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テイルズオブバトルロワイアル@wiki

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最終更新:2019年10月13日 19:19

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Notice:
怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。
長く深淵を覗く者を、深淵もまた等しく見返す。


キール、メルディ、グリッドの3人がシースリ村に到着した時にはまだ霧は深く、その異様さに一行は息を呑むこととなった。
尤もグリッドは激走による酸素の不足で絶えず荒い呼吸を繰り返しており、メルディは目を瞠る程度で
大した感動も見せなかったため、正式に息を呑んだのはキールだけと言える。
一行が着いた南地区は比較的田畑が多いのどかな地域であるため、視界が開けている分、
逆にぼんやりとしか景観を把握できない。
その田畑も何か作物が育っている様子もなく、背丈の低い雑草が何本かぽつぽつと生えているだけである。ミクトランによる配慮だろうか。
真っ白な世界に人影はない。ロイドもヴェイグもカイルもこの奥に行ってしまったようだった。
「この霧……さしずめ、入ってきた奴らを闇討ちでまとめて葬ろうって魂胆か」
キールが呟いた。グリッドは何か言葉を返そうとしたが、まだ息が弾み単語を紡ぐことすらできない。
メルディはキールに寄り添っているだけで何か物申す様子は見受けられなかった。
不可視の白亜の世界で呼吸音だけが反響し、その速い等間隔の吐息が頭の隙間を埋めるかのように心に迫る。
それだけで、この霧が頭に詰め込まれたように真っ白になりかける。
「2人ともロイドやミントを発見できていればいいんだが」
キールの言葉はほぼ希望的観測で、無意味に近かった。
やっとグリッドの呼吸が落ち着いてきた。その代わりに聞こえてくるのは、遠方での剣戟音だ。
尤も、甲高い金属同士のぶつかり合いではなく、斧を気に打ち付けた時のような鈍磨したもの。
少なくとも、戦っている内の1人を判別するのは容易だった。
「どっちにせよ1歩遅かった、か」
彼の声は無感情なものだった。
「そんなこと、言う暇、あったら、早く、応援に」
言葉は発せても未だ絶え絶えな呼吸の中、グリッドは言う。
その意見は最もだったが、キールは沈思黙考でもしている風に、一寸も動こうとしない。
現在のチームのブレーンがキールである以上、彼の判断を伺わずに動くのは不味いものがある。
ましてや独断専行を許したロイドのせいでこのような状況に陥っているのだから、
先行という行為に対して、戦術的にもキールに対しても忌避感がある。
動き出そうとは思っても、キールを見ると自然と足に震えが走り、動こうという意思すら踏みにじられてしまう。
結局、切らした息を整えるのにグリッドは時間を使う羽目になるのである。
それでもキールは一向に何も語らない。
霧が薄らいできたのか、ぼうっとしか見えなかった建物の輪郭が少しずつ浮かび上がり、明瞭になっていく。
すると、キールの少し奥の地面に、黒いものがぼおっと浮かび上がってきた。
目を凝らすと、それは地面に掘られた穴――すなわち落とし穴であることが分かった。
後ろ姿のキールはやや俯きがちだ。先程からその穴を見ていたのだろう。
この位置からでは霧のせいで詳しくは見えないが、落とし穴を設置しただろう人物、そして引っ掛かった人物の予想は簡単にできた。
再び、視界が白く染まり始める。
晴れ間に霧ができるという異常現象のせいで、差し込んできた陽の光は大気中の細かい水滴に反射し、
霧とはまた違う薄明るく眩しい白さが視界を覆っていた。建物の影もすぐに光に隠されてしまっていた。
グリッドは手を翳し、光から目を守る。
ちょうど、田畑が終わり建造物が現れ始めた辺りだろうか。
民家と民家の間に淡い影が1つ――いや――あれは影と呼んでいいのか、むしろ白い光の中にも光が――七色の――――


「伏せろ!!」
“良くない”。直感だ。
唐突な叫びに驚いたのか、キールは一拍遅れてメルディを抱えて地に伏せる。
丁度2人の頭があった位置に、一筋の光線が通り過ぎる。途中で命中せずに地面で着弾した光線は地表で小さな爆発を起こした。
「危な……――――!?」
同じく、頭を押さえ伏せていたグリッドは驚愕する。
目の前から光の帯が迫っている。
とっさに横に転がり避けると、低空を維持したまま光線は真横を通り過ぎていく。
(何だ、コレ、反射!?)
片膝立ちから起き上がろうとするグリッドは一考する。
だが続ける暇はなかった。1度きりではない。どこからともなく、光の帯が襲い掛かる。
方位は決して頭上からだけではなく、右、左、足元、場所を問わない。
そして、正面に再び光が現れ、避けようとした瞬間、直前で光がかくりと右側に曲がるのを確かに見た。
(違う――――屈折!)
右に曲がった光は大気中の細かい水滴を何度も屈折し、遠回りな軌跡を作り出して、遂にグリッドの下へと到着する。
身体を捻らせたが、光は右の上腕二等筋を掠った。
全身の熱が一気に集中したような灼熱感が、右腕を支配した。
直撃、とまでは行かなくとも、掠めた箇所から血が流れ出している。服に染み込む感触が気色悪い。
歯を食い締め、痛みを堪えながら、残るキールとメルディの方へと目を向ける。
2人は伏せたままであったが、どうやら光が命中した様子はないようだった。
安堵したが、すぐにその感情が正しいものなのか疑問に思い、胸が重くなった。
音が止む。相変わらず視界は白いが、先程の光のせいで更に眩しくなったような気がグリッドにはした。
視界には白だけではなく赤なり青なり緑なり、様々な色彩の光がちらついている。目が受け取りきれなかった光の残滓だろうか。
さっきとの人影、あれが攻撃を行った人物と見なして間違いないだろう。
術の類だというのも予想がつく。今、残存しているメンバーで術が使えるのは――――自己嫌悪した。
この島で2日間生きてきたが故の学習成果なのか、それとも自らが騙るリーダーの性質なのかも、上手く判別できない。
視界が変わらないので気付くのが遅くなったが、グリッドは自分は今俯いているということを知った。
キールに徹頭徹尾罵られてからというもの、自分の感情が本物なのか毎回確認するようになってしまい、
そして毎回「分からない」という答えに帰結する。
本物なのだと思い込もうとする度に、キールの言葉が呪詛のように頭で再生され、
お前はただの凡人だと、虚構の中でしか生きられない弱い人間だと蔑む。
(違う、俺は、そんなんじゃ、違う、違う、俺は)
頭を振って無理矢理にでも顔をもたげる。
影は未だ先程見た場所にいた。いや、どんどん大きくなっている。近付いて来ている。
グリッドは正しい持ち方も碌に分からないダブルセイバーを両手で持ち、アンノウンの接近に備える。
霧の明度が減っていく。白く染まった世界に、地表や民家の屋根といった色彩が現れる。


