Tonight,I'll meet you
暗い世界。
何も見えない。自分の手すら。
ここは何処だ? 何故オレはこんな所にいる?
青年は何かを求め歩き出す。終わりのない闇の中で、恐れのない足取りで歩き出す。
カツカツと冷たい足音が聞こえる中、地を踏み締め進んでいく。
そして見えてきた一つの光。
光はヒトの姿を象っており、美しく長い金髪が纏う光に煌めいていた。
青年は口を開く。
何も見えない。自分の手すら。
ここは何処だ? 何故オレはこんな所にいる?
青年は何かを求め歩き出す。終わりのない闇の中で、恐れのない足取りで歩き出す。
カツカツと冷たい足音が聞こえる中、地を踏み締め進んでいく。
そして見えてきた一つの光。
光はヒトの姿を象っており、美しく長い金髪が纏う光に煌めいていた。
青年は口を開く。
「クレア?」
どうやら光に青年は見覚えがあるようだった。
光は青年に微笑む。しかしその微笑みははかなくて、どこか悲しかった。
光は青年に微笑む。しかしその微笑みははかなくて、どこか悲しかった。
「どうして?」
「え…?」
「どうして、そんな悲しいことをするの…?」
「え…?」
「どうして、そんな悲しいことをするの…?」
その言葉は錨のように、青年の心にずしりと沈んでいく。
深く深く、ゆっくりと彼の心に下りていく。
それと共に生まれた波は焦りとなって彼の心に広がっていく。
何のことだ、どうしてそんなことを言うんだ、オレはお前に──…。
青年は手を伸ばす。しかし、光はすぐ近くにあるのに、とても遠くて。
届く直前に、光は消えた。
深く深く、ゆっくりと彼の心に下りていく。
それと共に生まれた波は焦りとなって彼の心に広がっていく。
何のことだ、どうしてそんなことを言うんだ、オレはお前に──…。
青年は手を伸ばす。しかし、光はすぐ近くにあるのに、とても遠くて。
届く直前に、光は消えた。
それは少し前のこと。
静寂に広がる、一瞬の閃光と爆音。
ある城の部屋で、目を閉じ休んでいた青年にもそれは届いた。
静寂に広がる、一瞬の閃光と爆音。
ある城の部屋で、目を閉じ休んでいた青年にもそれは届いた。
どうやら少し眠ってしまっていたらしい。
夢か何かを見ていたような気もするが、記憶は朧で、見たという感覚しか残っていない。
それよりも、覚醒させた轟音だ。いつもは静かな表情でいる青年だが、流石の彼も少々驚愕が隠せないようだった。
一体何が起きたのか?
事を確認しようと、部屋の窓を開け外を覗き見る。
──焦げ臭い。更に、鼻孔に微かに流れ込んできた香ばしい臭いに、思わず顔を背けた。
良いものではない。言うならば、異臭。
暗闇で外はうっすらとしか見えないが、逆にそれがこの臭いを引き立てている。
想像は容易につく。爆発が起きたのだろう、音も似ていた。
それに、ヒトが巻き込まれた。
誰かは分からないが、死んだ確率は高いだろう。
ヒトの燃えた臭いがそれを物語っている。
だが、起こしたのは誰だ?
自分と同じようにゲームに乗った人物か、防衛の末に爆発を起こした人物か。
ただ一つ分かることは、もし近い内にこの城に来訪者が現れるとしたら、恐らく爆発を起こした主だ。
導術…もしくは近いものを使える人物か、爆発を起こす道具を持っている人物か。
脅威にはなるだろう。しかし、そんなのは青年には少しも関係なかった。
夢か何かを見ていたような気もするが、記憶は朧で、見たという感覚しか残っていない。
それよりも、覚醒させた轟音だ。いつもは静かな表情でいる青年だが、流石の彼も少々驚愕が隠せないようだった。
一体何が起きたのか?
事を確認しようと、部屋の窓を開け外を覗き見る。
──焦げ臭い。更に、鼻孔に微かに流れ込んできた香ばしい臭いに、思わず顔を背けた。
良いものではない。言うならば、異臭。
暗闇で外はうっすらとしか見えないが、逆にそれがこの臭いを引き立てている。
想像は容易につく。爆発が起きたのだろう、音も似ていた。
それに、ヒトが巻き込まれた。
誰かは分からないが、死んだ確率は高いだろう。
ヒトの燃えた臭いがそれを物語っている。
だが、起こしたのは誰だ?
