絶対佳人
夜の帳が降りてからもうどのくらい経っただろうか。
時計を取り出して見ると、もう夕暮れの望まぬ形での再会から数時間経ってしまっている。
歩きながら少しづつ齧り続けたパンも、そろそろふたつめがなくなる。
睡魔も、ほんの少しばかりだが足音が聞こえる。
今日は人生で一番歩いた気がする。
普段はホウキに乗ってばかりだったせいか、靴擦れを起こした踵もひどく痛む。
時計を取り出して見ると、もう夕暮れの望まぬ形での再会から数時間経ってしまっている。
歩きながら少しづつ齧り続けたパンも、そろそろふたつめがなくなる。
睡魔も、ほんの少しばかりだが足音が聞こえる。
今日は人生で一番歩いた気がする。
普段はホウキに乗ってばかりだったせいか、靴擦れを起こした踵もひどく痛む。
最初よりも大分速度は遅くなったが、それでも休まずに歩き続けた。
このゲームに乗って、誰かの命を奪う。
そんな自分に変われなければ、この虚脱感から逃れられなかったのだ。
チェスターを失ったことで出来た心の隙間を独りで埋められるほど、アーチェは強い女性ではなかった。
このゲームに乗って、誰かの命を奪う。
そんな自分に変われなければ、この虚脱感から逃れられなかったのだ。
チェスターを失ったことで出来た心の隙間を独りで埋められるほど、アーチェは強い女性ではなかった。
歩く最中に背後から紫の不自然な稲光と轟音も聞こえたが、不思議と恐怖は覚えない。
気を多く持つ心の余裕さえ、今の彼女にはなかった。
気を多く持つ心の余裕さえ、今の彼女にはなかった。
C3の村には、ふたりの人間がいた。
そのひとりであるジョニーと交代し、今はファラが村の入り口を見張っている。
ちょっと横になったお陰で疲れも多少はとれたのか、彼女は暇つぶしに軽く運動をしていた。
流々と、川の流れのように無駄を取り払ったレグルス流の演舞。
武術を嗜む人が見たなら、その美しい動きに驚嘆の声をあげたであろう。
その彼女の演舞が、突如止まった。
「……そこにいるんでしょ? 隠れてないで出てきたら?」
そのひとりであるジョニーと交代し、今はファラが村の入り口を見張っている。
ちょっと横になったお陰で疲れも多少はとれたのか、彼女は暇つぶしに軽く運動をしていた。
流々と、川の流れのように無駄を取り払ったレグルス流の演舞。
武術を嗜む人が見たなら、その美しい動きに驚嘆の声をあげたであろう。
その彼女の演舞が、突如止まった。
「……そこにいるんでしょ? 隠れてないで出てきたら?」
村の外に向かって声をかけるファラ。
しばし遅れて、リズムの合っていない土を踏む音が微かに聴こえた。
段々と音は大きくなり、やがて暗がりからひとりの少女が姿を現した。
音の主は、ひどく疲れているようにファラの眼には映った。
しかし、隠すつもりがまるでないのか、それとも隠す術も知らないのか、妙な殺気を放っていた。
「私と戦うつもり……みたいね」
色々と尋ねたいこともあったのだが、その来訪者の出す空気がファラの口をつむいだ。
あの状態では、まともな話し合いにはならない。
そう思ったからこそ、ファラはこれ以上何も聞かないことにして、拳を構えた。
しばし遅れて、リズムの合っていない土を踏む音が微かに聴こえた。
段々と音は大きくなり、やがて暗がりからひとりの少女が姿を現した。
音の主は、ひどく疲れているようにファラの眼には映った。
しかし、隠すつもりがまるでないのか、それとも隠す術も知らないのか、妙な殺気を放っていた。
「私と戦うつもり……みたいね」
色々と尋ねたいこともあったのだが、その来訪者の出す空気がファラの口をつむいだ。
あの状態では、まともな話し合いにはならない。
そう思ったからこそ、ファラはこれ以上何も聞かないことにして、拳を構えた。
先に仕掛けたのは、来訪者のほうであった。
「………ファイア…ボールッ!!」
掛け声と共に、火の弾が杖より生み出されてファラを襲う。
だが、ファラも凡人ではない。
思いのほか大きな火の弾ではあったが、難なくそれを避ける。
杖を持っているのなら、彼女はメルディのような術士タイプなのだろう。
驚異的な瞬発力で、避けた体勢を立て直して一気に間合いを詰める。