迫る影。こつ、こつと静かに近付いてくる。
ここまで来て、ぼんやりとしか掴めなかった影は人の形をしているということが分かった。
キールとメルディも足音に気付いたのか、身体を起こして杖を構え――いや、詠唱!
「フリーズランサー!!」
宙に現れた方陣から幾つもの氷の槍が人影へと迫っていく。
距離10数メートル。普通の範囲系の術なら避け方はどうとでもある。
しかし、近距離で放たれたそれは回避の時間もなく逃れようがない。
否、消えた。氷槍ではない。相手が“一瞬で”消えたのだ。
どこに行ったかと首を動かす暇もない。次の瞬間にはその人物はキールの“目の前にいた”のだから。
硬直。キールは目を見開いていた。
その人物の右手に乾いた血のような、もしくはその血で錆びたような禍々しい色をした小剣が握られていたからか、
1本1本まで解けて見えそうな程の金の長髪と、背に生えた七色の翼という美しさに驚嘆したからなのかは判断できない。
ただ、少なくとも、確実に小剣は横薙ぎにキールの胸を狙い、隙のできた彼の薄汚れた白いローブと肉を簡単に裂くだろうということは容易に想像でき、
また人影が彼の傍にいたメルディに目をやり、その動きが些か鈍麻したのを理解するのも容易だった。
天使の姿をしたアンノウンは小剣を納め、1度後方へ跳んだ。
それでやっと、状況は静謐へと落ち着く。
グリッドは目視する。
本来なら2日経って汚れているはずであろう白のボディスーツは、にも関わらず全く汚れている様子はなく、
霧の霞で隠されているとも思えず、下ろし立てとも取れるほどにその白さは鮮やかだ。
だからこそ色彩に富んだ背中の12枚の羽はより存在を際立たせ、神々しさを増させ、目を奪わせる。
ただそれよりも、20代くらいだろうか、まだ若い外見年齢に似合わぬ辛辣な翠色の瞳が、
長い前髪に見え隠れしているのにも関わらず、自分の身体を全て抉ってしまいそうな程に鋭利で、印象的だった。
「お前、ミトスか?」
目の前の相手が何者であるかの答えは、キールによって容易く出された。
グリッドの脳裏に、朝方ロイドが言っていたユグドラシルの情報が結び付く。
昨夜ミトスには会っていたが、よく見れば冷淡な双眸以外の特徴は一致している。
あの時はいきなり拘束されはしたが、物静かで非好戦的そうで、今の凶暴性が鳴りを潜めているような瞳だけが違うのだ。
「ほう、てっきりシャーリィか誰かだと思っていたが……意外だな」
「生憎だな。あいつはもう死んだよ。殺した」
ミトス――――ユグドラシルは少し安堵したような残念そうな緩い表情を浮かべて、くつくつと笑った。
「そうか。奴にも来て欲しかったが、仕方ない」
「近付くな」
霧の中近付いてくるユグドラシルに、キールは魔杖を突き出して牽制する。
「お前も分かってるだろう。こっちにはネレイドがいる。やろうと思えば簡単に殺せる」
空いた片手だけを後ろ手に回す。中指を人差し指の上に乗せ、交差させた形を作る。
メルディは彼がそうするであろうことを先見していたのか、ちらりとそれを盗み見る。
ほんの少しだけ、彼女の顔が歪む。揺れる瞳を隠すかのように、瞼を伏せる。


「……物質界が人間に手を貸すなど不快極まりない。だが、これも全ては我がバテンカイトスがため」
静かに、いつものメルディと変わらない声が彼女の口から出た。
ユグドラシルの眉間がぴくりと動き、グリッドはメルディの言葉の内容に驚愕する。
グリッドは一歩踏み出すが、僅かに振り返ったキールの眼に圧されてびくりと怯んでしまう。
くく、と押し殺したような笑い声をユグドラシルは上げる。
「神を手懐けた? ならば先程の攻撃をそいつに任せればよかったではないか」
「別にそれでもよかったが、この辺りに他にも人間がいたら困る。
 それに、お前にも用がある」
「用? 私はただ、“動き回るのに都合の良い状況を作ってくれた者”に会いに来ただけだが?」
ユグドラシルは陰鬱げな笑みを浮かべた。その真意は霧に紛れて計り知れない。
沈黙したままのキールは、眼光鋭く目の前の男を見据える。彼の真意もまた、計り知れない。
メルディがネレイドを騙ったことといい、グリッドは理解できない状況にただ不安を募らせていた。
後方から見つめるキールの背は、頼り甲斐があるようにも儚げなようにも見えない。
普通、ともまた違う。云わば、“知らない”。
霧は更に薄まっていく。今度は午後を迎えた蒼茫の空が見えてきた。
だが段々見えてくる風景とは裏腹に、状況は霧の奥に迷い込むように、ますます見通しがつかなくなっていく。
グリッドからはキールの表情は見えない。
しかし、彼の身体越しに見えるユグドラシルは、尚も変わらずしたたかな笑みを湛えたままだ。
遠くからは激しい剣戟音が聞こえ、鳴り止まない。だからこそこの静けさは異常だった。
相手の次の一手を見定めようとする、緊張感溢れるじりじりとした静けさではなく、
単に全員が沈黙してしまったゆえに訪れた、無意味な静けさ。
だからと言って、簡単に口出ししていい訳でもない静けさ。
時が止まりでもしたかのような錯覚の中で、グリッドはふと視線を感じる。
キールの傍で、彼のローブの裾をぎゅっと握っているメルディのものだった。
彼女の瞳は未だ胡乱なものだったが、何故か、瞳が揺れているような気がして嫌なものを感じた。

