Kidnaping!
思考が、何度も頭の中を往来する。
考える程に頭が痛い。
この有限和の殺人ゲームに措いて、自分はどうあるべきなのか。
少女を護り、闘い抜く?
全ての人を殺戮し、勝者となる?
それとも――
考える程に頭が痛い。
この有限和の殺人ゲームに措いて、自分はどうあるべきなのか。
少女を護り、闘い抜く?
全ての人を殺戮し、勝者となる?
それとも――
堂々巡り……そんな事は分かっていた。
しかし、迷わずには、居られなかった。
迷うことで……思考に溺れる事で、自分を保っていた。
結論など……今は欲しくなかった。
しかし、迷わずには、居られなかった。
迷うことで……思考に溺れる事で、自分を保っていた。
結論など……今は欲しくなかった。
クレスは傍らの少女・コレットを見遣り、鼻で溜息を吐く。
彼女は再び眠ってしまい、起きる気配は無い。
彼女の為に張った虚勢も、一人になった今では底無し沼に沈んでしまっている。
サレは、まだなのか?
……いや、内心、戻って欲しくなど無いのかも知れない。
このまま、彼女の寝顔でも眺めて、ただただ時を過ごしたかった。
自分の往き着く先など……知りたくなかった。
彼女は再び眠ってしまい、起きる気配は無い。
彼女の為に張った虚勢も、一人になった今では底無し沼に沈んでしまっている。
サレは、まだなのか?
……いや、内心、戻って欲しくなど無いのかも知れない。
このまま、彼女の寝顔でも眺めて、ただただ時を過ごしたかった。
自分の往き着く先など……知りたくなかった。
茂みが、不自然に揺れた。
……サレか?
いや違う。彼は他者に存在を感づかせる様なヘマはしない。
たとえ、相手が仲間であろうと。
音も無く剣を構え、招かれざる来訪者の登場に備える。
再び、乾いた摩擦音が響く。
修羅の再来は近い。
戦士の勘が、そう告げた。
……サレか?
いや違う。彼は他者に存在を感づかせる様なヘマはしない。
たとえ、相手が仲間であろうと。
音も無く剣を構え、招かれざる来訪者の登場に備える。
再び、乾いた摩擦音が響く。
修羅の再来は近い。
戦士の勘が、そう告げた。
「何者だ!」
クレスは強い語勢で問い掛ける。
「俺様が何者か……だと?」
意外なことに、相手は律儀にも返事を返した。
「常勝無敗、天下の闘技場覇者の名を知らねぇたぁ……
ちいとばかし勉強不足だな、少年」
木立の闇から姿を現す、巨大な筋肉達磨。
「俺様がチャンピオン……マイティ・コングマン様よォッ!!」
満足気に言い切ると、大男は自慢の力瘤を盛大にアピールした。
「小僧。剣を抜いたその覚悟、しかと受け取ったぜ。
チャンピオン直々に……リングに沈めてやらァ!!」
言い切るや否やこちらへ駆け出した男は、その巨大な拳に力を込めて迫り来る。
見掛けに因らず、かなりのスピードを誇る男。
クレスは剣を抜き、中段後方から振り下ろすと、地面を掠めて前方へ振り抜いた。
「魔神剣!」
距離のある相手への、牽制のひと振り。
剣先は地表を僅か削ぎ取ると、それを押し出す形で衝撃波を生んだ。
波動は地を這い、襲い来る相手の足を正確に捉え、牙を剥く。
「甘い、甘いっ!」
衝撃波が噛み付く寸前、男はその極太の足を勢い良く踏み鳴らす。
すると、男の足下に発生した激しい振動により、地の刃は跡形無く消し去られた。
初歩的な剣技とは言え、小さな蛇を踏みにじる様に魔神剣を掻き消す男。
……油断ならない。
クレスは体勢を改め、接近戦の構えを取る。
「いくぞオラァ!」
