嘆く真実
バトロワ始まって二つめの陽が地平線に近づいてきた。重い紺碧の空にが日の光で菫色に徐々に染まってゆき、雲がじわじわと形をとられていく。やがて地平線に太陽が覗けば、その菫は眩しい白へと姿を変えるのだろう。
もうすぐ朝が訪れるのだ。
もうすぐ朝が訪れるのだ。
デミテルは傍らに立っている青年、ティトレイを見た。
そのティトレイの目は空に滲んでゆく光すら映ってはいないように見えた。
彼はデミテルの駒だった。自我は殆どなく、下手な部下よりも確実に忠実に動き、先程のモリスンとの戦いの様に何でもする。おまけに格闘の技術も一流だ。
彼はこれ以上ないマリオネットだった。
そのティトレイの目は空に滲んでゆく光すら映ってはいないように見えた。
彼はデミテルの駒だった。自我は殆どなく、下手な部下よりも確実に忠実に動き、先程のモリスンとの戦いの様に何でもする。おまけに格闘の技術も一流だ。
彼はこれ以上ないマリオネットだった。
デミテル。
彼は元々はベネツィアに住む、魔術の研究者だった。
そもそも何故魔術の研究をしていたかというと、私利私欲や力の誇示に用いる為ではなく、あくまで町の為のものだった。
彼は本来ならば、人々の為に尽くす、熱心な福祉家だったのだ。
その彼が何故ダオスの配下となり村を滅ぼし、人を躊躇いもなく殺したり操る様な人物になってしまったのか。
それは彼がベネツィアで研究や福祉に勤しんでいた頃へと遡る。
彼は元々はベネツィアに住む、魔術の研究者だった。
そもそも何故魔術の研究をしていたかというと、私利私欲や力の誇示に用いる為ではなく、あくまで町の為のものだった。
彼は本来ならば、人々の為に尽くす、熱心な福祉家だったのだ。
その彼が何故ダオスの配下となり村を滅ぼし、人を躊躇いもなく殺したり操る様な人物になってしまったのか。
それは彼がベネツィアで研究や福祉に勤しんでいた頃へと遡る。
その頃、スカーレットに師事しており、毎日の様に魔術の研究に追われていた。
しかしデミテルはそれは苦ともせずに、町の人々の役に立てるならとむしろ精力的に取り組んでいた。
怪我や病の人を癒し、社会の繁栄に役に立てるのならばと己の能力を国の研究に役立てたりもした。
デミテルはハーフエルフである。
その事に負い目を感じていたのもあった。しかしアルヴァニスタにはルーングロムという国の参謀とも言える程の重臣もいた。彼もまたハーフエルフである。
いかなる生い立ちであろうとも、人々になすべき事をすれば、自分の身の上など取るに足りない。むしろエルフの血を引いているからこそ操る事ができる魔術がハーフエルフにはある。
何より、何千年も前にはハーフエルフは生きるのも難しいものだったと古い文献に記してあった。ハーフエルフは人間のいる環境に住めば尖った耳を隠して静かに暮らさねばいけなかったし、居ることが知られれば壮絶な迫害が待っている。
かといって純血のエルフは更に酷い。
ハーフエルフには行き場がなかった。
一説にはとても人間とは住めないので、隔離された場所に隠れて集落を作ったとさえ聞いている。
しかしデミテルはそれは苦ともせずに、町の人々の役に立てるならとむしろ精力的に取り組んでいた。
怪我や病の人を癒し、社会の繁栄に役に立てるのならばと己の能力を国の研究に役立てたりもした。
デミテルはハーフエルフである。
その事に負い目を感じていたのもあった。しかしアルヴァニスタにはルーングロムという国の参謀とも言える程の重臣もいた。彼もまたハーフエルフである。
いかなる生い立ちであろうとも、人々になすべき事をすれば、自分の身の上など取るに足りない。むしろエルフの血を引いているからこそ操る事ができる魔術がハーフエルフにはある。
何より、何千年も前にはハーフエルフは生きるのも難しいものだったと古い文献に記してあった。ハーフエルフは人間のいる環境に住めば尖った耳を隠して静かに暮らさねばいけなかったし、居ることが知られれば壮絶な迫害が待っている。
かといって純血のエルフは更に酷い。
ハーフエルフには行き場がなかった。
一説にはとても人間とは住めないので、隔離された場所に隠れて集落を作ったとさえ聞いている。
しかし今―――
自分は人間と同じ場所に住んでいる。
双方は確実に歩み寄りを続けているのだ。
こちらも人間というものを理解し、ある時は助け合い、手を差し伸べれば融和するものだ。
そう思っていた。
自分は人間と同じ場所に住んでいる。
双方は確実に歩み寄りを続けているのだ。
こちらも人間というものを理解し、ある時は助け合い、手を差し伸べれば融和するものだ。
そう思っていた。
しかし彼は知ってしまう。
人間がどういう目でハーフエルフを見ていたのかを。
そう。一見は両者の溝は殆ど無くなったかに見えたが、本質ではそうではなかった。