そして、何故か一気に全ての光景が一瞬で奥へと消えていき、自分だけが何もない白い空間に取り残された気がした。

「こっちの用は、“僕の計画の邪魔になる人間を消す”ことだけだ」
顔すれすれに矢か弾丸かが通り過ぎていったような、そんな紙一重の危機感を伴ってグリッドは覚醒する。
高速で通り過ぎていった何かが引っ張ってきたかのように、視界は正常に戻っている。
確かに霧で白くぼやけてはいるが、色はあるし目の前にはキール達がいる。
両腕で身体を抱えてもおらず、氷点下の冷気のような恐怖が身を這ってもなく、
がちがちと歯が震え鳴ってもなく、息も乱れていない。
涙は、目尻に浮かんですらいない。
先程の光景は一体何だったのか。これこそ、時が止まった錯覚だったのか。
背中を、一筋の冷や汗が伝う。その気持ち悪さは安堵などでは絶対になかった。
分からない。
戻ったのに、あの世界の感触――自分の周りを埋める無の感覚、「孤独」は確として肌に張り付いている。
牢屋と、日向のように。


「一人でのこのこと出てきてもらって大助かりだよ。こっちに出向いてきてくれたおかげで、労力を無駄に使わないで済むからな」
杖を突き出したままキールは言う。先端の赤い宝玉が光を発し始める。
「私に勝てるとでも思っているのか?」
「勝てるさ。既にチェックメイトだ」
後ろに回した手の人差し指と中指を立て、手首のスナップを利かせて手を捻らせる。
そして、伸ばす指に薬指を加え、まとめた3本の指でくいっ、くいと小さくクロスを描いた後、辺に沿って四角形を描く。
メルディはキールから離れ、グリッドよりも後方へと下がり、BCロッドを両手に持って詠唱を始める。
当然グリッドは振り返り彼女のその行動にまたもや驚くが、先端に取り付けられたクレーメルケイジの放つ光は目に入ってきた。
本気だ。彼も彼女も。
「グリッド!」
キールの大声に視線を彼の方へと戻す。杖を構えたまま、横顔をグリッドへと見せている。
「少しでいい、詠唱する時間を稼げ! 術士に前衛を任す気か!?」
グリッドは手に握ったダブルセイバーに目を落とす。
「……だ、だが!」
「メインはメルディの方だ! フォローは僕がする!」
顔を上げたグリッドはキールの方を見て――奥のユグドラシルの像がぐにゃりと歪んだ気がした。
弾かれるように後ろのメルディの方へと走り出す。
状況が状況、あれじゃ標的が固まるのは自明だ、と思い、ダブルセイバーを振りかぶる。
メルディは目を閉じたまま詠唱を続けている。ケイジから溢れる光。
そしてその様子を見るのを遮るように、ユグドラシルの実体が目の前に現れる。
彼女も気付いたのか、目を開けびくりと身体を震わせる。
回避のため詠唱を破棄するよりも早く、ユグドラシルは手を翳し、
「てやあぁぁぁっ!!」空を裂きグリッドは双身剣を薙がせる。
相手は半身を翻し右手の小剣でダブルセイバーを受け止め、両刃片手剣でも大剣でもないのに、絶大な力を以てグリッドの方へと押していく。
1度身体をスウェイさせる形で剣の交錯を阻止し、間合いを取って再度ダブルセイバーを振りかぶる。
リーチで言えば、グリッドの持つ剣と槍の要素を複合させたようなダブルセイバーの方が、ユグドラシルの持つ邪剣ファフニールより長い。
しかし、ユグドラシルは小剣が持つ軽さと小回りの良さで、素早く的確に双身剣を捌いていく。
交差しては数回斬り重ね合わせ、間合いを取って再戦する。その繰り返しだ。
いや、それでもグリッドにしていれば善戦している方と言えるだろうか。
グリッドとてレンズハンターの端くれであり、ノイシュタットの闘技場である程度まで進める実力は持っている。
おまけに今は、手首にあの、紺碧の色をしたエクスフィアを取り付けてもいる。
だが、だからと言ってこの島で強い部類の人間に入るかといえば、答えはノーであり、むしろ下の方に属している。
第一モンスター相手の方が人間と違って行動パターンは掴めやすい。
逆にユグドラシル、ミトスは古代カーラーン戦争の英雄であり、神の機関クルシスの指導者だ。
4000年という途方もない幾年月で培ってきた実力、経験、共に申し分ない。
子供騙しに身体を斜めに傾かせ、小剣を受け流し、反対側の刃でユグドラシルに襲い掛かる。
しかし振り向き様に振るわれた一撃によってそれも呆気なく止められた。
既にグリッドの顔には所々細かい汗が浮かび上がってきている。それに対し、ユグドラシルは未だ汗1つ掻かず、涼やかな表情。
例え何らかの手段を得ようと、本来の得物でない武器で上手く戦えるか否か、それ程までに2人の間には実力差がある。
対峙すれば分かることだった。果たして、「少しの詠唱時間を稼ぐ力」以上のものはあるのかどうか。


