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向こう側

最終更新:2019年10月13日 19:36

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向こう側



少年の名を呼ぶ悲痛な声によって、今少年は窮地にあるのだと、倒れ込んでいる女は理解した。
だらりと伸びた腕はぴくりとしか動かない。動いただけでも、痛みを発する。
彼女は重い瞼を伏せた。法術を扱えながら何もできない自分を、少年をこの戦場に巻き込んでしまった自分を責める。
法術士とは、身体の傷をその術で癒し、心の傷をその言葉で癒す者である。
割れ目から差す光が無常なほどに暖かい。希望の光とでも云うべきそれは、これほどまでに残酷なのか。
涙未だに涸れることなく、まるで癒しの力が代わりに瞳から零れているかのように、それは実に清らかで輝いていた。
少年が血を吐く咳の音だけが、弱々しい声が聞けない中、刻一刻と進行する事態を告げる。
何も見えない真っ暗な闇が、更に黒く塗り潰されていく気がした。
恐らく、先程の――闇のエゴは失敗したのだろう。素性も何も知らなくとも、何故だかそういう確信があった。
彼の言葉に帯びていた悲しみや嘆きといったものが心の内側で再生される。彼もまた、この殺し合いの被害者なのだろうか。
しかし、今の自分には誰も癒せない。
力の源は尽き、言葉を紡ぐ舌は切られ、自分にできることを為そうとしても、それすらできない。
地に伏せ、絶望に打ちひしがれた身体に、更なる絶望が圧し掛かる。
少年の命が、消えていく。


ああ、これは夢?
だって、さっき自分は頬に血飛沫を受けて、それで意識を失った。
だからこれは夢。夢だ。夢なんだ。
そうでなきゃ、そうでなければ――――……


ああ神様、御赦し下さい。
私は貴方の恩恵を被る資格はありません。
私は癒す使命を持った身でありながら、何よりも私自身の癒しを求めているのです。
この現実が、夢であるようにと祈ってしまうほどに。

私は、私に出来る精一杯のことをやってきたつもりです。
ですが、術を使えず、言葉も発せられず、癒すことも、救うことも出来ないのならば、
どうして私はここにいるのでしょうか。
どうして、私は生きているのでしょうか。

もし今私に許された生に意味があるというのなら、どうか御教え下さい、神様。


目的の人物はすぐに見つかった。
壁に作られた穴の前で、金髪の女性がぐったりと倒れ込んでいる。
純白のローブが唯一の光源である穴からの日差しで浅黄色に照っているが、所々付着した赤黒い染みは色濃く際立っていた。
この女こそ「ミントさん」とするならば、昼になる前に聞こえてきた悲鳴は彼女だ。
あのクレスの名を呼び続けた悲鳴の主、クレスの仲間だ。
そしてカイルはあの声の人物と既知の間柄であったからこそ強く反応した。
そのカイルがこの女を守り、代わりに死んだなんて、何たる皮肉だろう。
ディムロス、と彼は声を掛けようとしたが、この静寂の中では何だか声を発することも気まずいような気恥ずかしいような、
つまりは「声を出してはいけない」という不可視の命令者がここにいるような圧迫感があった。
黙ったまま、彼は乱雑に散らばる木片やガラスの中を踏み荒らし、女の下へと近付く。
うつ伏せになっている身体を仰向けにし、片腕の中へと収める。
苦痛に満ちた表情だったが、綺麗な顔立ちだと思った。
彼女の身体はしっかりと熱を帯びていた、しかしだらりと垂れた血塗れの腕は、生気を感じさせなかった。
後頭部の腐った果実のようなぶよぶよとした感触が、切れるか切れないかの境目で、支える腕の中で無駄に伝わっている。
吐き気が催されるほど気色が悪い。もう少し皮膚を貫けば、血が溢れ、肉や頭蓋骨が顕わになるのだろう。
目を離すように、1度彼は座ったまま部屋を見回した。
薄暗い部屋だ。がらんとしている。空間を無駄遣いしているとも言える。
だが、それは彼女の傍に炭に近くなった家具――テーブルや椅子やサイドボードや――の山があるからこそだ。
よく見ると、周りの壁の残りも黒焦げになっている。黒ずんだ箇所から脆くなり、今にも容易く崩れそうだ。
散らばる木片にも2通りあるようだった。この鐘楼台の壁と、散らばったガラス片から恐らく木製の家具――棚か何かか。
3階に上がる階段の近くには大柄で不釣合いな斧も転がっている。
穴の近くには箒も落ちていたが、彼はすぐにそれから目を逸らした。
「部屋」という1つの固有名詞を形成するには、パーツは不十分だ。
けれども、だからこそ荒々しい戦いとは無縁そうなこの静謐の中に混沌が作り出されていた。
さっきまで人が2人いたのに、静かで、だから異常だった。

