幻影回想録
「一体、ここで何が起こったんだ…。」
少年は其処を見て感嘆を洩らした。
ただ、海だけが静かだった。
少年は其処を見て感嘆を洩らした。
ただ、海だけが静かだった。
少年が第一の偵察地にたどり着いた時、そこは少年だけの森だった。
一人の青年を除いて。
少年の推測では既にこの森には誰も居ないはずだったのだが、
推測は所詮推測で、例外が紛れ込むことなどよくある話である。
例外たる当の青年――見るからにブレス系の出で立ちの青年は
ぬかるみに片足を絡め取られ四苦八苦していた。
(最近のブレス系は皆あんなに貧弱なんでしょうか…)
不正解。青年が一般晶霊術士以上に貧弱で、
少年の知るブレス系爪術士達があまりに屈強で尚且つ特殊だから。
(まあいいでしょう。あの様子じゃ村にたどり着けるか妖しいし、
危険な村にエスコートする理由も時間もありません。)
少年は音も無く先ほどまで居た木の枝から消えうせた。
聞こえるのはただ青年の情けない声ばかり。
一人の青年を除いて。
少年の推測では既にこの森には誰も居ないはずだったのだが、
推測は所詮推測で、例外が紛れ込むことなどよくある話である。
例外たる当の青年――見るからにブレス系の出で立ちの青年は
ぬかるみに片足を絡め取られ四苦八苦していた。
(最近のブレス系は皆あんなに貧弱なんでしょうか…)
不正解。青年が一般晶霊術士以上に貧弱で、
少年の知るブレス系爪術士達があまりに屈強で尚且つ特殊だから。
(まあいいでしょう。あの様子じゃ村にたどり着けるか妖しいし、
危険な村にエスコートする理由も時間もありません。)
少年は音も無く先ほどまで居た木の枝から消えうせた。
聞こえるのはただ青年の情けない声ばかり。
「ファラ~、リッドぉ~、無事で、いてくれ~。」
森の境目、村を一望できる予定観測点にたどり着いた時、少年は首を傾げた。
少年の予定では既に何らかのハプニングが繰り広げられているはずだったからだ。
しかし見ての通り其処にあるのは静寂の村、少年は疑問を禁じえない。
しかもハプニングならここから観測すれば十分だったはずだが、
ここまで静かだと距離がありすぎて情報が得られない。
かろうじて気配から人のいる家屋の目星は付けることが出来た。
(予定外ですが、ギリギリまで近づいてみますか。)
再び少年は走り出す、無論無音で。
少年の予定では既に何らかのハプニングが繰り広げられているはずだったからだ。
しかし見ての通り其処にあるのは静寂の村、少年は疑問を禁じえない。
しかもハプニングならここから観測すれば十分だったはずだが、
ここまで静かだと距離がありすぎて情報が得られない。
かろうじて気配から人のいる家屋の目星は付けることが出来た。
(予定外ですが、ギリギリまで近づいてみますか。)
再び少年は走り出す、無論無音で。
家屋まであと十数米といった所で少年は足を止める。これ以上は向こうに気付かれる
限界線、若い身空でありながら忍者としてほぼ完成した少年の感覚が警戒を強める。
手近な無人の家を障害物とし窓を覗き見る。顔は分からないが中に居たのは2人だとは
分かった。死角の関係で顔は判別できないが服装から一人は判別できた。
(モリスンさん、来てたのか。あっちの人は男性みたいだし…声の女性は何処に?
外か、或いは、もう…)
数秒、少年は目を閉じ、見知らぬ彼女のために黙祷を捧げる。何も知らない人間の
ささやかな自己満足。
(此方からじゃ食卓しか見えないな…裏から回って…ッ!!)