勢力そのまま肉薄し、男は体側に隠すかの如く大きく振りかぶった右腕に闘気を込めて打ち出した。
クレスはそれを軽く身を捻ってかわすと、剣を下段後方に構える。
相手の状態はさておいて、こちらの体力に余裕の無い今、長期戦は得策では無い。
出し惜しむ事無く、必殺のカウンターで勝負に出る。
……その思い切りが、勝負の雌雄を分けた。
クレスは強い語勢で問い掛ける。
「俺様が何者か……だと?」
意外なことに、相手は律儀にも返事を返した。
「常勝無敗、天下の闘技場覇者の名を知らねぇたぁ……
ちいとばかし勉強不足だな、少年」
木立の闇から姿を現す、巨大な筋肉達磨。
「俺様がチャンピオン……マイティ・コングマン様よォッ!!」
満足気に言い切ると、大男は自慢の力瘤を盛大にアピールした。
「小僧。剣を抜いたその覚悟、しかと受け取ったぜ。
チャンピオン直々に……リングに沈めてやらァ!!」
言い切るや否やこちらへ駆け出した男は、その巨大な拳に力を込めて迫り来る。
見掛けに因らず、かなりのスピードを誇る男。
クレスは剣を抜き、中段後方から振り下ろすと、地面を掠めて前方へ振り抜いた。
「魔神剣!」
距離のある相手への、牽制のひと振り。
剣先は地表を僅か削ぎ取ると、それを押し出す形で衝撃波を生んだ。
波動は地を這い、襲い来る相手の足を正確に捉え、牙を剥く。
「甘い、甘いっ!」
衝撃波が噛み付く寸前、男はその極太の足を勢い良く踏み鳴らす。
すると、男の足下に発生した激しい振動により、地の刃は跡形無く消し去られた。
初歩的な剣技とは言え、小さな蛇を踏みにじる様に魔神剣を掻き消す男。
……油断ならない。
クレスは体勢を改め、接近戦の構えを取る。
「いくぞオラァ!」
勢力そのまま肉薄し、男は体側に隠すかの如く大きく振りかぶった右腕に闘気を込めて打ち出した。
クレスはそれを軽く身を捻ってかわすと、剣を下段後方に構える。
相手の状態はさておいて、こちらの体力に余裕の無い今、長期戦は得策では無い。
出し惜しむ事無く、必殺のカウンターで勝負に出る。
……その思い切りが、勝負の雌雄を分けた。
剣士の攻撃は、既にその時点で意味を無くしていた。
否、コングマンのチャンス予告としては大いに有用だったのだが。
力一杯……一般ピーポーにはそう見えたであろう右腕を、
瞬時に引き戻すコングマン。
彼にとって見飽きる程見慣れた、剣士の力強いモーション。
━━その予備動作……見切った。
否、コングマンのチャンス予告としては大いに有用だったのだが。
力一杯……一般ピーポーにはそう見えたであろう右腕を、
瞬時に引き戻すコングマン。
彼にとって見飽きる程見慣れた、剣士の力強いモーション。
━━その予備動作……見切った。
腰溜めにした剣を振り上げ、威勢良い掛け声を掛ける。
「「虎牙……」」
━━違和感。
声が二重に聴こえる。
声が二重に聴こえる。
「「破ッ斬んっっ!!」」
続け様に斬り下ろしを放った時、事態は最早抜き差しを赦さない状態であった。
重なった声、それは眼前の標的に拠るものだった。
嘲けて掛け声を重ねた男。
表情は余裕綽々を強調している。
男の姿は剣を振るった先に無く、巨体に似合わない軽やかなステップを
目で追った先、拳は低く構えられていた。
「グレイト……」
「なっ……」
男の腕が盛り上がり、更に太さを増した。
「アップァァッッッ!!!」
次の瞬間、クレスの土手腹を強烈な痛みが襲い、
その身体は高く打ち上がり、宙を舞った。
「ぐぁはっっ!!」
被弾の覚悟を決める間も無く受けた、痛恨の一撃。
ダメージは軽減される事無く、直に彼の身体に打ち込まれた。