だが、彼女の次の魔術も思いのほか早かった。
雷の魔術、ライトニング。
先ほどの火球の横の動きに対し、雷は縦の動きで瞬間的に落ちる。
避けることは不可能だと思われた。
しかし、その瞬間ファラの走り方が変わった。
来訪者がそのファラの姿に妙な違和感を覚えたかと思ったその刹那、ファラが目の前にまで接近した。
雷さえも、その彼女を捉えることは出来ず、音と共に空しく地に落ちた。
「………ファイア…ボールッ!!」
掛け声と共に、火の弾が杖より生み出されてファラを襲う。
だが、ファラも凡人ではない。
思いのほか大きな火の弾ではあったが、難なくそれを避ける。
杖を持っているのなら、彼女はメルディのような術士タイプなのだろう。
驚異的な瞬発力で、避けた体勢を立て直して一気に間合いを詰める。
だが、彼女の次の魔術も思いのほか早かった。
雷の魔術、ライトニング。
先ほどの火球の横の動きに対し、雷は縦の動きで瞬間的に落ちる。
避けることは不可能だと思われた。
しかし、その瞬間ファラの走り方が変わった。
来訪者がそのファラの姿に妙な違和感を覚えたかと思ったその刹那、ファラが目の前にまで接近した。
雷さえも、その彼女を捉えることは出来ず、音と共に空しく地に落ちた。
ファラの三連蹴りが来訪者を襲う。
だが、来訪者も負けていない。すんでのところでファラの猛攻をかわす。
それでもファラは地面を蹴って、来訪者のほうに瞬時に方向を変え、再び迫った。
魔術を使う隙も与えないファラの攻めによって、来訪者は慌ててナイフを取り出した。
接近戦に応じるしか、なかった。
両手に構え、ナイフを一気に突き出す。
突き出されたナイフを、ファラは即座に蹴り上げた。
綺麗な弧を描き、ナイフが宙を舞う。
来訪者はその動きに驚く間もなく、ファラの掌底を懐に叩き込まれた。
その打撃は、彼女の意識を飛ばすには十分であった。
だが、来訪者も負けていない。すんでのところでファラの猛攻をかわす。
それでもファラは地面を蹴って、来訪者のほうに瞬時に方向を変え、再び迫った。
魔術を使う隙も与えないファラの攻めによって、来訪者は慌ててナイフを取り出した。
接近戦に応じるしか、なかった。
両手に構え、ナイフを一気に突き出す。
突き出されたナイフを、ファラは即座に蹴り上げた。
綺麗な弧を描き、ナイフが宙を舞う。
来訪者はその動きに驚く間もなく、ファラの掌底を懐に叩き込まれた。
その打撃は、彼女の意識を飛ばすには十分であった。
ジョニーが仮眠をとっている家の扉をたたく。声がして、扉が開く。
「……おや? その娘は誰だい?」
ファラが抱っこする少女を見て、ジョニーは尋ねた。
「…………村の入り口で倒れていたの。私がこの娘を看てる間、見張り…お願いできない?」
少しの逡巡の後、ファラが答える。
ジョニーは薄く微笑むと
「麗しいレディーの頼みなら、喜んで」
と、まるで演劇のような芝居がかった言い方で快諾した。
そんなジョニーに、ファラは「ありがとう」と礼を言うと、少女を抱いて家に入った。
「……おや? その娘は誰だい?」
ファラが抱っこする少女を見て、ジョニーは尋ねた。
「…………村の入り口で倒れていたの。私がこの娘を看てる間、見張り…お願いできない?」
少しの逡巡の後、ファラが答える。
ジョニーは薄く微笑むと
「麗しいレディーの頼みなら、喜んで」
と、まるで演劇のような芝居がかった言い方で快諾した。
そんなジョニーに、ファラは「ありがとう」と礼を言うと、少女を抱いて家に入った。
「――これで、よしっと」
少女をベッドに寝かせ、ファラはようやく一息ついた。
眠りやすそうな服に見えなかったから、家にあったゆったりした服に着替えもさせた。
靴を脱がせたときに、この少女が靴擦れを起こしているのを見て、布で手当てもした。
その甲斐もあって、少女は昏々と眠りについている。
ファラは眠る少女の顔を、覗き込むように見つめた。
少女の寝顔は、殺し合いを進んで行うような人間のものには見えなかった。
でも、この娘は自分を殺すつもりで襲い掛かってきた。
そう思うと、彼女は新たな怒りを覚えた。
怒りの対象は、主催者ミクトラン。
(こんな娘まで殺し合いに駆り立てさせるなんて………ひどすぎる!)
