一筋の轍 一筋の光
周りに光となるモノが一切無いこの平野の中、一つだけ灯が灯っている。
キールは先程の放送を聞いてメモをし、順に考えるべきことを頭に巡らせた。
「ジェイはまだ帰ってきていないから、行動を開始するにしてもその後になるなる…ロイド、大丈夫か?」
向かいに座るロイドに心配げに声をかける。だが逆にロイドに真っ直ぐに見据えられ、キールはそれが杞憂だと察した。
(もっと取り乱すと思っていたけど、どうやら心が強いみたいだな)
キールは一人思って再びメモに目をやる。おそらくロイドの事は、彼自身がけじめをつけるだろう。
放送で呼ばれた名に、その者はいた。
紛れも無いロイドの父であるという男、クラトス・アウリオン。キールたちが行動する要になっていた者だ。
そもそもロイドの言い分によってE2城に向かうと決まっていた行動方針が、先程の放送で全てが崩れ去ってしまった。
つまりキールたちに今課せられることは、今後の方針。
夜という状況下を踏まえた選択をしなければならなかった。
「ジェイが帰ってきてから話し合うつもりだが、大方の方針だけでも決めておこう。後々話し合いがスムーズにいくだろう」
キールは先程の放送を聞いてメモをし、順に考えるべきことを頭に巡らせた。
「ジェイはまだ帰ってきていないから、行動を開始するにしてもその後になるなる…ロイド、大丈夫か?」
向かいに座るロイドに心配げに声をかける。だが逆にロイドに真っ直ぐに見据えられ、キールはそれが杞憂だと察した。
(もっと取り乱すと思っていたけど、どうやら心が強いみたいだな)
キールは一人思って再びメモに目をやる。おそらくロイドの事は、彼自身がけじめをつけるだろう。
放送で呼ばれた名に、その者はいた。
紛れも無いロイドの父であるという男、クラトス・アウリオン。キールたちが行動する要になっていた者だ。
そもそもロイドの言い分によってE2城に向かうと決まっていた行動方針が、先程の放送で全てが崩れ去ってしまった。
つまりキールたちに今課せられることは、今後の方針。
夜という状況下を踏まえた選択をしなければならなかった。
「ジェイが帰ってきてから話し合うつもりだが、大方の方針だけでも決めておこう。後々話し合いがスムーズにいくだろう」
唐突に、リッドが口を開く。
「おい、キール。このバルバトスって奴とマグニスって奴…」
その声に驚きの色が混じっているのをキールは少なくも感じた。
言われるやいなやキールはその二人の名に目を通す。それから名簿を取り出し、その人物を確認した。
「この青いウェーブの男と赤いドレッドの男か…お前から話には聞いていたが、まさかこうも早く脱落するなんて」
「ああ、こいつらの漂わせたオーラは半端じゃなかった。にも拘らず、こいつらは死んだんだ」
確かに、リッドは以前この二人を垣間見ている。その時に抱いた恐怖感、また圧迫感は凄まじいものが感じられた。
だがその二人は死んだ。退場通告を余儀なくされたのだ。
その事実に三人は驚愕する…しかしその時間も数秒程。
「命なんて尊くて曖昧なものだ…生物なんていつかは死ぬ。人間も同じだ」
リッドがメモを見つめながら呟く。その声は段々に強い意志を見せていた。
「俺は猟師だから、生きるために殺して、その死を生に活かす。それが自然の摂理だと俺は思っているからな」
その言葉にキールとロイドはただ耳を傾ける。リッドの意志を確かに聞く。
「だからこそ、こんな理不尽な死は認めねぇ。許すとか許さないじゃない。存在しちゃいけねぇものなんだ」
身近に弱肉強食を経験してきたその男の言葉は、確かにこの暗闇の空間に響いた。
知らずに、ロイドは頷く。友が死に、そして父が死んだ。そんな事柄が当たり前のように行われている世界など、果たして存在していいものだろうか。
考えるまでも無いことをロイドは頭から切り離す。答えは決まっている。
もしそんな世界を認めてみろ。仕方ないと諦めてみろ。それこそクラトスから…実の父から何を言われるか分かったモンじゃない。
