和やかな森。小鳥のさえずる美しい声も聞こえてくる。
キャンプやピクニックをやるとするなら正に絶好の日和だろう。
何の気なしに倒れこみ、空と森と鳥達の織り成す幻想的な雰囲気に酔いしれるのもいいだろう。
静かに目を閉じ、ゆったりとした時の流れに身をゆだねるのもいい。
だが、そうは出来ない。出来るはずが無い。
この殺戮の部隊と化した絶海の孤島では、そんなことをする者は
自殺志願者を除いて居るはずが無い。
キャンプやピクニックをやるとするなら正に絶好の日和だろう。
何の気なしに倒れこみ、空と森と鳥達の織り成す幻想的な雰囲気に酔いしれるのもいいだろう。
静かに目を閉じ、ゆったりとした時の流れに身をゆだねるのもいい。
だが、そうは出来ない。出来るはずが無い。
この殺戮の部隊と化した絶海の孤島では、そんなことをする者は
自殺志願者を除いて居るはずが無い。
・・・・はずなのだが。
「ぐっ・・・・・・あの・・・雷娘・・・」
一人の男がうつぶせに倒れこんでいる。森のど真ん中で。
ボサボサの赤髪に、片目を覆う眼帯。上半身裸のその男・・・モーゼス・シャンドルは倒れていた。
彼は自殺志願者だろうか。いや、そんなことは無いだろう。だったら試合前に首コキャしてもらった方が早い。
全身の筋肉をピクピクさせながら、両腕を支えにして腰を浮かせつつ
背中を反らせながら必死な形相で体を起こそうとしている。
彼の仲間の一人に言わせれば 「モーゼスさん、新手の筋トレですか?」 とでも言っただろう。
一人の男がうつぶせに倒れこんでいる。森のど真ん中で。
ボサボサの赤髪に、片目を覆う眼帯。上半身裸のその男・・・モーゼス・シャンドルは倒れていた。
彼は自殺志願者だろうか。いや、そんなことは無いだろう。だったら試合前に首コキャしてもらった方が早い。
全身の筋肉をピクピクさせながら、両腕を支えにして腰を浮かせつつ
背中を反らせながら必死な形相で体を起こそうとしている。
彼の仲間の一人に言わせれば 「モーゼスさん、新手の筋トレですか?」 とでも言っただろう。
「ふんぎぃぎぎぎ・・・・ヒョオッ!」
勢いを付け一気に立ち上がった。
そして辺りを見渡し、がなるように言った。
「あの雷娘・・・どぉこ行きよった!」
しかし目的の人物の姿は見当たらない。当たり前だ。何分経ったと思ってるんだ。
そして彼はどれくらい痺れていただろうと思った。
数十分前にピンク色の髪をした少女に痺れさせられた上にダークボトルまでふっかけられてしまった。
動けない間に魔物が襲ってきたらどうしようかと内心不安だったが、結局魔物は襲いかかって来なかった。
勢いを付け一気に立ち上がった。
そして辺りを見渡し、がなるように言った。
「あの雷娘・・・どぉこ行きよった!」
しかし目的の人物の姿は見当たらない。当たり前だ。何分経ったと思ってるんだ。
そして彼はどれくらい痺れていただろうと思った。
数十分前にピンク色の髪をした少女に痺れさせられた上にダークボトルまでふっかけられてしまった。
動けない間に魔物が襲ってきたらどうしようかと内心不安だったが、結局魔物は襲いかかって来なかった。
「おらんのか・・・」
一人つぶやき、空を見上げた。
「どうするかの、これから」
まだ少し体に痺れは残っているが、グズグズしてもいられない。
しかしいざ動き出そうとすると、自分がどこに行くべきか分かっていない自分がいる。
とにかく生き残ると決めたとはいえ、流石に一人では心もたない。
まずは仲間達と─セネル、ジェイ、シャーリィといった─合流するのが先決だ。
しかしだからといってどこに行けば合流できるのか。
「・・・・・・・」
頭がこんがらがってきた。細かいことを考えるのは止めて、とりあえず歩こう。
五分は歩いただろうか。ようやく森の出口が見えてきた時──
「うぉっ!!」
モーゼス目掛けて棒状の何かが飛んできた。
片足を上げて避け、すぐにそれが木製の矢だと分かった後、続けざまに四発来た。