「ダブルセイバーか。ユアンと比べたら雲泥の差だな」
刃が押されていく速度が若干増す。グリッドの頬を汗が伝った。
「あいつの……名前を……!」
「ほう、既知の間柄だったか。ならば尚更教授願えばよかったのではないか? ああ、そうだ」
交差する剣と剣の向こう側で、ユグドラシルは嗤笑を浮かべる。
「あいつも未来で私を裏切るらしいな。あいつも、だ。800年間、再生の儀式を邪魔してきていたとは。
 誰も彼も、獅子身中の虫とは恐ろしいものだな」
1度離れ、弾かれ、再々度の交差で剣を結ぶ。無論グリッドは終始押され気味で、守りに徹している。
相手の剣筋を読み、必死に剣で受け止め、斬り繋ぐ。
しかし、グリッドはユグドラシルの瞳が自分に向けられていないことに――否、見てはいる、けれども自分の更に奥を見透かしているようで――気付いた。
「お前、誰に言って――――」
ぼそり、誰かが何かを呟いた。
言葉は唐突な背中の痛みで遮られた。
それに相応しい圧力がグリッドの身体に掛かり、ぐらりと前のめりになって倒れていく。
掴み難い浮遊感を、倒れていく中で感じた。非常にゆっくりと落ちていっているのが分かる。
この背中の熱は一体何だ?
熱? 傷? 血? 熱? 熱? 熱?
目の前にはメルディとユグドラシルがいる。
ユグドラシルはにんまりと裂けてしまいそうな程の笑みを浮かべている。
メルディは詠唱を止めてこちらを――何で? 何で詠唱を破棄している?
後ろには――
後ろ?
術のマーキングができないのは中級か上級のものだけのはずだ。
これくらいの、まだ五体満足で生きていられるレベルなら、しなくて――狙った?
狙った? 元から? 狙っていた?
グリッドは、視界が下がっていく中、僅かばかりに首を動かして後ろに振り返った。
チェックメイト? フォロー? 時間稼ぎ? メイン?
彼の足しか見えない。だが、微動だにしない。
グリッドは振り向かせた顔を、顎を上げて視線を上げた。
裏切る? あいつも? 誰も彼も? 獅子身中の虫? 嘘だ。嘘だ。嘘だよな?
グリッドの身体が、地面に平伏する。
その人物は、杖を突き出したまま、表情を強張らせることもなく、しかと佇んでいた。

「――――僕に言ってるんだよ」

その人物は、溜息と共に魔杖を落とした。落ちた、ではない。“落とした”。
「降伏を宣言するよ、ミトス」
落下した杖の物寂しい木の響きが辺りに反響する。
言葉の意味がグリッドには分からなかった。
少なくとも理解するのに数秒は有し、何らかの言葉が出てくるのも更に数秒掛かった。
上擦った声は間抜けなように聞こえ、田畑の広がる開闊な土地にやけに響いた。
「ど……どういうことだよ……キール?」
顔だけを動かし、下から見上げる。映るその姿はいつもよりも甚大で強大で、そして紛れもなくキール・ツァイベルその人だった。


キールはグリッドを一瞥する。
「言葉の通りだよ。それとも何か? 僕はミトス側に付くとでもはっきり言わなきゃ分からないか?」
彼は2本指を立てて剣指を作り、招くように自分の方へと指をくいと曲げる。
今の全員の位置を一列にしたとして、最後尾にいた、詠唱を破棄したメルディはキールの方へと戻っていく。
とてとてと倒れる自身の横を走り過ぎていく彼女を目で追いながら、グリッドはその先にいる彼に視線を遣る。
例えぼやけて見えなくとも、彼が瞳に湛える冷淡で鋭利なものだけははっきりと感じ取れた。身体が1度震える。
グリッドは目の前の事実を否定するかのように、固まった笑みを浮かべ首を大きく振る。
「まさか……冗談だろう?」
「そのまさかだよ。僕の冗談はいつも笑えないみたいだからな」
「じゃあ作戦か何かだろう? 相手を油断させて」
「作戦なら、こんなことする前にとっくに殺されてる」
キールは冷笑に付して一蹴する。
「理由がない! どうしてお前が裏切るんだ……!」
「理由? あるさ。ロイドはやがて死ぬ。
 勝ち負けなんて関係ない。心臓を失った身体で天使化しようと、力の源が切れればロイドは維持しきれなくて死ぬ。
 既に元から破綻していたんだよ。もう別の時空剣士に力を借りなければ為し得ない」
グリッドは現実を理解したのか、はっとして目を大きくする。
後ろから押し殺したような笑声が聞こえてきて、グリッドは再び視線を正面へと向き直る。
痛む身体を堪え、顔を上げると、にんまりと得心行ったような表情を浮かべたユグドラシルが、文字通り見下ろしていた。
ダブルセイバーを持っている方の手がしたたかに踏み付けられる。小さく呻き声が上がった。
「成程、そういう訳か。
 無様だな劣悪種よ。これは読み切れていなかった貴様の落ち度だ。
 あいつは初め私と対峙していた時、嗤っていたぞ? それこそ劣悪種よりも下と思える、寒気のする笑みをだ」
嗤って、とグリッドは情けない声で呟く。
あの静謐に包まれ、勇ましく杖を突き出していたその裏で、キールは嗤っていた。
それはユグドラシル相手に自信を見せる意味合いではなく、今から裏切るという合図。
噛んだ下唇から血が伝う。グリッドの心中を空しいものが漂う。
「……そうか、最初から……」
手を踏み付けられているのにも関わらず、地に付けた両手で、軋む身体を震える腕で起き上がらせようとする。
「ロイドをわざと先行させたのも……」
身体を反らせ、噛み締めた剥き出しの歯をキールに向けて。
「ヴェイグとカイルを危険なのに向かわせたのも、ロイドにグミを使わなかったのも、みんなみんなみんな!」
キールは立ったまま膝を立たせるグリッドの様子を眺めている。
眺めているだけで、瞳の色は計れない。ただ黙しているままだ。
「――……このため、だったのか?」
ふっと、消えかけの炎のような弱々しい声で、グリッドは言った。