より一層心に火を灯らせたロイドはキールが決めるであろうこれからのことについて耳を傾けることにした。
「おい、キール。このバルバトスって奴とマグニスって奴…」
その声に驚きの色が混じっているのをキールは少なくも感じた。
言われるやいなやキールはその二人の名に目を通す。それから名簿を取り出し、その人物を確認した。
「この青いウェーブの男と赤いドレッドの男か…お前から話には聞いていたが、まさかこうも早く脱落するなんて」
「ああ、こいつらの漂わせたオーラは半端じゃなかった。にも拘らず、こいつらは死んだんだ」
確かに、リッドは以前この二人を垣間見ている。その時に抱いた恐怖感、また圧迫感は凄まじいものが感じられた。
だがその二人は死んだ。退場通告を余儀なくされたのだ。
その事実に三人は驚愕する…しかしその時間も数秒程。
「命なんて尊くて曖昧なものだ…生物なんていつかは死ぬ。人間も同じだ」
リッドがメモを見つめながら呟く。その声は段々に強い意志を見せていた。
「俺は猟師だから、生きるために殺して、その死を生に活かす。それが自然の摂理だと俺は思っているからな」
その言葉にキールとロイドはただ耳を傾ける。リッドの意志を確かに聞く。
「だからこそ、こんな理不尽な死は認めねぇ。許すとか許さないじゃない。存在しちゃいけねぇものなんだ」
身近に弱肉強食を経験してきたその男の言葉は、確かにこの暗闇の空間に響いた。
知らずに、ロイドは頷く。友が死に、そして父が死んだ。そんな事柄が当たり前のように行われている世界など、果たして存在していいものだろうか。
考えるまでも無いことをロイドは頭から切り離す。答えは決まっている。
もしそんな世界を認めてみろ。仕方ないと諦めてみろ。それこそクラトスから…実の父から何を言われるか分かったモンじゃない。
より一層心に火を灯らせたロイドはキールが決めるであろうこれからのことについて耳を傾けることにした。
心に火を灯した青年はもう一人いた。
その青年リッドは放送を聞いてからしばしの瞑想。彼がこの時何を思っていたのかは、彼自身しか分かり得ないことだ。
一人の少女に想いを馳せた後、リッドはゆっくりと目を開きあらためてキールの話に参加する。
「ジョニーが死んだのはこの目で見た。助けられなかったのは悔しいけど、あいつの分の思いも背負っていく」
真剣な眼差しで話すリッドを見てキールは頷く。そして今度はもう一人の遭遇者に的を当てた。
「しかしモリスンさんが死んだのは僕としても痛手だ。彼は今後大いなる力になってくれるだろうと踏んでいたんだが…」
手を顎に持っていって考える仕草をする。そのあとやはりというような面持ちでリッドとロイドに顔を向けた。
「僕達に必要なのは情報と協力者だ。前者は以前話した通りこのまま南下して城を目指す。そこを拠点にしているものが、恐らくいるはずだからな」
「待てよ、もしその拠点にしてる奴がヤバい奴だったらどうするんだ?」
リッドは律儀に手を上げてから質問をする。キールもそれを待っていたかのように答えを返した。
「本当にヤバイ奴なら昨日のファラの放送を聞いてC3村で顔を合わせているハズだ。殺戮者や快楽主義者にとって、言いたくは無いがファラのあの行動は絶好のカモになっただろう。城にいるのはおそらく頭の切れる奴か、単に村へ向かおうとしたが間に合わなかった奴のどれかだ」
ふむふむとリッドは頷く。話が通じるときは簡単に通じるこいつの性格が少し羨ましいとキールは思った。
「それじゃあジェイが帰ってきてから移動を始めよう。双眼鏡で城を確認したらそこからは慎重に。暗闇だとあっちも警戒心が強まっているかもしれないからな」
リッドとロイドはそれぞれ返事をして会議は一旦終了を迎えた。
ロイドは内心この行動予定にホッとしていた。
というのも確かに父は死んだが、せめてその場所で弔いの一つもしたかったからである。
知らずリッドの傍にあるヴォーパルソードを見つめる。
少しだけ哀に浸ってもいいだろ?
