祈りがもたらすは
拡声器から聞こえる声。それを聞いても、眉一つ変えない氷の青年――ヴェイグは、表情の通り何も思わなかった。
知っている人物の名は無かった。尤も、自分が命を奪ったあの女性の名はあったのであろうが、どの名前かは分からなかった。
名簿を見てないのだから。
一度、両目をつむってみる。たった数秒ではあるが、祈ってみる。数秒だけ。それ以上し続けていたら、自分の誓いが揺らいでしまいそうだから。
こんな形式だけの祈りに意味は無いと思うから。目を開ける。見える景色は変わらない。光宿らぬ青年は再び歩み始めた。
共に言われた禁止エリアには、丸印が付けられていた。
4つの内2つは殆どが海。陸が占めるエリアも、禁止されるのはまだしばらく先だ。気にする程でもないだろう、そう思いながら歩を進めていく。
あれからヴェイグは北へ向かっていた。ルーティと戦い終えた時には、陽は傾き始めていた。
それから歩き続け、辺りはもう大分暗い。大抵の人は安息を求めて、村や町に集まってくるだろう。
それを狙うのも一つの手だが、彼はそれを選ばなかった。何せ、自分は一人。
このバトルロワイアルのルール上、必ず固まって行動している人物はいる。
ヴェイグ自身はまだそんな人達を見たことは無かったが、簡単に予想はついた。
戦い自体こそはできるものの、やはり一対多数では分が悪い。負傷した傷もある。
かといって森で暖を取れば、立ち上る煙で「自分はここにいる」と言っているようなものである
(ヴェイグは実はルーティと戦う前に、西に立ち上る煙を見ていたりする)。
そこで、すぐ近くに町はあっても、少し離れた北の城を目指していた。>城ならもし誰かいても、狭い町や村よりは幾分隠れやすい。
このゲームで勝ち抜くには、ただ人を殺していくだけでは駄目だ。
頭を使って冷静に状況を見なくてはいけない。焦った方が負ける。
必ず戻る――。その意志が、ヴェイグを自然と冷静にさせていた。
「クレア…オレは絶対に、元の世界へと戻る…」
道の向こうで待つのは、故郷に待つ大切なヒト達。その中にいる、ヴェイグに微笑みかける女性。
今はまだ遠くにいる。だが、近付ける。この道を進んでいけば、きっと――…。
こうしてヴェイグが城に着いたのは放送から数時間後、まだ真夜中というには早過ぎる時間だった。
暗闇の中にそびえる城は不気味としか言いようがない。それでもヴェイグは体を癒す為、来たるべき好機に備えて城の中へ入っていった。
知っている人物の名は無かった。尤も、自分が命を奪ったあの女性の名はあったのであろうが、どの名前かは分からなかった。
名簿を見てないのだから。
一度、両目をつむってみる。たった数秒ではあるが、祈ってみる。数秒だけ。それ以上し続けていたら、自分の誓いが揺らいでしまいそうだから。
こんな形式だけの祈りに意味は無いと思うから。目を開ける。見える景色は変わらない。光宿らぬ青年は再び歩み始めた。
共に言われた禁止エリアには、丸印が付けられていた。
4つの内2つは殆どが海。陸が占めるエリアも、禁止されるのはまだしばらく先だ。気にする程でもないだろう、そう思いながら歩を進めていく。
あれからヴェイグは北へ向かっていた。ルーティと戦い終えた時には、陽は傾き始めていた。
それから歩き続け、辺りはもう大分暗い。大抵の人は安息を求めて、村や町に集まってくるだろう。
それを狙うのも一つの手だが、彼はそれを選ばなかった。何せ、自分は一人。
このバトルロワイアルのルール上、必ず固まって行動している人物はいる。
ヴェイグ自身はまだそんな人達を見たことは無かったが、簡単に予想はついた。
戦い自体こそはできるものの、やはり一対多数では分が悪い。負傷した傷もある。
かといって森で暖を取れば、立ち上る煙で「自分はここにいる」と言っているようなものである
(ヴェイグは実はルーティと戦う前に、西に立ち上る煙を見ていたりする)。
そこで、すぐ近くに町はあっても、少し離れた北の城を目指していた。>城ならもし誰かいても、狭い町や村よりは幾分隠れやすい。
このゲームで勝ち抜くには、ただ人を殺していくだけでは駄目だ。
頭を使って冷静に状況を見なくてはいけない。焦った方が負ける。
必ず戻る――。その意志が、ヴェイグを自然と冷静にさせていた。
「クレア…オレは絶対に、元の世界へと戻る…」
道の向こうで待つのは、故郷に待つ大切なヒト達。その中にいる、ヴェイグに微笑みかける女性。
今はまだ遠くにいる。だが、近付ける。この道を進んでいけば、きっと――…。
こうしてヴェイグが城に着いたのは放送から数時間後、まだ真夜中というには早過ぎる時間だった。
暗闇の中にそびえる城は不気味としか言いようがない。それでもヴェイグは体を癒す為、来たるべき好機に備えて城の中へ入っていった。
彼は幸運だったのかもしれない。彼が登城した城には、まだ誰もいなかったことが。
彼は不運だったのかもしれない。後に彼が通ってきた草原に、二人の男が現れることが。
そしてその二人の足元には…彼と同郷である女性の死体があることを、ヴェイグは知る筈もない。
彼は不運だったのかもしれない。後に彼が通ってきた草原に、二人の男が現れることが。
そしてその二人の足元には…彼と同郷である女性の死体があることを、ヴェイグは知る筈もない。
【ヴェイグ 生存確認】
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(アップル、オレンジ、レモン、パイン、ミラクル)
現在位置:C6城の中
状態:右肩に裂傷、背中に刀傷、全身に軽い凍傷 。心状は冷静
第一行動方針:休息を取り、起こるかもしれない戦闘に備える
第二行動方針:ゲームに乗る。最後まで生き残る
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(アップル、オレンジ、レモン、パイン、ミラクル)
現在位置:C6城の中
状態:右肩に裂傷、背中に刀傷、全身に軽い凍傷 。心状は冷静
第一行動方針:休息を取り、起こるかもしれない戦闘に備える
第二行動方針:ゲームに乗る。最後まで生き残る