
「邪魔をしないでよ、君もあとで助けるから。」
「ふざけるな!!」
だがこの言葉には少なからず頭にきた、そんな簡単に人の生き死にを左右できれば自分がこんなに悩む必要は無い。
リョウトはビームサーベルをかわし空中へ後退すると、
バスターライフルを撃つ、相手の動きが鈍い、
ゴッドガンダムは手に持っていたビームサーベルをはじき飛ばされながらかろうじてかわした、
よく見ればふらふらのようだ。
機体もパイロットも限界なのだろう、とどめの一発を狙う。
だがそれを撃つことは出来なかった、いきなり巻き起こった衝撃波がWガンダムを襲ったからだ、
見ると上空にゼオライマーの姿がある。そのさらに後ろでは自分を助けてくれた機体とダイモスが戦っているようだ。
続いて閃光がおこりダイモスが落下し始める。
(あいつにはリオのことを聞かなければならないのに……)
焦る――。だが今はそれにかまっている暇は無いようだ、
ゼオライマーが迫る。
状況は元に戻ってしまった。再び地上と天空からの挟み撃ちにあい、あわやという事態が続く、
幸いGガンダムは空中にまで突撃してくる余裕は無いらしくバルカンでの援護のみだったが、
それでも今の状態のWガンダムには辛い。
相手の行動はなぜか予測できていた。
(あのシステムの力なのか?)
だがしかし背中のバーニアが悲鳴を上げている。
もう損傷はかなりの物であるにもかかわらず両方の攻撃をかわさなくてはならない、
ゼオライマーになんとか攻撃を加えたかったが、相手はうまく距離をとってくる、
またライフルのエネルギーも残り少なくなっていたためうかつに撃てなくなっていた。
もはやツインバスターライフルは撃てない。
「くそっ!向こうだってエネルギーは消費しているはずなのに。」
悔しそうに声を荒げる。
そしてうめく、自分の撃墜されるイメージが浮かび始めたのだ。
冷や汗をながしながらすんでのところで攻撃を回避する。
「うふふ、ほらほら…もっと苦しみなさい。アラドはもっと苦しかったのよ……。」
彼女は無節操に衝撃波を放っていたがその実、すべての攻撃は必要最低限に出力をおとしていたのである。
(正確にはシロッコが、であるが。
グランゾンを奪う際に誤ってコクピットブロックを丸々つぶしてしまっては元も子もないため威力を落としていたのだ)
だがそれが結果的にエネルギー消費を抑えていた。ただしこのために何度もチャンスを失っていたわけでもあるが――
それにリョウトはゼオライマーがエネルギーを回復させることが出来ることを知らなかった。
そうとは知らず防戦一方でにげまわるウイングゼロのバーニアはいよいよもってショートし始める。さすがに限界だ。
地上に降りれば勝ち目はない、こんな隠れるところも何も無いような場所だ、狙い撃ちだろう――
となればもう一か八か突っ込むしかないのか、そう考えた時さっき助けてくれた機体のことが頭に浮かんだ。
レーダーを、あたりを見回す。
「何だって!?いつの間にこんな!」
機影が増えていた――
自分を中心にすぐ近くの敵二体、東にややはなれて三体、そこは先程自分が襲われていたところだ、
レーダーには映らなかったが地上に降りているグランゾンが目視で小さく確認できる。
そして南東のあまりはなれていない位置に二機、
やはり目視で確認でき、同じくこっちに向かっている。あと一瞬西にはなれたところでレーダーに反応があった。
すこしミノフスキー粒子が薄くなったのだろうか。
しかし目視では確認できなかった。そこはわずかに丘になっている
どうする――
だがこのままではやられる可能性が高い。
同じ一か八かなら少しでも助かる可能性のあるほうを選ぶほうが良いに決まっていた。
回線を開く。それは彼にとってベストな判断となった。
『こちらはリョウト=ヒカワだ!危険な相手に襲われている。頼む!助けてくれ!』
『こちらは流竜馬だ、君がヒカワ君かい?話は聞いているよ。もう少し待ってくれ。』