誰にでもなく問いかけ、ロイドは二つの月が浮かぶ夜空を見上げた。
その青年リッドは放送を聞いてからしばしの瞑想。彼がこの時何を思っていたのかは、彼自身しか分かり得ないことだ。
一人の少女に想いを馳せた後、リッドはゆっくりと目を開きあらためてキールの話に参加する。
「ジョニーが死んだのはこの目で見た。助けられなかったのは悔しいけど、あいつの分の思いも背負っていく」
真剣な眼差しで話すリッドを見てキールは頷く。そして今度はもう一人の遭遇者に的を当てた。
「しかしモリスンさんが死んだのは僕としても痛手だ。彼は今後大いなる力になってくれるだろうと踏んでいたんだが…」
手を顎に持っていって考える仕草をする。そのあとやはりというような面持ちでリッドとロイドに顔を向けた。
「僕達に必要なのは情報と協力者だ。前者は以前話した通りこのまま南下して城を目指す。そこを拠点にしているものが、恐らくいるはずだからな」
「待てよ、もしその拠点にしてる奴がヤバい奴だったらどうするんだ?」
リッドは律儀に手を上げてから質問をする。キールもそれを待っていたかのように答えを返した。
「本当にヤバイ奴なら昨日のファラの放送を聞いてC3村で顔を合わせているハズだ。殺戮者や快楽主義者にとって、言いたくは無いがファラのあの行動は絶好のカモになっただろう。城にいるのはおそらく頭の切れる奴か、単に村へ向かおうとしたが間に合わなかった奴のどれかだ」
ふむふむとリッドは頷く。話が通じるときは簡単に通じるこいつの性格が少し羨ましいとキールは思った。
「それじゃあジェイが帰ってきてから移動を始めよう。双眼鏡で城を確認したらそこからは慎重に。暗闇だとあっちも警戒心が強まっているかもしれないからな」
リッドとロイドはそれぞれ返事をして会議は一旦終了を迎えた。
ロイドは内心この行動予定にホッとしていた。
というのも確かに父は死んだが、せめてその場所で弔いの一つもしたかったからである。
知らずリッドの傍にあるヴォーパルソードを見つめる。
少しだけ哀に浸ってもいいだろ?
誰にでもなく問いかけ、ロイドは二つの月が浮かぶ夜空を見上げた。
「リッド、怪我は大丈夫か」
「怪我ってほどでも無ぇけど、少し体がだるいくらいだな」
キールは幼馴染の容態を心配して近寄るが、リッドの「なんだよらしくない」の一言でその行動はストップした。
「ジェイに殴られたとこも痛くはねぇし、あれは殴られたっていうよりも弾かれたって感じだな」
キールはその言葉だけに耳を傾けてふてくされながら返す。
「あの妙な術については後ほどジェイの口から聞く必要があるな。少なくともこちら側の戦力は知りうるだけ知っておきたい」
「俺も、お前たちの力とかは知っときたいな。いざって時に連携が取れなきゃ不便だろ」
ロイドが顔を向けて二人に話す。キールはもっともだと言ってまたも考える仕草をする。
「だが口だけでは伝えにくいな…晶霊術についてなら、この世界に存在する大源(マナ)との相互性及び関係性とそのために発生する第六元素の」
「早い話が俺達の強さを知りたいんだろ?だったら手っ取り早く…」
リッドは言って氷の剣、ヴォーパルソードを手に取り立ち上がり
「手合わせ願うぜロイド」
その剣を高々と掲げ上げた。
ロイドもポンと手を叩き、顔に覇気を戻して
「いいなそれ。俺も難しい説明とかは苦手なんだよなぁ。頭で無理なら体で覚えろってね」
言って対の剣、ムメイブレードを手に取り立ち上がる。
キールは自分の説明が中断させられたのと、体力馬鹿二人の面倒を見なければならないことで頭を抱える。
「もういい好きにしろ。だがやるなら西の海岸沿いでやってきてくれ。ここじゃ音が響いて回りに位置が知らされてしまう」
二人は元気よく「分かった!」と返事をした。リッドに至っては倦怠感はどうしたとツッコミたくなるほどの元気さが見えた。
だが、キールには分かる。その内に秘められた見えない黒い傷の溜まりを。
こんな色々な別世界の大源が混合された中で真の極光を顕現させたのだ。知識的にリッドの容態は嫌と言うほどキールにはわかってしまう。
「リッドはあまり無茶をするな。自覚の無い傷が確実に溜まっている。くれぐれも手合わせで極光術は使うなよ」
聞きながら大袈裟なとリッドは思うが自分でも気付かない傷と言う言葉が頭をよぎっって承諾の意を示す。。
「それから出発時間を深夜に変更する。少しでも睡眠は取っておいた方がいい。手合わせも短時間で帰ってきてくれ。最長で1時間、午前3時までに帰ってこなかったら死ぬことになるからな。これ以上は待たないぞ。ジェイには僕から話をしておく」