体を大きく反らせ、バック転をしてかわす。地面に杭が四つ立った。
「誰じゃ!!」
彼は吼えると、今しがた自分を襲った矢を引っこ抜き、矢が飛んできた方向へ投げた。
すかさず動きがあった。茂みが揺れ、男が飛び出した。
モーゼスは男を見た。髪を後ろに撫で付け、一部の髪が特徴的に前に飛び出している。
一目で自家製と分かる(だが完成度は下手な武器屋の物より格段にいい)木製の弓と、
これも自分で削って作ったのだろう、木矢の束を背中にくくりつけている。
「何さらすんじゃい!」
距離、五、六メートルといったところか。モーゼスは男と対峙した。
「隠そうともしない邪悪な気配をたどって来てみれば・・・」
男が喋った。その瞬間モーゼスは思い出した。あの少女だ。アイツがやったダークボトルか・・・。
クソが。彼は内心そう思った。
「ええか、よう聞け。ワイは・・・」
彼の言葉は続かなかった。男が弓矢を構え、再び射ってきた。
咄嗟に横っ飛びをする。
男がまた撃つ。
転がる。
三たび撃つ。
両手を地面に打ちつけ跳ね飛ぶ。
男はいつの間にか距離を取っていた。
「ちょ、ちょっと待てぃ!話を聞けや!!」
「悪いが、俺はもうこれに乗ると決めた」
そう喋る男の声はひどく不安定で、冷たく感じられた。
「なんじゃと!?」
モーゼスは背中のランスに手をかけ、男の足元目掛けて投げた。
男はたじろぐことなく軽く跳躍してかわすと、手早く矢を三連射してきた。
それを木の後ろに隠れてやり過ごす。
しばらくの後、顔を出し反撃に出ようとする。
が、そこで彼は自分に支給されたランスが一本だったことに気付く。
動揺してる内に男を一瞬見失った。
猛烈に嫌な予感がした。彼はほとんど本能でその場から離れた。途端に彼が居た場所に矢が連続して突き刺さった。
そのまま彼は地面に乱雑して立っている矢を拾いにかかった。
刹那、右脚に激痛が走った。目をやると、右ふくらはぎに木矢が突き刺さっている。
痛みに顔をしかめながらも、男の位置を確認すると手当たり次第に矢を拾っては男に投げた。
男も油断無く攻撃を避け続けた。モーゼスの正確な投げに驚いているかもしれなかった。
男が矢を放つ。モーゼスが投げ返す。また放つ。返す。
群立している木々に邪魔されながら、二人の撃ちあいは熾烈になっていった。
そうしてしばらくの後、モーゼスは勝利を確信した。
男もそのことに気付いたようだ。
「弾切れのようやな!」
モーゼスが叫んだ。男が背中に仕込んでいる木矢は、全て尽きていた。
そして彼は回収した矢を全て手に取ると、まとめて上空に投げた。
少し腕が痺れた。少女にやられたのがまだ残っているのか。
「震天!」
続けてそう叫んだ。最も、本来彼が使う、一本の槍が分裂して降るそれとは少し違うようだが。
同時に、矢がばらけて一気に男の頭上に降っていった。
男は一瞬驚愕した。しかしすぐに表情を戻すと、矢を持たずに弓を構えた。
「屠龍!!」
そして放った。紅い光線が幾重にも飛び出し、矢を全て撃ち落した。
「な・・・!?」
驚きのあまり、男がモーゼスと同じように矢を拾っていることに気付くのが一瞬遅れた。
「くっ!」
彼は急ぎ走った。右足が異常に痛む。感覚が麻痺してきている。
彼のすぐ足元に矢が刺さった。だが彼は見向きもしない。目指すものは一つだった。
「・・・!」
男が気付いた。モーゼスは先程投げた己の槍を拾いに行っていた。
あと少し。モーゼスは必死に走った。あと十メートル・・・五・・・一・・・
左手を伸ばして取ろうとする。だが次の瞬間左手が貫かれた。血が流れる。
彼は歯を食いしばり右手を出した。そして握った。彼の獲物を。
振り向くと、こちらを向き、弓矢を構え、正に男が最後の一撃を放とうとしている所だった。
モーゼスは右手を反らせ、男に狙いを付けた。槍に狼の闘気が纏わった。
これがワイの渾身の一撃じゃ。モーゼスはそう頭の中でつぶやいた。そして一気に投げた──
「ヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
勝負を分けたのはスピードだった。
大きくふりかぶり全身を使って槍を投げるモーゼスと、
弓を構え腕を引く男とで動作速度が違っていた。
結果、先に男の矢が先にモーゼスの右肩に当たり、彼の渾身の一撃は力なく地面に墜落した。
「う、ぐ・・・・・・・」
両膝をつき、力なくうなだれるモーゼスに男は静かに近づいていった。
「なんでじゃ・・・」
頭を垂れたまま、モーゼスはそうつぶやいた。
「言っただろう。俺はこれに乗ると」
「なんでこんな殺し合いに乗るんじゃ!?キサマにだって、大切な仲間や家族がおるじゃろう!?」
途端、男の表情が凍りついた。瞳孔が大きく開かれ、身体が震えだした。
「・・・?」
モーゼスは立ち上がり男の表情を覗いた。
尋常ならざる男の顔に、逆にこちらの言葉が詰まった。
「俺は・・・」
男が喋りだした。精神の内側を削り取るような、悲痛な声だった。
「俺の妹は・・・殺された!このゲームで!!」
男の告白にモーゼスは止まってしまった。
「妹は・・・アミィは・・・殺されたんだ、無残に・・・ひどい有様だった・・・めちゃくちゃで・・・俺は・・・
あいつを守ることを最優先して動いていた・・・そして見つけた・・・けどあいつはもう死んでいた!殺された!!
このゲームに参加している、誰かにやられたんだ!!!」
モーゼスは黙って男の話を聞いていた。呼吸することすら忘れそうだった。
家族を失う・・・モーゼスは自分の大切な"家族"を思い出していた。自分を兄貴と慕う、彼らを。
そして仲間達・・・彼らも大事な家族だった。生意気な弟や憧れの姉さんもそこに居た。
「けど・・・あいつを守れなかったけど・・・希望はあった。
あの主催者が言っていた、勝者が叶えれることが出来る願い・・・それで・・・あいつを・・・
俺はそしてこのゲームに勝つ。その為なら誰が相手だろうと容赦しない。
その中でもアミィを殺したやつは必ず俺が殺す。だから・・・俺はこのゲームに乗る」
「アホォ!!!!」
突然モーゼスが叫んだ。両手、右足から血を流しながらも、一歩男に近寄った。まだ痺れていた。
「家族がそんなことを望むわけ無いじゃろ!!ええか、別れた家族が望むのは、
残ったモンの幸せじゃ!残されたモンが手を血に染めて自分を生き返らせても、
嬉しくもなんとも無い!悲しいだけじゃ!!自分が好きじゃった相手が変わってしまって悲しいんじゃ!!」
男は黙っていた。男の決心が揺らいでいるかもしれなかった。
「ええか・・・」
更に一歩踏み出そうとした。しかし足が痺れて動かない。あの雷娘、今度会ったらゲンコツ程度じゃすまさん。
「探すんじゃ。道を。他の奴等を殺さんで済む方法を。なんとかしてあの偉そうな奴をのして、
みんなが助かる道を。ひょっとしたらゲームの勝者にならんでも願いを叶えることができるかもしれん」
そんなことが出来るのか、モーゼスは分からなかった。だが、家族を失い、そして自らの手で
大切な仲間達を手にかけ堕ちようとしている男を目の前にして、黙っていることは出来なかった。
ふとモーゼスはこちらを見る男の視線が変わっていることに気付いた。
自分を哀れんでいるような、虚ろな瞳だった。
「な?ほれじゃあ、とりあえず、ワイと、いっそに、行かんか?ワイはモーゼスや」
うまく舌が回らない。なんでじゃ。
「・・・・・」
男は鉄のように押し黙っている。モーゼスは呼吸が苦しくなっていることに気付いた。
「悪いが・・・」
男が口を開いた。なぜか目線をそらしている。その口調は、死刑を宣告する裁判官のように冷酷だった。
「モーゼス、お前とは一緒に行けない」
「なんでじゃ!」
男が再びモーゼスの顔を見た。また、あの瞳だった。
そして、言った。聞き取れるかどうかのか細い声だった。
一人つぶやき、空を見上げた。
「どうするかの、これから」
まだ少し体に痺れは残っているが、グズグズしてもいられない。