キールは1度、目を閉じた。静かに伏せられたそれは一体暗闇の奥に何を見出だしているのかは分からない。
ただ、動揺で瞳が揺れ動いている様子は全くない。静かに、彼は口を結んでいた。
しばしの沈黙が霧の中で重く漂う。その間にも霧の白いベールは姿を少しずつ消していく。
彼は両目を開ける。
「言ったはずだ。僕は本当に掴んでおきたいもののためには、掴めないものを切り捨てるって」
そこには、例え暗い炎だろうと確固たる意思を持って曙光を放つ眼があった。
グリッドはその眼を呆然と見つめる。
ぐらり、と視界が斜めに傾いた気がした。
本来なら平行に真っ直ぐに遠近法が適応される筈の世界が、足元から崩れ去ろうとするかのように傾いた気がした。
ぐにゃり、と視界が捩れて見える気がした。
はっきりと明瞭に明確に真実を示す筈の世界が、夢という幻に逃げこもうとするかのように捩れた気がした。
それでいてキールの眼だけが、じっと見つめている。青い色の中に澱んだ黒が混じった冷淡な瞳が、穴が開きそうな程に見ている。
「だからって……だからって、それが最善か……?」
喉の奥が熱い。からからに口内は乾いている。舌が張り付きそうだ。
なのに口が勝手に動く。気付けば頬の筋肉が独りでに動いていて声という音を作り出すのに適当な口の形を作り上げている。
何かに身体が打ち震えた。
「最善のためなら、今朝まで一緒にいて仲間だと思ってた奴らすら簡単に見捨てられんのかぁッ!!!」
大口を開けて飛び出たグリッドの声は今の彼を払拭するかのような大音声だった。
踏み付けられている手の痛みなど、既にグリッドの中で忘れ去られていた。
それでもキールは顔色一つ変えずに、いやむしろ不機嫌さを増させて四つん這いで振り向いている姿を見つめている。
「それはお前が言えた義理か?」
彼にしては低い声に、グリッドの眼が少し見開く。
「今まで散々仲間を盾に自分だけ生きてきたくせに、何が見捨てるのか、だ。虫唾が走る」
息を呑む音。グリッドは唇を食い締め、無言でキールを見つめている。
キールは右手で前髪ごと額を押さえ俯く。
「ああ、下衆なら下衆と思えばいいさ。僕だってリッドやファラに顔を向けられないと思っている。
 お前の言うように今朝だってこんな考え微塵も浮かばなかったし、G3に行ったお前達を待っていた時だって同じだった。だが」
俯いた顔に生まれた影の中で、疲れ果てたような醜い自嘲の笑みが浮かび上がっている。
待っていた、ということは直接の起因はそれ以降、つまりシャーリィによる砲撃に違いない。
確かに頷ける。あれを見て誰が全員無事だ、生きていると思うのか。普通なら、もう終わったという絶望しか残らない。
だか相手はあのロイドだった。諭されて、おまけにまだ「あの時」は訪れていないから、甘さも捨てきれていなかったのだろう。
実際、トーマを除き全員生きていたのだ。
しかし、ロイドの心臓は無残にも貫かれた。
「絶対に、お前よりは落ちぶれていない」
結果、「あの時」を経た彼はロイドの死によってこうする以外手がなくなった。
手を取り払い、その笑みを消してキールは再びグリッドを見据える。浮かぶのは尚も変わらぬ素気無い色。
大声を出して鼓舞したグリッドの気持ちはいとも容易く落とされていた。
反論の言葉が出ない。違うと否定したくとも、キールの眼と言葉だけで圧殺される。
呪詛が鎖となって身体に打たれ戒めているかのように。
グリッドの身体は震えている。しかし、それは彼への怯えではなかった。
再度もたげた、一字一句否定できず、反論すら持ち合わせない自分への憤怒と悔恨と情けなさ。
何よりも、無力さがグリッドの身体に、次々と岩を背に積まれていく罪人のように圧し掛かってきていた。


手に掛かっていた圧力が消え去る。
一瞥すれば、血の通っていなかったために青白くなっていた手が、血液の温もりを受けるかのように仄赤く染まっていく。
1人残されたグリッドが振り向くと、キールとメルディの傍にユグドラシルがいつの間にか立っていた。
いつの間にか、その通り空間転移だ。
ユグドラシルが2人を攻撃しないことから、少なからず相手は2人を敵とは見做していないようだ。
これでキールが後ろから不意打ちでもしてくれれば、どんなに気持ちが晴れることだろうか。
だが当然彼にそんな素振りはない。
3対1の構図を見て、グリッドは再度痛感する。紛れもなく現実だ。悪夢のような現実だ。
自分はこれからどうなる? 死人に口なし、口封じに殺されるのか?
グリッドはじっと、けれども怯懦な動きなど見せずにキール達を見つめる。
そう考えると、死への恐怖というのは完全にではなくともあまり持ち合わせていないのかもしれない。
少なくとも最期に命乞いしてまで生きたいという理由はない気もする。
キールはその訴えに応えるかのように、地に転がったままだった魔杖ケイオスハートに手を伸ばした。
申し訳程度に、グリッドはダブルセイバーを握り締める。
そして、魔杖を拾い上げた彼は、
「――――行こう」グリッドに背を向けた。
思わぬ言葉に、ダブルセイバーを握っていた手の力が緩み、危うく落としかける。
落としたら、それが奏でる音が更に自分の中の何かを壊していきそうで怖かった。
何も言わないグリッドに、キールは僅かに首を動かして後方を見遣った。
「殺す価値もないし、ふと殺そうと思ってもいつでも、簡単に殺せる」
何の躊躇もない言葉だった。
今度こそ、グリッドは落とした。2つの刃が地面に不時着して金属音を鳴らした。
しかし、実際、その音は耳には入っていなかった。入る前から、予想していた何かは壊された。
握っていた手は所在無さげに空に漂い、今となっては何故そこに在るのかすら分からない。
キール達の姿が霧に紛れて遠くなっていく。何か喋っているようだが雑音レベルの音とすら認識されない。
浮いていた両手はやっと地面に着く。身体を丸め、地表すれすれまで蹲る。
視界が、真っ暗になった。