異常。この世界は異常だ。
そして、異常を正せる者はもはや汚れに汚れた自分しかいない。

静かに支えていた頭を床へと下ろし、座り込んだまま、片逆手でディムロスを握る。
刃を下に、彼女の胸を貫通せんと両腕を振りかざす。
確かに彼女は、カイルが命を賭して救った人物なのかもしれない。
しかし彼女もまた参加者の一員だ。最後の1人にならなければ、元凶たるミクトランの下には辿り着けない。
何よりも、彼女に対して躊躇しないことは、カイルへの甘えを未だに捨て切れていない証左となる。
赦しなど必要ない。これは自分への罰だ。これから逃げることこそ甘えとなるのだ。
自身にそう言い聞かせ、重い息を1つ吐く。力を込め、柄を強く握る。
狙いは、胸の心臓ただ1点。
彼女の命を奪うべく、大剣を振り下ろした――――


「う、ぁぅ……」
――が、突然の呻き声は彼を驚かせ手元を狂わせた。刃は投げ出された脇の傍へと落ちる。
つい先刻体験した出来事と殆ど同じだった。その後自分が発した問いを自然と思い出してしまい、首を振る。
握ったまま、突き刺さったままのディムロスの刀身に自分の顔が映る。
部屋が暗いからだろうか。顔全体には影が落ち、瞳は光差さぬ深海のような濃い青の色彩を見せていた。
……ああ、自分は前から、こんな疲れ果てたような顔をしていただろうか?
水面のように曖昧に映り込んだ顔は本当に自分のものなのか確かめようと、手套の嵌まった片手を頬に添える。
目の前の鏡写しの存在も全く同じ動作をしてみせた。
それが何だと言われればそれまでだが、彼は胸が締め付けられる思いがした。
頭を俯かせ彼女の様子を眺めると、小さく声を上げながら眉間をひくつかせていた。
そしてゆっくりとその目は開かれる。淡い青碧の瞳が瞼の間から覗く。
普通なら、彼女の上空で腕が橋のように渡っているのだから、何よりも自分の顔を覗いているのだから、その主へと視線を移す筈だ。
しかし、彼女の視線の方向は一向に変わらない。
ただ腕を突き抜けて天井を眺めているかのように、ぼんやりとしたまま目瞬きしている。
更には、彼を無視して、手を引き摺らせながら頬へと当てる。
付いていた血糊が白い手袋で掠れて更に広がり、少しして彼女は小刻みに震えた声を零した。
「ああ」、「いあ」、そんな出来損ないの言葉だった。
辛うじて何の母音かが分かるくらいで、呂律の回らない言葉は丸みを帯び、はっきりとはしなかった。
彼は目を見開き、彼女を凝視した。それでも彼女は見返そうとはしない。
すぐ傍にいるのに、実は別の空間にでもいるのではないかという錯覚さえ覚えてくる。
うぇ、うぅ、あう。
そうとしか言語化できない言葉の残骸が口から漏れる。
息が乱れてきているのが分かった。彼女もまた分かり得たのか、呼吸音に反応して緩慢と彼の方を見る。
その瞳は、焦点が合っていなかった。
頭に閃光が走り、真っ白になる。
彼は気付けば手をディムロスから離し、彼女の襟首を乱暴に掴んでいた。
「あんたの……」
ぐっと鼻突き合わせ、彼女の顔を自分の顔へと近づける。
「あんたのせいで、カイルは死んだんだ! あんたを助けようとして!!」
びくりと身体を震わせた彼女は、据わらない頭を何とか支えて彼を見ている。
それでも、彼の今の獰猛な目付きは分かっていないようだった。
「カイルが命と引き換えに助けて! あんたは今、生きているんだ!」
浮かび上がる一抹の疑問――彼女は、本当に生きているのか?
「どうして黙っている……何か言ったらどうだ……」
――目の前のだらりとしている人間は、本当に、人間なのか?
「何とか言えっ! カイルに、あいつにありがとうって言え!! 言えっ!!」

――――カイルが命を賭けて助けたかったのは、こんな、こんな唯のモノだったのか?