重なった声、それは眼前の標的に拠るものだった。
嘲けて掛け声を重ねた男。
表情は余裕綽々を強調している。
男の姿は剣を振るった先に無く、巨体に似合わない軽やかなステップを
目で追った先、拳は低く構えられていた。
「グレイト……」
「なっ……」
男の腕が盛り上がり、更に太さを増した。
「アップァァッッッ!!!」
次の瞬間、クレスの土手腹を強烈な痛みが襲い、
その身体は高く打ち上がり、宙を舞った。
「ぐぁはっっ!!」
被弾の覚悟を決める間も無く受けた、痛恨の一撃。
ダメージは軽減される事無く、直に彼の身体に打ち込まれた。
──チャンピオン・コングは、半生唯一の敗戦を、片時たりとも忘れた事は無かった。
雨の日も、雪の日も、霧の日も、雑誌の取材の日も、
世界が平和になった日も……
自分を負かした相手の顔を浮かべ、屈辱を胸に稽古に打ち込んだ。
雨の日も、雪の日も、霧の日も、雑誌の取材の日も、
世界が平和になった日も……
自分を負かした相手の顔を浮かべ、屈辱を胸に稽古に打ち込んだ。
憎きツンツン頭、スタン・エルロン。
奴との出会いは忘れもしない。
あの男は有ろう事か神聖なるコロセアムに女を連れ込み
……いや、コロセアムクィーンのねーちゃんは別だ、
まぁそんなこんなで彼奴は俺様を侮辱しやがったんで、
軽く捻り潰して世間の厳しさを教えてやろうとした訳だ。
……結果、惨敗。
初めて味わった、敗者の悔しさという感情。
……俺は努力した。
奴の使った流派の剣術を扱う傭兵共を何人も打ちのめし、
研究に研究を重ねた末、遂にその極意を掴み取ったのだ。
楽な道では無かったが、その時の高揚は計り知れないものだった。
そして……
今の俺様に敗北の理由は……無い。
奴との出会いは忘れもしない。
あの男は有ろう事か神聖なるコロセアムに女を連れ込み
……いや、コロセアムクィーンのねーちゃんは別だ、
まぁそんなこんなで彼奴は俺様を侮辱しやがったんで、
軽く捻り潰して世間の厳しさを教えてやろうとした訳だ。
……結果、惨敗。
初めて味わった、敗者の悔しさという感情。
……俺は努力した。
奴の使った流派の剣術を扱う傭兵共を何人も打ちのめし、
研究に研究を重ねた末、遂にその極意を掴み取ったのだ。
楽な道では無かったが、その時の高揚は計り知れないものだった。
そして……
今の俺様に敗北の理由は……無い。
ドサッ
クレスの身体は重力の赴くまま落下し、
地面に強か投げ出された。
地に臥せる少年に背を向けたまま、コングマンは吐き捨てるように云った。
「俺様が、チャンピオンよ……」
地面に強か投げ出された。
地に臥せる少年に背を向けたまま、コングマンは吐き捨てるように云った。
「俺様が、チャンピオンよ……」
「……クレスさん!」
つい今し方まで眠っていた少女が声を上げた。
クレスと呼ばれた少年は、何の反応も示さない。
コングマンは少女に詰め寄った。
「何だ、小娘……?
お前の様なヒョロっちい小娘、ひとひね……」
「クレスさんに、何をしたんですかッ!!」
彼の言葉を遮り、少女が吼えた。
見掛けに因らず生意気な小娘だ……コングマンは思う。
「よくもクレスさんを……許さないんだからッ……痛ッ……」
短刀を握り締め立ち上がった少女は、声にならない悲鳴を上げ、
再び力無く地面に座り込んでしまった。
彼は気付いた。
少女の肩に巻かれた、深紅に染まった布切れ。
そして彼は、少女への感情を改めた。
健気な小娘だ、と。
「お前、そんな身体でこの俺様が倒せると思ってるのか?
