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act-outer 1 <星空と約束>

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act-outer 1 <星空と約束>

夜空。
星の海と言いかえてもいい満天の星空の下に立つのは、一人の青年と娘だった。
言葉少なに、青年が告げる。

「……悪い。約束、守れなくなる」

それに対する娘の反応は、激昂するでも泣き喚くでもなく、ただ平静だった。

「……諦めちゃうの?」

彼女の言葉に、青年は自身を嘲笑うように力なく笑った。

「だな。……全部考えた上で、これしかないって思っちまってさ」

情けねぇな、と。どこか悔しそうに、彼は言う。
青年は娘に全てを告げたわけではない。何があったとも、何を成すとも言っていない。
けれど娘にとっては青年のその言葉だけで。
それだけで、彼がもう帰ってくる気がないことだけは理解できたのだろう。

それがイヤでなかったわけがない。
これまでずっと一緒に育ってきて。一生に関わる大切な約束をして。
淡い思いを寄せる相手が帰ってこないということが、イヤでなかったわけがない。

それでも、少女は笑顔で青年に振り向く。

「しょうがないねぇ。じゃあ、ずっとここで待っててあげる」
「は?……お前、人の話聞いてたのかよ?」
「しっつれいねぇ、ちゃんと聞いてたわよ!
 だから、ずっとここで。この場所で待っててあげるって言ってんの!
 たとえあんたがもう戻ってこれなくても、あんたが転生するなりあんたの相棒が戻ってくるなり―――
 ともかく、あんたがここに戻ってきたって私がわかるまで。いつまでだってこの場所であんたを待ち続けてあげるって言ってるの!」

その宣言を聞いて、一瞬目を丸くする青年。
次の瞬間彼は笑いをかみ殺しながら、ぽんぽんと自分よりも小さな幼馴染の頭を柔らかく撫でつけると、
視線を合わさぬまま、すれ違いながら言う。

「ばーか。そんなことしてないで、さっさといい男見つけて。元気なガキ生んで。幸せに暮らせよ」
「ばかとは何よ大ばかのくせしてーっ!」

大声で怒鳴る彼女に背を向けたまま、青年は苦笑して―――告げる。

「あーはいはい……かえで」
「なによ、大ばか」
「―――じゃあな。達者で暮らせよ」

娘―――かえでは。青年の背中をじっと見たまま、とうとうその言葉に返事を返しはしなかった。
青年の背中が見えなくなるまで、かえではその背中を睨み続け。

見えなくなった瞬間、その頬に輝線が引かれた。
透明な雫が生み出した線は、星の輝きをはねかえしてきらきらと輝く。
彼女は、見えなくなった背中にぽつりと呟いた。

「……だから、待っててあげるって言ってるでしょうが。
 さよならなんかしてたまるもんですか、大ばか」

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