表皮を振動させるほど顔の間近で言葉を放ち、息をぜえぜえと荒くして、彼ははっとした。
いつの間にか目の前の彼女は、声も上げず、瞳から大粒の涙を流し泣いていた。
薄汚く暗い部屋の中で、それはいやに光に反射し輝いていた。
綺麗だった。同時に、怖かった。
彼は襟首を掴んだまま項垂れる。彼女の白い布地に走っていた皺が、波が引いていくかのように緩やかになる。
分かっていた。
今の彼女じゃ碌な言葉も発せられないだろうことも、カイルを殺したのは自分であり、彼女のせいで死んだのではないということも。
何よりも、何よりもカイルは、こんな彼女であろうと救ったことを。
先程ディムロスに映った顔を思い出す。
きっともう自分はあの決断を下した時点で死んでいる。
そんな自分に、彼女をモノと落胆し蔑む権利があるだろうか。
――違う。彼女はモノではない。
彼女は確かに生き、生きていて欲しかった。生を持つそれがモノという唯の固体である訳がない。
だからこそ、カイルは彼女を助けたのだ。
醜いのは自分。責任を、重責を彼女に擦り付けようとした自分自身。
だからと言って、生きた人間をモノだと心中で罵ったことを後悔しつつも、今更謝ろうという気にはなれなかった。
黄金色の光の粒子が壁に開いた穴の向こうで漂っている。静けさの中で、布と手の皮革が擦れ合う音だけが時折聞こえる。
静寂がぴしと張り詰め、まるでガラスの鈴のように甲高く、しかし儚く短く揺れて鳴る。
その冷たくもの悲しい音と共に、締め付けるように心に迫る。
2人は何も言わない。どうしようもなかった。互いが互いに掛け合う言葉など何もなかった。
ただ、彼は居た堪れないような目を彼女に向け、彼女はどこを見るとも知れない潤んだ目を彼を突き抜けて向けていた。
女は、ゆっくりと左手を胸倉を掴んだままの彼の腕に置く。
暗闇の中で何かを探るように、ぺたぺたと手を実に軽く打ち付けながら、時に撫でるようにして彼の輪郭に沿って這わせていく。
彼ははっとしたようにその手を見たが、見るだけで払いはしなかった。
上腕、肩、首、顎、頬、柔らかく暖かみのある手が彼へと触れていく。
手袋越しのその感触を実感しながら、なす術もなく肌をさすられる。
その手付きには弱々しくも確かな意思があった。
銀髪に触れられ、後頭部にまで手を回された時だった。彼はふわりと彼女に抱き寄せられた。
豊満な胸が身体に押し付けられるまで、彼は何があったのか全く理解出来なかった。
右腕はだらりと垂らされたままだ。ただ、左腕だけが頭に回され、抱き寄せられているのだ。
力強い抱擁ではない。そっと、包み込むかのようなささやかな抱擁。
彼女の身体は温かく、生きた人間の熱だった。
表情は視界が覆われて見えなかった。いや、見なかったという方が正しいか。
彼女は何も言わなかった。いや、厳密には舌足らずな口で彼の耳元に囁いた。
ただ、彼女の言葉はこの静寂の中でもとりわけ小さく、言葉を為していなかった。
この時ばかりは、そうでよかったと心から思った。
彼女の音の響きは、まるで寒く長い冬を越えて訪れた春の光のように、
とても優しく、穏やかで、下手すればその熱で全て崩れ去ってしまいそうな程の力を持っていたのだから。


