カツカツカツ
薄暗い城内に何者かの足音が響く。
範囲が制限された場所とはいえ、バトルロワイアルに用意された場所はそれなりの面積がある。
それなのによりによって同じ城内に人がいるとは―――
クレスは壁際に隠れてダマスクスソードを構え、足音に耳を澄ました。
一人…?いや、二人いる。
どんな奴らかはわからない。運によっては早々激しい戦いをすることになるだろう。
丁度、自分のいる場所は廊下の突き当たりにあたり、足音はこちらに近づいてくる。一対二…分が悪いが逃げることは叶わない。
視線の先の廊下の曲がり角から二つの長い影が見え始める。
クレスは固唾を呑み、足音のする方を睨み付けた。
するとその二人の会話が聞こえる。
「へえ、君は仲間に恵まれているんだね」
「うん。でも私がドジばかりするから迷惑掛けっぱなしですけど」
えへへ、と少女の笑い声が聞こえてくる。
安穏とした雰囲気にクレスは剣を構えていた手の力を抜いた。
「…誰なんだ、そこにいるのは」
先に声を掛けたのはクレスだった。
「きゃっ!!」
「…おや」
そこに居たのはサレとコレットだった。
薄暗い城内に何者かの足音が響く。
範囲が制限された場所とはいえ、バトルロワイアルに用意された場所はそれなりの面積がある。
それなのによりによって同じ城内に人がいるとは―――
クレスは壁際に隠れてダマスクスソードを構え、足音に耳を澄ました。
一人…?いや、二人いる。
どんな奴らかはわからない。運によっては早々激しい戦いをすることになるだろう。
丁度、自分のいる場所は廊下の突き当たりにあたり、足音はこちらに近づいてくる。一対二…分が悪いが逃げることは叶わない。
視線の先の廊下の曲がり角から二つの長い影が見え始める。
クレスは固唾を呑み、足音のする方を睨み付けた。
するとその二人の会話が聞こえる。
「へえ、君は仲間に恵まれているんだね」
「うん。でも私がドジばかりするから迷惑掛けっぱなしですけど」
えへへ、と少女の笑い声が聞こえてくる。
安穏とした雰囲気にクレスは剣を構えていた手の力を抜いた。
「…誰なんだ、そこにいるのは」
先に声を掛けたのはクレスだった。
「きゃっ!!」
「…おや」
そこに居たのはサレとコレットだった。
「はじめまして、僕はクレス=アルベインと申します」
「初めまして…僕はサレ。この子が」
「コレットといいます」
三人は城の出口に向かいながら自己紹介をした。
「君はこのバトルロワイアルをどう思っているんだい?」
サレはクレスに問いかけた。
「僕は…」
クレスは少し考えた。
「僕は出来れば犠牲を払わずに主催者を倒す方法も見つけたい。だけど…」
「場合によっては戦いも辞さない、か」
サレはクレスがそれを口にする前に代弁した。
「そんなのダメです!!」
そう言ったのはコレットだった。
「なんとかして…みんな無事に助かる方法があるはずです!…私は…、私は大した力とかないけど…、どうにかしてこんなことやめさせたいんです」
「コレットさん…」
コレットは胸元でぎゅっと両手を握りしめる。
クレスはにこりと微笑んだ。
「君は僕の知り合いの女の子に似ているね。きっと彼女もそう言うと思う。
そうだね、みんなと無事に帰りたい。頑張ろう、コレットさん」
「はい!」
「初めまして…僕はサレ。この子が」
「コレットといいます」
三人は城の出口に向かいながら自己紹介をした。
「君はこのバトルロワイアルをどう思っているんだい?」
サレはクレスに問いかけた。
「僕は…」
クレスは少し考えた。
「僕は出来れば犠牲を払わずに主催者を倒す方法も見つけたい。だけど…」
「場合によっては戦いも辞さない、か」
サレはクレスがそれを口にする前に代弁した。
「そんなのダメです!!」
そう言ったのはコレットだった。
「なんとかして…みんな無事に助かる方法があるはずです!…私は…、私は大した力とかないけど…、どうにかしてこんなことやめさせたいんです」
「コレットさん…」