瞬時に少年は身を隠す。そして慎重に、確認をする。村の広場に来るまで気付かなかった
赤毛の青年を。自分の存在を悟られたかと、少年は苦無を取り出す。
しかし青年は面妖な面構えで少年のことなど知ったことかと言ったところだ。
誰に言うわけでもなく、青年は呟く。
「ファラ、済まねえな、間に合わなくて。折角お前が呼んでくれたってのに。」
少年はこの青年と声の少女の関係に確信する。理由などない。
「キールに会えたんだ。アイツももう直ぐこっちに…は無理か、アイツすっげえトロいし。」
このゲームによって引き裂かれた関係に少年は自身の知る兄妹をダブらせる。
「メルディはまだ見つかってねえけどよ、キールにもお前にも会えたんだ。
絶対見つかる。いや、ゼッテェ見つけ出す。だからよ…」
どうやらここにはまだ3人しかいないようだ。目的は達したと、無理矢理結論付ける。
「ファラ、後は俺に任せろ。」
青年の握り拳が強くなる。 何より青年の時間を侵してはならないを思う。
「こんな戦い許されてたまるか…俺はお前の信じた道を進むぜ。」
青年は空を見上げる。そこは雲一つない晴天。 その晴天に、少年は消えていった。
「あぁ…雨、降らねぇかな…」
青年の頬に一粒の雫が零れた。その雫だけは、青年だけの物だった。
限界線、若い身空でありながら忍者としてほぼ完成した少年の感覚が警戒を強める。
手近な無人の家を障害物とし窓を覗き見る。顔は分からないが中に居たのは2人だとは
分かった。死角の関係で顔は判別できないが服装から一人は判別できた。
(モリスンさん、来てたのか。あっちの人は男性みたいだし…声の女性は何処に?
外か、或いは、もう…)
数秒、少年は目を閉じ、見知らぬ彼女のために黙祷を捧げる。何も知らない人間の
ささやかな自己満足。
(此方からじゃ食卓しか見えないな…裏から回って…ッ!!)
瞬時に少年は身を隠す。そして慎重に、確認をする。村の広場に来るまで気付かなかった
赤毛の青年を。自分の存在を悟られたかと、少年は苦無を取り出す。
しかし青年は面妖な面構えで少年のことなど知ったことかと言ったところだ。
誰に言うわけでもなく、青年は呟く。
「ファラ、済まねえな、間に合わなくて。折角お前が呼んでくれたってのに。」
少年はこの青年と声の少女の関係に確信する。理由などない。
「キールに会えたんだ。アイツももう直ぐこっちに…は無理か、アイツすっげえトロいし。」
このゲームによって引き裂かれた関係に少年は自身の知る兄妹をダブらせる。
「メルディはまだ見つかってねえけどよ、キールにもお前にも会えたんだ。
絶対見つかる。いや、ゼッテェ見つけ出す。だからよ…」
どうやらここにはまだ3人しかいないようだ。目的は達したと、無理矢理結論付ける。
「ファラ、後は俺に任せろ。」
青年の握り拳が強くなる。 何より青年の時間を侵してはならないを思う。
「こんな戦い許されてたまるか…俺はお前の信じた道を進むぜ。」
青年は空を見上げる。そこは雲一つない晴天。 その晴天に、少年は消えていった。
「あぁ…雨、降らねぇかな…」
青年の頬に一粒の雫が零れた。その雫だけは、青年だけの物だった。
ナーバスになる気持ちを抑えつつ、北から入る形で少年は橋へ向かった。
万が一橋から人が来た場合直進するより気付かれにくいと判断したからだ。
出来れば大回りしたかったが禁止エリアのためC4ギリギリ北側を進むしかない。
(橋で遭遇したらどうするか…通り抜けるだけなら何とかなるか……ん!?)
橋が見えたところで少年は急ブレーキをかけ、足元の草むらに体を屈める。
少年が見たのは、とても不思議な一団。なんと言うのか、そう、家族のような
構成の一団。少年も仲間達の家族ごっこの輪に巻き込まれているからか
其処にいる集団をそのように見ていた。
(何処の世界でも弟が利発で兄の方は馬鹿っぽいものなんですね。それにしても…)
少年は目を父親と思しき男に向ける。そしてこの男は危険だと結論付けた。
一応鞘には収まっているようだが切れ味はあの青い凶戦士と互角、あるいはそれ以上だと
値踏みする。仮にあの男と戦った場合、万に一つも勝ち目は無いと認識する。
ましてやその他のものも一癖二癖ありそうな連中ばかり、過ぎ去ってくれるなら
それに越したことは無いと息を潜めてやり過ごすはずだった。
万が一橋から人が来た場合直進するより気付かれにくいと判断したからだ。
出来れば大回りしたかったが禁止エリアのためC4ギリギリ北側を進むしかない。
(橋で遭遇したらどうするか…通り抜けるだけなら何とかなるか……ん!?)