阿呆が。寝言は寝てから言いやがれ」
腹を抱える仕草を見せ、ケタケタと笑い少女をからかうコングマン。
おどけた態度とは裏腹に、圧力を掛ける様に睨みを利かせる。
これで、少しは自分に対し畏れを抱くだろう。
そう考えての行動だった。
つい今し方まで眠っていた少女が声を上げた。
クレスと呼ばれた少年は、何の反応も示さない。
コングマンは少女に詰め寄った。
「何だ、小娘……?
お前の様なヒョロっちい小娘、ひとひね……」
「クレスさんに、何をしたんですかッ!!」
彼の言葉を遮り、少女が吼えた。
見掛けに因らず生意気な小娘だ……コングマンは思う。
「よくもクレスさんを……許さないんだからッ……痛ッ……」
短刀を握り締め立ち上がった少女は、声にならない悲鳴を上げ、
再び力無く地面に座り込んでしまった。
彼は気付いた。
少女の肩に巻かれた、深紅に染まった布切れ。
そして彼は、少女への感情を改めた。
健気な小娘だ、と。
「お前、そんな身体でこの俺様が倒せると思ってるのか?
阿呆が。寝言は寝てから言いやがれ」
腹を抱える仕草を見せ、ケタケタと笑い少女をからかうコングマン。
おどけた態度とは裏腹に、圧力を掛ける様に睨みを利かせる。
これで、少しは自分に対し畏れを抱くだろう。
そう考えての行動だった。
……ところが、少女の剣幕は止まる様相を示さなかった。
「確かに……私なんかじゃ、貴方に叶わないかも知れない。
……でも、仲間を傷付けた貴方を許す訳にはいかないのッ!!」
啖呵を切り、少女は手にした短刀を仇目掛けて投げつけた。
彼は短刀を篭手で易々と叩き落とすと、地面に転げたそれを拾い上げ、クルリと弄ぶ。
「どうした? まさか、今のが『復讐』だなんて冗談はナシだぜ?」
挑発を聞きもせず、少女は呪文の詠唱に入っていた。
コングマンは更に少女へと歩み寄り、その顎から頬にかけてを鷲掴みにする。
顎を押さえられ詠唱をすることも能わず、少女は突き出された唇をパクパクと動かす他無かった。
少女はその手を必死に振り解くと、今度は打って変わって、諦めの表情で彼を見た。
「……分かりました、降参です。
もう抵抗はしませんから、好きにして下さい」
「確かに……私なんかじゃ、貴方に叶わないかも知れない。
……でも、仲間を傷付けた貴方を許す訳にはいかないのッ!!」
啖呵を切り、少女は手にした短刀を仇目掛けて投げつけた。
彼は短刀を篭手で易々と叩き落とすと、地面に転げたそれを拾い上げ、クルリと弄ぶ。
「どうした? まさか、今のが『復讐』だなんて冗談はナシだぜ?」
挑発を聞きもせず、少女は呪文の詠唱に入っていた。
コングマンは更に少女へと歩み寄り、その顎から頬にかけてを鷲掴みにする。
顎を押さえられ詠唱をすることも能わず、少女は突き出された唇をパクパクと動かす他無かった。
少女はその手を必死に振り解くと、今度は打って変わって、諦めの表情で彼を見た。
「……分かりました、降参です。
もう抵抗はしませんから、好きにして下さい」
──拍子抜け。
態度をガラリと変えた少女に覚えた感覚は、それだけだった。
つまらない。物足りない。
そう、彼は思う。
そして彼は、彼女の姿に何か奇異な感情を抱いている自分に気付いた。
態度をガラリと変えた少女に覚えた感覚は、それだけだった。
つまらない。物足りない。
そう、彼は思う。
そして彼は、彼女の姿に何か奇異な感情を抱いている自分に気付いた。
彼女は言葉を続けた。
「……だから、お願いです。
彼だけは……クレスさんだけは、見逃してあげて下さい!