しかしいざ動き出そうとすると、自分がどこに行くべきか分かっていない自分がいる。
とにかく生き残ると決めたとはいえ、流石に一人では心もたない。
まずは仲間達と─セネル、ジェイ、シャーリィといった─合流するのが先決だ。
しかしだからといってどこに行けば合流できるのか。
「・・・・・・・」
頭がこんがらがってきた。細かいことを考えるのは止めて、とりあえず歩こう。
五分は歩いただろうか。ようやく森の出口が見えてきた時──
「うぉっ!!」
モーゼス目掛けて棒状の何かが飛んできた。
片足を上げて避け、すぐにそれが木製の矢だと分かった後、続けざまに四発来た。
体を大きく反らせ、バック転をしてかわす。地面に杭が四つ立った。
「誰じゃ!!」
彼は吼えると、今しがた自分を襲った矢を引っこ抜き、矢が飛んできた方向へ投げた。
すかさず動きがあった。茂みが揺れ、男が飛び出した。
モーゼスは男を見た。髪を後ろに撫で付け、一部の髪が特徴的に前に飛び出している。
一目で自家製と分かる(だが完成度は下手な武器屋の物より格段にいい)木製の弓と、
これも自分で削って作ったのだろう、木矢の束を背中にくくりつけている。
「何さらすんじゃい!」
距離、五、六メートルといったところか。モーゼスは男と対峙した。
「隠そうともしない邪悪な気配をたどって来てみれば・・・」
男が喋った。その瞬間モーゼスは思い出した。あの少女だ。アイツがやったダークボトルか・・・。
クソが。彼は内心そう思った。
「ええか、よう聞け。ワイは・・・」
彼の言葉は続かなかった。男が弓矢を構え、再び射ってきた。
咄嗟に横っ飛びをする。
男がまた撃つ。
転がる。
三たび撃つ。
両手を地面に打ちつけ跳ね飛ぶ。
男はいつの間にか距離を取っていた。
「ちょ、ちょっと待てぃ!話を聞けや!!」
「悪いが、俺はもうこれに乗ると決めた」
そう喋る男の声はひどく不安定で、冷たく感じられた。
「なんじゃと!?」
モーゼスは背中のランスに手をかけ、男の足元目掛けて投げた。
男はたじろぐことなく軽く跳躍してかわすと、手早く矢を三連射してきた。
それを木の後ろに隠れてやり過ごす。
しばらくの後、顔を出し反撃に出ようとする。
が、そこで彼は自分に支給されたランスが一本だったことに気付く。
動揺してる内に男を一瞬見失った。
猛烈に嫌な予感がした。彼はほとんど本能でその場から離れた。途端に彼が居た場所に矢が連続して突き刺さった。
そのまま彼は地面に乱雑して立っている矢を拾いにかかった。
刹那、右脚に激痛が走った。目をやると、右ふくらはぎに木矢が突き刺さっている。
痛みに顔をしかめながらも、男の位置を確認すると手当たり次第に矢を拾っては男に投げた。
男も油断無く攻撃を避け続けた。モーゼスの正確な投げに驚いているかもしれなかった。
男が矢を放つ。モーゼスが投げ返す。また放つ。返す。
群立している木々に邪魔されながら、二人の撃ちあいは熾烈になっていった。
そうしてしばらくの後、モーゼスは勝利を確信した。
男もそのことに気付いたようだ。
「弾切れのようやな!」
モーゼスが叫んだ。男が背中に仕込んでいる木矢は、全て尽きていた。
そして彼は回収した矢を全て手に取ると、まとめて上空に投げた。
少し腕が痺れた。少女にやられたのがまだ残っているのか。
「震天!」
続けてそう叫んだ。最も、本来彼が使う、一本の槍が分裂して降るそれとは少し違うようだが。
同時に、矢がばらけて一気に男の頭上に降っていった。
男は一瞬驚愕した。しかしすぐに表情を戻すと、矢を持たずに弓を構えた。
「屠龍!!」
そして放った。紅い光線が幾重にも飛び出し、矢を全て撃ち落した。
「な・・・!?」
驚きのあまり、男がモーゼスと同じように矢を拾っていることに気付くのが一瞬遅れた。
「くっ!」
彼は急ぎ走った。右足が異常に痛む。感覚が麻痺してきている。
彼のすぐ足元に矢が刺さった。だが彼は見向きもしない。目指すものは一つだった。