橋が見えたところで少年は急ブレーキをかけ、足元の草むらに体を屈める。
少年が見たのは、とても不思議な一団。なんと言うのか、そう、家族のような
構成の一団。少年も仲間達の家族ごっこの輪に巻き込まれているからか
其処にいる集団をそのように見ていた。
(何処の世界でも弟が利発で兄の方は馬鹿っぽいものなんですね。それにしても…)
少年は目を父親と思しき男に向ける。そしてこの男は危険だと結論付けた。
一応鞘には収まっているようだが切れ味はあの青い凶戦士と互角、あるいはそれ以上だと
値踏みする。仮にあの男と戦った場合、万に一つも勝ち目は無いと認識する。
ましてやその他のものも一癖二癖ありそうな連中ばかり、過ぎ去ってくれるなら
それに越したことは無いと息を潜めてやり過ごすはずだった。
――――キィィィィィン―――
突如響いた高音。音は微かな上一瞬だったが、予定外の自体に少年の緊張は一気に高まる。
内心パニックになりながら少年は音源を探す。どうやらデイバックの中、
剣士の形見の青い剣が出所だったようだ。何故この剣が?そもそもこれは本当に音なのか?
と考える暇は無かった。すかさず一団を再確認する。此方を見ていたのは2人、父親と、長兄。
特にオールバックの長兄の視線は此方を正確に射抜いている、ような気がする。
そして真正面から見て、初めて彼の武器が2本の木刀であることに気付いた。
しかしそれを探し人の可能性に直結させる余裕はその時の少年には無かった。
沈黙と静寂が空間を支配する。耳を澄まさなくとも心音が聞こえるかのような、
何秒とも何時間とも取れる均衡は、向こうから崩れた。どうやら次男が2人を急かしたようだ。
その後一団が安全圏に行くまで彼は動けなかった。
ようやく立ち上がったときは少年の顔は冷汗に濡れていた。心臓の鼓動を聞きながら
走ったらまた彼らに見つかると思ったのか、少年はトボトボと歩いていく。
内心パニックになりながら少年は音源を探す。どうやらデイバックの中、
剣士の形見の青い剣が出所だったようだ。何故この剣が?そもそもこれは本当に音なのか?
と考える暇は無かった。すかさず一団を再確認する。此方を見ていたのは2人、父親と、長兄。
特にオールバックの長兄の視線は此方を正確に射抜いている、ような気がする。
そして真正面から見て、初めて彼の武器が2本の木刀であることに気付いた。
しかしそれを探し人の可能性に直結させる余裕はその時の少年には無かった。
沈黙と静寂が空間を支配する。耳を澄まさなくとも心音が聞こえるかのような、
何秒とも何時間とも取れる均衡は、向こうから崩れた。どうやら次男が2人を急かしたようだ。
その後一団が安全圏に行くまで彼は動けなかった。
ようやく立ち上がったときは少年の顔は冷汗に濡れていた。心臓の鼓動を聞きながら
走ったらまた彼らに見つかると思ったのか、少年はトボトボと歩いていく。
「やっぱ気のせいだったか。聞こえたような気がしたんだけどなあ。ダオスもそう思うだろ?」
「いや…何も聞こえはしなかったな。(しかしあの微かに湧き上がったマナ、あれは?)」
「そっか、残念だな。」
「そういう割にはやけに嬉しそうではないか。男がそのような装飾品を見てニヤつくのは
あまり良い趣味とは言えんな。娘が背中から落ちそうだぞ。」
「おっとっと…うっせーな、この指輪は特別なんだよ。さっき親父達の声を聞いた気がしたから、
父さんから貰ったこれを思い出しちまってさ。あ、ひょっとしたら父さんなら
あんたと良い勝負できるかもしんねーな。性格も少し似てるし。」
「もしその男がマーテルに徒なすなら、私も全力で「ああ、それはないない。」
「…なぜだ。」
