見上げれば、真っ青な空がどこまでも広がっている。
とても爽やかで、暖かくて、気持ちがいい。
だというのに、彼女の気分はそんな空模様とは似ても似つかぬものだった。
まだ少女といえる年齢の彼女は、草原を歩いていた
。 肩を怒らせて歩く彼女の髪を風が揺らしていく。短く切られたダークグリーンの髪が頬をくすぐるが、気にも留めず彼女は歩く。
「殺し合いをさせるなんて、許せないよ。人の命をなんだと思ってるの」
ぶつぶつ呟きながら彼女は歩みを進める。
「やめさせなきゃ。こんなの、絶対」
長いスカートをなびかせ、彼女はひたすら歩き続ける。すると、小高い丘が見えてきた。
草原の柔らかい感触を靴越しに感じつつ、彼女は真っ直ぐそこへ向かっていく
。 その途中で、彼女は初めて足を止める。
丘のほうから男の声が聞こえてきたからだ。彼女は警戒する。ゲームに乗った人間が少ないとはいえない。
現に、一人殺されていた。主催者ではなく、同じ参加者の手で。そのため、不用意に近づくのは危険だと判断した。
風に乗って聞こえてくる声に耳を傾ける。聞こえてくる声は一人分だ。
その声はリズムを刻み、空気を渡って彼女のもとへと届く。それは、会話や怒声ではない。まるで。
「歌……?」
そう。歌のように聞こえた。彼女はそれに惹かれるように、小走りで丘のほうへと向かった。
とても爽やかで、暖かくて、気持ちがいい。
だというのに、彼女の気分はそんな空模様とは似ても似つかぬものだった。
まだ少女といえる年齢の彼女は、草原を歩いていた
。 肩を怒らせて歩く彼女の髪を風が揺らしていく。短く切られたダークグリーンの髪が頬をくすぐるが、気にも留めず彼女は歩く。
「殺し合いをさせるなんて、許せないよ。人の命をなんだと思ってるの」
ぶつぶつ呟きながら彼女は歩みを進める。
「やめさせなきゃ。こんなの、絶対」
長いスカートをなびかせ、彼女はひたすら歩き続ける。すると、小高い丘が見えてきた。
草原の柔らかい感触を靴越しに感じつつ、彼女は真っ直ぐそこへ向かっていく
。 その途中で、彼女は初めて足を止める。
丘のほうから男の声が聞こえてきたからだ。彼女は警戒する。ゲームに乗った人間が少ないとはいえない。
現に、一人殺されていた。主催者ではなく、同じ参加者の手で。そのため、不用意に近づくのは危険だと判断した。
風に乗って聞こえてくる声に耳を傾ける。聞こえてくる声は一人分だ。
その声はリズムを刻み、空気を渡って彼女のもとへと届く。それは、会話や怒声ではない。まるで。
「歌……?」
そう。歌のように聞こえた。彼女はそれに惹かれるように、小走りで丘のほうへと向かった。
丘の端に腰を下ろし、一人の青年が歌声を響かせている。隣にザックを置き、朗々と歌を唄う。
巨大な羽飾りが特徴的な帽子に、赤を基調とした服を纏っている。歌といい、服装といい、ひたすら目立っている。
その姿は、ゲームに乗った者にとっては的にしかならない。だが、彼は気にせず歌い続ける。
島全てに声を響かせるように。殺戮ゲームの参加者に、主催者に届かせるように。
風に乗って、空気を泳いで、人々の心を動かそうとするように。
「あの……」
そして歌声は、一人の観客を呼ぶ。後ろからの声に青年が振り返る。そこにいたのはダークグリーンの髪をした少女だった。
少女と青年は、向かい合って座っていた。青年はにっこりと微笑むと、口を開く。
「俺はジョニー=シデン。人呼んで蒼天の稲妻たぁ、俺のことさ」
「私はファラです。ファラ=エルステッド」
ファラはつられて名乗り、ぺこりと会釈する。