キールはまるで遠足の朝に忘れ物チェックをするお母さんのようにきびきびと事項を述べていく。
(リッドもロイドもこの話に飽きていることは言うまでも無い)
「怪我ってほどでも無ぇけど、少し体がだるいくらいだな」
キールは幼馴染の容態を心配して近寄るが、リッドの「なんだよらしくない」の一言でその行動はストップした。
「ジェイに殴られたとこも痛くはねぇし、あれは殴られたっていうよりも弾かれたって感じだな」
キールはその言葉だけに耳を傾けてふてくされながら返す。
「あの妙な術については後ほどジェイの口から聞く必要があるな。少なくともこちら側の戦力は知りうるだけ知っておきたい」
「俺も、お前たちの力とかは知っときたいな。いざって時に連携が取れなきゃ不便だろ」
ロイドが顔を向けて二人に話す。キールはもっともだと言ってまたも考える仕草をする。
「だが口だけでは伝えにくいな…晶霊術についてなら、この世界に存在する大源(マナ)との相互性及び関係性とそのために発生する第六元素の」
「早い話が俺達の強さを知りたいんだろ?だったら手っ取り早く…」
リッドは言って氷の剣、ヴォーパルソードを手に取り立ち上がり
「手合わせ願うぜロイド」
その剣を高々と掲げ上げた。
ロイドもポンと手を叩き、顔に覇気を戻して
「いいなそれ。俺も難しい説明とかは苦手なんだよなぁ。頭で無理なら体で覚えろってね」
言って対の剣、ムメイブレードを手に取り立ち上がる。
キールは自分の説明が中断させられたのと、体力馬鹿二人の面倒を見なければならないことで頭を抱える。
「もういい好きにしろ。だがやるなら西の海岸沿いでやってきてくれ。ここじゃ音が響いて回りに位置が知らされてしまう」
二人は元気よく「分かった!」と返事をした。リッドに至っては倦怠感はどうしたとツッコミたくなるほどの元気さが見えた。
だが、キールには分かる。その内に秘められた見えない黒い傷の溜まりを。
こんな色々な別世界の大源が混合された中で真の極光を顕現させたのだ。知識的にリッドの容態は嫌と言うほどキールにはわかってしまう。
「リッドはあまり無茶をするな。自覚の無い傷が確実に溜まっている。くれぐれも手合わせで極光術は使うなよ」
聞きながら大袈裟なとリッドは思うが自分でも気付かない傷と言う言葉が頭をよぎっって承諾の意を示す。。
「それから出発時間を深夜に変更する。少しでも睡眠は取っておいた方がいい。手合わせも短時間で帰ってきてくれ。最長で1時間、午前3時までに帰ってこなかったら死ぬことになるからな。これ以上は待たないぞ。ジェイには僕から話をしておく」
キールはまるで遠足の朝に忘れ物チェックをするお母さんのようにきびきびと事項を述べていく。
(リッドもロイドもこの話に飽きていることは言うまでも無い)
二人が行くのと入れ替わりにジェイが帰ってきた。
キールはまず今後の行動について話し、そのあと二人のことを話した。
「いいんじゃないですか。とりあえず僕ももっと情報を集めたいですし、城に向かうという選択は結構賛成ですね」
暗闇の中を見つめる。その方角は確実に南。
「まぁ、それに伴う危険性は覚悟の上ですが」
「うむ、そのための僕達パーティ編成だ。あいつらには頑張ってもらわないとな」
キールは自分の報告が終わるのを確認して次にジェイの言葉を待つ。
だがジェイは重い思惑で地面を見つめるだけ。流石にキールはその姿を見て心配になってしまった。
「どうした?偵察で何かあったのか」
問いにジェイはゆっくりと顔を上げる。今度はジェイが報告する番となった。
「実は…」
キールはまず今後の行動について話し、そのあと二人のことを話した。
「いいんじゃないですか。とりあえず僕ももっと情報を集めたいですし、城に向かうという選択は結構賛成ですね」
暗闇の中を見つめる。その方角は確実に南。
「まぁ、それに伴う危険性は覚悟の上ですが」
「うむ、そのための僕達パーティ編成だ。あいつらには頑張ってもらわないとな」
キールは自分の報告が終わるのを確認して次にジェイの言葉を待つ。
だがジェイは重い思惑で地面を見つめるだけ。流石にキールはその姿を見て心配になってしまった。
「どうした?偵察で何かあったのか」
問いにジェイはゆっくりと顔を上げる。今度はジェイが報告する番となった。
「実は…」
「そうか…第三者が」