自分と同じようにゲームに乗った人物か、防衛の末に爆発を起こした人物か。
ただ一つ分かることは、もし近い内にこの城に来訪者が現れるとしたら、恐らく爆発を起こした主だ。
導術…もしくは近いものを使える人物か、爆発を起こす道具を持っている人物か。
脅威にはなるだろう。しかし、そんなのは青年には少しも関係なかった。
彼の望みは元の世界に戻ること。
いずれにしても、目的達成の為には全員殺さなくてはいけないのである。
相手が死ぬのが、早いか遅いか。それだけのことなのだ。
再び目を閉じ、精神を集中する。僅かな音も聞き漏らさまいと。
瞼の奥の瞳は、強い意思の輝きを放っていた。
いずれにしても、目的達成の為には全員殺さなくてはいけないのである。
相手が死ぬのが、早いか遅いか。それだけのことなのだ。
再び目を閉じ、精神を集中する。僅かな音も聞き漏らさまいと。
瞼の奥の瞳は、強い意思の輝きを放っていた。
…どれくらいの時間が経ったのだろうか? 少しか、それとも数時間か。
今まで彼の耳には何の音も届かなかった。新たな爆発音も、城の扉を開ける音も、話し声も、足音も。
──無駄な心配だったか…。
青年は一息零す。深く読み過ぎたようだ。
爆発を起こした主も離れていったらしい。もしくは相討ちだったのかもしれない。
夜は町や村に集まるという考えも、同じように考え敢えて近付かないような人物もいるだろう。
ならば、ヒトは外に揃っている。出た方がいいかもしれない。
青年は立ち上がる。橙と黄のグミを口に放り込み傷と精神を癒して。
そして自らの武器である小剣に一度触れると、彼は歩き出した。
今まで彼の耳には何の音も届かなかった。新たな爆発音も、城の扉を開ける音も、話し声も、足音も。
──無駄な心配だったか…。
青年は一息零す。深く読み過ぎたようだ。
爆発を起こした主も離れていったらしい。もしくは相討ちだったのかもしれない。
夜は町や村に集まるという考えも、同じように考え敢えて近付かないような人物もいるだろう。
ならば、ヒトは外に揃っている。出た方がいいかもしれない。
青年は立ち上がる。橙と黄のグミを口に放り込み傷と精神を癒して。
そして自らの武器である小剣に一度触れると、彼は歩き出した。
そうして彼…ヴェイグ・リュングベルは今に至る。
動かない足、侵食する異常を見つめながら、自らに迫る得体の知れない恐怖を実感していた。
動かない足、侵食する異常を見つめながら、自らに迫る得体の知れない恐怖を実感していた。
既に石化は背中の少し下まで及んでおり、背負っている支給品袋もろとも固くなっている。
このまま石になってしまうのか。
やがて全身が色を失い、心臓すらも石と化してしまうのか。
様々な憶測が頭を駆け巡り、同時に自分の不甲斐なさが心を巡った。
殺そうとしたあの男はもう居ない。
あれほどの実力を持つ男が、とどめを刺さずに去っていった。
つまり、これ自体がとどめなのだ。
じわじわと石に化していき、やがて全身が包まれて死ぬ。
男がこの手段を選んだのはせめてもの情けか、それとも恐怖に落とすためか。
その答えを知る人間はここには居ない。
叫びに答える者も居ない。
ただ森に声が吸われていっては、静けさが返ってくる。
その度に自分の無力さを痛感する。
ここでもう終わってしまうのか。
このまま石になってしまうのか。
やがて全身が色を失い、心臓すらも石と化してしまうのか。
様々な憶測が頭を駆け巡り、同時に自分の不甲斐なさが心を巡った。
殺そうとしたあの男はもう居ない。
あれほどの実力を持つ男が、とどめを刺さずに去っていった。
つまり、これ自体がとどめなのだ。
じわじわと石に化していき、やがて全身が包まれて死ぬ。
男がこの手段を選んだのはせめてもの情けか、それとも恐怖に落とすためか。
その答えを知る人間はここには居ない。
叫びに答える者も居ない。
ただ森に声が吸われていっては、静けさが返ってくる。
その度に自分の無力さを痛感する。
ここでもう終わってしまうのか。
不意にその時、脳裏に浮かんだ光景。思い出したのは、先程見た夢。
あの表情──。
クレアが伝えたかったことは何だったのか?
あんな悲しい表情をしてまで伝えたかったことは。
オレは悲しい表情をさせるようなことをしてしまったのだろうか?
まだ動く左手を見る。
あの表情──。
クレアが伝えたかったことは何だったのか?
あんな悲しい表情をしてまで伝えたかったことは。
オレは悲しい表情をさせるようなことをしてしまったのだろうか?