あの人は、私の命の恩人なんです!」
遂には涙を流し懇願する少女。
胸の前で祈る様に手を組み、瞼を強く閉じて俯いた。
「馬鹿め。敗者に掛ける情なんざ………」
言い掛けて、止めた。
「……だから、お願いです。
彼だけは……クレスさんだけは、見逃してあげて下さい!
あの人は、私の命の恩人なんです!」
遂には涙を流し懇願する少女。
胸の前で祈る様に手を組み、瞼を強く閉じて俯いた。
「馬鹿め。敗者に掛ける情なんざ………」
言い掛けて、止めた。
──虐めたい。
もっと、もっとこの小娘を、汚辱にまみれさせてみたい。
虐めに虐め抜いて、絶望の底に叩き堕としてやりたい───
もっと、もっとこの小娘を、汚辱にまみれさせてみたい。
虐めに虐め抜いて、絶望の底に叩き堕としてやりたい───
渦巻く感情の正体に、彼は朧気ながら答えを見た。
──圧倒的に無力でありながら、狼に必死に食い下がる子羊。
それをひと呑みにあしらいもせず、その鋭利な爪と血に飢えた牙とでなぶり、眺める。
獲物は皿の上でひたすらに無駄な抵抗を繰り返し、疲弊してゆく。
やがては訪れる終焉の足音を、確かに聴きながら……──
それをひと呑みにあしらいもせず、その鋭利な爪と血に飢えた牙とでなぶり、眺める。
獲物は皿の上でひたすらに無駄な抵抗を繰り返し、疲弊してゆく。
やがては訪れる終焉の足音を、確かに聴きながら……──
世に『加虐趣向──サディズム』なる言葉があることなど彼は知りもしなかったが、
彼の目覚めたそれは紛う事無く、サディストの精神其のものだった。
彼の目覚めたそれは紛う事無く、サディストの精神其のものだった。
「……良いだろう、あの小僧は見逃してやる」
濁した回答を改め、薄笑いを浮かべるコングマン。
窮鼠は顔を上げ、不幸中の幸いを見た僅かな安堵を噛み締めた。
直後に訪れる、次なる災いをも顧みず。
「但し……条件がある」
「えっ!?───」
一瞬の出来事だった。
コングマンは少女の首筋に手を延ばすと、その付け根にある気絶功を突いた。
すると少女はがくりと首を垂らし、再度虚無の世界へと墜ちていった。
濁した回答を改め、薄笑いを浮かべるコングマン。
窮鼠は顔を上げ、不幸中の幸いを見た僅かな安堵を噛み締めた。
直後に訪れる、次なる災いをも顧みず。
「但し……条件がある」
「えっ!?───」
一瞬の出来事だった。
コングマンは少女の首筋に手を延ばすと、その付け根にある気絶功を突いた。
すると少女はがくりと首を垂らし、再度虚無の世界へと墜ちていった。
持て余した短刀をさらに遊ばせながら、少女の所持品を物色する。
中身を粗く確認するや否や、ほくそ笑むコングマン。
鞄には、今の彼に誂え向きな品が用意されていた。
罪深きを、その頑強な身を以て捕らえるべく造られた道具──手枷。
元来の働きをするならば、これを掛けられる立場に在るのは
彼自身に他ならないだろう。
だが、この『バトル・ロワイアル』という法の及びもしない
異常事態に措いてはその限りでは無い。
道具は、それを用いる者に因ってその姿を変える。
悪心に駆られた者に支配された枷は、無実の少女の両手を縛り、自由を奪い取った。
中身を粗く確認するや否や、ほくそ笑むコングマン。
鞄には、今の彼に誂え向きな品が用意されていた。
罪深きを、その頑強な身を以て捕らえるべく造られた道具──手枷。
元来の働きをするならば、これを掛けられる立場に在るのは
彼自身に他ならないだろう。
だが、この『バトル・ロワイアル』という法の及びもしない
異常事態に措いてはその限りでは無い。
道具は、それを用いる者に因ってその姿を変える。
悪心に駆られた者に支配された枷は、無実の少女の両手を縛り、自由を奪い取った。
虜とした少女を抱え、コングマンは倒れた剣士の元へ歩み寄る。
顔中を自らの吐き出した血に汚し、深い眠りに墜ちた敗者を、眼光鋭く見下す。
少年の寝顔は強か殴られて気を失ったとは思えない程穏やかで、