「ええ、これは僕が推測するまでも無く、おそらくキールさんも今の話を聞いて犯人が割り出せたんじゃないでしょうか」
ジェイはキールにあのC3村の、まだ推測でしかないが大体の真相を述べた。
ジェイは地面に広げられた地図、その横に開かれた名簿の中の人物を一人指差す。
「あの事件の首謀者は間違いなくこの男、デミテルです」
キールもその人物を見る。珍しい髪の色をした男をしかと目に焼き付けておく。
「まさかあの村の皹(ひび)を見つけ、機を逃さずにあの一連の流れを作って見せた…」
キールは顔を上げて緩やかに灯るランプを見つめる。
「成る程、一筋縄じゃいかなそうだ」
「ええ。もしこのゲームを終わらせたいのなら、この男とは必ずどこかでぶつかり合うでしょう。それもガチンコの勝負なんて生温いものではなく…」
「まさに戦争の領域だな」
知恵と知恵のぶつかり合い。一歩間違えば味方すらも巻き込んでしまうであろう戦術の取り組合。
その戦い方にこの男は群を抜いて優れているだろう。
加えて、あの村での惨劇を組み立て、結果成功に収めるには必ずしも手駒がいる。
統率力、この力を持つものは戦いの中で一番の脅威となるもの。
キールには戦争の経験など無い。知識で知るには書物に書かれた歴史程度の物でしかない。
しかも自身が学んだのは戦争の『歴史』というだけの学問の枠に過ぎない。大昔のセレスティアとの戦争、そしてセイファートの伝説。
それが現代に必要だとはまさかキールは思いもしなかったのである。彼はインフェリアの統制制度を心から信用しきっていたのだから。
だが…デミトルという男に対してなら、こちらも全力でいかせてもらおう。
キールはジェイに顔を向けて今一度二人の会議を開く。
「ジェイ、君は確か戦争の経験があると言っていたな」
聞かれてジェイは素直に頷き、返答。
「ええ、以前にある国と一悶着ありまして、その国の王子と戦うはめになりました」
ソウガ砲を奪うために遺跡船に乗り込んできたクルザンド王統国独立師団長ヴァーツラフ・ボラド。
ジェイは一度この争いに足を向けている。それも作戦の組み立て、及び指示側の立場として。
そう、この経験の差は絶大だ。
おそらくこの島にいる者で戦争自体を経験したものは少なくはないだろう。
キールは知りもしないが、現に天地戦争やヒューマとガジュマ間の争い、ハーフエルフとの争いなどが起こっているのも事実。
だがその中で、戦況を操作したものがいるだろうか。少なくともキールはその数少ない参謀としての人物にジェイもその数に入れていた。
「僕だけではとても手におえない状況下にある。ジェイ、君がいたことはこちらにとって大きな力となるハズだ」
キールはもう一度名簿にあるデミテルに目を下して笑みを浮かべる。
「僕の知識と君の参謀。いいだろう、あの村での仕返し、目にものみせてやる」
キールは自分側の戦力の大きさをあらためて認識した。
極光の輝きを持つ男、膨大な知識と知恵を持つ男、統率指揮に秀でた男、時空剣を秘める男。
「僕たちのメンバーは間違いなくこのゲームにとってのジョーカーになるハズだ。他の勢力と合わせればそれも増すはず…」
「ふぅ…ただの華奢な学生かと思っていましたが、あなたかなり恐ろしいことを考えますね」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
そうして鞄に道具一式をしまって二人は一段落をした。
「ええ、これは僕が推測するまでも無く、おそらくキールさんも今の話を聞いて犯人が割り出せたんじゃないでしょうか」
ジェイはキールにあのC3村の、まだ推測でしかないが大体の真相を述べた。
ジェイは地面に広げられた地図、その横に開かれた名簿の中の人物を一人指差す。
「あの事件の首謀者は間違いなくこの男、デミテルです」
キールもその人物を見る。珍しい髪の色をした男をしかと目に焼き付けておく。
「まさかあの村の皹(ひび)を見つけ、機を逃さずにあの一連の流れを作って見せた…」
キールは顔を上げて緩やかに灯るランプを見つめる。
「成る程、一筋縄じゃいかなそうだ」
「ええ。もしこのゲームを終わらせたいのなら、この男とは必ずどこかでぶつかり合うでしょう。それもガチンコの勝負なんて生温いものではなく…」
「まさに戦争の領域だな」
知恵と知恵のぶつかり合い。一歩間違えば味方すらも巻き込んでしまうであろう戦術の取り組合。
その戦い方にこの男は群を抜いて優れているだろう。
加えて、あの村での惨劇を組み立て、結果成功に収めるには必ずしも手駒がいる。