南東の機体からだ、僕を―知っているだって?――
『リョウト君!!本当に…リョウト君なのね!?良かった、私……私は……』
その後は言葉にならない、泣いているのか?――いやこの声は―もしかして――
『リオ!?リオ=メイロンなのか!?』
『ええ!……そうよ……私、リオよ……』
また少し、ミノフスキー粒子によるジャミングが一瞬弱まる――
モニターに相手の顔がわずかに映る
そこには確かによく知った顔が映っていた、涙で顔がぐしゃぐしゃになっている。
それを見た彼に、熱いものが込み上げてくる。不思議に操縦桿を握る手に力がこもる。
いつの間にか彼の頬にも涙が伝っていた。さっきまでの嫌な感覚が吹き飛ぶ、生き抜こうと思う気持ちが蘇ってきた。
「今、やられるわけにはいかない!絶対に!!」
ゼオライマーの動きを予測する、最小限の動きで衝撃波を回避し続ける。地上のゴッドガンダムからも警戒をとくことはない、
今リョウトの集中力は最高潮に達していた。
【リョウト・ヒカワ 搭乗機体:ウイングガンダムゼロ(新機動戦記ガンダムW)
パイロット状態:健康
機体状態:小破(左翼が一部破損し飛行能力低下)
現在位置:C-1
第1行動方針:リオとの合流
第2行動方針:邪魔者は躊躇せず排除
最終行動方針:仲間を集めてゲームから脱出
備考:バスターライフルはエネルギー切れ】
【ゼオラ・シュバイツァー 搭乗機体:ゼオライマー(冥王計画ゼオライマー)
パイロット状況:身体的には良好、精神崩壊(洗脳状態)
機体状況:左腕損傷(エネルギー残少、半分以上回復)、武器出力・エネルギー消費低下
現在位置:C-1
第一行動方針:リョウトの抹殺
第二行動方針:アラドを助ける為にシロッコとキラに従う
第三行動方針:アラドを助ける事を邪魔する者の排除
最終行動方針:主催者を打倒しアラドを助ける
備考1:シロッコに「アラドを助けられる」と吹き込まれ洗脳状態
備考2:「人を殺しても後で助けられる」と思ってる。
備考3:リオを殺したと勘違いしている
備考4:リオがアラドを殺したと勘違いしている】
【キラ・ヤマト 搭乗機体:ゴッドガンダム(機動武道伝Gガンダム)
パイロット状況:激痛と疲労で衰弱(歩くのもやっと)、左腕が動かない、精神崩壊気味
機体状況:損傷軽微、左腕は肩部を残し消失
現在位置:C-1
第一行動方針:ゼオラと自分の安全確保
第二行動方針:ゼオラとシロッコに従う
第三行動方針:首輪の解析
最終行動方針:生存
備考1:「人を殺しても後で助けられる」と思い始めている
備考2:ラトゥーニの首輪を所持】
【リオ=メイロン 搭乗機体:ガンダムデスサイズヘルカスタム(新機動戦記ガンダムW Endless Waltz)
パイロット状況:良好。かなり落ち着いた。
機体状況:全体的に破損、武器消失。
現在位置:D-2
第一行動方針:アスカの捜索
最終行動方針:リョウトの捜索】
【流竜馬 搭乗機体:ダイテツジン(機動戦艦ナデシコ)
パイロット状態:良好
機体状況:良好(前面全体に転倒時の擦れ傷があるが問題なし)
現在位置:D-2
第一行動方針:アスカ・鉄也の捜索
第二行動方針:他の参加者との接触
最終行動方針:ゲームより脱出して帝王ゴールを倒す】
【パプテマス・シロッコ 搭乗機体:ダンガイオー(破邪大星ダンガイオー)
パイロット状況:良好(保護者を演じる事に少し疲れた)
機体状況:右腕は肩から損失、左腕は肘から下を損失。全体に多少の損傷あり(運用面で支障なし)
現在位置:C-1
第1行動方針:首輪の解析及び解除
第2行動方針:戦力増強(切実に新しい機体が欲しい)
最終行動方針:主催者の持つ力を得る
備考1:コクピットの作りは本物とは全く違います
備考2:基本的にサイキック能力は使用不能だがNT能力等で一部代用できるようだ】
最終更新:2008年05月31日 11:21