「・・・!」
男が気付いた。モーゼスは先程投げた己の槍を拾いに行っていた。
あと少し。モーゼスは必死に走った。あと十メートル・・・五・・・一・・・
左手を伸ばして取ろうとする。だが次の瞬間左手が貫かれた。血が流れる。
彼は歯を食いしばり右手を出した。そして握った。彼の獲物を。
振り向くと、こちらを向き、弓矢を構え、正に男が最後の一撃を放とうとしている所だった。
モーゼスは右手を反らせ、男に狙いを付けた。槍に狼の闘気が纏わった。
これがワイの渾身の一撃じゃ。モーゼスはそう頭の中でつぶやいた。そして一気に投げた──
「ヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
勝負を分けたのはスピードだった。
大きくふりかぶり全身を使って槍を投げるモーゼスと、
弓を構え腕を引く男とで動作速度が違っていた。
結果、先に男の矢が先にモーゼスの右肩に当たり、彼の渾身の一撃は力なく地面に墜落した。
「う、ぐ・・・・・・・」
両膝をつき、力なくうなだれるモーゼスに男は静かに近づいていった。
「なんでじゃ・・・」
頭を垂れたまま、モーゼスはそうつぶやいた。
「言っただろう。俺はこれに乗ると」
「なんでこんな殺し合いに乗るんじゃ!?キサマにだって、大切な仲間や家族がおるじゃろう!?」
途端、男の表情が凍りついた。瞳孔が大きく開かれ、身体が震えだした。
「・・・?」
モーゼスは立ち上がり男の表情を覗いた。
尋常ならざる男の顔に、逆にこちらの言葉が詰まった。
「俺は・・・」
男が喋りだした。精神の内側を削り取るような、悲痛な声だった。
「俺の妹は・・・殺された!このゲームで!!」
男の告白にモーゼスは止まってしまった。
「妹は・・・アミィは・・・殺されたんだ、無残に・・・ひどい有様だった・・・めちゃくちゃで・・・俺は・・・
あいつを守ることを最優先して動いていた・・・そして見つけた・・・けどあいつはもう死んでいた!殺された!!
このゲームに参加している、誰かにやられたんだ!!!」
モーゼスは黙って男の話を聞いていた。呼吸することすら忘れそうだった。
家族を失う・・・モーゼスは自分の大切な"家族"を思い出していた。自分を兄貴と慕う、彼らを。
そして仲間達・・・彼らも大事な家族だった。生意気な弟や憧れの姉さんもそこに居た。
「けど・・・あいつを守れなかったけど・・・希望はあった。
あの主催者が言っていた、勝者が叶えれることが出来る願い・・・それで・・・あいつを・・・
俺はそしてこのゲームに勝つ。その為なら誰が相手だろうと容赦しない。
その中でもアミィを殺したやつは必ず俺が殺す。だから・・・俺はこのゲームに乗る」
「アホォ!!!!」
突然モーゼスが叫んだ。両手、右足から血を流しながらも、一歩男に近寄った。まだ痺れていた。
「家族がそんなことを望むわけ無いじゃろ!!ええか、別れた家族が望むのは、
残ったモンの幸せじゃ!残されたモンが手を血に染めて自分を生き返らせても、
嬉しくもなんとも無い!悲しいだけじゃ!!自分が好きじゃった相手が変わってしまって悲しいんじゃ!!」
男は黙っていた。男の決心が揺らいでいるかもしれなかった。
「ええか・・・」
更に一歩踏み出そうとした。しかし足が痺れて動かない。あの雷娘、今度会ったらゲンコツ程度じゃすまさん。
「探すんじゃ。道を。他の奴等を殺さんで済む方法を。なんとかしてあの偉そうな奴をのして、
みんなが助かる道を。ひょっとしたらゲームの勝者にならんでも願いを叶えることができるかもしれん」
そんなことが出来るのか、モーゼスは分からなかった。だが、家族を失い、そして自らの手で
大切な仲間達を手にかけ堕ちようとしている男を目の前にして、黙っていることは出来なかった。
ふとモーゼスはこちらを見る男の視線が変わっていることに気付いた。
自分を哀れんでいるような、虚ろな瞳だった。
