act-outer 2 <終末と未来>
アンティーク調のテーブルと、同じく琥珀色の椅子。
その椅子に腰掛けてテーブルを挟み向かい合うのは、
豪奢な金の髪を巻き毛にしたこの場所の主と、楽しそうに笑っている色素の抜けた白い髪にうさぎの耳を持つ少女。
裏界第一位、『金色の魔王』・ルー=サイファーと『魔王女』イコ=スーだった。
イコは満面の笑顔で言う。
「だから言ったのですよ、ルー様。あの男を殺すなら、小娘を送らねばとイコは何度も言ったのです」
「許せイコ、そちの言葉を疑ったわけではない。周りの人間共の反感を買っては上手くことが運ばぬと思っただけだ」
ふん、と面白くなさそうにルーは言う。
彼女はこの度の策謀が失敗した時から不機嫌な日々を過ごしている。
それも当然といえば当然だ。神とはいえ自身が利用しようと思っていた者に計画を察知され、それを邪魔されたのだ。
大魔王と呼ばれるディングレイとアスモデートの賭けの話を聞き、それを利用してやろうと考え長い時をかけて準備をしてきた。
それを、たかが利用される道具の分際が一瞬にして破綻させてしまった。
憤懣やるかたない様子でいるルーに、イコはそういえば、とたずねた。
「小賢しい人間の男は死んだと聞いたですが、ソレ、本当にただの人間だったのです?」
「イコ、そちは我がただの人間と人外を見違えると思うてか?」
「そういう意味ではないのですが……ヤなことが起きる気がするのです」
果たして。本当にただの人間が存在からして次元の違う『神』と呼ばれるものを殺すことができるのか?
イコが不安に思ったのはそのことだったのだが、彼女に視ることができるのは『自身の関わらぬ未来』のみ。
なぜ「人」が「神」を斬れたのかについて、彼女の能力で知ることはできなかった。
眉を寄せているイコの不安を、鼻を鳴らしてルーは否定する。
「どの道、あの男はただの人間だ。もう二度とこの我の邪魔をすることは叶わぬ。
それでイコ、巫女どもが再びあの世界に生を受けるのはいつになるのだ?」
「へ、えぇっと……だいたい500年後になるのです。それまでどうするですか?ルー様」
「他の魔王どもが分不相応に世界を手に入れぬよう、目を見張っておれよイコ。
特に蝿の女王だ。アレは我への敬意など欠片も持ち合わせておらん、侵魔としての矜持があるかすら疑問だ」
「わかったのですよルー様。
あぁ、そうなのです。今度、ルー様にお目通り願いたい子がいるのですよ。あの子はもう魔王の爵位を与えてもいいと思うのです」
「ほう、その者名はなんという?侵魔から魔王に出世する者は昨今とんと見なんだが」
「カミーユっていうですよ。なかなか面白い子なのです」
君臨者と無垢な瞳を持つものは、すでに終わったことからは興味を失くし、早くも次へと目を向ける。
だからこそ、彼女達は気づかない。
その一つの終わりに、未来につながる希望があったことを。
そして、その希望を見逃したがゆえに。
再び同じ計画を実行しようとした、裏界の君臨者たる金色の魔王の前に、手痛い一撃を加えるものが現れることとなるのだが―――
それはまた、別のお話。
アンティーク調のテーブルと、同じく琥珀色の椅子。
その椅子に腰掛けてテーブルを挟み向かい合うのは、
豪奢な金の髪を巻き毛にしたこの場所の主と、楽しそうに笑っている色素の抜けた白い髪にうさぎの耳を持つ少女。
裏界第一位、『金色の魔王』・ルー=サイファーと『魔王女』イコ=スーだった。
イコは満面の笑顔で言う。
「だから言ったのですよ、ルー様。あの男を殺すなら、小娘を送らねばとイコは何度も言ったのです」
「許せイコ、そちの言葉を疑ったわけではない。周りの人間共の反感を買っては上手くことが運ばぬと思っただけだ」
ふん、と面白くなさそうにルーは言う。
彼女はこの度の策謀が失敗した時から不機嫌な日々を過ごしている。
それも当然といえば当然だ。神とはいえ自身が利用しようと思っていた者に計画を察知され、それを邪魔されたのだ。
大魔王と呼ばれるディングレイとアスモデートの賭けの話を聞き、それを利用してやろうと考え長い時をかけて準備をしてきた。
それを、たかが利用される道具の分際が一瞬にして破綻させてしまった。
憤懣やるかたない様子でいるルーに、イコはそういえば、とたずねた。
「小賢しい人間の男は死んだと聞いたですが、ソレ、本当にただの人間だったのです?」
「イコ、そちは我がただの人間と人外を見違えると思うてか?」
「そういう意味ではないのですが……ヤなことが起きる気がするのです」
果たして。本当にただの人間が存在からして次元の違う『神』と呼ばれるものを殺すことができるのか?
イコが不安に思ったのはそのことだったのだが、彼女に視ることができるのは『自身の関わらぬ未来』のみ。
なぜ「人」が「神」を斬れたのかについて、彼女の能力で知ることはできなかった。
眉を寄せているイコの不安を、鼻を鳴らしてルーは否定する。
「どの道、あの男はただの人間だ。もう二度とこの我の邪魔をすることは叶わぬ。
それでイコ、巫女どもが再びあの世界に生を受けるのはいつになるのだ?」
「へ、えぇっと……だいたい500年後になるのです。それまでどうするですか?ルー様」
「他の魔王どもが分不相応に世界を手に入れぬよう、目を見張っておれよイコ。
特に蝿の女王だ。アレは我への敬意など欠片も持ち合わせておらん、侵魔としての矜持があるかすら疑問だ」
「わかったのですよルー様。
あぁ、そうなのです。今度、ルー様にお目通り願いたい子がいるのですよ。あの子はもう魔王の爵位を与えてもいいと思うのです」
「ほう、その者名はなんという?侵魔から魔王に出世する者は昨今とんと見なんだが」
「カミーユっていうですよ。なかなか面白い子なのです」
君臨者と無垢な瞳を持つものは、すでに終わったことからは興味を失くし、早くも次へと目を向ける。
だからこそ、彼女達は気づかない。
その一つの終わりに、未来につながる希望があったことを。
そして、その希望を見逃したがゆえに。
再び同じ計画を実行しようとした、裏界の君臨者たる金色の魔王の前に、手痛い一撃を加えるものが現れることとなるのだが―――
それはまた、別のお話。