コレットは胸元でぎゅっと両手を握りしめる。
クレスはにこりと微笑んだ。
「君は僕の知り合いの女の子に似ているね。きっと彼女もそう言うと思う。
そうだね、みんなと無事に帰りたい。頑張ろう、コレットさん」
「はい!」
サレはその様子を冷静に見つめていた。
この青年はすぐに少女の言葉に耳を傾けた所を見ると、優しいお人好しといった所か。
しかし先程見た剣の構え方――
自分には全く分からない流派だが、剣の扱いにはかなり慣れていることが伺えた。
敵に回すと厄介かもしれない。
この少女とうまく同時に葬り去るか…利用する方法はないものか…。
「どうしたんです、サレさん」
クレスはサレの顔を覗きこんだ。
真っ直ぐな澄んだ眼。この少女といるおかげだろう。どうやら全く自分に懐疑心を抱いていないらしい。
そしてこの青年は恐らく自分が最も嫌う類の者だろう。
「いや、しかし広い城だね。いつ出れるのかなあと思ってね。」
「そういえば随分歩きましたね」
闇を伸ばしたように延々と廊下が走っている。
じめじめとした雰囲気で、決して居心地の良いものではなかった。使用されなくなってどれだけの歳月が経って居るのだろう。
廊下の絨毯には黴が生え、壁には苔が群生している。
本来ならばこんな場所は足を踏み入れないのに足音がやけに胸に反響して、現実の自覚を色濃くしてゆく。
「なんだか気が滅入っちゃいそうですね」
コレットはふう、と溜息を吐いた。
「そうだね。
よし!ここはひとつダジャレ大会でもしようか!」
サレは眼を丸くした。クレスの唐突かつ理解不能な発言に眉をしかめた。
いや、ひょっとしてクレスは自分が何を考えているのか感づいているのかもしれない。油断させて何かしようとしているのか。
「わあ!面白そうですね~!」
コレットはクレスの提案に賛成した。
「えーと、じゃあいくよ。
…サレさんが蚊に刺サレる!!!」
「わあ!!おもしろーい!」
「…………」
コレットは両手をぱちぱちと叩き、クレスは、いやあ、と照れて後頭部を掻いている。
…どうやら何も考えていないようだ。
この青年はすぐに少女の言葉に耳を傾けた所を見ると、優しいお人好しといった所か。
しかし先程見た剣の構え方――
自分には全く分からない流派だが、剣の扱いにはかなり慣れていることが伺えた。
敵に回すと厄介かもしれない。
この少女とうまく同時に葬り去るか…利用する方法はないものか…。
「どうしたんです、サレさん」
クレスはサレの顔を覗きこんだ。
真っ直ぐな澄んだ眼。この少女といるおかげだろう。どうやら全く自分に懐疑心を抱いていないらしい。
そしてこの青年は恐らく自分が最も嫌う類の者だろう。
「いや、しかし広い城だね。いつ出れるのかなあと思ってね。」
「そういえば随分歩きましたね」
闇を伸ばしたように延々と廊下が走っている。
じめじめとした雰囲気で、決して居心地の良いものではなかった。使用されなくなってどれだけの歳月が経って居るのだろう。
廊下の絨毯には黴が生え、壁には苔が群生している。
本来ならばこんな場所は足を踏み入れないのに足音がやけに胸に反響して、現実の自覚を色濃くしてゆく。
「なんだか気が滅入っちゃいそうですね」
コレットはふう、と溜息を吐いた。
「そうだね。
よし!ここはひとつダジャレ大会でもしようか!」
サレは眼を丸くした。クレスの唐突かつ理解不能な発言に眉をしかめた。
いや、ひょっとしてクレスは自分が何を考えているのか感づいているのかもしれない。油断させて何かしようとしているのか。
「わあ!面白そうですね~!」
コレットはクレスの提案に賛成した。
「えーと、じゃあいくよ。
…サレさんが蚊に刺サレる!!!」
「わあ!!おもしろーい!」
「…………」
コレットは両手をぱちぱちと叩き、クレスは、いやあ、と照れて後頭部を掻いている。
…どうやら何も考えていないようだ。
そもそもサレは苛々していた。