「止めてくれ……」
抱えられたままの胸の中で彼は呟く。
「止めてくれっ!!」
掴んでいた襟を離し、広げた手ですぐに彼女を突き飛ばす。
彼女の軽い身体は容易く前へと転がった。
彼は息を巻き、床に刺さったままだったディムロスを抜き取り、見えないと分かっていても彼女へと剣鋩を向ける。
握る手は微かに震え、ディムロスもそれを感じたのか、諌めるように彼の名を小さく呼んだ。
だが、彼は何も答えない。それどころか剣を鳴らし上段に構えた。振り下ろし、身体を貫くだけの間合いは完璧だったので。
「俺は、俺は……もう、赦されていい人間じゃない!!」
落とされたディムロスは彼女を両断せんと迫る。
しかし、彼女は振り落とされるよりも早く、彼の身体に飛びついた。
死を恐れてではなく、これ以上の相手の行為を必死に止めようとするかのように。
大剣は開きにする筈だった彼女のいない座標を空振り、代わりにリーチを詰めた彼女の左肩を掠った。
白地にじわりと浮かぶ血痕。痛みはあるだろうに、彼女は離れようとはしない。
実際、彼女のそれは突進とも呼べないほど弱々しいものだったが、虚を突くという点では充分過ぎる効力を持っていた。
ましてや剣、しかも大剣を振るう間合いを埋められたのだ。碌に身動きも取れない。
「離せ! 俺は、全てを終わらせるんだ!!」
振り払おうとしても、彼女は必死にしがみ付く。
「殺す! 殺してやる! そうしなければこの世界は正されない!!」
先の虚ろな瞳とは打って変わり、彼女の瞳は力強く彼を見据える。そして、小さく首を横に振る。
それに苛立ちを覚え、彼は相手が女だということも失念し、無理矢理にでも乱暴に突き飛ばした。
突き飛ばしても、彼女はまた飛び掛ってくるだろうことは簡単に予想がついた。
それでも彼はそうせねばならなかった。彼女が怖かった。
大した間もないのに、彼は走り寄り、再度ディムロスを振りかぶる。
「あんたも……間違ってるんだっ!!」
落とせば彼女の身体は切り裂かれる、その直前だった。
目が合ってしまった。彼女は見えない目で確かに彼を見ていた。真っ直ぐに、彼を見ていた。
例え間違いと言われようと、ぶれもせずに。
金髪、碧眼、それだけの特徴だったのにあの少年の姿が重なって映った。
全身の筋肉が緊急停止を命じる。何もかもが止まり、大剣が振り下ろされる仮定の未来がコマ送りで脳裏に流される。
その未来が、彼には受け入れ難かった。
彼の口がわなわなと震え、剣を構えた腕を下ろし、膝から崩れ落ちた。
かしゃん、という音がして、彼は床に四つん這いの体勢になる。
「そんな目で見るな……その目で、汚れた俺を見るなぁ……」
外敵の攻撃から守るように、彼は頭に両手を当て身を丸めていた。その声はひどく震えていた。
「見続けなくていい……許さなくていい……頼むから、そんな、そんな目で……」
それは、地に伏せ懇願しているようにも見えた。


彼と彼女は違い過ぎた。
長くここに監禁されていたからなのか、そうでないのか、彼女の瞳はカイルと同じように世界の汚染を受けていない。
彼女もまた希望の1人。世界が排除を選ぶ対象だ。
だから、例え全てを滅すると決めたとしてもだ。
もし彼女を殺したら、それはこの世界を認める、許すことと同義なのである。
憎きミクトランを殺すために殺すのに、そのために行う行為は、希望を殺すミクトランと何ら変わらない。
ウロボロスのように、廻り廻って彼の下に訪れるのは絶望のみ。
いいのかもしれない。彼はそれを承知の上で汚れ役を買って出たのだ。
自らの行為を自分への罰と称し、それでも行うのだから、自分とミクトランが同格だなど何よりの罰、そして絶望だ。
それに例え同じだろうと、最後に主催者を殺害することは、世界を否定し散った希望を肯定することに為り得る。
――――しかし、それは理屈の話。
カイルの残像がだぶってしまった時点で、彼は彼女を殺せないのだ。
いや、守ろうとする姿が映ったとでも言えばいいか。
カイルが守ったからこそ、彼女は今ここに生きているのだという事実が彼を呪縛する。
少年は何も求めないと、何もしないと言った。そして彼を許し、彼は少年の死を以て許しを拒んだ。
けれども、どんなに仲間を殺すと決意しても。
カイルを贖罪すべき指針と定め、何としてでも死守し、この地で共にあった彼の記憶が早々に失せる筈がなかった。
己の過失で手からすり抜けてしまった少年は、少年だけは、再び殺せる筈がなかった。
再度カイルの死を繰り返すなど、それこそ至高の罰だろうと、彼には出来ない。
罪を背負うのが怖いのではない。罰を与えられるのが怖いのではない。
ただ――彼は生きなければならない存在だった。

