卓上ゲーム板作品スレ 保管庫

第02話

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不幸少年/星の因縁


☆月×日
 新しい主が見つかった。
 やはりまたも年若い小僧だ。
 それもわたしのことをゴミ扱いするわ、逃げ出そうとするわ、歴代の主の中でも一際世界を守るもののなんたるかがわかっていない。
 本当にこんな主に使われることになるのかと思うと頭が痛くなってくるが―――最後の一撃と誓いの名乗りは悪くはなかった……気がしなくもない。
 この主は―――誓いを守ってくれるのだろうか。不思議と、あの声には力があるように感じた。

☆月▽月
 ―――驚いた。
 これまで一度たりと守りきれなかった星の巫女を、主とその仲間たちはわたしを振るって守ってしまった。
 星の巫女との長きに渡る因縁もここで終わってしまうのだろうか。もしそうだとしたら、わたしはなんのために存在すればいいのだろう。
 ……いましばらく、この主と共にありたいと思う。わたしがここにある意味は、主に握られているうちはあるのだろうから。

☆月†日
 主とともに異世界に来た。
 目的は元星の巫女の魂を奪い返すこと。そして、その魂を奪うためにある騎士を打倒すること。
 ―――正直、今の主で勝てる相手ではない。もちろんそんなことは対峙した本人もよく理解しているだろう。けれど。
 主にはそんなことは関係はないだろうし。わたし自身も、主とわたしをナメられたまま黙っていられるほど温和でいてやるつもりはない。

☆月‡日
 異世界に現れたのは、忌まわしき赤い星屑。
 きちんとその星々との因縁は絶ったはずであるのに、再び蘇ってきた。
 いいだろう、星のなりそこない。一度潰された程度のもの、何度蘇ろうともわたしと主で叩き潰す。
 何度も迷い出られては本気で迷惑だ。これまで散々わたしに絶望を与えてきた星の屑共よ、その身に後悔を刻むほど、一片たりと残さずその野望ごと叩き斬ってくれよう。



刃の主/信頼


☆月○日
 正直、主にあの娘を斬ることができるとは思えなかった。
 わたしに刻まれた例の力からすれば、確かにあの娘の因縁を斬ることはできただろう。けれど、主にとってあの娘は最も大切なものの一つだったはずだ。
 それを―――歯を食いしばり、血を流し、それでも弱音の一つも吐かず、あの娘を救うことだけを心に刻み。闇に囚われた娘と魔王との因縁とを「切り」「分けた」。
 刃の意義とは斬ることであり、絶つことであり、分けることであり、開くことである。
 ゆえに。主は立派な一振りの刃であり、わたしを握るに相応しいものであると言えるだろう。
 今度の主とは、どこまでいけるだろう。これまでの主とは星の巫女との因縁だけで終わってしまったが、それももはやない。
 いけるところまでは、共にわたしも駆けぬけよう。(にないて)とともにある一振りの剣として。

☆月□日
 世界の守護者というのは、あんなにも奔放でいいものなのだろうか。
 妙な因縁によって再び出会ってしまった神父と、異なる世界の天使、魔王候補なんぞとともに、終末期の世界まで飛ばされる羽目になってしまった。
 どこまでいけるだろう、なんて言ってしまったことが災いしたのだろうか。正直、少し後悔した。
 ……それにしても、あの日記だけは抹消しておいて正解だろうと本気で思う。

☆月△日
 懐かしい声と感触で、目が覚めた。
 気がついてみれば、あの女剣士に封印されてから2万の年を重ねたらしい。
 目の前には、最後の最後までわたしの与える滅びから逃げた魔王―――こちらに来て、その力は飛躍的に増加したようだ。
 しかし、恐れることなど何もない。ずっとずっと待ち続けた、わたしの主がいるのだから。
 正直―――負ける気が、しない。



担い手/相棒


☆月◎日
 世間にはよく似た奴が3人いる、とは聞いていたがこれほどまでに同じ姿の人間がそろう光景もなかなかないと思う。
 なんだか知らないが、主にあるというよくわからない力を欲したバカが主を狙っていたらしい。
 そんなことはどうでもいい。腹が立つのは目の前の主そっくりの男だ。
 主と同じ顔で泣き言ばかり漏らされるのは、主を主として持つわたしにとっても腹立たしい。
 仕方がない。主と共に、一刻も早く目の前の模造品を叩き斬るとしよう。
 見よ、他者の力を持って己を誇る者よ。
 ―――これが、わたしの認めるただ一人の主だ。たかが姿が同じ程度で同類などと、愚弄したことはけして許さない。

☆月◇日
 二つの月が昇った時から、嫌な予感はしていたのだ。
 あの時の女がまた同じことをしようとしているとは考えていなかった。主はわたしの所有者というだけで、神子の 使徒なぞに命を狙われることにもなった。
 いいだろう、金色の魔王。
 わたしとて、以前の主を奪われた痛みを、わたしに与えられた不名誉な名を、忘れたことなど一日たりとてない。
 今度こそ、その陰謀ごと貴様を叩き斬る。



業物/共に行く


☆月☆日
 大気圏から帰還し、数日が過ぎた。
 少し変なものがわたしの中に混じってしまったが、まぁ落ち着いたときにでもなんとかするとしよう。このままだと主が強化人間の筋力で千切られかねない。
 ……まぁ、そんな物騒な話はさておき。
 用もないのに、少しだけわたしを引き抜いた。人目は一応気にしていたが、月衣や月匣の張られている空間以外はわたしにとっても毒になりうることをわかっているのか。
 でも、そんなことはどうでもよくなった。

「これからもよろしく―――たのむぜ」

 そんな一言が、どうしようもなく嬉しかったのだ。
 わたしを手に取った瞬間から、彼には様々な因縁が降りかかっていたはずだ。
 星の巫女の剣士としての宿縁。そも「星の巫女」とされた少女の魔王との因縁。わたしの異能を欲する守護者の思惑。そして今回の双月の巫女。
 どれもこれも、わたしの主となったがゆえに起きたできごとだとも言える。
 それでも。そんなことはなんの気にもせず、ただこれからも頼むという一言を発した。
 あぁ、本当にばか者だ。
 これまで何度も何度も死にかけたり傷ついたりしたことのいくつかの原因はわたしだというのに。わたしはそれほどに人の、主の死を業と背負っているというのに。
 たった一言で、これからも一緒にいていいのだと。そう未来(これから)を示してくれた。

 この国には、業物と呼ばれる刃がある。
 斬るべきを斬り、断つべきを断つ。しかし傷つけないと決めたものには一つたりと傷をつけないと言われる、振るうものの意思を汲む最高峰の刃に与えられる栄名。
 いつか、主のことを一つの刃だとわたしは称した。
 刃の意義とは斬れることのみにあらず。意思を持ち、斬るべきを斬り、守るべきものを守る。それこそ、意思を持った『業物』のようなその在り方。
 それとともに在ることを、同じ刃として誇りに思う。
 主を守るために振るわれることを、一振りの剣として嬉しく思う。
 あぁ―――ともに行こう主よ。わたしと主ならば、きっとどこまでだって行けるだろう。

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