ひくひくと身体が小さく跳ね上がる。小刻みに身体が振動を起こしている。
傍から見れば、咽び泣いているようにも見えるだろう。
しかし分かる。理解できる。涙など一滴も流れていない。今、自分の顔には、必死に耐えてにんまりとした笑みが浮かんでいる。
むしろ、諦観にも空虚さにも似た穏やかなものが、心を包み込んでいる。
それを作り上げる感情の正体は怒りか? 悲しみか? 驚愕か? 絶望か?
どうでもいい。正体など既に真偽が分からないまでに曖昧模糊なものと化している。
だからこそ自然と生まれたこの感情に、川の流れに沿うかのように、グリッドは身を委ねていた。
これだけは、これだけは正しいと思える。
懐から、黒い粘り気のある液体が入れられた瓶を取り出す。
少しだけ身体を起こし、瓶のコルクを抜く。
そして、打ち捨てられたままのダブルセイバーに、無造作に液体を零していく。
全部は使わなかった。使わなくとも済んだ、というのが正しいだろうか。再び瓶にコルクを納める。
ゆっくり、ゆっくりと柄を掴み上げる。
全体的に黒くなり、所々の穴に更に黒い、底無し沼を思わせるような深く暗い液体が浮かび、
それでも差し込んできた太陽の光にダブルセイバーと刀身に付いた水滴は煌いた。
刃に浮かび上がったグリッドの顔には、乾いた笑顔が張り付いていた。


瓶も片付けず、手に握ったまま、グリッドは黒い双身刀を右手に持って走り出した。
走る。走る。走る。走る。走る。走る。走る。走る。走る。走る。
許さない。許されていい存在じゃない。存在を認めない。
あいつは裏切った。裏切った。捨てた。仲間を捨てた。何てことだ。
仲間を重んじるのが漆黒の翼。仲間を裏切らないのが漆黒の翼。だから、
漆黒の翼で裏切りは、最大の罪。罪。重罪。死刑。極刑。極刑。極刑。極刑!
例え、自分がリーダーでなかろうと、一体何であろうと、
「お前だけは……絶対の、悪だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

投げ槍を放つかのように、グリッドの肩が引き締められ、指が1本1本解れていき、最高の撓りでダブルセイバーが投げられた。
それは1本の矢のように、青い髪を束ねた青年の背に向かっていく。
しかし、元から狙ってか、手元が狂ったか、霧のせいか、右腕の怪我からか、最期に躊躇ったか、
毒がたっぷりと塗られたダブルセイバーは、キールの後ろを歩いていたメルディの右肩辺り――平面上は彼の心臓部に相当――へと突き刺さった。




□


ぽす、と彼の背に熱と重量を持った何かが圧し掛かる。
普通なら歩いているため、そのまま倒れる筈だったが、彼の歩行速度が遅かったのが幸いした。
彼はその人物の名を呼びながら、首だけ後ろに振り向かせる。
彼女の身体はずり落ちた。地に臥した彼女の右肩には、もはや見慣れた二ッ刃の剣が存在を主張していた。
珍しく、しばらく彼はその状況を理解するのに時間を要した。
しかし、完全に囚われるほど彼は愚かではない。
「メルディ!!」
叫びにも似た悲痛な声を出しながら、彼は黒い液体が付着した剣を彼女の痛みなど露知らずと言わんばかりに抜き去る。
投げ捨てて、彼はすぐさまリカバーを唱える。
その直後にキュアを唱える。唱える。唱える。唱える。
がむしゃらに、張り裂けそうな声を挙げ、髪を振りかざして彼女の治療に当たるキール。
冷淡さを湛えていた瞳にその欠片は一寸もなく、溜まった涙が溢れ出して流れようとしていた。
本当なら傷口に包帯でも巻いておきたいが、そんなものここにはない。水晶霊術による治療で精一杯だ。
キールは動きを止めて、顔を上げる。
目線の先には――予想外の相手に命中したのだろう、狼狽えたまま立ち竦むグリッドの哀れな姿。

「――――お前、どう足掻いても他人を殺したいみたいだな」

グリッドの身体が大きく跳ね上がった。それは彼の言葉を聞き入れたからか、彼の見開き充血した眼を見たからかは分からない。
「僕が悪なら……」
走っていた。気付けば彼はグリッドが投擲したダブルセイバーを片手に、グリッドの下へと激走していた。
グリッドは動かない。動けない。キールは衣服ごと掴んでグリッドを押し倒した。
そして彼はダブルセイバーを短く握り、何の戸惑いもなく振り落とす。
悲鳴が上がる。ダブルセイバーは深々と右肩に突き刺さっている。
それを抜かれると傷口からどくどくと血が湧き出てきた。彼はまた振り落とす。劈くような声が上がる。
「ロイドもヴェイグもカイルも!! お前も!! 全員、全員っ、みんな悪だよ!!」
抜いて、突き刺す。血が噴き出す。金切り声。
「裏切るのが悪だって? 僕が何のためにこうしてるのか分からないのかっ!?」
貫く。生温い。飛び出した血が白いローブに染み付いているが関係ない。
「大体ミトスはあっち側の人間か!? 違うね! だからだよ!!」
ぐちゅっ。肉の感触。髪にまで血が付いてしまったがどうでもいい。ぐちゃっ。
「だから、僕はクレスじゃなくてこっちを選んだよ!!」
抉り込む。
何度も何度も、しかしその刃は致命傷を避けるようにして、頭部や胸部や腹部には落ちていない。
突き刺す度にグリッドの身体はびくんびくんと跳び上がり、
悲鳴も段々と弱々しくなっていったが、キールは八つ当たりにも似た罵詈雑言を止めようとはしない。
その力強さはとても非力な学士とは思えない程で、普段落ち着き払った彼とは思えない程の粗雑さと乱暴さだった。
落とす。落とす。落とす。落とす。堕とす。
十数回は突き刺して、彼はやっと、ゆっくりとダブルセイバーを抜き去った。
目の前の誰かの四肢はそれらだけが真っ赤に染まり、だらりと投げ出されている。
黒い液体と赤い液体が交じり合った、混沌を体現をしているかのような刃。
それを持ったまま、キールは荒々しい息を整えて、目下の無残な人間を見つめる。
「表側だけ見て本質を見ようともしない凡人に、物語る権利はない」
口元に歪んだ笑みを浮かばせて、キールは呟いた。