希望はこの世界の住民ではない。
いつの時代、どこの場所でも、受け入れ難いものを追い出してきた負の歴史は同じ。
最早彼はどんな理由を付そうと、この狂った世界の住民、渡ってしまった側の人間だ。
だからこの世界では正しい住人であろうと、それ以外では狂ったヒトに違いないのだ。
汚れを知らぬ、真っ直ぐで綺麗な瞳は、そんな彼には眩し過ぎて辛い。
全てを罰と称して殺戮を繰り返す彼の汚れを、如実に曝け出させるようで怖い。
あなたは間違っていると、それでいてまだやり直せると赦しを与える、その希望の強さが怖い。

身体を触れられる感覚がして、ぴくりと身体を蠢かせ彼は緩慢と面を上げる。
「……あんたは……最後に殺す」
慈愛と悲哀と困惑に満ちた表情で手を差し伸ばす彼女を見、呟く。
「俺とあんただけになって……もうどうしようもなくなってから……殺してやる」
彼の声は押し殺したかのように低く、震え、彼の表情は睨みつけるかのように鋭利な無表情だった。
粗雑に掴んだディムロスに熱と冷気が交わり、風が生まれる。
その一瞬の暴風は彼女の長いブロンドヘアーを大きく靡かせた。
彼女は、その異常性と突発的な場の流れに気付いたのだろう。
はっと彼を見遣ったが、彼は視線を合わせることもなく、一陣の風の如く後ろの開いた穴から飛び降りていった。
一段と強い風の唸り声がしたが、その後の部屋に残ったのは侘しい沈黙だけだった。


彼女はぼんやりと、膝を崩し座り込んだまま目の前を見ていた。何も見えない目の前を見ていた。
それでも、前に広がる風景を空想した。
今日は、知らない人がよく訪れる日だ。
悲鳴の前に現れたのは、1本の樹のように静かな、しかし寂しさを内に秘めた闇。
そしてたった今現れたのは、万年氷のように冷たく、しかし苦悩を内に湛えた闇。
声も、話し方も、多分性格も違う。それでもその2人はどこか似ていた。
本質的な所ではよく似ていた――何よりも、2人は癒されなくてはならない存在だった。


ああ、神様。
私は先程、貴方に生きている意味を問いました。
少し、分かった気がします。

生きている意味など無意味に近いのですね。人は、生を受けたということそのものが、生きるべき理由。
人は、生きるために生きなければならない。
何故なら、私は尚もここに存在している。
本当に生きている意味がないのであれば、きっと問い掛ける前に、とうに私は生を絶っているでしょう。
今ここに生きている時点で、私は、私の心の奥底は生きるべき理由を見つけ、理解している。
そう、私の手は誰かを癒そうと動いた。
術が使えぬのなら言葉で。言葉が使えぬのなら、動作で。
私は、この絶望の淵でも他の誰かを癒そうとした。
それは、最早法術士の性。
他人を癒すことの出来る、癒すことで喜びや悲しみを共に分かち合う、私に与えられた至上の幸福。
私は、癒し癒されることなしには生きられないのですね。

私はあの人を助けてあげなくてはいけない。そして、クレスさんも……私が癒さなければならない。

例え今のクレスさんが私の知らないクレスさんでも、だからこそ、きっと苦しんでいる筈。
私は、あの人の力になってあげなくてはいけない。

待っていて下さい。今、今行きますから――――……


重い身体を這いずらせるようにして、彼女は彼を追い掛ける。
途中で横になった家具に躓いても、彼女は追い掛ける。
世界を映すことを否定された彼女の眼でも、ぼんやりとした僅かばかりの光は目視できる。
白く、白く淡い光だ。
それは闇に差し、切り開く、一筋の光の剣だ。彼女はそれを追い掛ける。
掴むように、重い手を伸ばした。