互いに自己紹介を終えると、ジョニーは満足そうにうんうんと頷く。
「せっかくのお客さんだ。一曲歌うかぁ」
ジョニーはそう言うと立ち上がりかける。ファラは慌ててそれを制止する。
「あの、ジョニーさん」
「ん?」
「ジョニーさんもこのゲームに参加させられた人、ですよね?」
あまりにもこの状況に似つかわしくない彼に、ファラは思わず尋ねてしまう。
「おう、そうだぜ。大変なことになったよな」
腕を組み、そう言うジョニーの声はあくまで軽く、あまり大変そうには聞こえない。
ファラはそんなジョニーに疑問をぶつける。先ほどからずっと思っていた疑問を。
「それなのに、どうして歌を唄っていたんですか?」
「こんな状況、だからさ」
ジョニーの笑みが、少しだけ愁いを帯びて歪む。真面目な口調になり、
「俺は臆病者だからな。死ぬのは怖いし、誰かを殺すのも怖い。いや、誰だって死ぬのは怖いんだろうな」
風が優しく吹き、丘の上の草を揺らす。ジョニーは目を細めてそれを眺め、言葉を紡ぎ続ける。
「それだけじゃない。誰かが死ねば、悲しむ人は必ず出てくるもんだ。だから俺は歌うのさ。
殺し合いをやめさせるために。無駄な悲しみを生み出さないために、な」
そこまで言うと、ジョニーは愁いを消し、表情を純粋な微笑みに戻す。
「それにこうやって唄っていれば、俺に戦意がないってのを伝えられるだろ?」
ジョニーの言葉に、ファラは頷く。ジョニーの声は、言葉は、ウソにはとても思えなかった。
こうやって、殺し合いを望んでいない人がいることにファラは嬉しさと心強さを感じる。
「私も同じ考えです。殺し合いなんて絶対に止めさせたいと思ってます」
その言葉は力強い。ジョニーは嬉しそうに首を縦に振る。
「よっし。ここで会ったのも何かの縁だ。一緒に行動しないか?」
言い、彼は右手を差し出す。ジョニーの申し出を断る理由などファラにはない。だから、ファラは差し出された手を握り返した。
「よろしくお願いしますね」
「こっちこそな。それと、敬語じゃなくていいぜ。名前も呼び捨てでいいしな」
「あ、うん。分かったよ、ジョニー」
「さて、そうと決まればこれからどうするかだな」
ジョニーはザックの中から名簿と地図を取り出す。ファラも同じものを取り出し、名簿のいくつかをジョニーに見せる。
「私の仲間もゲームに参加させられてる。心配だし、探したいの」
するとジョニーも同じように、いくつかの名簿をファラに見せる。
「実は俺も仲間がいるんだ。それじゃ、とりあえずお互いの仲間との合流を目的にするかな」
お互いに目を合わせ、頷きあう。
ファラは思う。大丈夫だ、と。自分の仲間と、ジョニーの仲間が集まれば結構な人数となる。
きっと他にも、殺し合いを望んでいない人は多くいるはずだ。そんな人がみんなで集まって協力すれば、きっと何とかできる。
「うん、イケるイケるっ」
ファラは高く手を掲げる。希望を掴み取るように。
巨大な羽飾りが特徴的な帽子に、赤を基調とした服を纏っている。歌といい、服装といい、ひたすら目立っている。
その姿は、ゲームに乗った者にとっては的にしかならない。だが、彼は気にせず歌い続ける。
島全てに声を響かせるように。殺戮ゲームの参加者に、主催者に届かせるように。
風に乗って、空気を泳いで、人々の心を動かそうとするように。
「あの……」
そして歌声は、一人の観客を呼ぶ。後ろからの声に青年が振り返る。そこにいたのはダークグリーンの髪をした少女だった。
少女と青年は、向かい合って座っていた。青年はにっこりと微笑むと、口を開く。
「俺はジョニー=シデン。人呼んで蒼天の稲妻たぁ、俺のことさ」