統率力、この力を持つものは戦いの中で一番の脅威となるもの。
キールには戦争の経験など無い。知識で知るには書物に書かれた歴史程度の物でしかない。
しかも自身が学んだのは戦争の『歴史』というだけの学問の枠に過ぎない。大昔のセレスティアとの戦争、そしてセイファートの伝説。
それが現代に必要だとはまさかキールは思いもしなかったのである。彼はインフェリアの統制制度を心から信用しきっていたのだから。
だが…デミトルという男に対してなら、こちらも全力でいかせてもらおう。
キールはジェイに顔を向けて今一度二人の会議を開く。
「ジェイ、君は確か戦争の経験があると言っていたな」
聞かれてジェイは素直に頷き、返答。
「ええ、以前にある国と一悶着ありまして、その国の王子と戦うはめになりました」
ソウガ砲を奪うために遺跡船に乗り込んできたクルザンド王統国独立師団長ヴァーツラフ・ボラド。
ジェイは一度この争いに足を向けている。それも作戦の組み立て、及び指示側の立場として。
そう、この経験の差は絶大だ。
おそらくこの島にいる者で戦争自体を経験したものは少なくはないだろう。
キールは知りもしないが、現に天地戦争やヒューマとガジュマ間の争い、ハーフエルフとの争いなどが起こっているのも事実。
だがその中で、戦況を操作したものがいるだろうか。少なくともキールはその数少ない参謀としての人物にジェイもその数に入れていた。
「僕だけではとても手におえない状況下にある。ジェイ、君がいたことはこちらにとって大きな力となるハズだ」
キールはもう一度名簿にあるデミテルに目を下して笑みを浮かべる。
「僕の知識と君の参謀。いいだろう、あの村での仕返し、目にものみせてやる」
キールは自分側の戦力の大きさをあらためて認識した。
極光の輝きを持つ男、膨大な知識と知恵を持つ男、統率指揮に秀でた男、時空剣を秘める男。
「僕たちのメンバーは間違いなくこのゲームにとってのジョーカーになるハズだ。他の勢力と合わせればそれも増すはず…」
「ふぅ…ただの華奢な学生かと思っていましたが、あなたかなり恐ろしいことを考えますね」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
そうして鞄に道具一式をしまって二人は一段落をした。
だがキールはもう一つ、ジェイに問い質すことがあった。
「ジェイ、先程リッドを殴った件だが…」
ジェイは言われて頬を掻く仕草をする。
「あれですか…確かに行為的には強制的ではありましたが、ああでもしないと聞いてくれそうになかったもので」
「いや、別に咎めるつもりは無い。現にあいつは自分の疲れが分かってなかったみたいだったからな…僕が聞きたいのは」
キールは一度先刻の光景と、その後のリッドの証言を頭に思い浮かべる。
「君のあの技は何だ?こちらの戦力は出来る限り知っておきたい」
ジェイはその質問に躊躇うことなくその技―クライマックスモードの説明をする。
「あれはクライマックスモードと言いまして、一定の範囲をソウガフィールドと呼ばれる次元に変換させることができます。そのフィールドではソウガの恩恵を受けている者だけが行動を許可されるんです」
キールは一つの単語、「ソウガ」を耳にして疑問を抱く。これも別世界の断りなのかと思い、それを胸に留めておいた。
「ソウガの恩恵は一般的に爪術を扱う者に限られてきます。今現在、この島で爪術を使えるのは、僕を除いてあと一人。言うならばクライマックスモードは今の参加者にとって絶対的な『拘束』の力を持っているんです」
一通り説明し終えたジェイは少しだけ息を吐き、今度はキールの見解を聞く体勢に入る。
少なくともジェイは、キールのこの頭の切れの良さを認めていた。一を聞いて十を知る者なのだとジェイもまた理解していた。
案の定、キールは自らの見解をジェイに話し出す。
「つまりそのクライマックスモードとやらを発動させれば、ソウガの恩恵を受けていない者、この島のほとんどの参加者は動けなくなるということか。だがおそらくそれは…」
ジェイはキールの言いたいことを読み取り、力弱く頷く。
「ええ…察しの通り、その反動はかなりのものです。現に先程リッドさんを殴った時にも発動させましたが、それは一瞬でしかありませんでした。だというのに、今さっきまで手が痺れていた程ですよ」
ジェイは自らの右手を見る。今はもう収まってくれたが、もしクライマックスモードを全開で展開すれば、その後に待ち受けるものは完全なる『無動』になるだろう。