……
…………
ぐらりと彼女は足を踏み外した。


理解する間もなく、彼女の身体は地面に叩きつけられた。
唯一分かるのは、叩きつけられたような音と耐え難い全身の痛みのみ。
口から血が溢れ、更には滅多刺しにされた右腕の裂傷も開き血が流れ出ている。内臓から出血しているか、もしくは破裂しているだろう。
ただ、それよりも、身体が熱い。
全身が火に包まれたように熱く、それは地面が冷たいからこそ尚更強く感じ、
冷たいのは地面にぬるぬるとした鉄臭い液体が既に張ってあったからだった。
それが先程死んだ少年の液体だと理解したからだった。同時に、自分から出てくるものとも思えた。
彼女は今の身体で許された精一杯の錯乱をする。
ばたばたと暴れる度に水面の滴が飛び散り、ぽつぽつと彼女に付着する。
その無情な冷たさが、灼熱にも感じられる身体の熱を奪い去っていくようだった。
自分のせいでカイルは死んだのだと、私の身体も同じように朽ちていくのだと。
ふわ、と彼女の手に何かが当たった。
彼女は弱々しく手探り、何かを見つけ、握った。
細い布のようだった。何の変哲もないが、血の海に落ちたためにべっとりと濡れていることが感触で分かった。
しかし意識がぼんやりとしてきた彼女には、濡れている液体が血であることも既に理解に至らない。
もし彼女の目が見えたのなら、西から流れに流れ着いたその布が見慣れた赤さであることに気付けたのに。

血の冷たさと同じか別か、ささやかな冷気が混じり込んできた。
肌に刺さるような、悲痛ながらも確かな感触を持つ冷たさ。
彼女の常闇の世界に、ひとひらの白い光が舞い降りる。1つ、2つと増えていき、見上げる先から落ちてくる。
蛍の光のように、儚く、故に大切な一瞬一瞬の美しさを持って、彼女の肩へと降り積もる。
暗闇を照らす街灯が現れ、全く見通せぬ闇に、波紋が広がっていくように淡い光が満ちていく。
映し出された民家の灯。窓の格子に作り出されたつらら。屋根に均等に重なる雪。
その風景は、冷たい筈なのに温もりも帯びていた。
街路の雪に刻まれた足跡を隠すように、新たな雪が静かに降りてくる。
寄りかかる壁は外気に冷やされて、それでもどこか木材特有の暖かさを衣越しに身体で感じる。
耳に付けている白馬のイヤリングが、ささやかな風に揺れた気がした。
ロングヘアーの金髪が頬を撫でて、ふっと、彼女は顔を横に動かす。
隣には、優しそうな笑みを湛えたあの人がいた。
その人は彼女の隣から立ち上がり、暗闇を照らす青白い光の中、雪の道を歩いていく。
広く赤いマントが揺れて、鎧とグリーブがそれぞれ触れ合い金属音が鳴る。
その中でさく、さくと雪を踏む音が、遠ざかっていくという事実を告げる。
彼女はその人を追おうと立ち上がろうとした。しかし何故か足に力が入らない。
壁に寄りかかったまま、彼女はその人を見つめるしかなかった。
1度、少年と青年の境目のような、甘い顔立ちをしたその人は振り返る。
はにかんでいたけれど、少し寂しげな笑顔だった。
どんどんと小さく遠くなっていく背を見て、彼女は我に返ると同時に、とても嫌な感触がした。


駄目。私は、あの人を、クレスさんを癒してあげなければいけない。
私は、生きなければいけない。


彼女は知らず知らずに彼のバンダナを強く握り、身体を引き摺らせて前へと進み始めた。
動かない身体を無理矢理にでも動かさせる。
世界が命じる禁止を振り払うかのように、手を伸ばし、そして1歩彼女は踏み出す。
それは牛歩のように遅かったが、それでも彼女は血を吐き前へと進む。
息を弾ませ、例え身体が軋もうと、時折止まりながらも彼女はずるずると左手の力だけで進む。
手袋が土塗れになり、破けてしまい、晒された手が地に擦れ血液を流したとしても。
その瞳は、何も映さなくとも確かに光を宿し、強い力を持っていた。
(私は、生きて、)
一体、どれくらい進んでいるのかも分からない。
それでも彼女は諦めずに、身体を地面に臥せさせたまま少しずつ進もうとする。
衰弱しきっていた身体はやがて動かなくなってきた。
指がぴくぴくと動くだけで、彼女の重々しい身体を進ませるだけの力はなくなっていた。
(生きて、生きて、)
それでも手は動く。その先に待っている人を想い、必死に動こうとする。
(私は、絶対に、)
握ったままの彼女の左手が、真っ直ぐに伸ばされる。