「私はファラです。ファラ=エルステッド」
ファラはつられて名乗り、ぺこりと会釈する。
互いに自己紹介を終えると、ジョニーは満足そうにうんうんと頷く。
「せっかくのお客さんだ。一曲歌うかぁ」
ジョニーはそう言うと立ち上がりかける。ファラは慌ててそれを制止する。
「あの、ジョニーさん」
「ん?」
「ジョニーさんもこのゲームに参加させられた人、ですよね?」
あまりにもこの状況に似つかわしくない彼に、ファラは思わず尋ねてしまう。
「おう、そうだぜ。大変なことになったよな」
腕を組み、そう言うジョニーの声はあくまで軽く、あまり大変そうには聞こえない。
ファラはそんなジョニーに疑問をぶつける。先ほどからずっと思っていた疑問を。
「それなのに、どうして歌を唄っていたんですか?」
「こんな状況、だからさ」
ジョニーの笑みが、少しだけ愁いを帯びて歪む。真面目な口調になり、
「俺は臆病者だからな。死ぬのは怖いし、誰かを殺すのも怖い。いや、誰だって死ぬのは怖いんだろうな」
風が優しく吹き、丘の上の草を揺らす。ジョニーは目を細めてそれを眺め、言葉を紡ぎ続ける。
「それだけじゃない。誰かが死ねば、悲しむ人は必ず出てくるもんだ。だから俺は歌うのさ。
殺し合いをやめさせるために。無駄な悲しみを生み出さないために、な」
そこまで言うと、ジョニーは愁いを消し、表情を純粋な微笑みに戻す。
「それにこうやって唄っていれば、俺に戦意がないってのを伝えられるだろ?」
ジョニーの言葉に、ファラは頷く。ジョニーの声は、言葉は、ウソにはとても思えなかった。
こうやって、殺し合いを望んでいない人がいることにファラは嬉しさと心強さを感じる。
「私も同じ考えです。殺し合いなんて絶対に止めさせたいと思ってます」
その言葉は力強い。ジョニーは嬉しそうに首を縦に振る。
「よっし。ここで会ったのも何かの縁だ。一緒に行動しないか?」
言い、彼は右手を差し出す。ジョニーの申し出を断る理由などファラにはない。だから、ファラは差し出された手を握り返した。
「よろしくお願いしますね」
「こっちこそな。それと、敬語じゃなくていいぜ。名前も呼び捨てでいいしな」
「あ、うん。分かったよ、ジョニー」
「さて、そうと決まればこれからどうするかだな」
ジョニーはザックの中から名簿と地図を取り出す。ファラも同じものを取り出し、名簿のいくつかをジョニーに見せる。
「私の仲間もゲームに参加させられてる。心配だし、探したいの」
するとジョニーも同じように、いくつかの名簿をファラに見せる。
「実は俺も仲間がいるんだ。それじゃ、とりあえずお互いの仲間との合流を目的にするかな」
お互いに目を合わせ、頷きあう。
ファラは思う。大丈夫だ、と。自分の仲間と、ジョニーの仲間が集まれば結構な人数となる。
きっと他にも、殺し合いを望んでいない人は多くいるはずだ。そんな人がみんなで集まって協力すれば、きっと何とかできる。
「うん、イケるイケるっ」
ファラは高く手を掲げる。希望を掴み取るように。
【ファラ 生存確認】
所持品:数、内容不明
現在位置:D-2の丘の上
第一行動方針:仲間との合流
最終行動方針:ゲームからの脱出
所持品:数、内容不明
現在位置:D-2の丘の上
第一行動方針:仲間との合流
最終行動方針:ゲームからの脱出
【ジョニー 生存確認】
所持品:数、内容不明
現在位置:D-2の丘の上
第一行動方針:仲間との合流
最終行動方針:ゲームからの脱出
所持品:数、内容不明
現在位置:D-2の丘の上
第一行動方針:仲間との合流
最終行動方針:ゲームからの脱出