「な?ほれじゃあ、とりあえず、ワイと、いっそに、行かんか?ワイはモーゼスや」
うまく舌が回らない。なんでじゃ。
「・・・・・」
男は鉄のように押し黙っている。モーゼスは呼吸が苦しくなっていることに気付いた。
「悪いが・・・」
男が口を開いた。なぜか目線をそらしている。その口調は、死刑を宣告する裁判官のように冷酷だった。
「モーゼス、お前とは一緒に行けない」
「なんでじゃ!」
男が再びモーゼスの顔を見た。また、あの瞳だった。
そして、言った。聞き取れるかどうかのか細い声だった。
「もう、毒が回る・・・・・・・・・」
男の声を理解するまでに時間がかかった。
理解した時にはモーゼスは大の字になって倒れていた。
全身が痺れて感覚が無くなっている。筋肉が痙攣を起こしている。意識が薄れていく。
いつからそうなっていたか、口から血があふれ出ていた。止まらない。
微かに男が見えた気がした。自分を見下ろして立っている。
「悪いな・・・・・・だが、もう決めたことなんだ」
男がそう言った。だがすでにそれはモーゼスに届いてはいなかった。
理解した時にはモーゼスは大の字になって倒れていた。
全身が痺れて感覚が無くなっている。筋肉が痙攣を起こしている。意識が薄れていく。
いつからそうなっていたか、口から血があふれ出ていた。止まらない。
微かに男が見えた気がした。自分を見下ろして立っている。
「悪いな・・・・・・だが、もう決めたことなんだ」
男がそう言った。だがすでにそれはモーゼスに届いてはいなかった。
男は振り返り、周囲に散乱した彼の矢とモーゼスの槍を回収した。
男の支給品は小さなナイフ一つだけだった。
とりあえず手ごろな木を削り、弓と矢をこしらえた。
そして矢の一本一本に毒を塗った。毒はアミィの支給品だった。
どういうわけかアミィを襲った輩は彼女の支給品に手を付けていなかった。
単に使用価値が無いと判断したか、それともそんなことをする余裕がなかったか。
いずれにせよ、必ず殺す。俺が。
モーゼスとの出会いで男の決意は揺らぎかけたが、その彼を殺した今、男の決意は一層固まっていた。
殺す。全員。そしてアミィと・・・仲間達を蘇らせる。
他の者はどうするかまだ考えていなかった。ただ、アミィを殺した奴は何があっても生き返らせるようなことにはしない。
男の支給品は小さなナイフ一つだけだった。
とりあえず手ごろな木を削り、弓と矢をこしらえた。
そして矢の一本一本に毒を塗った。毒はアミィの支給品だった。
どういうわけかアミィを襲った輩は彼女の支給品に手を付けていなかった。
単に使用価値が無いと判断したか、それともそんなことをする余裕がなかったか。
いずれにせよ、必ず殺す。俺が。
モーゼスとの出会いで男の決意は揺らぎかけたが、その彼を殺した今、男の決意は一層固まっていた。
殺す。全員。そしてアミィと・・・仲間達を蘇らせる。
他の者はどうするかまだ考えていなかった。ただ、アミィを殺した奴は何があっても生き返らせるようなことにはしない。
諸々の品々を回収し終えて、男はちらとモーゼスを見た。
「・・・・・・できればあんたとはもっと別の形で会いたかった・・・・・・・」
そうつぶやいた後、迷いを振り切るように頭を振り、歩き出した。
「・・・・・・できればあんたとはもっと別の形で会いたかった・・・・・・・」
そうつぶやいた後、迷いを振り切るように頭を振り、歩き出した。
【チェスター 生存確認】
所持品:サバイバルナイフ 木の弓 木の矢 スピア 毒(液体)
現在位置:C5の森出口
状態:無傷 軽い疲労
行動方針:ゲームに乗る、特にアミィの仇の抹殺 アミィを生き返らせる、可能なら他の者も生き返らせる
所持品:サバイバルナイフ 木の弓 木の矢 スピア 毒(液体)
現在位置:C5の森出口
状態:無傷 軽い疲労
行動方針:ゲームに乗る、特にアミィの仇の抹殺 アミィを生き返らせる、可能なら他の者も生き返らせる
【モーゼス死亡】
【残り49人】