卓上ゲーム板作品スレ 保管庫

第01話

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一人目


○月○日
 めがさめた。
 じぶんの『おや』というひとがたんじょうびおめでとう、といってわらっていた。
 なんだかよくわからないけど、そのえがおがきれいだとおもった。
 やっぱりよくわからないけど、えがおはとてもたいせつなものだとおもった。

○月×日
 なんでも、じぶんはエミュレイターというてきとたたかうためにうまれたらしい。
 エミュレイターは、みんなをいっぱいなかせているのだという。
 ないているというのは、とてもかなしいことなんだとしった。
 なくひとがすくなければいいと、おもった。

○月□日
 はじめてエミュレイターをころした。
 そのようにつくられたものなのだから、じぶんはそのただしいことをしたんだろう。
 そして―――きっと、これからも、ずっと、ころしつづけるんだろう。
 わたしが、くだけるそのひまで。

○月△日
 やめて。
 やめてやめてやめてやめてやめて。
 いなくならないで。きえないで。どこかへいってしまわないで。
 マスター、いっしょにいてくれるっていってたのに。なんで、わたしはあなたをまもれない。



二人目


△月○日
 目がさめた。
 あたらしいマスターが、わたしをにぎった。
 その手があったかくてうれしかった。その手もいつかはなれるのがかなしかった。
 ともかく、マスターといっしょに、またたたかう日がつづくんだろう。

△月×日
 こんかいのマスターは、まえのマスターよりもずっとわかい。
 マスターといっしょにいる人が、わたしのマスターのまもりたい人らしい。
 わたしの記憶のなかにも、「星の巫女」とある。
 マスターは、「星の巫女」といっしょにいるとうれしそうだ。マスターがうれしいとわたしもうれしい。

△月△日
 マスターが、すこしのあいだちがうエミュレイターをたおすために「星の巫女」からはなれるらしい。
 これからはしばらくマスターとのふたりたびになるらしい。
 それが、すこしだけうれしい。
 ごめんなさい、ほんのすこしだけ。

△月■日
 また。またまもれない。
 マスター、おきてください。あなたは「星の巫女」のところにかえるんでしょう。
 なんでわらうんですか。あなたは「星の巫女」をまもるためにいるっていうのに。
 わたしは、あなたにつれていってもらわなきゃ、あの人にあやまることもできないっていうのに。



三人目


×月×日
 目が覚めた。
 わたしは、またあたらしいマスターに触れられた。
 ……この生に意味はあるのか。斬って斬って斬って斬って、さいごにはぜったいにだいじなものを失くす。
 つまり、わたしは握った者を殺すだけの剣だということだ。

×月○日
 マスターとともにエミュレイターを狩る。
 今回のマスターは女性だ。自分の娘である「星の巫女」を守るためにわたしを握ったと言っていた。
 前回は、「星の巫女」からマスターを奪ってしまったわたしだ。
 罪深いわたしだが、罪滅ぼしだけでもできればいい。

×月□日
 マスターが「星の巫女」にわたしを会わせてくれた。
 まえの「星の巫女」とはちがう、ちいさな女の子だ。
 その女の子は、これまで敵を斬ってきたわたしに触って、きれいな剣だね、と笑っていた。
 すこしだけ、うれしかった。この子を守るためにがんばろうと思った。

×月△日
 なんでだ。なんでこんな結果しか得られない。
 「星の巫女」は「星の勇者」に殺された。
 世界を滅ぼす悪魔と言われて、あのちいさな子はなにもできずに殺された。
 マスターとわたしはその光景を見ているしかできなかった。
 そしてマスターも、わたしをふるって子どもを追うようにその命を絶った。
 ……そんなのはないだろう。
 あの子がなにをした。マスターがなにをした。わたしはまたなにもできず、失った。
 わたしのある意味は―――なんだ。



午睡


 月日はよくわからない。
 まどろみの中に夢を見る。
 何度新たな主を得ただろう。みな、守りたいものを持っていた。
 何度その主を失うのだろう。別れの時はいつも唐突だと知っているはずなのに。
 主の多くが、「星の巫女」という存在の側にあった。
 同じ目的のために何度抗おうとしても、主も「星の巫女」もけして守れなかった。
 ならばもう、期待するのはやめにしよう。淡い期待ならば持たぬほうがいっそ楽だろう。
 きっと、わたしにはなにも守れない。わたしはただ、斬るためだけに生まれた剣なのだから。



天を駆ける竜


□月×日
 目が覚めた。
 新たな主がわたしを執った。此度の主は若い男だ。いまだ少年と言っても過言ではない。
 今回の主も守りたいものがあるゆえにわたしをとったらしい。
 わたしに守る力はないと言ったが、俺の力になってくれりゃいいや、と返された。生意気な小僧だ。さらに言うなら馬鹿だ。

□月□日
 主の名は飛竜というらしい。
 知らずともいい知識のはずなのだが、どうしても覚えろといってきかない。
 しかたがないので覚えることにした。なんでも、名前がないと相手が誰なのかわからないだろう、とのことだ。
 相変わらずバカの理論はよくわからない。けれど、悪くはないと思った。

□月○日
 驚いたことに、わたしには兄弟がいたらしい。しかも6つも。
 今回一同にそろうこととなったが、出会うのははじめてだった。
 七人の主と七つの剣で、一人の巫女を守る。
 一人ではできなかったはずのことが、今回はできそうな気がしていた。

□月▽日
 気づけば、主の周りにはたくさんの人がいた。
 たくさんの人が集まれば、一人ではできないことだってできる。
 みんな、笑っていた。血を流す戦場で生きているのに、人間というものの生はとても短いのに、彼らはそれでも笑っている。
 不思議だ。けれど、その輪の中に自分も存在できることがとても誇らしく思えた。誰かの笑顔を守れていると思える。とても心地いい。

□月◎日
 なぜだろうか、とてもとても嫌な予感を放つ女が現れた。
 誰も気づかないのだろうか、その違和感に。時折あの女が笑う度に、背筋を怖気が走るのを。
 あぁ、気味が悪い。
 なぜだか。とてもとても嫌なことが起きそうな気がしていた。これが現実にならないことを祈る。

□月△日
 やはり、予感は当たっていたらしい。
 あの金髪の女は敵であるらしい。それはいい。よくないけれどどうでもいい。
 なぜ。なぜそれをわたしの主が知らねばならなかったのだろうか。なぜその陰謀を砕くために主が仲間を切らねば ならなくなったのだろうか。
 勝手に自殺でもしていてくれ。主を巻き込まないでくれ。主の人生をめちゃくちゃにしないでくれっ―――!

□月▼日
 また、守れなかった。
 バカだと思った主は、最後の最後までバカなまま。愚かな選択をして、仲間に殺された。
 バカみたいに笑って死んでいった。一緒に笑いあった仲間に怒りをぶつけられながら、嘆きをぶつけられながら、それでも笑って死んでいった。
 まるで理解のできない前衛芸術みたいに体中を人とは思えないほどぐちゃぐちゃにされて。それでも意識があるはずなのに痛いなんて一言も言わずに。
 ―――なんで、こんな目にあわなければならない。世界を恨もうにも、主にそれを止められているのでできやしない。
 なんてものを置き土産に置いていくんだ、このバカは。
 世界を。貴方をこんなにした世界を。守り続けろなんて、なんて酷いワガママ(のろい)
 主一人守れないわたしに、世界なんて守れるわけがないことくらいわかっているはずなのに。

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