先程闘り合った際に見た引き吊った表情が嘘の様だった。
束の間、眠りという形でこの悪夢を忘れることが出来たからなのだろうか。
顔中を自らの吐き出した血に汚し、深い眠りに墜ちた敗者を、眼光鋭く見下す。
少年の寝顔は強か殴られて気を失ったとは思えない程穏やかで、
先程闘り合った際に見た引き吊った表情が嘘の様だった。
束の間、眠りという形でこの悪夢を忘れることが出来たからなのだろうか。
──こいつ……血迷いやがったな……
強者と闘うことを至上の生き甲斐とする彼にとって、このゲームに
別段不満を感じる事も無く、自信とも相俟って死への恐怖など
微塵も有りはしなかった。
しかし、だからと言って、死の不安を抱える人間の心情が理解出来ない程
非人間的である訳でも無い。
別段不満を感じる事も無く、自信とも相俟って死への恐怖など
微塵も有りはしなかった。
しかし、だからと言って、死の不安を抱える人間の心情が理解出来ない程
非人間的である訳でも無い。
そして感じていた。
少年が、このゲームに措いてどう在るべきなのかということに、迷いを抱いていた事を。
これ程までに迷いを持った剣を振るう者を目の当たりにすれば、
猛る闘志も萎えてしまうというもの。
闘いに措いては一切手抜かりを許さない彼ではあるが、
闘いを望まぬ者を倒すことが果たしてチャンピオン・シップに
乗っ取った事なのか、という疑問は、嘗てより抱いていたのである。
少年が、このゲームに措いてどう在るべきなのかということに、迷いを抱いていた事を。
これ程までに迷いを持った剣を振るう者を目の当たりにすれば、
猛る闘志も萎えてしまうというもの。
闘いに措いては一切手抜かりを許さない彼ではあるが、
闘いを望まぬ者を倒すことが果たしてチャンピオン・シップに
乗っ取った事なのか、という疑問は、嘗てより抱いていたのである。
彼は思う。
やはり、闘志に満ち溢れた者達と闘いたい
……否、闘うべきなのだ、と。
同時に、本来中々の手練を持つのであろうこの少年と全力を以てぶつかりたい
という強い欲求を、彼は再認識した。
……強者であるからこそ、判る。
この少年は、スタン・エルロンと遜色無い実力を秘めているのだ。
再戦を想像するだけで、血湧き肉躍る。
「立ち上がれ……そして、必ず俺を追って来やがれ。
そして次に逢うときが……お前の最期だ」
沸き起こる高揚を抑えつつ、コングマンは木立の闇へと消えていった。
やはり、闘志に満ち溢れた者達と闘いたい
……否、闘うべきなのだ、と。
同時に、本来中々の手練を持つのであろうこの少年と全力を以てぶつかりたい
という強い欲求を、彼は再認識した。
……強者であるからこそ、判る。
この少年は、スタン・エルロンと遜色無い実力を秘めているのだ。
再戦を想像するだけで、血湧き肉躍る。
「立ち上がれ……そして、必ず俺を追って来やがれ。
そして次に逢うときが……お前の最期だ」
沸き起こる高揚を抑えつつ、コングマンは木立の闇へと消えていった。
寂寥に包まれた森の中、一人残された若き剣豪の醜態。
傍らでは、死闘の末敵に一度も触れる事無く主の手から投げ出された剣が、哀愁を物語る。
さらに隣、人の生き血で花を咲かす妖刀として畏敬を込め『血桜』と呼ばれた忍刀が、
その意匠を冒涜するかの様に地に突き立てられていた。
刀身には、乱雑に千切られた紙切れが刺さっている。
紙にはいずれ目覚める彼に宛てた侵略者のメッセージが、殴り書きに記されていた。
傍らでは、死闘の末敵に一度も触れる事無く主の手から投げ出された剣が、哀愁を物語る。
さらに隣、人の生き血で花を咲かす妖刀として畏敬を込め『血桜』と呼ばれた忍刀が、
その意匠を冒涜するかの様に地に突き立てられていた。
刀身には、乱雑に千切られた紙切れが刺さっている。
紙にはいずれ目覚める彼に宛てた侵略者のメッセージが、殴り書きに記されていた。
果たし状
やっと起きたか!