どんなに自分が尽くそうとも、人間は本当は心からハーフエルフの事を良く思っていなかった。
エルフと体を交わらせた者は奇異の目に耐えれず隠れ住む事も多かった。
病人を救えば、陰ではハーフエルフに助けられた事を嘆く者まで居る。
ある者はハーフであることをあざ笑い、ある者は魔力を妬む。
ハーフエルフはエルフの親とは引き離され、彼も例外ではなかった。
人間がどういう目でハーフエルフを見ていたのかを。
そう。一見は両者の溝は殆ど無くなったかに見えたが、本質ではそうではなかった。
どんなに自分が尽くそうとも、人間は本当は心からハーフエルフの事を良く思っていなかった。
エルフと体を交わらせた者は奇異の目に耐えれず隠れ住む事も多かった。
病人を救えば、陰ではハーフエルフに助けられた事を嘆く者まで居る。
ある者はハーフであることをあざ笑い、ある者は魔力を妬む。
ハーフエルフはエルフの親とは引き離され、彼も例外ではなかった。
彼はそもそも疑問に思っていたのだ。何故ハーフエルフはかなりの者が魔力を国の研究に使うのかを。彼らもまた同じだったのだ。差別による負い目を感じていた。
だからこそ皆、躍起になって働く。
ただただ人間に認めて貰う為に。
ハーフエルフそのものを人間が受け入れていた訳ではなかったのだ。自分も、気付かないふりをして必死で生きてきたのだ。
むしろ人間はハーフエルフの魔力を利用する事しか考えていなかったのだ。
自分は一体、何のために。
人々に尽くす為だ。
しかし、その人々は自分を利用する事しか頭になかった。
中には自分を本当に評価してくれた者もいるかもしれない。それでも。
一度その真実に目を向けてしまうとデミテルの中で疑心ばかりが膨れ上がってきた。
数千年かけて両者は理解しあえたかに見えた。しかしそれはあくまで自分の夢想に過ぎなかったのだ。
自分の努力は実はとんでもなく空回りしていたのではなかったのか。
そもそも人間に認めて貰うとは何なのだろう。その時点で我々が劣っていると認めたも当然ではないか。
必死で今まで福祉に生きていたのは、解ける事のない人間の心に無理矢理自分の居場所を作る為なのだと気づいてしまった。
本当は元からそんなものなどなかったのだ。
デミテルの中で何かが音を立てて崩れていった。
それは今までの人々の為だけに生きてきた彼の人生―――デミテルの全てだった。
だからこそ皆、躍起になって働く。
ただただ人間に認めて貰う為に。
ハーフエルフそのものを人間が受け入れていた訳ではなかったのだ。自分も、気付かないふりをして必死で生きてきたのだ。
むしろ人間はハーフエルフの魔力を利用する事しか考えていなかったのだ。
自分は一体、何のために。
人々に尽くす為だ。
しかし、その人々は自分を利用する事しか頭になかった。
中には自分を本当に評価してくれた者もいるかもしれない。それでも。
一度その真実に目を向けてしまうとデミテルの中で疑心ばかりが膨れ上がってきた。
数千年かけて両者は理解しあえたかに見えた。しかしそれはあくまで自分の夢想に過ぎなかったのだ。
自分の努力は実はとんでもなく空回りしていたのではなかったのか。
そもそも人間に認めて貰うとは何なのだろう。その時点で我々が劣っていると認めたも当然ではないか。
必死で今まで福祉に生きていたのは、解ける事のない人間の心に無理矢理自分の居場所を作る為なのだと気づいてしまった。
本当は元からそんなものなどなかったのだ。
デミテルの中で何かが音を立てて崩れていった。
それは今までの人々の為だけに生きてきた彼の人生―――デミテルの全てだった。
そこからの転落は早かった。
彼は人間に絶望し、全ての研究を捨てて、西の孤島に移り住んだ。
止める者もいた。
しかし彼らが欲していたのはハーフエルフの自分などではなく、研究の結果だけだった。
彼は人間に絶望し、全ての研究を捨てて、西の孤島に移り住んだ。
止める者もいた。
しかし彼らが欲していたのはハーフエルフの自分などではなく、研究の結果だけだった。
剥き出しの脆くなった心に付け込んできたのはダオスだった。デミテルはあっさりと操られ、彼の師のいるハーメルの町を滅ぼした。
ペンダントを狙ってトーティスを襲ったマルスも同じだが、ダオスに全てを乗っ取られて操られた訳ではない。
元々心の奥深くに確かにあった、野心や憎悪などを揺さぶり起こされたのだ。
人間を憎む心に忠実になった彼はダオスの配下となるのには全く躊躇がなかった。
ペンダントを狙ってトーティスを襲ったマルスも同じだが、ダオスに全てを乗っ取られて操られた訳ではない。
元々心の奥深くに確かにあった、野心や憎悪などを揺さぶり起こされたのだ。
人間を憎む心に忠実になった彼はダオスの配下となるのには全く躊躇がなかった。