「あの時は加えて僕の高速移動でリッドさんの傍まで行きました。おそらくリッドさんからすれば、まるで僕が刹那も経たずして攻撃をされたように感じたでしょう」
キールは確かにと頷く。リッドはそんな妙な違和感を訴えていた。その妙とはつまり、クライマックスモードのことだったというわけだ。
「なるほど、大体は理解した。同時に、多用は絶対不可ということも」
「僕もなるべく使いたくはありません…絶体絶命の時以外は」
言ってジェイはスッと肩の力を抜く。その様を見てキールはつい笑みを零してしまった。
「なんなんですか、一体」
その様子に気付きジェイが問うた。
「君はそんな簡単に人の前で力を緩める奴ではないと思っていたから、つい拍子抜けしてしまっただけだ」
ジェイは決まりが悪そうにボテっと体を倒して空を見上げた。
「ジェイ、先程リッドを殴った件だが…」
ジェイは言われて頬を掻く仕草をする。
「あれですか…確かに行為的には強制的ではありましたが、ああでもしないと聞いてくれそうになかったもので」
「いや、別に咎めるつもりは無い。現にあいつは自分の疲れが分かってなかったみたいだったからな…僕が聞きたいのは」
キールは一度先刻の光景と、その後のリッドの証言を頭に思い浮かべる。
「君のあの技は何だ?こちらの戦力は出来る限り知っておきたい」
ジェイはその質問に躊躇うことなくその技―クライマックスモードの説明をする。
「あれはクライマックスモードと言いまして、一定の範囲をソウガフィールドと呼ばれる次元に変換させることができます。そのフィールドではソウガの恩恵を受けている者だけが行動を許可されるんです」
キールは一つの単語、「ソウガ」を耳にして疑問を抱く。これも別世界の断りなのかと思い、それを胸に留めておいた。
「ソウガの恩恵は一般的に爪術を扱う者に限られてきます。今現在、この島で爪術を使えるのは、僕を除いてあと一人。言うならばクライマックスモードは今の参加者にとって絶対的な『拘束』の力を持っているんです」
一通り説明し終えたジェイは少しだけ息を吐き、今度はキールの見解を聞く体勢に入る。
少なくともジェイは、キールのこの頭の切れの良さを認めていた。一を聞いて十を知る者なのだとジェイもまた理解していた。
案の定、キールは自らの見解をジェイに話し出す。
「つまりそのクライマックスモードとやらを発動させれば、ソウガの恩恵を受けていない者、この島のほとんどの参加者は動けなくなるということか。だがおそらくそれは…」
ジェイはキールの言いたいことを読み取り、力弱く頷く。
「ええ…察しの通り、その反動はかなりのものです。現に先程リッドさんを殴った時にも発動させましたが、それは一瞬でしかありませんでした。だというのに、今さっきまで手が痺れていた程ですよ」
ジェイは自らの右手を見る。今はもう収まってくれたが、もしクライマックスモードを全開で展開すれば、その後に待ち受けるものは完全なる『無動』になるだろう。
「あの時は加えて僕の高速移動でリッドさんの傍まで行きました。おそらくリッドさんからすれば、まるで僕が刹那も経たずして攻撃をされたように感じたでしょう」
キールは確かにと頷く。リッドはそんな妙な違和感を訴えていた。その妙とはつまり、クライマックスモードのことだったというわけだ。
「なるほど、大体は理解した。同時に、多用は絶対不可ということも」
「僕もなるべく使いたくはありません…絶体絶命の時以外は」
言ってジェイはスッと肩の力を抜く。その様を見てキールはつい笑みを零してしまった。
「なんなんですか、一体」
その様子に気付きジェイが問うた。
「君はそんな簡単に人の前で力を緩める奴ではないと思っていたから、つい拍子抜けしてしまっただけだ」
ジェイは決まりが悪そうにボテっと体を倒して空を見上げた。
――一つだけ、ジェイはキールに話していないことがあった。
そう、それはもう、命の砂時計が刻一刻と落ち始めている、悲願の復讐者ダオスのこと。
彼のことだけは、ジェイは話さなかった。いや、話せなかった。
彼の命を賭けた決意を、易々と他人に言ってはいけないような、そんな気がジェイの心をかすめたのである。
彼には協力する。出来る限りのマーダーを殲滅。そして例の男の抹消(デリート)。
ジェイは知らずに目を閉じて、ダオスのことを考える。その思い、決して無駄にはしないと。