――待って、待って……クレスさん…………


「うえう、ぁ……」
あなたを、癒せたならば。
その願いも、大切な人の名も最早ろくに告げられぬ口舌の前に、弱々しい声となってアーリィと共に溶けていった。
太陽は西に傾き、夕方の寒さを匂わせ始めている。
薄ら日を振り絞らせたかのように、鐘楼台に鮮やかな黄金色の西日が差した。


中央広場へと繋がる道を逆行しながら、彼は走っていた。
全てを振り払い、何の音も聞かずに済ませるかのような疾走。
彼の身体には未だに震えが走っていた。
『ヴェイグ、何故殺さなかった?』
その質問が無粋だと分かっていながらも、何よりも理由が分かっていても、ディムロスは聞かずにはいられなかった。
ディムロスもまた、彼と同じものを見出していた。
しかし彼は全てを滅すると決めた。彼が引き返せば、彼自身が壊れてしまうと思っていたからだ。
だが、彼は何も答えない。ただ走り続け、後方には1度も目を遣ろうとしない。
逃げ、だろうか。
理屈はごまんと思いつくが、カイルを守った彼女は希望の側の人間で、その目が怖かったのだから、逃げと銘ずるには充分だった。
彼には、彼女を殺しも救いも出来ないのだ。
何もしないのなら、その場から逃げてしまった方が余程気が楽だった。
何もしないことで停滞に流れる、息苦しく居た堪れない空気の中にいるより、余程。
その方が、後から更に狂ってしまった時にもっと簡単に殺せるに違いなかった。
どすん、と土の入った袋が落ちたような音がした。
彼は急に立ち止まり、即座に振り返る。銀髪が風に荒々しく揺れる。
何が見えるということはない。日が傾いて、鐘楼台に黒々とした陰鬱な影が落ちているだけだ。
目を大きくしていた彼は、ふっと目を細め冷えた息をゆっくりと吐き出した。
「どんな選択だろうと、待っているのは誤りだけ……」
彼の目には、ほんの僅かに色を点した世界が再びモノトーンに戻っていくのが映っているのだろう。
世界は希望を贄とした。
振り返った身体を元に戻し、ディムロスに一瞥を投げて確認し、彼は再び進もうとしていた道を歩き始める。
ディムロスは痛感する。本人の意思はどうであろうと、彼女は確かに彼を救ったのだ、と。

「行こう、ディムロス。やはりこの世界は間違っている」


【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】
状態:HP35% TP60% リオンのサック所持 左腕重度火傷 絶望 深い怒り
   両腕内出血 背中に3箇所裂傷 中度疲労 左眼失明 胸甲無し 半暴走 迷い?
所持品:ミトスの手紙 メンタルバングル S・D
    45ACP弾7発マガジン×3 ナイトメアブーツ ホーリィリング
    エメラルドリング クローナシンボル フィートシンボル エターナルソード
基本行動方針:全部を終わらせる
第一行動方針:残りの参加者を殺す
第二行動方針:優勝してミクトランを殺す
現在位置:C3村東地区・鐘楼台→中央広場

【SD】
状態:自分への激しい失望及び憤慨 後悔 ヴェイグの感情に同調 感情希薄?
基本行動方針:全てを終わらせる
第一行動方針:ヴェイグが心配
第二行動方針:ロイドやキール達の安否が気になる
第三行動方針:エターナルソードをミトスから死守する
現在位置:C3村東地区・鐘楼台→中央広場


放置アイテム一覧:
サンダーマント ジェイのメモ 要の紋@マーテル ミントの帽子


【ミント=アドネード 死亡確認】
【残り7名】

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