まだ動く左手を見る。
血。
──…血で汚れた左手。
──…血で汚れた左手。
ああ、そうか。
クレアは血で汚れていくオレの姿を見たくなかったんだ。
何で今まで気付かなかったのか。
優しい性格だから、誰かが傷つくのは、きっと嫌に決まっている。
なのにオレが、オレ自身がヒトを傷つけ、殺してしまった。
だからあんな表情をしていたんだろう。
そうなんだな…クレア?
クレアは血で汚れていくオレの姿を見たくなかったんだ。
何で今まで気付かなかったのか。
優しい性格だから、誰かが傷つくのは、きっと嫌に決まっている。
なのにオレが、オレ自身がヒトを傷つけ、殺してしまった。
だからあんな表情をしていたんだろう。
そうなんだな…クレア?
勝手な考えだと思った。
夢なんて曖昧で、おかしくて、それが正しいかなんて誰も分からないし、思わない。
そう考えたのは、ただ単に自分の罪を誰かに許してもらいたいからだろう。
命を奪っておいて、苦しみから逃れたいからだろう。
死ぬ直前に許してほしい? 傲慢だ。
じゃあ何で殺したんだ。もう消えた命は戻りはしない。
消した命を忘れて、自分だけ救われると思うな。諦めれば全てから解放されるなんて、愚かな考えだ。
もう戻れはしないんだ。
夢なんて曖昧で、おかしくて、それが正しいかなんて誰も分からないし、思わない。
そう考えたのは、ただ単に自分の罪を誰かに許してもらいたいからだろう。
命を奪っておいて、苦しみから逃れたいからだろう。
死ぬ直前に許してほしい? 傲慢だ。
じゃあ何で殺したんだ。もう消えた命は戻りはしない。
消した命を忘れて、自分だけ救われると思うな。諦めれば全てから解放されるなんて、愚かな考えだ。
もう戻れはしないんだ。
誰かの声…否、自分の声が聞こえる。
恐らく、ヒトを殺してきた自分の声だ。
その自分が、弱くなっていく自分に「立て」と、「勝て」と、「殺せ」と言う。
だが、ヴェイグは声を振り払った。
石化はもう背中まで回っている。まだ残っているのは、肩から上と腕が少し。
恐らく、ヒトを殺してきた自分の声だ。
その自分が、弱くなっていく自分に「立て」と、「勝て」と、「殺せ」と言う。
だが、ヴェイグは声を振り払った。
石化はもう背中まで回っている。まだ残っているのは、肩から上と腕が少し。
もはや全身が石になるのは、そう遅くはないだろう。
もう動けない。見聞したことのない恐怖に侵されて、自分は死んでいく。
ならせめて、ヴェイグは自分が見た光を信じた。信じたかった。
ゆっくり、目を閉じる。目の前に広がるのは暗闇だ。
光を探す。
そして目の前に、金色の光が現れた。さっきと変わらない、悲しい微笑みのままで。
もう動けない。見聞したことのない恐怖に侵されて、自分は死んでいく。
ならせめて、ヴェイグは自分が見た光を信じた。信じたかった。
ゆっくり、目を閉じる。目の前に広がるのは暗闇だ。
光を探す。
そして目の前に、金色の光が現れた。さっきと変わらない、悲しい微笑みのままで。
──大丈夫だ、クレア。オレの手は…もう、汚れない。
手遅れになる前に彼は告げた。
光は何も言わず微笑んでいる。但し、その微笑みに悲しみはない。
いつもの優しい微笑みで見つめている。
彼も笑った。
恐怖が首から喉へ、顔へと侵食していく。
だが、彼はもう恐れはしなかった。
光は何も言わず微笑んでいる。但し、その微笑みに悲しみはない。
いつもの優しい微笑みで見つめている。
彼も笑った。
恐怖が首から喉へ、顔へと侵食していく。
だが、彼はもう恐れはしなかった。
例え目の前の光が自分の作り出した幻想だろうと構わない。
最期に、クレアに出会えるのなら。
ヴェイグにとっては、それが死ぬ前の唯一の「救い」であり、「希望」だった。
最期に、クレアに出会えるのなら。
ヴェイグにとっては、それが死ぬ前の唯一の「救い」であり、「希望」だった。
そうして、ヴェイグの身体は色を失くした。
【ヴェイグ 生存確認】
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル)
※但し袋ごと石化したため回収は不可能。
現在位置:B7の森林地帯
状態:TP消費(小) 右肩に裂傷 全身石化(時間による状態悪化・改善なし)
所持品:スティレット チンクエデア グミセット(パイン、ミラクル)
※但し袋ごと石化したため回収は不可能。
現在位置:B7の森林地帯
状態:TP消費(小) 右肩に裂傷 全身石化(時間による状態悪化・改善なし)