くたばり損ないの負け犬野郎!
おまえの仲間の小娘はいただいていく
返して欲しけりゃ、北西のイーツ城まで一人で来やがれ
やっと起きたか!
くたばり損ないの負け犬野郎!
おまえの仲間の小娘はいただいていく
返して欲しけりゃ、北西のイーツ城まで一人で来やがれ
追伸
怖じ気づいたんなら、シッポ巻いて逃げたってかまわねえぞ
こいつは俺様が、たっぷり可愛がっておいてやるからな
あ ば よ ! ! !
チャンピオン、マイティ・コングマン
怖じ気づいたんなら、シッポ巻いて逃げたってかまわねえぞ
こいつは俺様が、たっぷり可愛がっておいてやるからな
あ ば よ ! ! !
チャンピオン、マイティ・コングマン
【クレス・アルベイン 生存確認】
状態:左手に銃創(止血)、TP消費(小)、腹部に痛み(殴られた箇所)
背面に軽度の打撲(落下に因る)、気絶
所持品:ダマスクスソード、バクショウダケ
基本行動方針:最後まで生き残る
第一行動方針:混迷(目覚めたときの書き手に一任)
現在位置:F3森
状態:左手に銃創(止血)、TP消費(小)、腹部に痛み(殴られた箇所)
背面に軽度の打撲(落下に因る)、気絶
所持品:ダマスクスソード、バクショウダケ
基本行動方針:最後まで生き残る
第一行動方針:混迷(目覚めたときの書き手に一任)
現在位置:F3森
【マイティ・コングマン 生存確認】
状態:HP半分、サディスティック
所持品:レアガントレット、セレスティマント、手枷の鍵
基本行動方針:闘志のある者と闘い、倒す(強弱不問)
第一行動方針:イーツ城でクレスを待ち、倒す
第二行動方針:出会った相手は倒す
第三行動方針:コレットを虐めて愉しむ
現在位置:F3からイーツ城へ移動中
状態:HP半分、サディスティック
所持品:レアガントレット、セレスティマント、手枷の鍵
基本行動方針:闘志のある者と闘い、倒す(強弱不問)
第一行動方針:イーツ城でクレスを待ち、倒す
第二行動方針:出会った相手は倒す
第三行動方針:コレットを虐めて愉しむ
現在位置:F3からイーツ城へ移動中
【コレット・ブルーネル 生存確認】
状態:右肩に銃創(止血)、発熱、気絶、後手に手枷
コングマンに担がれている
所持品:なし(コングマンにより鞄ごと没収)
基本行動方針:取り敢えず生き残る
第一行動方針:不明(目覚めたときの反応次第)
第二行動方針:仲間(Sキャラ及びクレスとサレ)との合流
現在位置:F3からイーツ城へ移動中
状態:右肩に銃創(止血)、発熱、気絶、後手に手枷
コングマンに担がれている
所持品:なし(コングマンにより鞄ごと没収)
基本行動方針:取り敢えず生き残る
第一行動方針:不明(目覚めたときの反応次第)
第二行動方針:仲間(Sキャラ及びクレスとサレ)との合流
現在位置:F3からイーツ城へ移動中