既にグリッドの瞳は焦点が定まっておらず、視界がしっかりとしているのさえ疑わしかった。
キールは双身剣を投げ捨て、グリッドの手に握られた瓶に手を伸ばし、生きているから死後硬直していない左手から瓶を奪い取る。
最初よりも分量が減ったボトルを目の前に掲げて見つめ、そしてコルクを抜き取る。
振動で水面が小さく揺れ、波打った。
彼はグリッドの口腔を無理矢理こじ開け、ボトルの黒い液体を中へと流し込む。
拒むかのように胸を上気させて咳をし、液体を吐き出そうとする。
しかし、キールは顎を上げ、口から零れ出そうな程までに注がれた毒を無理矢理にでも嚥下させようとする。
虚ろな瞳が彼の顔を見つめている。一筋、そこから涙が伝う。
キールはつまらなさそうに目を細めてそれを見た。更に顎を持ち上げる。
グリッドの喉が小さな起伏を作り出して、すぐに消えた。
力なく、グリッドの首が横に転がる。
経口摂取がどんな影響を及ぼすかは分からないが、少なくともすぐには死なないだろう。
霧が消えていき、道が開けてくる。
血でべとべととしたグリッドの片腕を両手で掴み、その身体を地面に伏せさせたまま引き摺っていく。
奇妙な静けさの中で、ずりずりという地表が擦れる音だけが鼓膜を刺激する。
グリッドには抵抗する力すら残されていないのだろうか。むしろ、毒の影響か、身体が痙攣し始めていた。
しばらく引き摺って、彼は歩を止めた。
彼はにやりと笑みを浮かべた。腕を掴んだまま、浅く俯く。
そして、本人はそこに留まったまま、腕をぐっと引っ張る。グリッドの身体が、前へと進む。彼は手を離す。
「お前に、まだ力があったら、こうならなかったのかもしれないのに」

身体は、大地に立っているなら決して有り得ない筈なのに、吸い込まれるようにその姿を小さくしていき――――

「ぎあぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

姿を消した、いや消されたグリッドの声が、足元から空を裂くように響いてきた。



□


キールは足元の落とし穴を一瞥もせず、首を動かして、血濡れの姿でメルディとユグドラシルの方へと振り向いた。
メルディは身体だけ起こし右肩を押さえて、ユグドラシルは綺麗な弧を描いた笑みを浮かべて、彼の方を見ている。
返り血で赤い斑点が浮かび上がる彼の顔には、乾いた笑顔が張り付いていた。
2人の下へと歩み寄るキール。途中で魔杖を拾い、表情はそのままでメルディの下へと近付く。
「メルディ、大丈夫か?」
先刻までの、鬼のような形相からは想像もつかない、優しい声。
彼女は何も言わずに、ただこくりと頷いた。彼も小さく頷いた。
「しかし――――」
傍に立っていたユグドラシルが、誰に言うともなしにごちる。
「貴様、本当に人間か?」
その言葉に、キールは自信げな、アイデンティティを持った笑みを浮かべて、「もちろん」と答える。
ユグドラシルは腹を抱えて笑いたくなるのを必死に抑えるように、押し殺した低い笑い声を出す。
「それもそうか。今も4000年前も、人間というのは実に汚く醜く、利欲的な下等生物だからな。……実に」
口をきつく締め、何の返答もしなかった。
彼は視線を自らのサックの方へと移し、サックの中を漁り始める。
そして、自身が今まで纏めてきたレポートと、ハロルドの記したメモ2つを取り出し、ユグドラシルの方へと差し出す。
彼の視線は、不敵な喜悦を帯びさせながらも鋭い。
「僕はお前に協力する。僕が提示する条件は、お前の目的が果たされた後に、僕に協力することただ1つ」
ユグドラシルは1度笑って、無言でレポートとメモを受け取った。
ぱらぱらと捲り、大雑把に目を通す。それだけでもユグドラシルの顔には驚喜と感心の表情が浮かんでいた。
レポートを持った手を下ろして、
「私も、姉さまを復活させるだけでは真に目的は為し得ない」とだけ答えた。
キールは、強気そうな笑みを浮かべて首肯した。
そして、彼がメルディの方を向くと、彼女はグリッドが落ちた穴の方をちらりと見ていた。
彼はその姿に少しの苛立ちと彼女に対する胸の痛みを覚えて、「行こう」と早々に促した。
彼女はおずおずと小さく頷いた。彼はそれに満足したようだったが、ユグドラシルに視線を遣ると、相手は些か怪訝そうな表情をしていた。
キールもまたその表情に怪訝そうな表情で返したが、ユグドラシルの口角が少し上がるのを見て、何のことはないと彼は視線を正面に戻した。
3人の姿はありかなしかの霧の奥へと消えた。