やっぱり、こんな理不尽なゲームは絶対に許すことなんて出来ない。
この出会いも、ファラの中の使命感や正義感を更に滾らせることとなった。
少女をベッドに寝かせ、ファラはようやく一息ついた。
眠りやすそうな服に見えなかったから、家にあったゆったりした服に着替えもさせた。
靴を脱がせたときに、この少女が靴擦れを起こしているのを見て、布で手当てもした。
その甲斐もあって、少女は昏々と眠りについている。
ファラは眠る少女の顔を、覗き込むように見つめた。
少女の寝顔は、殺し合いを進んで行うような人間のものには見えなかった。
でも、この娘は自分を殺すつもりで襲い掛かってきた。
そう思うと、彼女は新たな怒りを覚えた。
怒りの対象は、主催者ミクトラン。
(こんな娘まで殺し合いに駆り立てさせるなんて………ひどすぎる!)
やっぱり、こんな理不尽なゲームは絶対に許すことなんて出来ない。
この出会いも、ファラの中の使命感や正義感を更に滾らせることとなった。
村の入り口で見張りをするジョニーは、嘆息を洩らす。
「……ふう、ファラは嘘を隠すのが下手だな」
落雷によって不自然に空いた穴。そして円形に焼け焦げた柱。
そして無造作に放置されたままのナイフと杖。
ジョニーは、ひとまず自分の荷物の中にそれらを放り込んだ。
暗くてそれ以上は状況はつかめないが、戦いの傷跡はまるで隠れていない。
しかし、実際に戦いがあったとしても、ジョニーは進んであの少女と事を構えるつもりはなかった。
「さて、あの少女は目覚めて何を思うか……殺す相手に助けられ――」
ポロロン、と弦楽器を鳴らす仕草をしながら、ジョニーは弁士のような口で詠った。
「……ふう、ファラは嘘を隠すのが下手だな」
落雷によって不自然に空いた穴。そして円形に焼け焦げた柱。
そして無造作に放置されたままのナイフと杖。
ジョニーは、ひとまず自分の荷物の中にそれらを放り込んだ。
暗くてそれ以上は状況はつかめないが、戦いの傷跡はまるで隠れていない。
しかし、実際に戦いがあったとしても、ジョニーは進んであの少女と事を構えるつもりはなかった。
「さて、あの少女は目覚めて何を思うか……殺す相手に助けられ――」
ポロロン、と弦楽器を鳴らす仕草をしながら、ジョニーは弁士のような口で詠った。
【アーチェ 生存確認】
所持品:身に着けていたレジストリング それ以外はファラに没収
状態:気絶 足に靴擦れ
第一行動方針:ゲームに乗る
現在地:C3の村
所持品:身に着けていたレジストリング それ以外はファラに没収
状態:気絶 足に靴擦れ
第一行動方針:ゲームに乗る
現在地:C3の村
【ファラ 生存確認】
所持品:ブラックオニキス ガイアグリーヴァ
アーチェの支給品袋(ダークボトル×2 スペクタクルズ×1 木の弓 毒(液体))
状態:普通
第一行動方針:アーチェの世話をする
第二行動方針:殺し合いをやめさせる
第三行動方針:仲間との合流
第四行動方針:ゲームからの脱出
現在位置:C3の村
所持品:ブラックオニキス ガイアグリーヴァ
アーチェの支給品袋(ダークボトル×2 スペクタクルズ×1 木の弓 毒(液体))
状態:普通
第一行動方針:アーチェの世話をする
第二行動方針:殺し合いをやめさせる
第三行動方針:仲間との合流
第四行動方針:ゲームからの脱出
現在位置:C3の村
【ジョニー 生存確認】
所持品:メンタルリング 稲刈り鎌 アイフリードの旗 BCロッド サバイバルナイフ
状態:普通
第一行動方針:見張り
第二行動方針:仲間との合流
第三行動方針:ゲームからの脱出
現在位置:C3の村
所持品:メンタルリング 稲刈り鎌 アイフリードの旗 BCロッド サバイバルナイフ
状態:普通
第一行動方針:見張り
第二行動方針:仲間との合流
第三行動方針:ゲームからの脱出
現在位置:C3の村