クラトスのことを考える。あなたの息子は、少々(とゆーかかなり)馬鹿ですが、立派に貴方の生き様を受け止めていると。
死に際に立ち会った女性、マーテルの事を考える。貴女の最後の願い、聞き届けて、願わくば叶えてみせようと。
ミントのことを考える。まだ貴女には謝る事が出来ていませんが、いつか必ずこの身で貴女の前に姿を現しますと。
そして、最後に…
「戻ってきてくださいよ…シャーリィさん…」
傍にいるキールでさえ聞き取れない小さな声で、ジェイは呟いた。
彼のことだけは、ジェイは話さなかった。いや、話せなかった。
彼の命を賭けた決意を、易々と他人に言ってはいけないような、そんな気がジェイの心をかすめたのである。
彼には協力する。出来る限りのマーダーを殲滅。そして例の男の抹消(デリート)。
ジェイは知らずに目を閉じて、ダオスのことを考える。その思い、決して無駄にはしないと。
クラトスのことを考える。あなたの息子は、少々(とゆーかかなり)馬鹿ですが、立派に貴方の生き様を受け止めていると。
死に際に立ち会った女性、マーテルの事を考える。貴女の最後の願い、聞き届けて、願わくば叶えてみせようと。
ミントのことを考える。まだ貴女には謝る事が出来ていませんが、いつか必ずこの身で貴女の前に姿を現しますと。
そして、最後に…
「戻ってきてくださいよ…シャーリィさん…」
傍にいるキールでさえ聞き取れない小さな声で、ジェイは呟いた。
ここに、このゲームで鍵となる『者』と『物』が存在する。
それが一体『誰』で『何』なのかは、まだ何人も完全に理解してはいない。
それが一体『誰』で『何』なのかは、まだ何人も完全に理解してはいない。
【リッド 生存確認】
状態:精神力低下気味 体力少量回復
所持品:ヴォーパルソード、ホーリィリング、キールのメモ
基本行動方針:ファラの意志を継ぎ、脱出法を探し出す
第一行動方針:キール、ロイド、ジェイと行動、体力回復
第二行動方針:睡眠後、E2の城に向かう
第三行動方針:襲ってくる敵は排除
第四行動方針:メルディを捜す
現在位置:D1
状態:精神力低下気味 体力少量回復
所持品:ヴォーパルソード、ホーリィリング、キールのメモ
基本行動方針:ファラの意志を継ぎ、脱出法を探し出す
第一行動方針:キール、ロイド、ジェイと行動、体力回復
第二行動方針:睡眠後、E2の城に向かう
第三行動方針:襲ってくる敵は排除
第四行動方針:メルディを捜す
現在位置:D1
【キール 生存確認】
状態:後頭部打撲(回復中)、決意
所持品:ベレット
基本行動方針:脱出法を探し出す 、リッドの死守
第一行動方針:睡眠後、深夜にE2の城に向かう
第二行動方針:情報収集
第三行動方針:メルディを助ける
現在位置:D2西
状態:後頭部打撲(回復中)、決意
所持品:ベレット
基本行動方針:脱出法を探し出す 、リッドの死守
第一行動方針:睡眠後、深夜にE2の城に向かう
第二行動方針:情報収集
第三行動方針:メルディを助ける
現在位置:D2西
【ロイド 生存確認】
状態:普通
所持品:ムメイブレード(二刀流)、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:睡眠後、深夜にE2の城へ向かう
第二行動方針:リッド、キール、ジェイと行動
第三行動方針:協力者を探す
現在位置:D1
状態:普通
所持品:ムメイブレード(二刀流)、トレカ、カードキー
基本行動方針:皆で生きて帰る
第一行動方針:睡眠後、深夜にE2の城へ向かう
第二行動方針:リッド、キール、ジェイと行動
第三行動方針:協力者を探す
現在位置:D1
【ジェイ 生存確認】
状態:一部にあざ TP2/3
所持品:忍刀・紫電 ダーツセット クナイ(三枚)双眼鏡 エルヴンマント
基本行動方針:目的とする人を捜す
第一行動方針:睡眠後、深夜にE2の城に向かう
第二行動方針:ダオスの意志を手助けする
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
第五行動方針:ミトス・ユアンを発見する
現在位置:D2西
状態:一部にあざ TP2/3
所持品:忍刀・紫電 ダーツセット クナイ(三枚)双眼鏡 エルヴンマント
基本行動方針:目的とする人を捜す
第一行動方針:睡眠後、深夜にE2の城に向かう
第二行動方針:ダオスの意志を手助けする
第三行動方針:ミントへの謝罪
第四行動方針:シャーリィと合流
第五行動方針:ミトス・ユアンを発見する
現在位置:D2西