□


霧が消えて、空が眩しい。雲のあまりの白さに苛立ちさえ覚える。
丸く切り取られた空は、それが自分に許された有限の空なのだと云わんばかりで、とてつもなく狭い世界に自分は押し込まれたような気がした。
寒い。気持ち悪い。身体が、重い。
指1本にすら1つ1つ鉛が取り付けられているようで、ぴくりと動かすことさえ気だるい。
思考すらも朧で、はっきりとしない。自分はどうしてこうなったのか、それすらもよく分からない。
自分は今まで、普通に漆黒の翼のリーダーとして、ジョンとミリーと世界を駆け巡っていた。
その毎日は辛い時もあったが、楽しい時もあった。
ただ、それだけだったのに。それすらも、嘘だというのか。
どこまでが虚構? 性格? 2人の存在? 記憶? 世界? それとも、自分という存在すら嘘なのか?
分からない。真実と虚構の垣根は境界線を消して、全てが交じり合っている。
この世界での自分すら、もはや真贋の見分けは付かない。
少なくとも、付く前に死ぬ。
落とし穴の壁に沿って転がり落ちたために底に生えた土の槍に串刺しになることはなかったが、
唯一、左手が甲を貫いて掌ごと槍に刺さっている。
どくどくと血が流れ、熱が掌に集中する感覚だけが、今ある生の確証だ。
ああ、あとは右腕の火傷と、両腕両足の刺し傷と、全身を駆け巡る不快感――何だ、確証は沢山あるじゃないか。
痛み。それは、ひいては無力感。
キールに身心両方ともずたぼろにされて、頭から爪先まで何もかも否定された。
最後に、最後に正しいと思った感情さえ否定された。
残るのはがらんどうな空虚さと、それが導く自分の無力さ。
何も、何もできない。行動も、言葉も、何も出せない。出せなかった。
空いた右手で目を覆い隠す。溜まった涙は一体何の感情が起因となって出てきたのかすら判別つかない。
手をどかすと、暖かな陽光がまた目の前に現れる。
光は眩しく、瞳が受け取る光量は充分過ぎて、景色は薄く遠くなり――視界が真っ白になる。
そして思い出した。あの、白く何もない孤独な世界を。
光の熱は一気に奪われた。否、消えた。目の前にはまたあの白一色の世界が広がった。
寒い。気持ち悪い。身体が……重い。
重い右手を、頭上に翳す。
霧を裂いたように、降り注ぐように差し込んできた太陽の光は手で遮られ、血まみれの斑の手は黒く染まった。
何かに手を伸ばしているようで、しかし、その手は何にも届かない。
もがくように、掲げられた手が微動する。
「俺には……」
掴めないものを必死に掴もうとするように、手が僅かに動く。
「力が、足りない……」
その嘆声は、深い穴の中でやけに反響した。
ゆっくりと、外そうとグリッドは右手を左手に伸ばした。



【メルディ 生存確認】
状態:HP75% TP45% 右肩刺傷(治療済) 色褪せた生への失望(TP最大値が半減。上級術で廃人化?)
   神の罪の意識 キールにサインを教わった
所持品:スカウトオーブ・少ない トレカ カードキー ウグイスブエ BCロッド C・ケイジ@C(風・光・元・土・時)
    ダーツセット クナイ(3枚)双眼鏡 クィッキー(バッジ装備中) E漆黒の翼のバッジ
基本行動方針:もう少しだけ歩く
第一行動方針:もうどうでもいいので言われるままに
第二行動方針:エアリアルボードで移動
第三行動方針:ロイドの結果を見届ける
現在位置:C3村・南地区→?

【キール・ツァイベル 生存確認】
状態:TP20% 「鬼」になる覚悟  裏インディグネイション発動可能
   ロイドの損害に対する憤慨 メルディにサインを教授済み
所持品:ベレット セイファートキー ジェイのメモ ダオスの遺書 首輪×3
    C・ケイジ@I(水・雷・闇・氷・火) 魔杖ケイオスハート マジカルポーチ
    ハロルドのサック(分解中のレーダーあり)  実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) ミラクルグミ 
    ハロルドの首輪 スティレット 金のフライパン ウィングパック(メガグランチャーとUZI SMGをサイジング中)
基本行動方針:脱出法を探し出す。またマーダー排除のためならばどんな卑劣な手段も辞さない
第一行動方針:ミトスに協力する
第二行動方針:首輪の情報を更に解析し、解除を試みる
第三行動方針:脱出に関する情報を更に入手・検証する
現在位置:C3村・南地区→?

【グリッド 生存確認】
状態:価値観崩壊 打撲(治療済) 右腕一部火傷 背中裂傷 四肢全体に刺し傷 服毒 プリムラ・ユアンのサック所持
   エクスフィアを肉体に直接装備(要の紋セット) 決心(?)
所持品:マジックミスト 占いの本 ロープ数本 ソーサラーリング ハロルドレシピ
    ネルフェス・エクスフィア リーダー用漆黒の翼のバッジ 要の紋
基本行動方針:???
第一行動方針:???
現在位置:C3村・南地区落とし穴内

【ミトス=ユグドラシル@ユグドラシル 生存確認】
状態:TP90% 恐怖 己の間抜けぶりへの怒り ミントの存在による思考のエラー
所持品:ミスティシンボル 大いなる実り 邪剣ファフニール ダオスのマント
    キールのレポート ハロルドメモ1・2(1は炙り出し済)
基本行動方針:マーテルを蘇生させる
第一行動方針:キール達と行動する
第二行動方針:最高のタイミングで横合いから思い切り殴りつけて魔剣を奪い儀式遂行
第三行動方針:蘇生失敗の時は皆殺しにシフト(ただしミクトランの優勝賞品はあてにしない)
現在位置:C3村・南地区→?

※ダブルセイバー、空の瓶(中にリバヴィウス鉱あり)は南地区の落とし穴付近に落ちています。

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