「俺の父さんだから、って言うのは冗談で、マーテルとは知り合いなんだよ。
あそこのミトスも「僕が何?」おうわッ!!ビックリさせんじゃねーよ!!」
「あんた達がノロノロ歩いてるから呼びに来たんだよ。姉さまを先に行かせるなんて
何考えてんの?」
「おっ、そりゃ悪い。ダオス、続きは村に着いてからにしようぜ。」
「…フン。」
「いや…何も聞こえはしなかったな。(しかしあの微かに湧き上がったマナ、あれは?)」
「そっか、残念だな。」
「そういう割にはやけに嬉しそうではないか。男がそのような装飾品を見てニヤつくのは
あまり良い趣味とは言えんな。娘が背中から落ちそうだぞ。」
「おっとっと…うっせーな、この指輪は特別なんだよ。さっき親父達の声を聞いた気がしたから、
父さんから貰ったこれを思い出しちまってさ。あ、ひょっとしたら父さんなら
あんたと良い勝負できるかもしんねーな。性格も少し似てるし。」
「もしその男がマーテルに徒なすなら、私も全力で「ああ、それはないない。」
「…なぜだ。」
「俺の父さんだから、って言うのは冗談で、マーテルとは知り合いなんだよ。
あそこのミトスも「僕が何?」おうわッ!!ビックリさせんじゃねーよ!!」
「あんた達がノロノロ歩いてるから呼びに来たんだよ。姉さまを先に行かせるなんて
何考えてんの?」
「おっ、そりゃ悪い。ダオス、続きは村に着いてからにしようぜ。」
「…フン。」
そんな家族の団欒。村に着くのはもう少し先のこと。
「一体、ここで何が起こったんだ…。」
少年は其処を見て感嘆を洩らす。
ただ、海だけが静かにそこに存在する。
橋の中程に穴、正確には窪みがある。その周りには崩れた手摺。
ここもあの城のように崩れるのかと一瞬心配したが、見た限り支柱はしっかり生きているので
崩れる危険性は無いようだ。しかし見た目には派手に壊れている。
あの一団がやったのか、戦ったのは父親か、それなら相手は?死体は?
疑問はあるが分からない事だらけだ。早くここを立ち去るべきなのだが
思考が状況の整理を優先する。考えること数分、そして行動に移す。
少年は其処を見て感嘆を洩らす。
ただ、海だけが静かにそこに存在する。
橋の中程に穴、正確には窪みがある。その周りには崩れた手摺。
ここもあの城のように崩れるのかと一瞬心配したが、見た限り支柱はしっかり生きているので
崩れる危険性は無いようだ。しかし見た目には派手に壊れている。
あの一団がやったのか、戦ったのは父親か、それなら相手は?死体は?
疑問はあるが分からない事だらけだ。早くここを立ち去るべきなのだが
思考が状況の整理を優先する。考えること数分、そして行動に移す。
「鏡殺。」
爪が光ったと思った瞬間に少年は影も形も消え失せる。
何処に向かったかも分からない。
時刻はもう直ぐ、正午になろうとしていた。
何処に向かったかも分からない。
時刻はもう直ぐ、正午になろうとしていた。
【ジェイ 生存確認】
状態:頸部に切傷 全身にあざ
所持品:忍刀・雷電 ダーツセット クナイ(三枚) ヴォーパルソード
第一行動方針:目的地に迅速に辿り着く
第二行動方針:クラトスの息子に剣を渡す
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
現在位置:C4橋→???
状態:頸部に切傷 全身にあざ
所持品:忍刀・雷電 ダーツセット クナイ(三枚) ヴォーパルソード
第一行動方針:目的地に迅速に辿り着く
第二行動方針:クラトスの息子に剣を渡す
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
現在位置:C4橋→???