くだらないお喋りもそうだが、この二人の幼稚な考え。一体どんな純粋培養で育ったのだろう。しかもこの殺し合いの最中で、なんとおめでたいことか。
自分の胸に秘めた泥沼のように渦巻く、彼の鬱勃しそうな残虐な部分を奥歯を噛みしめて堪える。
精々今は笑っているがいいさ、残り少ない余生を楽しめばいい。その顔を絶望に塗り変えてあげるよ。
彼が邪な笑みを浮かべた事に二人は気が付かなかった。
くだらないお喋りもそうだが、この二人の幼稚な考え。一体どんな純粋培養で育ったのだろう。しかもこの殺し合いの最中で、なんとおめでたいことか。
自分の胸に秘めた泥沼のように渦巻く、彼の鬱勃しそうな残虐な部分を奥歯を噛みしめて堪える。
精々今は笑っているがいいさ、残り少ない余生を楽しめばいい。その顔を絶望に塗り変えてあげるよ。
彼が邪な笑みを浮かべた事に二人は気が付かなかった。
「きゃあ!!」
「コレットさん!どうしたんですか!?」
尻餅を付いたコレットを起こしながらクレスは構えた。
チチチ…と何かが足下を走ってゆく。
「…なんだあ、ネズミじゃないか」
サレは素早くそれを踏みつぶした。
「可哀想ですよ、そんなことしたら」
コレットがサレに駆け寄る。
「何言っているんだい。害獣だよ、ネズミは。コレットちゃんも驚いたじゃないか。
これは罰だよ」
「そうじゃなくて…」
言い掛けたコレットにまあまあ、とクレスが割って入る。
「とりあえず、多分もうすぐ出口だし、今はここから早く脱出しよう」
「その通りだよ。
…いくよ、コレットちゃん」
「うん…」
「コレットさん!どうしたんですか!?」
尻餅を付いたコレットを起こしながらクレスは構えた。
チチチ…と何かが足下を走ってゆく。
「…なんだあ、ネズミじゃないか」
サレは素早くそれを踏みつぶした。
「可哀想ですよ、そんなことしたら」
コレットがサレに駆け寄る。
「何言っているんだい。害獣だよ、ネズミは。コレットちゃんも驚いたじゃないか。
これは罰だよ」
「そうじゃなくて…」
言い掛けたコレットにまあまあ、とクレスが割って入る。
「とりあえず、多分もうすぐ出口だし、今はここから早く脱出しよう」
「その通りだよ。
…いくよ、コレットちゃん」
「うん…」
罰か…。
人も罰を犯したら死なねばならないとすれば、僕らは何度このようなゲームをすれば赦されるのだろう。
正義の為とはいえ、剣を振るってきた。許しを乞うとすればそれは誰に対してなのだろう。
クレスはふとそんな事を考えた。
人も罰を犯したら死なねばならないとすれば、僕らは何度このようなゲームをすれば赦されるのだろう。
正義の為とはいえ、剣を振るってきた。許しを乞うとすればそれは誰に対してなのだろう。
クレスはふとそんな事を考えた。
三人はやがて城を抜け出す。
その頃にはネズミはもう息絶えていた。
まるで三人の行く末を暗示するかのように…
その頃にはネズミはもう息絶えていた。
まるで三人の行く末を暗示するかのように…
【クレス 生存確認】
状態:無傷
所持品:ダマスクスソード ???(支給品数不明)
現在地:E2の城内出入り口
行動方針:生き残る為なら戦いも辞さないが、出来ればゲームを終わらせる
サレ、コレットと行動
状態:無傷
所持品:ダマスクスソード ???(支給品数不明)
現在地:E2の城内出入り口
行動方針:生き残る為なら戦いも辞さないが、出来ればゲームを終わらせる
サレ、コレットと行動
【コレット 生存確認】
所持品:所持品数共に不明
現在位置:E2の城内出入り口
状態:軽い擦り傷
行動方針:クレス、サレと行動
所持品:所持品数共に不明
現在位置:E2の城内出入り口
状態:軽い擦り傷
行動方針:クレス、サレと行動
【サレ 生存確認】
所持品:所持品数共に不明
現在位置:E2城内出入り口
状態:軽度の打撲
行動方針:クレス、コレットと行動、ないしは策略を練る
所持品:所持品数共に不明
現在位置:E2城内出入り口
状態:軽度の打撲
行動方針:クレス、コレットと行動、ないしは策略を練る