自分が今まで大事だと思っていた人々は魔法を撃てばあっけなく死んだ。
村の炎に巻き込まれて絶望に悲鳴を上げながら火にその存在を炭にされてゆく。
人間は恐ろしく脆弱だった。
こんなものに自分は全てを掛けて死にもの狂いでしがみ付いてきたのだ。
それを見てデミテルが感じたのは安堵だった。
これでようやく、本当は憎んでいた人間と決別する事が出来る。
それがデミテルの真実だった。
しかし決別の代償はあった。
この村の炎と同時に人生の全てを焼き払ったのだ。自分の徒労の人生に、果てしない虚しさが襲う。
全てが馬鹿馬鹿しくなり、自身の生への執着すらも論外ではなかった。
村の炎に巻き込まれて絶望に悲鳴を上げながら火にその存在を炭にされてゆく。
人間は恐ろしく脆弱だった。
こんなものに自分は全てを掛けて死にもの狂いでしがみ付いてきたのだ。
それを見てデミテルが感じたのは安堵だった。
これでようやく、本当は憎んでいた人間と決別する事が出来る。
それがデミテルの真実だった。
しかし決別の代償はあった。
この村の炎と同時に人生の全てを焼き払ったのだ。自分の徒労の人生に、果てしない虚しさが襲う。
全てが馬鹿馬鹿しくなり、自身の生への執着すらも論外ではなかった。
そして今、彼はミクトランの気まぐれな遊戯により、このゲームに召喚された。
絶対の殺し合いのルール。
一回目の放送の時に、自分が殺害した者以外に何名かが死んでいる。
誰かが、どこかで殺し合いをしている。
その放送を聴いた時にデミテルには微笑が浮かんだ。そして思うのだ。
どんな美しい体面や理想に囚われて今まで生きていようが、絶対的なルールを張り巡らされた一つの箱に入れれば人なんてこんなものだ。
奇麗事で着飾ろうが、それが人の絶対的な本質だ。
私自らもそれを証明してやろう。
そしてティトレイを見た。相変わらずその瞳は何も映してはいないが、命じれば完全服従のマーダーとなる。
彼には同情こそはしなかったが、かつては彼も己の信じる正義とやらにその拳を使ったのだろう。だが現在、彼はゲームに振り回された結果腑抜けとなった。
不本意だが少しだけ、自身と重なった気がした。
絶対の殺し合いのルール。
一回目の放送の時に、自分が殺害した者以外に何名かが死んでいる。
誰かが、どこかで殺し合いをしている。
その放送を聴いた時にデミテルには微笑が浮かんだ。そして思うのだ。
どんな美しい体面や理想に囚われて今まで生きていようが、絶対的なルールを張り巡らされた一つの箱に入れれば人なんてこんなものだ。
奇麗事で着飾ろうが、それが人の絶対的な本質だ。
私自らもそれを証明してやろう。
そしてティトレイを見た。相変わらずその瞳は何も映してはいないが、命じれば完全服従のマーダーとなる。
彼には同情こそはしなかったが、かつては彼も己の信じる正義とやらにその拳を使ったのだろう。だが現在、彼はゲームに振り回された結果腑抜けとなった。
不本意だが少しだけ、自身と重なった気がした。
もうすぐ第二回目の放送だ。次の死者は何人なのだろう。
「全く…下らぬ事だ」
東の空の光彩のトーンが徐々に上がってゆく。
デミテルは目を閉じた。眼の奥に映った、彼のかつて尽くしていた街の人々が笑う事はなかった。
そしてその顔を脳裏で一つづつ黒く塗り潰していった。
デミテルは目を閉じた。眼の奥に映った、彼のかつて尽くしていた街の人々が笑う事はなかった。
そしてその顔を脳裏で一つづつ黒く塗り潰していった。
【デミテル 生存確認】
状態:TP2/3消費
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティーシンボル 金属バット
第一行動方針:ティトレイを操る
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第三行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
現在地:F2の平原
状態:TP2/3消費
所持品:フィートシンボル ストロー ミスティーシンボル 金属バット
第一行動方針:ティトレイを操る
第二行動方針:出来るだけ最低限の方法で邪魔者を駆逐する
第三行動方針:ダオスを倒せそうなキャラをダオスに仕向ける
現在地:F2の平原
【ティトレイ・クロウ 生存確認】
状態:感情喪失 全身の痛み、軽いやけど(回復中) TP中消費
所持品:メンタルバングル バトルブック
第一行動方針:かえりたい
第二行動方針:デミテルに従う
現在地:F2の平原
状態:感情喪失 全身の痛み、軽いやけど(回復中) TP中消費
所持品:メンタルバングル バトルブック
第一行動方針:かえりたい
第二行動方針:デミテルに従う
現在地:F2の平原